日本語Compaq DECprint Supervisor for OpenVMS
システム・マネージャーズ・ガイド


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第 7 章
セットアップ・モジュールおよび装置制御ライブラリの作成

7.1 セットアップ・モジュールの概要

セットアップ・モジュールは,プリント・ジョブの文書の外観を修正したりプリント・ジョブ内の命令を再定義する命令を含むファイルです。

PRINT コマンドの /SETUP 修飾子を指定することで,プリント・ジョブにセットアップ・モジュールを含めることができます。次の例では,600 dpi の解像度を指定するセットアップ・モジュールを使用しています。


$ PRINT/QUEUE=LPS32$2SIDES/SETUP=RES_600X600 IMAGE.PS

フォーム ( 第 8 章 を参照) を使用することで,プリント・ジョブに暗黙のうちにセットアップ・モジュールを含めることもできます。

7.2 セットアップ・モジュールの位置

Compaq DECprint Supervisor for OpenVMS には各種のセットアップ・モジュールが組み込まれており,インストレーション時に次の装置制御ライブラリに置かれます。

SYS$LIBRARY:DCPS$DEVCTL.TLB

セットアップ・モジュールの一覧を表示するには,次のコマンドを使用します。


$ LIBRARY/LIST SYS$LIBRARY:DCPS$DEVCTL.TLB

次の例のようなセットアップ・モジュールの一覧が表示されます。


DCW1000_DISPLAY 
DCW1000_ENHANCED 
DCW1000_HIGHRES 
LPS$$APPLE360_INITPSDEVICE 
LPS$$APPLE360_SETINPUTTRAY 
RES_1200X1200 
RES_1200X600 

注意

セットアップ・モジュールあるいは装置制御モジュールを変更してはなりません。

いくつかのセットアップ・モジュールは特定のプリンタ専用に作成されています。これらのセットアップ・モジュールは,そのファイル名にプリンタ名が含まれています。たとえば,セットアップ・モジュールの DL3500_RET_DARK は, DEClaser 3500 プリンタ用です。

注意

標準で提供される装置制御ライブラリの内容を変更してはなりません。

7.2.1 カスタム・セットアップ・モジュールの位置

カスタム・セットアップ・モジュールは特殊な装置制御ライブラリにまとめて, .TLB (テキスト・ライブラリ) ファイルという名前で SYS$LIBRARY に置かれなければなりません。次のコマンドは,SYS$LIBRARY にあるすべてのテキスト・ライブラリの一覧を表示します。どのサブセットが DCPS で使用される特殊な装置制御ライブラリであるかを判定するには,システムの DCPS プリント・キューの /LIBRARY 修飾子に対応したライブラリおよびライブラリ検索リストと .TLB ファイル名との関係を調べてください。


$ DIRECTORY SYS$LIBRARY:*.TLB

7.2.2 セットアップ・モジュールの内容の表示

セットアップ・モジュールに含まれている命令を見るには,次の手順に従ってください。

  1. 装置制御ライブラリからセットアップ・モジュールを抽出します。次の例では,DCPS$DEVCTL.TLB からセットアップ・モジュール DI_ON を抽出し,ユーザ・ディレクトリでファイル名を MYSETUP.TXT に変更します。


    $ LIBRARY/EXTRACT=(DI_ON)/OUT=MYSETUP SYS$LIBRARY:DCPS$DEVCTL.TLB
    

  2. TYPE コマンドあるいはエディタを使用して,そのファイルの内容を表示させます。


    $ TYPE MYSETUP.TXT
    


    このセットアップ・モジュール DI_ON は DECimage を有効とするもので,次の命令を含んでいます。


    %! 
    % ~~~~~~~~~~ DI_on ~~~~~~~~~~ 
    statusdict begin false setDECimage end 
    systemdict /languagelevel known {languagelevel} {1} ifelse 
    2 ge {currentpagedevice /Install get exec} if 
    statusdict begin true setDECimage end 
    % ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
    

