日本語 Compaq DECwindows Motif for OpenVMS
リリース・ノート


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変換イメージのサポートについての詳細は,『DECmigrate for OpenVMS AXP System Translating Images』を参照してください。

4.2.2 問題点と制限事項

DECwindows Motif開発環境に関する問題点と制限事項について,次に説明します。

4.2.2.1 Display PostScript のサポート終了

V1.2--6

1998年8月1日から,弊社は Adobe Display PostScriptソフトウェアをサポートしなくなりました。これは,Adobe Systems 社が Display PostScript のサポートを打ち切ったことに伴う措置です。

この決定により,弊社は契約上,DECwindows Motif ソフトウェアからすべての Display PostScript 機能を削除する義務を負います。これには,関連する変換イメージのサポートおよび次のプログラミング・リファレンス・マニュアルに記述されているすべての機能が含まれます。

現在のところ,これに対する解決策はありません。 DECwindows Motif 環境のアプリケーションに及ぼすおそれのある影響についての詳細は,以降の各項を参照してください。

4.2.2.1.1 DECwindows Motif アプリケーションへの影響

DECwindows Motif から Display PostScript が削除されたことにより, PostScript フォーマットのグラフィックスやドキュメントの表示に Display PostScript の機能を使用するアプリケーションが影響を受けます。

なお,これには,CDA ビューアなど,弊社が開発したアプリケーションだけでなく,次のいずれかのファイルやライブラリに依存するサード・パーティ製やユーザ作成のアプリケーション,および変換したVAX のアプリケーションも含まれます。これらのアイテムはもう製品キットには含まれておらず,DECwindows Motif クライアント・ソフトウェアの以前のバージョンからアップグレードする際にシステムから削除されます。

Display PostScript 削除の実際の影響は,アプリケーションでインプリメントされている範囲によって異なります。 PSWRAP コマンドを呼び出すアプリケーションは,そのコマンドが呼び出される場所でのみ異常終了します。しかし,XPDS ライブラリにリンクしているアプリケーションまたは TIS イメージは,実行時に解決できないリンクがあるため全く機能できません。

このため, Compaq DECwindows Motif for OpenVMS V1.2--6 環境で正常に実行できるようにするには,これらのファイルに依存している DECwindows Motif アプリケーションの該当箇所を変更する必要があります。

4.2.2.1.2 Java アプリケーションへの影響

Java Development Kit (JDK) for OpenVMS V1.2.2-1 には, Display PostScript (XPDS) ライブラリにリンクする 2 つの共有可能イメージ (JAVA$FONT_MANAGER_SHR.EXE およびJAVA$FONT_MANAGER_G_SHR.EXE) が含まれています。このため,Display PostScript 機能を使用するこれらのキットでビルドされたすべての Java アプリケーションは,DECwindows V1.2--6 環境では異常終了します。

この制限事項はバージョン1.2.2-1のキットにのみ適用されることに注意してください。 1.1* シリーズ用のJavaマシンは,バージョン1.2.2-1以降のすべての JDK のリリース同様,Adobe Display PostScript ソフトウェアまたはそのライブラリに依存しません。

4.2.2.2 マルチスレッドおよびアップコールの使用 (Alpha のみ)

V1.2--6

DECwindowsサーバとの通信に使用するトランスポートでは,現在,複数のカーネル・スレッドの使用をサポートしていません。そのため,アップコールを有効にして複数のカーネル・スレッドを使用するDECwindows Motif クライアント・アプリケーションは,サポートされません。この制限事項は,アプリケーションで DECwindows 呼び出しをシングル・スレッドに制限している場合にも適用されます。

4.2.2.3 DECW$INCLUDE:INTRINSIC.Hファイル使用上の問題

V1.2--5

DECwindowsのヘッダ・ファイルDECW$INCLUDE:INTRINSIC.Hは, /STANDARD=VAXCコンパイラ・スイッチが指定されているときでも, DEC Cコンパイラ使用時にglobalrefマクロをexternとして再定義します。これは,ユーザ・アプリケーションに広範な影響を与える可能性があります。

