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Fibre Channel テープ・デバイスと媒体チェンジャ・デバイスは, SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT ファイルの情報に従って構成されます。このファイルは,デバイス当たり 2 つの連続するレコードで構成される ASCII ファイルです。この 2 つのレコードは,次の形式で表されます。
[Device $2$devnam] WWID = displayable_identifier |
自動構成中に,Fibre Channel はプローブされ,すべてのデバイスの WWID がフェッチされます。フェッチされた WWID が,SYS$DEVICES.DAT ファイルのメモリ常駐コピーのエントリと一致すると,デバイスは,その WWID と一対になっているデバイス名を使用して構成されます。
SYS$DEVICES.DAT ファイルは,ポート割り当てクラス (PAC) 情報にも使用されます。 OpenVMS Alpha バージョン 7.3 では,PAC と Fibre Channel テープはブート時にファイル・ベースのデバイス情報にアクセスする必要があるという共通性以外に関連がありません。Fibre Channel テープの命名は同じファイルの 2 回目の使用となります。 デフォルトでは,SYS$DEVICES.DAT ファイルは,クラスタの共通ディレクトリ SYS$COMMON:[SYSEXE] に作成されます。 |
たとえば,SYS$DEVICES.DAT の以下の部分では,$2$MGA300 および $2$MGA23 という名前のデバイスが最終的に構成されます。
! [Device $2$MGA300] WWID = 04100022:"COMPAQ DLT8000 JF71209240" ! [Device $2$mga23] WWID = 04100022:"DEC TZ89 (C) DECJL01164302" |
このファイルには,通常 OpenVMS ユーティリティだけが読み込みと書き込みを行いますが,まれにこのファイルを編集しなければならない場合もあります。 OpenVMS Alpha バージョン 7.3 では, 第 7.5.5 項 で説明するように,デバイスのユニット番号のみ変更できます。ファイルに適用される内部の構文規則を以下にまとめます。
同様に, WWID =を含む行では,等号の両側に空白 (またはなし) を使用できます。すべての行は左揃えにし, 512 文字未満にする必要があります。
このファイルの解析では大文字/小文字は区別されません。ただし,1 つだけ重要な例外があります。二重引用符で囲まれた文字はすべて文字通りの意味で解釈されるため,スペースや小文字などの文字は区別されます。二重引用符で囲まれた ASCII データの場合は,コロンと二重引用符の間にスペースを入れることはできません。
また,複数の WWID =行が 1 行の [Device devnam]に続く場合は,最後の WWID =値が優先されます。ただし,通常は, [Device devnam]行ごとに 1 行の WWID =しかありません。
同様に,2 行以上の [Device devnam]で同じデバイス名を指定し,WWID が異なる場合は,ファイルで指定された最後のデバイス名と WWID だけが使用されます。
このファイルはブート時に読み込まれます。また,このファイルには, SYSMAN の IO FIND_WWID コマンドを使って読み込みまたは書き込みを行います。システム固有の追加の SYS$DEVICES.DAT ファイルがある場合は,システムごとに SYSMAN の IO FIND_WWID を実行することでそのテープの命名レコードが自動的に取りこまれます。 SYSMAN の IO FIND_WWID コマンドについては,次の項で詳しく説明します。
7.5.3 Fibre Channel テープ・デバイスの新しいコマンドと機能
以下の 2 つの新しいシステム管理ユーティリティ (SYSMAN) コマンドが追加されました。
Fibre Channel 上のすべてのポートをプローブし,検出されていないすべてのテープと媒体チェンジャを認識して,各デバイスに名前を付けます。デバイスとそれらのデバイスに割り当てたデバイス名のリストを表示し,この情報を SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT ファイルに自動的に記録します。また,関連のローカルおよびクラスタ全体のメモリ構造も更新します。
このコマンドは,SYSMAN コマンドの IO AUTOCONFIGURE を実行する前に使用します。
CMKRNL 権限が必要です。
テープ・デバイスを,同じ FC LUN 位置にある別のテープ・デバイスに物理的に交換する必要がある場合に,該当のファイルおよびメモリ・データ構造を更新します。
CMKRNL 権限が必要です。
以下の DCL の拡張が行われました。
7.5.4 Fibre Channel テープ・デバイスの構成
ここでは,Fibre Channel で新しいテープまたは媒体チェンジャを構成するために必要な手順を示します。
7.5.4.1 基本構成手順: 要約
クラスタで新しい Fibre Channel テープ・デバイスを構成するための基本手順を以下に示します。
$ MC SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER ! Execute on all nodes SYSMAN> IO FIND_WWID ! Assign names SYSMAN> IO AUTOCONFIGURE/LOG ! Configure devices SYSMAN> EXIT |