    注意

    いくつかのセットアップ・モジュールは,TYPE コマンドを使用しても表示することのできないエスケープ・シーケンスあるいはグラフィックスを含んでいる場合があります。そのようなモジュールについては,抽出したファイルに対して DUMP/RECORD コマンドを実行することができます。

7.3 カスタム・セットアップ・モジュールの作成

異なるデータ・タイプを持つプリント・ジョブに影響を与えるセットアップ・モジュールを作成することができます。いくつかのセットアップ・モジュールは ANSI プリント・ジョブを処理し,別のものは PostScript ジョブに影響を与えます。サポートする任意のデータ・タイプについてのセットアップ・モジュールを作成することができます。

注意:

7.4 装置制御ライブラリの作成

ユーザがセットアップ・モジュールをアクセスできるように設定するには,装置制御ライブラリを作成し,モジュールをそのライブラリに登録しなければなりません。各データ・タイプのセットアップ・モジュールに対して異なるライブラリを使用してください。異なるデータ・タイプのセットアップ・モジュールを同じライブラリに登録しないでください。ANSI,PCL, Proprinter,PostScript ファイルのためのライブラリを作成することができます。

注意

セットアップ・モジュールを標準的な DCPS$DEVCTL ライブラリに登録してはなりません。 DECprint Supervisor ソフトウェアをアップグレードした場合, DCPS$DEVCTL ライブラリに登録されたカスタム・セットアップ・モジュールは削除されるからです。

セットアップ・モジュールを登録するライブラリを作成するには,次のコマンドを使用します。


$ LIBRARY/CREATE/TEXT SYS$COMMON:[SYSLIB]library-name.TLB

ライブラリの名前として library-name を指定してください。

次のコマンドは固有のPostScriptセットアップ・モジュールを登録するために,PS1という新しいPostScript装置制御ライブラリを作成します。


$ LIBRARY/CREATE/TEXT SYS$COMMON:[SYSLIB]PS1.TLB

詳細は,『OpenVMS Librarian Utility Manual』を参照してください。

7.4.1 ライブラリへのセットアップ・モジュールの登録

セットアップ・モジュールを装置制御ライブラリに登録するには,次のコマンドを使用します。


$ LIBRARY/INSERT SYS$LIBRARY:library-name.TLB module-name

このコマンドに次の情報を指定してください。

library-name ライブラリの名前
module-name セットアップ・モジュールの名前

次のコマンドは,CONFIDENTIAL.PSというPostScriptセットアップ・モジュールを PS1.TLBというPostScript装置制御ライブラリに登録し,セットアップ・モジュールの名前をCONFIDENTIALとして指定します。


$ LIBRARY/INSERT SYS$LIBRARY:PS1.TLB CONFIDENTIAL.PS

次のコマンドは,A4_PAGE.TXTというANSIセットアップ・モジュールをANSI1.TLBという ANSI装置制御ライブラリに登録し,セットアップ・モジュールの名前をA4_PAGEに設定します。


$ LIBRARY/INSERT SYS$LIBRARY:ANSI1.TLB A4_PAGE.TXT

7.4.2 ライブラリ検索リストの指定

装置制御ライブラリが複数ある場合には, SYS$STARTUP:DCPS$STARTUP.COM 内のライブラリの検索リストを設定しなければなりません。検索リストは検索する装置制御ライブラリと検索順序を指定します。

例 7-1 に,装置制御ライブラリの検索リストを示します。

例 7-1 装置制御ライブラリの検索リスト

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE/NOLOG DCPS_LIB - 
         DCPS$DEVCTL,- 
         "PS1/DATA_TYPE=POSTSCRIPT",- 
         "ANSI1/DATA_TYPE=ANSI",- 
         PS2 

例 7-1 では,ソフトウェアは次の動作をします。

  1. 標準装置制御ライブラリ DCPS$DEVCTL から必要なセットアップ・モジュールおよび /SETUP あるいは /FORM で指定されたセットアップ・モジュールを検索します。

