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ユーザ・アカウントの管理では,ユーザのメール・アカウントを管理する必要もあります。たとえば,次のような管理作業があります。
以降の項で上記の作業方法を説明します。
7.10.1 ユーザ・レコードの変更
すべてのユーザは,MAIL に用意されている各種の SET および SHOW コマンドを使用して,自分自身のレコードに関する情報を変更または表示することができます。このようなコマンドは,各ユーザの情報を持つ,単一キー索引順編成ファイル SYS$SYSTEM:VMSMAIL_PROFILE.DATA にアクセスします。
SYSNAM では, SET FORWARD/USER=
ユーザ コマンドを使用すると, (システムにアカウントのないユーザを含め) ユーザへのメール転送先アドレスを変更することができます。
7.10.2 ユーザ・レコードの削除
通常は,UAF からユーザ・レコードを削除したら,ユーザ・プロファイル・ファイルからもそのユーザの情報を削除します。ユーザ・プロファイル・ファイルからレコードを削除する場合は, REMOVE コマンドを使用します。
7.10.3 AUTHORIZE フラグと MAIL
ユーザの UAF レコードには,ユーザの MAIL 環境に影響するフラグが含まれています。 AUTHORIZE の /FLAGS 修飾子を使用して,ユーザ・アカウントのフラグを設定することができます。
フラグ | 意味 |
---|---|
[NO]DISNEWMAIL | ユーザがシステムにログインしたときに新しいメール数を表示する [またはしない]。 |
[NO]DISMAIL | 新しいメールを受信する[またはしない]。 |
この節では,UAF レコードを作成するときにユーザ・プロセスに設定可能な資源制御属性について詳しく説明します。
7.11.1 ページおよびページレット
VAX および Alpha システムは,ページという単位でプロセスにメモリを割り当てたり,解放したりします。 VAX システムでは,1 ページの大きさは 512 バイトです。 Alpha システムでは,8KB (8192 バイト), 16KB,32KB,64KB のいずれかに設定することができます。 Alpha システムの中には,4 つのページ・サイズのうち 1 つしか設定できないものもあります。マシンの初期設定は 8 K バイト・ページです。
ほとんどの場合,Alpha システムは, ページレットという 512 バイトの単位でユーザとメモリを処理します。したがって,Alpha 1 ページレットは VAX の 1 ページと同じ大きさです。また,Alpha 8KB コンピュータでは,Alpha 16 ページレットが Alpha 1 ページと等しくなります。ページ,ページレット,バイトの関係を次に示します。
One Alpha pagelet = one VAX page = 512 bytes One Alpha page = 16 Alpha pagelets = 16 VAX pages = 8192 bytes |
AUTHORIZE ユーティリティのコマンド,パラメータ,省略時の値は同じですが,Alpha システムの場合,ユーザによってはメモリに関係するプロセス・クォータの省略時の値が適切でないことがあります。
Alpha システムの管理についての詳細は,『A Comparison of System Management on OpenVMS AXP and OpenVMS VAX』を参照してください。 (このマニュアルはアーカイブされていますが,
OpenVMS Documentation CD-ROM にあります。)
7.11.2 システム資源の制限の設定
システムのすべてのユーザは,システム・メモリ,揮発性 (ページファイル) ディスク空間,プロセス数,入出力要求などの資源の消費について制約を受けます。そして,そうした制約を課すのはシステム管理者の仕事であり,AUTHORIZE ユーティリティを使ってユーザにアカウントを作成するときに行います。
制限とは,あるプロセスが,自分に割り当てられた資源を,自分で作成したサブプロセスと,どのように共用するかを制御する手段です。1 人のユーザまたは 1 つのアカウントが一度に扱えるプロセスの数を制限するだけでなく,システムは資源の共用に 4 つの制限の種類を使用します。 表 7-1 に,4 つの制限の種類とその説明を示します。
表 7-8 は,アカウントを作成するときに設定可能な制限項目の一覧です。個々の制限項目について,SYSTEM アカウントと DEFAULT アカウントに対する UAF レコード内の値と制限の種類を示してあります。また表の後には,それら制限項目について個々に説明します。通常,それらシステム資源には省略時の制限値を割り当てます。ただし,最適な性能を実現するという観点から制限値を検討し,調整したい場合は,『Guide to OpenVMS Performance Management』で解説されている方法参照してください。