これらの手順は,イニシャル構成のときに一度だけ実行する必要があります。その後,システムがリブートすると,デバイスは自動的に構成されます。
7.5.4.2 基本構成手順: 詳細
Fibre Channel でテープ・デバイスを構成する前に,デバイスのワールドワイド識別子 (WWID) を検出し,テキスト・ファイル SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT にデバイス名と共に保存する必要があります。これは,新しい SYSMAN コマンド IO FIND_WWID を実行して行うことができます。
IO FIND_WWID コマンドは,Fibre Channel 上のすべてのポートをプローブし, MDR に接続されているすべてのテープと媒体チェンジャを検索します。前に実行した IO FIND_WWID コマンドで検出されなかったテープおよび媒体チェンジャについて, IO FIND_WWID はデバイス名を割り当て,そのデバイスの WWID を検索し, SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES. ファイルにデバイス名と WWID データを保存して,メモリ構造を更新します。
IO FIND_WWID の第一の目的は,SYS$DEVICES.DAT ファイルを設定することであるため, IO FIND_WWID コマンドは,デバイスごとに一度だけ実行する必要があります。 IO FIND_WWID は,アプリケーションで使用する $2$MGAnnnn: デバイスを構成しません。
このファイルに一度情報を保存すると,次に IO AUTOCONFIGURE コマンドを使用したときに,そのファイルのメモリ常駐コピーが読み込まれ,テープと媒体チェンジャ・デバイスが自動的に構成され,必要に応じてデバイス・ドライバがロードまたは接続されます。各システムのリブート時に,SYS$DEVICES.DAT ファイルがメモリに読み込まれます。このアクションによって,Fibre Channel でのテープおよび媒体チェンジャの自動構成が開始されます。
IO FIND_WWID コマンドを初めて実行したときは,システムの既存のテープ・デバイスと媒体チェンジャ・デバイスがすべて認識されます。後からシステムに Fibre Channel テープ・デバイスを追加した場合は,最初に MDR の電源を切って入れなおし,内部マッピング情報を更新してから,IO FIND_WWID コマンドをもう一度実行して,新しいデバイス情報を SYS$DEVICES.DAT ファイルに追加する必要があります。
OpenVMS Cluster 環境では,新しい Fibre Channel テープ・デバイスを追加した場合,システムごとにメモリ内のさまざまなデータ構造を更新する必要があります。これを行う場合は,クラスタ内の各 Alpha ノードで SYSMAN の IO FIND_WWID コマンドを実行することをお勧めします。あるいは,1 つのノードで IO FIND_WWID を実行してから,同じシステム・ディスクを共有する他のノードをリブートすることもできます。SYS$DEVICES.DAT ファイルはブート時に読み込まれ,その結果,メモリ構造が正常に初期化されるからです。
クラスタ内に複数のシステム・ディスクがある場合は,必ず SYS$DEVICES.DAT ファイル内のすべてのコピーの整合性を保つようにします。整合性を保つには, IO FIND_WWID コマンドを実行することをお勧めします。あるいは,IO FIND_WWID を実行して 1つの SYS$DEVICES.DAT ファイルだけを更新し,該当のデバイス名と WWID レコードを元のファイルから残りの SYS$DEVICES.DAT ファイルへコピー・アンド・ペーストして,手動で編集することもできます。
元のファイル全体を別のシステム・ディスクへコピーする方法はお勧めできません。 SYS$DEVICES.DAT ファイルは,ポート割り当てクラス (PAC) の定義にも使用するため, PAC エントリが誤ってターゲット・システムへ転写される場合があります。
以下に,シングル・ノードで TL891 テープ・ライブラリを使用する構成例を示します。
最初に,SYSMAN コマンド IO FIND_WWID で,検出されていないすべてのテープ・デバイスとそのデバイス名のリストを表示します。
$ MCR SYSMAN IO FIND_WWID %SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node SAMPLE On port _SAMPLE$PGA0:, the following tape WWIDs and their proposed device names have been found but not yet configured: [Device $2$GGA0] WWID=04100024:"DEC TL800 (C) DEC3G9CCR82A017" [Device $2$MGA0] WWID=04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX939S2777" [Device $2$MGA1] WWID=04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX942S6295" |
WWID 全体は,等号の右側に示されているものすべてで構成されています。各 WWID は一意ですが,ヘッダ部分は WWID データの基本タイプと長さだけを示すため,一意でない場合があります。
