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1 日本語OpenVMS概要

この章では,日本語OpenVMSの概要を説明します。

日本語OpenVMSは,標準版OpenVMS の機能を拡張し,日本語の処理を可能にしたオペレーティング・システムです。 追加機能として日本語処理が組み込まれていますので,標準版OpenVMS の機能はそのまま使用でき,さらに漢字ターミナルを用いて日本語処理を行うことができます。

日本語OpenVMSには,VAXシステム対応の 「日本語OpenVMS VAXオペレーティング・ システム」とAlphaシステム対応の 「日本語OpenVMS Alphaオペレーティング・ システム」があります。 基本的に全く同じユーザ・インタフェース,プログラミング・インタフェースおよびシステム管理機能を提供しています。 新機能,削除された機能, インタフェースの変更等は『日本語OpenVMS V7.2 リリース・ノート』を参照してください。

日本語OpenVMSは大別して次の5つの機能を持ちます。

1.1 日本語ファイル名(Alphaのみ)

日本語OpenVMS V7.2では,標準版OpenVMS V7.2の提供するExtended File Specificationsの機能により,日本語のファイル名を使用することができます。

Extended File Specificationsは,ファイル名に使える文字が Unicodeに拡張され,OpenVMS の従来のバージョンに存在するさまざまなファイル名の制約を緩和するファイル処理環境です。Extended File Specifications は,Advanced Serverを使用する環境において,OpenVMSシステムとWindows NT システムの両方で,一貫性のあるファイル処理を可能します。


注意
日本語OpenVMS V7.2と日本語Advanced Server で扱える日本語ファイル名の最大長は72文字です。(一部の機能を除く) これらの最大長は将来のバージョンで拡張される予定です。

ファイル名に日本語を使用するためには,以下のコマンドを力します。

      $ JSY$CONTROL:==$SYS$SYSTEM:JSY$CONTROL.EXE
      $ JSY$CONTROL SET RMS/FILENAME=SDECKANJI

このコマンドにより,DCLコマンドや日本語ユーティリティ等でファイル名に日本語を使用できるようになります。


注意
日本語OpenVMS V7.2では,標準版OpenVMS V7.2 のDCLコマンドで日本語ファイル名が完全に正常に動作することを保証しません。 一部のDCLコマンドでは日本語ファイル名が正しく表示されないなどの問題が発生する場合があります。

1.2 日本語ユーティリティ

日本語OpenVMSには,日本語処理を行うさまざまなユーティリティが用意されています。 以下に主な項目をあげます。詳細は『日本語ユーティリティ 利用者の手引き』等を参照してください。

  1. 日本語メール・ユーティリティ (JMAIL)

    日本語文書の電子メールを作成,発信,受信できます。

  2. 日本語ソート/マージ (SORT/MERGE)

    漢字データを音読み,訓読み,総画数,部首コード,国語辞書方式でソートやマージをします。

  3. 漢字コード変換 (KCODE)

    DEC漢字コードを他の漢字コードに,他の漢字コードをDEC漢字コードに変換します。

  4. ローマ字・かな漢字変換型INQUIREコマンド (KINQUIRE)

    INQUIREコマンドと同様の機能で,さらにローマ字・かな漢字変換機能による漢字入力が行えます。

  5. 個人辞書編集ユーティリティ (JDICEDIT)

    「かな漢字変換」で使用する「個人辞書」を編集します。スクリーン上で, 単語の登録,削除などを行います。

  6. DEC漢字コード変換ユーティリティ (KCONVERT)

    変換指定テーブルにしたがって,DEC漢字コード1978年版をDEC漢字コード1983 年版(または,その逆)に変換します。変換指定テーブルはエディタなどで作成できます。

  7. 日本語フロントエンド入力プロセス (FIP)

    漢字 (VT) ターミナル・ユーザがアプリケーションに対して,簡単に日本語入力をするためのツールです。 日本語入力をサポートしていないアプリケーションにも, 一部を除いて入力が可能になります。詳細は『日本語入力プロセス 利用者の手引き』を参照してください。

  8. DEC XTPU/日本語EVE (JEVE)

    標準版のDECTPUを日本語処理用に機能拡張したものです。日本語EVEインタフェースにより, マルチ・ウィンドウなど高度な機能を使用して日本語テキストを編集することができます。

    詳細は『DEC XTPUリファレンス・マニュアル』または『日本語EVE リファレンス・マニュアル』, 『日本語EVE ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

次の機能はV6.2より標準版OpenVMS VAXおよび標準版OpenVMS Alphaに統合されて提供されています。

  1. デバッガの日本語機能

    デバッガでは,日本語データ名を使った日本語COBOLプログクラムのデバッグ, 日本語データの参照/代入,XPG4ワイド文字列の参照/代入が可能です。 また,DECwindows MotifのGUI上で日本語が使用できます。

  2. XPG4ユーティリティ

    XPG4 (X/Open Portability Guide Issue 4)で提唱される,アプリケーションの移植性を確保するための標準インタフェースを持つランタイム・ ライブラリ,ユーティリティ,データ・ファイルを提供します。