表 7-8 には,これらの制限値のほか, SYSTEM と DEFAULT アカウントの UAF レコードに対して用意されている値と制限の種類についてもまとめてあります。
制限項目 | VAX の SYSTEM に対する値 |
VAX の DEFAULT に対する値 |
Alpha の SYSTEM に対する値 |
Alpha の DEFAULT に対する値 |
タイプ1 | 説明 |
---|---|---|---|---|---|---|
ASTlm | 50 | 40 | 250 | 250 | N | AST キュー制限 |
BIOlm | 40 | 40 | 150 | 150 | N | 入出力バッファリング制限 |
Bytlm | 32768 | 32768 | 64000 | 64000 | P | 入出力バッファリングバイト数制限 |
CPU | 0 | 0 | 0 | 0 | D | CPU 時間制限 (0= 制限なし) |
DIOlm | 40 | 40 | 150 | 150 | N | 直接入出力回数制限 |
Enqlm | 300 | 200 | 2000 | 2000 | P | キュー登録クォータ |
Fillm | 300 | 300 | 100 | 100 | P | オープン・ファイル制限 |
JTquota | 4096 | 4096 | 4096 | 4096 | P | ジョブ全体の論理名テーブルに対する初期バイト数クォータ |
Maxacctjobs | 0 | 0 | 0 | 0 | S | アカウント 1 つあたりの最大アクティブ・プロセス数 (0= 制限なし) |
Maxdetach | 0 | 0 | 0 | 0 | S | ユーザ名一個あたりの最大独立プロセス数 (0= 制限なし) |
Maxjobs | 0 | 0 | 0 | 0 | S | ユーザ名 1 つあたりの最大アクティブ・プロセス数 (0= 制限なし) |
Pgflquo | 20480
ページ |
32768
ページ |
50000
ページレット |
50000
ページレット |
P | ページング・ファイル制限 |
Prclm | 10 | 2 | 10 | 8 | P | サブプロセス作成制限 |
TQElm | 30 | 40 | 20 | 10 | P | タイマ・キュー・エントリ数 |
WSdef 2 | 256
ページ |
256
ページ |
2000
ページレット |
2000
ページレット |
N | 省略時のワーキング・セット・サイズ |
WSextent 2 | 40960
ページ |
1024
ページ |
16384
ページレット |
16384
ページレット |
N | ワーキング・セット超過制限 |
WSquo 2 | 512
ページ |
512
ページ |
4000
ページレット |
4000
ページレット |
N | ワーキング・セット・クォータ |
表 7-9 は,SYSTEM および DEFAULT アカウントの名前と説明です。その値は, 表 7-8 にリストされています。 /EXPIRATION 修飾子についても, 表 7-9 で説明しています。
アカウント | 説明 |
---|---|
AST キュー制限 (ASTlm) | 次の合計を制限する。
この制限は,引数として AST アドレスを取るすべてのシステム・サービスとスケジュール・ウェイクアップ・($SCHDWK) システム・サービスに影響する。 書き込み延期オプション (DFW) が有効な場合,ファイル 1 つあたりに使用される AST 数は,1 にレコード・ストリーム数とマルチバッファ数を加えた値になる。それ以外の場合は,1 にレコード・ストリーム数を加えた値である。 |
入出力バッファリング回数制限 (BIOlm) | ユーザのプロセスに許される未解決の入出力バッファリング回数を制限する。
入出力バッファリングでは,プロセス指定のバッファではなく,システム・プールの中間バッファからデータ転送が行われる。ユーザのプロセスおけるバッファリング処理とは,ターミナル入出力やファイル・システムとネットワーク入出力,カード・リーダ入力,スプールなしプリンタ出力などの処理である。入出力のバッファリング中,プロセス指定のバッファを保持するメモリ・ページをロックする必要はない。 |
入出力バイト数制限 (Bytlm) | ユーザのプロセスが使用可能なバッファ空間量を制限する。
このバッファ空間は,入出力バッファリングと一時メールボックスの作成に使用される。BYTLM はまた,セグメント化ウィンドウ (またはカテドラル・ウィンドウ) としてユーザが作成可能なマッピング・ウィンドウ数も制限する。 カテドラル・ウィンドウは特に,大きなファイルを読み取るときに生じるオーバヘッドを抑える上で役立つ。 |
CPU 時間制限 (CPU) | ユーザのプロセスが 1 セッションあたりに使用可能な CPU 時間の長さを制限する。
時間の指定は, hh:mm:ss.cc の短縮デルタ形式で行う。 CPU は,差し引き可能な制限値で,通常の推奨値は 0 (制限なし) である。しかし,この値が適用されるのは,ユーザ・プロセスのインスタンスだけか,その他のインスタンスである。CPUTIME が複数のセッションや複数のバッチ・ジョブにまたがって累積されることはない。 |