IO FIND_WWID コマンドによって,新しいテープ・デバイスに関する情報を SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT に記録します。
$ TYPE SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT ! ! Updated 23-OCT-2000 14:17:41.85: DEC TL800 ! [Device $2$GGA0] WWID=04100024:"DEC TL800 (C) DEC3G9CCR82A017" ! ! ! Updated 23-OCT-2000 14:17:41.93: DEC TZ89 ! [Device $2$MGA0] WWID=04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX939S2777" ! ! ! Updated 23-OCT-2000 14:17:42.01: DEC TZ89 ! [Device $2$MGA1] WWID=04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX942S6295" ! |
次に,SYSMAN コマンド IO AUTOCONFIGURE でテープ・デバイスを構成します。
$ MCR SYSMAN IO AUTOCONFIGURE/LOG %SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node SAMPLE %IOGEN-I-PREFIX, searching for ICBM with prefix SYS$ %IOGEN-I-PREFIX, searching for ICBM with prefix DECW$ %IOGEN-I-SCSIPOLL, scanning for devices through SCSI port PKA0 %IOGEN-I-SCSIPOLL, scanning for devices through SCSI port PKB0 %IOGEN-I-FIBREPOLL, scanning for devices through FIBRE port PGA0 %IOGEN-I-CONFIGURED, configured device GGA0 %IOGEN-I-CONFIGURED, configured device MGA0 %IOGEN-I-CONFIGURED, configured device MGA1 |
最後に,SHOW DEVICE/FULL コマンドで,テープ・デバイスの WWID を表示します。
$ SHOW DEVICE/FULL $2$MG Magtape $2$MGA0: (SAMPLE), device type TZ89, is online, file-oriented device, available to cluster, error logging is enabled, controller supports compaction (compaction disabled), device supports fastskip. Error count 0 Operations completed 0 Owner process "" Owner UIC [SYSTEM] Owner process ID 00000000 Dev Prot S:RWPL,O:RWPL,G:R,W Reference count 0 Default buffer size 2048 WWID 04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX939S2777" Density default Format Normal-11 Allocation class 2 Volume status: no-unload on dismount, position lost, odd parity. Magtape $2$MGA1: (SAMPLE), device type TZ89, is online, file-oriented device, available to cluster, error logging is enabled, controller supports compaction (compaction disabled), device supports fastskip. Error count 0 Operations completed 0 Owner process "" Owner UIC [SYSTEM] Owner process ID 00000000 Dev Prot S:RWPL,O:RWPL,G:R,W Reference count 0 Default buffer size 2048 WWID 04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX942S6295" Density default Format Normal-11 Allocation class 2 Volume status: no-unload on dismount, position lost, odd parity. |
F$GETDVI レキシカル関数も,表示可能な WWID を索します。
$ write sys$output f$getdvi("$2$MGA0","WWID") 04100022:"DEC TZ89 (C) DECCX939S2777" |