INTRINSIC.Hにこの再定義が要求されるのは,ユーザの作成したアプリケーションが DECwindows共有イメージにあるデータを参照するとき,必ず共有イメージのコンパイル時に使用したものと同じ外部モデルを使用するように, DECwindows側で保証する必要があるためです。

この問題を解決するため,アプリケーションでは変数にglobalrefとglobaldefを使用しないで,次のプリプロセッサ命令を使用してください。


#pragma extern_model strict_refdef 

この解決策には,厳密にANSIに適合するという利点があります。この pragma 命令は,『OpenVMSシステム用DEC Cユーザーズ・ガイド』に説明されています。

4.2.2.4 DECW$WML_TOKENS.DAT を現在のディレクトリで検索する DECW$WML.EXE

1.2--4

SYS$SYSTEM:DECW$WML.EXEを使用して, UILファイルのオペランド解析をカスタマイズすることができます。 DECW$WML.EXE は, DECW$WML_TOKENS.DATファイルからトークン・リストを読み込みますが, DECwindows Motifの以前のバージョンでは,このトークン・ファイルは常にSYS$LIBRARYから読み込まれていました。日本語DECwindows Motif V1.2-4では, DECW$WML.EXEがまず最初に現在ディレクトリ内でこのファイルを検索してから, SYS$LIBRARYディレクトリ内を検索します。これによりカスタマイズ化したトークン・ファイルを使用することができます。

4.2.2.5 DECW$COMPARE_VERSIONSコマンド・ファイルの制限

1.2--4

DECW$COMPARE_VERSIONSコマンド・ファイルは, 2桁年数を使用してバージョン識別子を比較しています。したがって,2000年より前に生成されたイメージのバージョン識別子と 2000年以降に生成されたイメージのバージョン識別子を正常に比較することができません。

4.2.2.6 _Xm ルーチンの使用

V1.2

OSF/Motif ツールキットは,多くの「内部専用」ルーチンで実現されています。これらのルーチンは_Xmで始まり,標準Motif ウィジェットだけが使用するようになっています。 API (Application Programing Interface)については文書化されておらず, OSFではこれらのルーチンをサポートしていません。 OSF社はAPIを変更して新しい_Xm ルーチンを追加し,現在の_Xm ルーチンを削除し,あらゆる_Xm の機能性の変更を警告や予告なしに行う権利を保有しています。

警告

弊社では,_Xm ルーチンを複写して, OSF/Motif リリース 1.2.2 ツールキットの共有可能イメージ転送ベクトルに置くことによって, _Xm ルーチンへアクセスできるようにしています。弊社では,これらのルーチンについて,その使用,ドキュメント,またはサポートを保証していません。これらの機能を使用するユーザは,ご自分の責任で行ってください。

4.2.2.7 Fortranで作成したアプリケーションのコンパイル (Alpha のみ)

V1.1

OpenVMS Alpha システムで, DECW$MOTIF.FORファイルなどのDECwindows Motifアプリケーションを Fortranで作成するために使用するインクルード・ファイルには,使用するコンパイラ・スイッチに応じてメモリ・レイアウトを変化させる構造体定義が含まれています。

次の処置のいずれかを行うことができます。

4.2.2.8 Cで作成したアプリケーションのコンパイル

V1.0

VAX C レイヤード製品のインストレーション・プロシージャでは, VAX C 定義ファイル(.h ファイル)を抽出するか,または.h ファイルをテキスト・ライブラリに残しておくかのいずれかを選択することができます。定義ファイルを抽出すると,次のフォーマットの#include 制御行を使用することができます。


#include <filename.h> 

DECwindows ヘッダ・ファイルは, .h ファイルが抽出されていることを前提としています。ヘッダ・ファイルには,組み込まれたファイルの #include <module_name.h>記述が含まれています。また, DECwindows プログラミング関連マニュアルでも同じことを前提としています。

このため,VAX C をインストールするには,ライブラリ・モジュール抽出を選ぶ必要があります。

すでにVAX C をインストールしていて, .h ファイルを抽出しなかった場合は, DECwindowsサンプル C プログラムは動作しません。この問題に対処するには, VAX Cを再度インストールして.h ファイルを抽出してください。

