DEC XTPUはスクリーン向きエディタのための一般的な機能の他に, 以下の特殊機能も備えています。
すなわち,DEC XTPUは日本語のテキスト処理アプリケーションを構築するための基礎となるものであると考えることができます。 日本語EVEという編集インターフェイスは, DEC XTPUの上にレイヤ構造として作成されたインターフェイスの例であり,DEC XTPU言語で書かれています。
また,テキスト・エディタの使用経験の豊富なユーザにとっても, 日本語EVEは強力で効率のよいエディタです。 高度な編集機能は,日本語EVEコマンド・ラインにコマンドを入力することにより実行できます。 このコマンドを使用すれば,DEC XTPUの多くの特殊な機能を使用することができます。 日本語EVEインターフェイスについての詳しい説明は, 『日本語EVE ユーザーズ・ガイド』および 『日本語EVE リファレンス・マニュアル』を参照してください。
DEC XTPU言語はブロック構造になっているため,簡単に学習でき,また使用できます。 DEC XTPU言語には多くのデータ・タイプ,関係演算子,エラー処理機能, 繰り返しやCASE文,重要な機能を実行するための広範囲にわたる組込みプロシージャなどがあります。 コメントはコメント文字(!)によって示すことができるので, プロシージャに関する内部的な記述を,プロシージャに含めることができます。 また,ユーザ作成デバッグ・プログラムを用いてプロシージャをデバッグすることもできます。
this_var := 'This can be a string of your choice';次のステートメントは,ウィンドウ・データ・タイプを変数lower_caseに代入します。 ウィンドウはスクリーンの1行目から始まる15行を使用し,ステータス・ラインはOFF(表示されない)です。
x := CREATE_WINDOW(1, 15, OFF)多くのDEC XTPUデータ・タイプ(たとえば学習タイプやパターン)は, 通常のプログラミング言語で使用されているデータ・タイプと異なっています。 DEC XTPUのデータ・タイプは表 1-1に示すとおりです。
データ・タイプ | 説明 |
---|---|
ARRAY | 要素の集まり |
BUFFER | テキスト・レコードの集まり − BUFFERは編集作業ができる範囲を示します。 |
INTEGER | 整数−有効な値は,-2,147,483,648から 2,147,483,647です。 |
KEYWORD | DEC XTPUコンパイラにとって特別の意味がある予約語 |
LEARN | DEC XTPUキーストロークの集まり |
MARKER | バッファ内の文字位置 |
PATTERN | 一連の文字 − パターン演算子とパターン組込みプロシージャは結果としてこのデータ・タイプを通知します。 PATTERNはバッファ内の特定のテキストを見つけるために,SEARCH組込みプロシージャで使用されます。 |
PROCESS | VMSサブプロセス |
PROGRAM | 実行可能なDEC XTPUステートメントのコンパイルされた形式 |
RANGE | 2つのマーカの間に存在するすべてのテキスト(2つのマーカも含む) |
STRING | 文字列 |
UNSPECIFIED | 変数宣言を持つコードがコンパイルされた後のグローバル変数の初期状態 |
WINDOW | スクリーンを分割した領域−ウィンドウは,テキスト・バッファのうちスクリーン上に現れている領域です。 |
DEC XTPUデータ・タイプについての詳しい説明は, 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第2章 "DEC XTPUのデータ・タイプ" を参照してください。
モジュール宣言 | MODULE − IDENT − ENDMODULE |
プロシージャ宣言 | PROCEDURE − ENDPROCEDURE |
定数宣言 | CONSTANT |
グローバル変数宣言 | VARIABLE |
ローカル変数宣言 | LOCAL |
DEC XTPU言語の宣言文についての詳しい説明は, 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第3章を参照してください。
代入ステートメント | := |
繰返しステートメント | LOOP − EXITIF − ENDLOOP |
条件ステートメント | IF − THEN − ELSE − ENDIF |
ケース・ステートメント | CASE − ENDCASE |
エラー・ステートメント | ON_ERROR − ENDON_ERROR |
DEC XTPU言語ステートメントについての詳しい説明は, 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第3章を参照してください。
独自のプロシージャを作成するときには,組込みプロシージャを使うことができます。 また日本語EVEから組込みプロシージャを使うこともできます。 DEC XTPU組込みプロシージャについての詳しい説明は, 『DEC Text Processing Utility Reference Manual』および本書の 第4章を参照してください。
プロシージャを作成するときには,以下のガイドラインに従ってください。
! This procedure moves the editing ! position to the top of the buffer PROCEDURE user_top POSITION (BEGINNING_OF(CURRENT_BUFFER)); MESSAGE (" 現在のバッファは "+ GET_INFO (CURRENT_BUFFER, "name") + " です"); ENDPROCEDUREこのプロシージャをコンパイルしておけば, user_topという名前を使ってこのプロシージャを呼び出すことができます。
DEC XTPUは日本語端末VT280シリーズ(DEC漢字1983年版)およびVT382でスクリーン編集機能をサポートします。 日本語端末VT280シリーズ(DEC漢字1978年版)は, DEC漢字1983年版で変更になった文字が表示されない,という制限のもとでサポートされます。
DEC XTPUのサポートする日本語端末に関する制限事項については, 付録 Aを参照してください。