    詳しくは『OpenVMS DEC C国際化ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』をご覧ください。

1.3 日本語ライブラリ

日本語アプリケーション・プログラムを作成する際に便利な機能が,共有イメージで提供されます。 これらはOpenVMSでサポートされるすべてのプログラミング言語から呼び出して使用することができます。 ユーザはこれらの日本語ライブラリを用いて容易に日本語アプリケーション・ プログラムを作成することができます。

日本語OpenVMSで提供されるライブラリには以下の4 種類があります。

  1. 日本語ライブラリ (JSYSHR.EXE,JSY$KKSHR.EXE)

    かな漢字変換や文字列操作等の日本語処理を行うルーチン群。詳しくは『日本語ライブラリ 利用者の手引き』をご覧ください。

  2. 日本語画面管理ライブラリ (JSY$SMGSHR.EXE)

    VT382などの日本語ビデオ・ターミナルで,マルチ・ウィンドウやメニューの作成等を容易にするルーチン群。 詳しくは『日本語画面管理ライブラリ 利用者の手引き』をご覧ください。

  3. ユーザ・キー定義ライブラリ (IM$SHR.EXE)

    ユーザ・キー定義ライブラリは,かな漢字変換入力中のキー操作方法および表示属性等の環境を, ユーザの好みに応じてカスタマイズできるようにするライブラリです。 また,ユーザ・キー定義ライブラリを利用した複数のアプリケーションでは, 同じ環境でかな漢字変換入力ができるようになります。 詳しくは『ユーザ・キー定義 利用者の手引き 』,『IMLIB/OpenVMSライブラリ・ リファレンス・ マニュアル』をご覧ください。

  4. 日本語COBOL実行時ライブラリ (JCORTL.EXE,NCORTL.EXE, DEC$COBRTL.EXE)

    VAX版

    JCORTL.EXEとNCORTL.EXEは,日本語VAX COBOLを用いて開発されたアプリケーションが, 日本語項目へのACCEPT命令を用いた入力を行なう際に必要となる実行時ライブラリです。JCORTL は日本語VAX COBOL V4.3 以前のキットに含まれる実行時ライブラリと同じものです。また, NCORTLは日本語VAX COBOL V4.4以降のキットに含まれる実行時ライブラリと同じものです。

    Alpha版

    DEC$COBRTL.EXEは,日本語DEC COBOLを用いて開発されたアプリケーションが, 日本語項目へのACCEPT命令を使用した入力を行う際に必要となる, 実行時ライブラリです。

    日本語DEC COBOL用DEC$COBRTL.EXEはOpenVMS V6.2までは日本語OpenVMS が提供していましたが,OpenVMS V7.0から標準版OpenVMS により提供されるDEC$COBRTL.EXEに日本語機能が統合されました。

1.4 フォント管理ユーティリティ

ターミナルに表示,または印刷する漢字フォントをサポートするユーティリティ群で, 以下の機能があります。詳細は『フォント管理ユーティリティ 利用者の手引き』を参照してください。

  1. 漢字ターミナルの属性設定(KANJIGEN)

    漢字ターミナルの属性を設定します。日本語エディタなどの日本語ユーティリティを使用する漢字ターミナルに対し, 表示モードの設定などを行います。

  2. ユーザ独自のフォント作成(CMGR)

    JIS X0208第1水準,第2水準相当の漢字は,日本語OpenVMSシステムのフォント・ データベースまたは漢字ターミナル内のROM に準備されていますが,これ以外にユーザ独自のフォントをデザインして使用できます。

  3. フォントのプリローディング(KANJIGEN,CMGR)

    漢字ターミナルのROMにない文字の文字パターンをあらかじめ漢字ターミナルのRAM に登録することができます。

  4. 漢字プリント・シンビオント(JSY$PRTSMB.EXE,JSY$LATSYM.EXE)

    OpenVMSの標準プリント・シンビオントの機能に加え,拡張漢字や,第2 水準漢字 (ハードウェアにない場合) を印字する機能を持つ,漢字プリンタの専用シンビオントです。

1.5 日本語ヘルプ/メッセージ

日本語OpenVMSでは日本語のヘルプを用意してあります。DCL コマンドで,

          $ HELP @JSYHELP

と入力すると日本語ユーティリティ,日本語ライブラリ,辞書,論理名などの日本語のヘルプを見ることができます。 また,日本語のユーティリティ, フォント管理ユーティリティでは,ユーティリティの使用中も日本語ヘルプを参照できます。

この他に,通常よく参照されると思われるトピック,表示メッセージは, 日本語でも提供されています。ヘルプ/メッセージを英語→日本語,日本語→英語に切り換えるためには,JSY$SWITCH コマンド・プロシージャで, 以下のように設定します。