  2. PostScript ライブラリ PS1 から,標準装置制御ライブラリで見つからなかった指定されたセットアップ・モジュールを検索します (PostScript セットアップ・モジュールは任意のタイプのファイルで使用されるため,セットアップ・モジュールの検索時には PostScript 装置制御ライブラリは常に検索されます)。

  3. プリント・ジョブが ANSI である場合, ANSI1 と呼ばれるライブラリから検索されます。

  4. プリント・ジョブが ANSI 以外のデータ・タイプである場合, ANSI1 ライブラリではなく PostScript ライブラリの PS2 から検索されます。

ライブラリ論理名および検索リストを定義するには,次の手順にしたがってください。

  1. DCPS$STARTUP.COM を編集して,次の行を追加します。

    コマンド行
    $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE/NOLOG -
        logical-name -
        search-list
    
    $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE/NOLOG DCPS_LIB -
    
    DCPS$DEVCTL,-
    "PS1/DATA_TYPE=POSTSCRIPT",-
    "ANSI1/DATA_TYPE=ANSI",-
    PS2


    コマンド行には,次の情報を記述します。
    logical-name:
    ライブラリ名のリストに展開される論理名を使用します。この論理名は実行キューの定義 (パラメータp3)にも指定しなければなりません。
    search-list:
    検索するライブラリのリストを追加します。ライブラリを追加する場合は,次のガイドラインを使用してください。

  2. 新しいライブラリを有効とするには,実行キューを停止させた後に再起動します (既存のライブラリにセットアップ・モジュールを追加した場合は,キューを再初期化する必要はありません)。

7.4.3 キューを起動するために必要な装置制御ライブラリ

キューを起動するには,キュー用に指定されたすべての装置制御ライブラリが存在していなければなりません。たとえば,次の論理名でキューが定義されている場合は, SYS$LIBRARY:DCPS$DEVCTL.TLB,SYS$LIBRARY:ANSI.TLB, SYS$LIBRARY:PS.TLB のすべてのライブラリがテキスト・ライブラリとして存在している必要があります。


  $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS_LIB - 
      DCPS$DEVCTL, - 
      "ANSI/DATA_TYPE=ANSI", - 
      "PS/DATA_TYPE=POSTSCRIPT" 

7.4.4 アップグレード時のカスタム・セットアップ・モジュールの保存

DECprint Supervisor ソフトウェアをインストールすると,提供される装置制御ライブラリDCPS$DEVCTL.TLBの新しいバージョンが作成されます。ソフトウェアのインストレーション時に古いファイルをパージした場合,装置制御ライブラリの以前のコピーは削除されます (詳細は『日本語 Compaq DECprint Supervisor for OpenVMS インストレーション・ガイド』を参照してください)。

カスタム・セットアップ・モジュールを追加する場合には,新しいライブラリを作成し,そのライブラリをライブラリ検索リストで参照するようにしてください。このようにすれば,プリンティング・ソフトウェアをアップグレードする際に,カスタム・セットアップ・モジュールを保存することができます。

DECprintプリンティング・サービスまたはPrintServerクライアント・ソフトウェアのアップグレード

DECprint プリンティング・サービス・ソフトウェアまたは PrintServer クライアント・ソフトウェアは固有の装置制御ライブラリ (CPS$DEVCTL.TLB および LPS$DEVCTL.TLB) を持っています。 DECprint Supervisor にアップグレードした場合は, CPS$ および LPS$ 装置制御ライブラリは使用されなくなります。これらのライブラリのいずれかにカスタム・セットアップ・モジュールが含まれている場合は,必要なモジユールを新しいライブラリに登録し,装置制御ライブラリ検索リストにそのライブラリを指定してください。