$ EDIT/XTPU text_file.lisこのコマンドは text_file.lis というファイルを編集のためにオープンします。 追加ファイルは,編集セッションでDEC XTPUの内部からREAD_FILE組込みプロシージャを使って指定することができます。
上記のコマンドでDEC XTPUを呼び出す場合には, 省略時の編集インターフェイスが使用されます(/NOSECTIONを指定しなかった場合)。 DEC XTPUの省略時の編集インターフェイスは日本語EVEです。 使用されるインターフェイス名(ここでは日本語EVE (JEVE))をコマンドとして, DEC XTPUを呼び出すことができるように,以下に示すようなシンボルを定義することをお勧めします。
$ JEVE :== EDIT/XTPU
修飾子 | 省略時の値 |
---|---|
/CODESET=codeset_keyword | /CODESET=ISO_LATIN1 |
/[NO]COMMAND[=filespec] | /COMMAND=XTPU$COMMAND |
/[NO]CREATE | /CREATE |
/[NO]DEBUG[=filespec] | /NODEBUG |
/[NO]DISPLAY[=keyword] | /DISPLAY=CHARACTER_CELL |
/[NO]INITIALIZATION[=filespec] | /NOINITIALIZATION |
/[NO]JOURNAL[=filespec] | /[NO]JOURNAL |
/[NO]KANJI_DICTIONARY[=filespec] | /KANJI_DICTIONARY |
/[NO]MODIFY | /MODIFY |
/[NO]OUTPUT[=filespec] | /OUTPUT=input_file.type |
/[NO]READ_ONLY | /NOREAD_ONLY |
/[NO]RECOVER | /NORECOVER |
/[NO]SECTION[=filespec] | /SECTION=XTPU$SECTION |
/START_POSITION=(line,column) | /START_POSITION=(1,1) |
/[NO]WRITE | /WRITE |
DEC XTPUコマンドの修飾子についての詳しい説明は, 第5章を参照してください。
ファイル・タイプ: | .TPU |
DEC XTPU修飾子: | /COMMAND=filespec |
省略時のファイル: | 現在のディレクトリの XTPU$COMMAND.TPU |
コマンド・ファイルには,DEC XTPU言語で書かれたソース・コードが入っています。
省略時設定は,/COMMAND=XTPU$COMMANDです。 論理名XTPU$COMMANDに任意のファイルを定義して使うこともできます。 /NOCOMMAND修飾子が指定されない限り,DEC XTPUはコマンド・ファイルを読み込もうとします。
/COMMAND修飾子についての詳しい説明は 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第5.5.2項を参照してください。
ファイル・タイプ: | .XTPU$SECTION |
DEC XTPU修飾子: | /SECTION=filespec |
省略時のファイル: | SYS$LIBRARYディレクトリの JEVE$SECTION_V3.XTPU$SECTION |
セクション・ファイルはDEC XTPUソース・コードをコンパイルした形式のバイナリ・ファイルです。
省略時設定は,/SECTION=XTPU$SECTIONです。日本語OpenVMSでは, 起動時に XTPU$SECTIONという論理名がJEVE$SECTION_V3に定義されます。このため, DCLレベルでEDIT/XTPUコマンドを入力すると,日本語EVEエディタが起動されます。 日本語EVEを使用しないときには,別のセクション・ファイルを指定するか, /NOSECTION修飾子を指定しなければなりません。
/SECTION修飾子についての詳しい説明は 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第5.5.12項を参照してください。
- 注意
- /NOSECTION修飾子を指定して DEC XTPUを呼び出した場合には, DEC XTPUに対するインターフェイスを与えるためのバイナリ・ファイルの読み取りは実行されません。 この場合には,[Return]や<X]キーさえも定義されていない状態になります。 新しいセクション・ファイルを作成しているときに, 既存のセクション・ファイルからプロシージャや変数, あるいは定義を含みたくない場合には,/NOSECTION修飾子を使用します。
ファイル・タイプ: | .EVE |
DEC XTPU修飾子: | /INITIALIZATION=filespec |
省略時のファイル: | 現在のディレクトリまたはSYS$LOGINディレクトリのJEVE$INIT_V3.EVE |
イニシャライゼーション・ファイルには, DEC XTPUを使用して書かれたアプリケーションのためのコマンドが入っています。 たとえば,日本語EVEのイニシャライゼーション・ファイルには, キー定義やマージンの設定を含めることができます。
省略時の設定は,/INITIALIZATIONです。 論理名JEVE$INIT_V3に任意のファイルを定義して使うこともできます。 イニシャライゼーション・ファイルはとても簡単に作成できますが, セクション・ファイルやコマンド・ファイルを使用したときよりも, 起動に時間がかかります。/NOINITIALIZATION修飾子が指定されない限り, DEC XTPUはイニシャラゼーション・ファイルを読み込もうとします。
/INITIALIZATION修飾子についての詳しい説明は 『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第5.5.6項を,また, イニシャライゼーション・ファイルの作成については日本語EVE ユーザーズ・ガイドの "イニシャライゼーション・ファイルの作成" を参照してください。
コマンド・ファイルとセクション・ファイルのどちらか一方, または両方を使用することにより, 既存のインターフェイスを変更または拡張することができます。
$ DIRECTORY XTPU$EXAMPLES:JEVE$*.TPUシステムにこのファイルが含まれていないときには,システム管理者に連絡してください。