DEC C では, DECC$TEXT_LIBRARYの論理名を次のように定義すれば,ヘッダ・ファイルをテキスト・ライブラリから抽出する必要はありません。


$ DEFINE DECC$TEXT_LIBRARY SYS$LIBRARY:DECC$RTLDEF.TLB 

4.3 CDA

この節では,CDAアプリケーションおよびランタイム・サービスに関するプログラミング情報を説明します。

4.3.1 変更および拡張

CDA アプリケーションおよびランタイム・サービスに対して行われた変更と拡張について,次に説明します。

4.3.1.1 使用可能なドラッグ・ドロップ機能

V1.2

ウィジェットとウィジェットの間で情報の移動と複写ができるドラッグ・ドロップ機能が, 表 4-1 に記載された各ウィジェットで実現されています。

表 4-1 ドラッグ・ドロップをサポートするウィジェット
ウィジェット ドラッグ操作 ドロップ操作
XmText 複写と移動 複写と移動
XmTextField 複写と移動 複写と移動
XmLabel 複写  
XmPushButton 複写  
XmToggleButton 複写  
XmList 複写  

アプリケーションにドラッグ・ドロップの追加機能を組み込む方法,およびドラッグ・ドロップ・プログラムの例については,『OSF/Motif プログラマーズ・ガイド,リリース 1.2』を参照してください。

4.3.1.2 プログラミング・インタフェースの変更

V1.2

この項では,本バージョンのCDA ランタイム・サービスのプログラミング・インタフェースの変更について説明します。

本バージョンでは,ポータブルな命名規則を使用して, CDAの定数,タイプ,ルーチン名を定義する一連の新しいヘッダ・ファイルを提供しています。これらの新しい命名規則の使用によって,より多種のCコンパイラの使用が可能となり, CDAアプリケーションでのシステム特有のコードの量を最小限にすることができます。

これらの新しい一連のヘッダ・ファイルの名前は,ドル記号($)が除かれた以外は,以前のヘッダ・ファイルの名前と同じです。たとえば,cda$msg.h組み込みファイルは,現在ではcdamsg.hとなっています。この他にも,たとえば DDIF$K_DSC_MAJOR_VERSIONシンボルは,現在ではDDIF_K_DSC_MAJOR_VERSIONと宣言され,またCDA$_NORMAL 状態値は現在では,CDA_NORMALと定義されます。

以前のヘッダ・ファイルもこのバージョンに含まれていますが,これらのファイルは更新されないことになっています。 DECwindows Motif バージョン 1.1のリリース以降に導入された変更 (たとえば,オーディオ・サポート用の新しい定義)は,新しいヘッダ・ファイルでのみ利用できます。新しいCDA機能を使用するには,ソース・コードのファイル名を変更してください。

新しいヘッダ・ファイルは,古いヘッダ・ファイルを補うものです。 CDA定義やCDA ツールキット呼び出しを使用して ANSI準拠のアプリケーションを作成する場合,新しい組み込みファイルを使用してください。ただし非ANSIコンパイル・モードを選択する場合は,シンボルを定義しているドル記号が入ったヘッダ・ファイルを引き続き使用することもできます。

旧ヘッダ・ファイルを使用して,旧命名規則を使用する既存ソース・コードを構築することにも問題はありません。

表 4-2 は新しいヘッダ・ファイル名の一覧です。

表 4-2 新しいヘッダ・ファイル名
以前の名前 新しい名前
cda$def.h cdadef.h
cda$msg.h cdamsg.h
ddif$def.h ddifdef.h
dtif$def.h dtifdef.h
cda$ptp.h cdaptp.h
cda$typ.h cdatyp.h
dvr$msg.h dvrmsg.h
dvr$cc_def.h dvrccdef.h
dvr$cc_ptp.h dvrccptp.h
dvr$decw_def.h dvrwdef.h
dvr$decw_ptp.h dvrwptp.h

4.3.1.3 外部参照処理の変更

V1.2

CDA ランタイム・サービスは,外部参照ファイル指定に対して相対ファイル指定をサポートしています。相対参照もサポートされています。相対参照とは,完全なディレクトリ・パスを指定するものではなく,親ドキュメントに対する相対ディレクトリ・パスのことです。