7.5 プリント・ジョブへのセットアップ・モジュールの指定

PRINT コマンドで /SETUP 修飾子を使用することで,セットアップ・モジュールを指定することができます。

/SETUP 修飾子を使用してプリント・ジョブに ANSI セットアップ・モジュールを指定するには,次のコマンド形式を使用してください。


$ PRINT/QUEUE=queue-name/SETUP=your-module-name print-file.TXT

間違ったコマンドを入力した場合,ファイルが印刷されるまでその間違いは検出されません。ソフトウェアが直ちに間違いを検出できるようにするには,フォームにセットアップ・モジュールを含めるようにします。その命令については, 第 8 章 を参照してください。

一般ユーザが頻繁にセットアップ・モジュールにアクセスする場合は,セットアップ・モジュールを特定のキューに対応させることにより,そのキューに登録されたすべてのプリント・ジョブが自動的にそのセットアップ・モジュールを使用して出力されるようにすることができます。その命令については, 第 8 章 を参照してください。

7.6 永続的な PostScript 資源のロード

注意

この機能はデスクトップ・プリンタのみに適用されます。 PrintServer プリンタについては, PrintServer ソフトウェアを使用して資源が永続的にロードされます。

すべてのプリント・ジョブについて PostScript コードをダウンロードすると,印刷性能に悪い影響を与える可能性があります。この問題を解消するために,プリンタに常駐するモジュールをロードしておくことができます。

デスクトップ・プリンタには LPS$PERSISTENT_RESOURCES モジュールが永続的にロードされます。永続的な PostScript モジュールを作成するには,次の手順にしたがってください。

  1. 次のコマンドを使用して,ユーザ固有の PostScript セットアップ・モジュール用の新しい装置制御ライブラリを作成します。


    $ LIBRARY/CREATE/TEXT SYS$COMMON:[SYSLIB]library-name.TLB
    

  2. SYS$STARTUP:DCPS$STARTUP.COM ファイルを編集して,検索リストに新しい装置制御ライブラリを登録します。 DCPS スタートアップ・ファイルに次のコマンドを記入します。


    $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE/NOLOG DCPS_LIB DCPS$DEVCTL, "library-name/DATA=POST"
    

  3. そのセットアップ・モジュールをロードする各 PostScript プリンタ用の実行キューの定義のパラメータ 3 に,装置制御検索リスト論理名として論理名 DCPS_LIB が記入されていることを確認します。

  4. DCPS$STARTUP.COM ファイルを保存します。

  5. 変更の影響を受けるプリンタについての各キューに STOP/QUEUE/RESET コマンドを実行してキューを停止します。

  6. 新しい DCPS$STARTUP.COM ファイルを実行します。

  7. 2 つのプリント・ジョブを各プリンタに送信してプリント・キューをテストします。プリンタに最初に送信されるプリント・ジョブについて,セットアップ・モジュールがロードされます。第 2 のプリント・ジョブにもその設定が同様に有効である必要があります。

警告

永続的なセットアップ機能の間違った使用法により,問題が発生する可能性があります。この機能を使用する場合は,次の事項に注意してください。

  • 永続的にロードすることができるのは, PostScript セットアップ・モジュールだけです。別のデータ・タイプを永続的にロードすることはできません。

  • セットアップ・モジュールがプリンタの仮想メモリを超える可能性があります。プリンタの異なるモジュールは異なる容量を持っています。たとえば,あまりに多くのフォントを持ったセットアップ・モジュールはプリンタの容量を超えてしまう可能性があります。

  • ネットワーク内の複数のノードから共有ネットワーク・プリンタを使用することができます。印刷結果が異なることがないように,そのプリンタにアクセスするすべてのノードから同一のセットアップ・モジュールがロードされることを確認してください。異なるセットアップ・モジュールをロードする必要がある場合は,各プリント・ジョブについて /SETUP あるいは /FORM 修飾子のいずれかを使用してください。

  • 永続的にロードされるセットアップ・モジュール内の不正な PostScript コードは,予測できない解析困難な結果を生じます。また,プリンタの電源が落とされるまでコードがプリンタ内にそのまま存在するため,異なるシステムからのプリント・ジョブが異常終了して予測できない結果となり,問題の原因を特定することができなくなります。


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