英語→日本語に切り換える場合

     $ @JSY$SYSTEM:JSY$SWITCH JAPANESE

日本語→英語に切り換える場合

     $ @JSY$SYSTEM:JSY$SWITCH ENGLISH

現在の設定を表示する場合

     $ @JSY$SYSTEM:JSY$SWITCH SHOW

1.6 DCLコマンドでの日本語の使用

日本語OpenVMSの下ではDCLコマンドにおいて, 注釈内および文字リテラル内での漢字使用,漢字を含むデータの取り扱い, および入出力を行うことができます。文字リテラルとして漢字を使用する場合には, 引用符 ( " ) で囲む必要があります。また,漢字コードの2 バイト目が引用符 ( " または' ) と同じコード値になるような漢字は使用できません。 システムが自動的に大文字変換を行うようなものには漢字を使用することはできません。

漢字の使用できないものには次のようなものがあります。

1.7 プログラミング言語での日本語の使用

日本語OpenVMSの下では,主なプログラミング言語において注釈内および文字リテラル内での日本語使用, 日本語を含むデータの取り扱いおよび入出力を行うことができます。 ただし, プログラミング言語自身には日本語サポート用の機能が含まれていませんので, 利用者側で日本語データであること (漢字1文字が2バイトの記憶領域を占めること, 日本語ルーチンを使用することなど) を意識する必要があります。

また,拡張漢字文字集合内の文字を使用した場合,漢字コードの2バイト目が1 バイトのJISローマ字と同じコード値であるため,その文字が特殊な意味を持ってしまうことがあります。 そのような漢字は使用できません。 これは次のような場合に起こります。

次の言語で漢字が使用可能です。詳しくはそれぞれの言語のマニュアル等を参照してください。


DEC C
DEC FORTRAN
DEC XTPU
MACRO


VAXのみ
VAX BASIC
VAX BLISS
VAX PASCAL
VAX PL/I

1.8 論理名

日本語OpenVMSでは,次に挙げる論理名をファイルおよびディレクトリに対して割り当てています。

1.9 プログラムとフォント・データのサンプル

1.9.1 サンプル・プログラム

日本語ライブラリを使用した,各種言語によるサンプル・プログラムが, ディレクトリJSY$EXAMPLESにあります。

DEC XTPUのサンプル・プログラムは,XTPU$EXAMPLESにあります。 XTPU$EXAMPLES:XTPU_EXAMPLES.READMEを参照してください。

1.9.2 フォント・データのサンプル

24×24ドットのフォント・データのサンプルが,JSY$EXAMPLESにあります。 このフォント・データはDEC漢字セットには入っていない記号なので, ユーザの好みによりシステムのフォント・データベースに登録したり, プリロードすることにより使用できます。

          EXAMPLE_FONTS.PRE ........ フォント・データ・ファイル

1.10 DECnet環境での使用

DECnetを経由して日本語OpenVMSのシステムにログインし, 日本語ユーティリティを使用することができます。 以下に,ローカル・システムが日本語OpenVMS の場合と標準版OpenVMSの場合の2つの例を説明します。詳しくは『フォント管理ユーティリティ 利用者の手引き』をご覧ください。

  1. ローカル・システムが日本語OpenVMS の場合

    図 1-1 DECnet環境での使用例 (1)

    ローカル・システムが日本語OpenVMS の場合,VT280シリーズ,VT382漢字ターミナルに対する漢字属性設定をローカル・ システムとリモート・システムの両方で行う必要があります。 これはアプリケーション・ソフトウェアがリモート・ システムの漢字属性設定に従って動作し,一方でオンデマンド・ ローディングがローカル・システムで動作するためです。

    したがって,ローカル・システムとリモート・システムで同じ文字コードに異なるユーザ定義文字が割り振られている場合には, 期待する文字と異なる文字が表示されるという制限があります。 これを避けるためには,2. のローカル・システムが標準版OpenVMSの場合と同様に, リモート・システムからユーザ定義文字のプリロードをする必要があります。

                $ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN
                KANJIGEN> SET/DEVICE=VT300/FONT -
                          /INPUT=KANA/OUTPUT=KANJI
                KANJIGEN> EXIT
      
                $ SET HOST NodeA::
      
                Username: USER
                Password:
                Welcome to VMS ....
      
                $ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN
                KANJIGEN> SET/DEVICE=VT300 -
                          /INPUT=KANA/OUTPUT=KANJI
                KANJIGEN> EXIT
                $ EDIT/XTPU filename
      

  2. ローカル・システムが標準版OpenVMSの場合

    図 1-2 DECnet環境での使用例 (2)

    ローカル・システムが標準版OpenVMSの場合,VT280シリーズ,VT382漢字ターミナルに対してローカル・ システムで漢字属性の設定はできません。 したがって,オンデマンド・ローティングによってユーザ定義文字を使用することもできません。 リモート・システムにログインした後,KANJIGEN ユーティリティで,漢字ターミナルの漢字設定と,必要に応じてユーザ定義文字のプリロードを行う必要があります。 この場合, 使用できるユーザ定義文字の数は使用するターミナルによって制限があります。

                $ SET HOST NodeB::
      
                Username: USER
                Password:
                Welcome to VMS ....
      
                $ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN
                KANJIGEN> SET/PRELOAD -
                          /INPUT=KANA/OUTPUT=KANJI
                KANJIGEN> EXIT
                $ EDIT/XTPU filename
      


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