デバイスが命名および構成されると,INITIALIZE,MOUNT,BACKUP,および COPY などの DCL コマンドを使用してパラレル SCSI テープを使用するのと同じ方法でデバイスを使用できます。Fibre Channel テープの製品固有のサポートについての詳細は,個別のテープ・レイヤ製品のインストール・ガイドを参照してください。
Fibre Channel で媒体チェンジャが自動構成されている間,パラレル SCSI の媒体チェンジャでは,継続して IO CONNECT コマンドでデバイス・ドライバをロードすることを要求します。 Fibre Channel 媒体チェンジャはパラレル SCSI と異なり,デバイス名にデバイスの物理位置が含まれていないため,SYSMAN IO CONNECT コマンドを使って Fibre Channel 媒体チェンジャを手動で接続することはできません。
7.5.5 既存の Fibre Channel テープ・デバイス名の変更
SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT はテキスト・ファイルであるため編集することができますが,変更できるのは Fibre Channel テープまたは媒体チェンジャ・デバイスのユニット番号だけです。ただし,前述したように,Fibre Channel テープと媒体チェンジャ・デバイスの情報はクラスタ規模のデータ構造,特にクラスタ規模の論理名を使用して,OpenVMS により内部的に保存されます。 OpenVMS バージョン 7.3 で,これらのデータ構造のクリーン・アップをサポートする方法は,クラスタを完全にシャットダウンする方法しかありません。ローリング・リブート (他のノードの再ブート中に最低 1 つのノードを起動したままにしておく方法) は,構造のクリーン・アップには使用できません。
既存のデバイス名を変更するための手順を以下に示します。
たとえば,$2$MGA26 が別のテープの WWID に関連付けられている場合は, 26 以外のユニット番号を選択します。 $2$GGA4 が別の媒体チェンジャの WWID にすでに関連付けられている場合は, 4 以外のユニット番号を選択します。
7.5.6 Fibre Channel での物理テープ・デバイスの移動
テープ・デバイスまたは媒体チェンジャ・デバイスを名前を変更せずに移動する場合は,クラスタをシャットダウンする必要はありません。ただし,デバイスにアクセスする各クラスタ・ノードをリブートして,デバイスを表すユニット・コントロール・ブロックのパス情報を更新する必要があります。
MDR コマンド RemapFcScsiまたは Clear FcScsiMapを使用すると,MDR 内部の Fibre Channel パスが再マッピングされます。その結果,実際には移動していない場合でも,デバイスは移動したかのように示されます。整合性を保つために,構成済みのシステムではこれらのコマンドを使用しないようにしてください。 |
デバイスを誤って再ブートせずに新しいパスへ移動した場合に,デバイスのマウントまたは初期化を試みたり,そのデバイスに対して $QIO IO$_PACKACK を実行すると,デバイスは回復不可能なドライブ・エラーになります。
7.5.7 Fibre Channel テーブル・デバイスへのサービスの提供
一般的に,OpenVMS Cluster 内の OpenVMS Alpha バージョン 7.3 ノードが MDR と同じ Fibre Channel ファブリックに接続されている場合は,それらのノードすべてに Fiber Channel テープ・デバイスへの直接パスがあります。 TMSCP クライアントとして OpenVMS の旧バージョンを実行している VAX ノードと Alpha ノードは, OpenVMS Alpha Version 7.3 ノードによって, Fibre Channel テープ・デバイスのサービス対象とすることができます。この機能を実行する場合,バージョン 7.3 の前の VAX ノードには, TUDRIVER.EXE 用の最新のアップデート・キットが必要です。また,バージョン 7.3 の前の Alpha には,SYS$TUDRIVER.EXE 用の最新のアップデート・キットが必 要です。
媒体チェンジャは,Fibre Channel とパラレル SCSI のどちらに接続されている場合でも, TMSCP のサービス対象にすることはできません。
7.5.8 Fibre Channel テープ・デバイスの交換
テープ・ドライブを,MDR 内の同じ FC LUN 位置にある別のテープ・ドライブと物理的に交換する必要がある場合は,該当のデータ構造を IO REPLACE_WWID コマンドを使用して更新します。
たとえば,欠陥のあるテープ・ドライブを,クラスタを再ブートせずに新しいドライブと交換する必要があり,このドライブは,その位置にあった前のテープのデバイス名を保持する必要があるとします。
交換用デバイスには,元のデバイスと同じ SCSI ターゲット ID であることが必要です。デバイスを使うすべての処理を終了させてから,次のコマンドを入力して,新しいテープ・デバイスの WWID で,必要なすべてのファイルとメモリ・データ構造を更新します。
$ MCR SYSMAN IO REPLACE_WWID $2$MGA1 |
クラスタ環境内の各 Alpha ノードでこのコマンドを実行します。これは,次のコマンドを使用して実行します。
$ MCR SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER SYSMAN> IO REPLACE_WWID $2$MGA1 |
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