4.3.1.4 スタイル・ガイドのフォールバックの新しいメッセージ

V1.2

ローカルのスタイル・ガイドが見つからない場合は,次のメッセージが表示されます。

STYGDEFBK, Fallback to nonlocale-specific style guide: file-spec

レベル: 通知
説明: ロケール特有のスタイル・ガイドが発見できなかったため,ロケール特有ではないバージョンのスタイル・ガイドが代わりに使用されました。

4.3.1.5 CONVERTコマンドでの論理名の使用

V1.2

ドキュメント変換中に,論理名を使用して1次ドキュメントのディレクトリを指定し,ドキュメント・ファイルの拡張子を省略すると,相対ファイル指定を含む外部参照が変換の失敗の原因となります。

これは,フロントエンド・コンバータが入力ファイルをオープンするにもかかわらず,バックエンド・コンバータがコンバータ処理オプションを調べるために発生します。コンバータ・ソフトウェアは,フロントエンド・コンバータが適用する省略時のファイル拡張子を予測できないため, OpenVMS ファイル・サービスを使用して論理名を分解し,実際のファイル指定を発見する必要があります。こうすれば,ディレクトリのオペランド解析ができ,相対指定で拡張することができます。

変換が失敗するのは,外部参照が次のようなフォーマットになっている場合だけです。


sys$login:mydoc 

この場合参照は分解されません。次の例のように,これ以外の場合は,参照はすべて分解されます。


sys$login:mydoc.doc 
disk$:[smith]mydoc 
disk$:[smith]mydoc.doc 

4.3.1.6 共有可能イメージの構造変更

V1.2

DECwindowsをインストールしていないシステムへのインストレーションを可能とするために, CDA ビューアの構造が変更され, 2つの新しい共有可能イメージが導入されています。

DECwindows Motif Version 1.2 for OpenVMS ソフトウェアでは, X サービスを利用する共有可能イメージの名称が変更されました。各種バージョンのCDAの共有可能イメージの一覧が 表 4-3 に掲載されています。

表 4-3 共有可能イメージ名
CDA バージョン イメージ名 説明
V1.6 CDA$ACCESS CDA ランタイム・サービスの共有可能イメージ
  DDIF$VIEWSHR 呼び出し可能なビューア・ウィジェット
V1.7 CDA$ACCESS CDA ランタイム・サービスの共有可能イメージ
  DDIF$VIEWSHR
DDIF$DECW_VIEWSHR
DDIF$CC_VIEWSHR
DDIF$DECW_VIEWSHR ウィジェットは,呼び出し可能なビューア・ウィジェットで, LIB$FIND_IMAGE_SYMBOLルーチンを使用して, DDIF$DECW_VIEWSHR (DECwindows インタフェース) および DDIF$CC_VIEWSHR (文字セル・インタフェース) ウィジェットを呼び出します。
V1.8以降 CDA$ACCESS CDA ランタイム・サービスの共有可能イメージ
  DDIF$VIEWSHR12 DDIF$VIEWSHR12 ウィジェットは,呼び出し可能なビューア・ウィジェットで, LIB$FIND_IMAGE_SYMBOLを使用して, DDIF$DECW_VIEWSHR12 (DECwindows インタフェース) および DDIF$CC_VIEWSHR(文字セル・インタフェース) ウィジェットを呼び出します。

LIB$FIND_IMAGE_SYMBOLルーチンを使用して, DDIF$DECW_VIEWSHR,DDIF$DECW_VIEWSHR12,DDIF$CC_VIEWSHRの各イメージへのエントリ・ポイントを参照することにより,アプリケーションが与えられた環境で実行できるかどうかを動的に決定することができます。 DDIF$VIEW.EXE アプリケーションがこれを行うようになりました。

以前のDDIF$VIEWSHR.EXE 共有可能イメージが,それに対してリンクされるアプリケーションとの互換性を保つために依然含まれています。ただし新しいアプリケーションでは (また以前のアプリケーションで新しい機能を利用するものは) 新しい共有可能イメージを使用してください。


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