直接入出力回数制限 (DIOlm) | ユーザのプロセスに許される未解決の直接入出力回数を制限する。
直接入出力処理では,プロセス指定のバッファから直接データ転送が行われる。一般的に,ユーザのプロセスおける直接入出力処理とは,ディスクやテープに対する入出力処理である。直接入出力中,オペレーティング・システムは,プロセス指定のバッファを保持するメモリ・ページをロックする。 DIOlm は差し引き不可制限である。 |
キュー登録クォータ (Enqlm) | プロセスとそのサブプロセスが所有可能なロック数を制限する。 OpenVMS レコード管理サービス (RMS) は,クォータ・ロック管理機能を使って,共用ファイル・アクセス,グローバル・バッファ,レコード・ロックの同期を取る。 RMS は共用ファイル,ローカル・バッファ,グローバル・バッファ・セクション,そして未解決の各レコード・ロックについてロックを 1 つ削除するので,大量の RMS ファイル共用を行うことが予測されるユーザは, Enqlm に大きな値を設定する必要がある。
キュー登録クォータに十分な値を設定せずにプロセスが大規模な RMS ファイル共用を行うと,SS$_EXENQLM エラー・メッセージが出されることがある。また,システムが大規模な RMS ファイル共用を行っていて,LOCKIDTBL システム・パラメータの値が小さすぎる場合には,SS$_NOLOCKID エラー・メッセージが出されることがある。LOCKIDTBL 値を大きくした場合は, RESHASHTBL システム・パラメータ値も大きくする必要がある。詳細は『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照。 共用ファイルの場合,Enqlm 値は 1 ファイル,1 プロセスあたりのロック数に共用ファイルとしてオープンするファイル数をかけた値である。
バージョン 7.1 より前の OpenVMS では,Enqlm の制限値は 32767 であった。 Enqlm を以前の最大値であるこの値に設定すると,内部では,Enqlm の値は自動的にアーキテクチャ上の最大値に合わせられる。その結果として,実際上,プロセスのキュー登録クォータは無制限となるが,特権によってクォータが無視されるようにする必要はない。
省略時のマルチバッファ数は,DCL の SHOW RMS_DEFAULT コマンドを使って確認することができる。 Enqlm はプール型制限である。 |
満了日時 (EXPIRATION) | 満了修飾子は,アカウントの満了日と満了時間を指定する。
/NOEXPIRATION 修飾子は,アカウントの満了日を削除したり,アカウントの満了時間を再設定したりする。 /EXPIRATION 修飾子は,パスワードの満了には影響しない。 |
オープン・ファイル制限 (Fillm) | ユーザのプロセスが一度にオープンすることが可能なファイル数を制限する。この制限には,同時にアクティブにすることが可能なネットワーク論理リンク数も含まれる。
Fillm はプール型制限である。オープンしているファイルごとに少なくとも 96 バイトの Bytlm が必要になる。 |
ジョブ・テーブル・クォータ (JTquota) | ジョブ全体の論理名テーブルを作成するときに適用する初期バイト・クォータを指定する。
JTquota はプール型制限である。 |
最大アカウント・ジョブ制限 (Maxacctjobs) | 1 つのアカウントのユーザ全員の間で一度にアクティブにすることが可能なバッチと会話,独立プロセスの最大数を指定する。
Maxacctjobs はシステム単位の制限である。 |
最大独立プロセス制限 (Maxdetach) | 名前の挙げられたユーザ名を持つ独立プロセスの,1 度にアクティブにできる最大数を指定する。MAXDETACH は,ユーザが持つことのできる仮想ターミナルを制御するためにも使用できる。ユーザに独立プロセスを作成させないためには,キーワード NONE を指定する。省略時には,ユーザには 0 の値が指定されており,これは独立プロセス数が制限されていないことを示す。
Maxdetach はシステム単位の制限である。 |
最大プロセス・ジョブ制限 (Maxjobs) | 名前の挙げられたユーザが 1 度にアクティブにすることができる会話型,バッチ,独立プロセスの最大数を指定する。
Maxjobs はシステム単位の制限である。 |
ファイル・ページング制限 (Pgflquo) | ユーザのプロセスがシステム・ページング・ファイルで使用可能なページ数を制限します。ページング・ファイルとは,メモリ管理によってメモリから強制的に出されたページに一時的なディスク空間を提供するファイルです。 Pgflquo は,仮想アドレス空間作成 ($CRETVA) またはプログラムまたは制御領域拡張 ($EXPREG) システム・サービスを使って作成可能な仮想アドレス空間を総量規制します。
Pgflquo はプール型制限です。 |
サブプロセス作成制限 (Prclm) | ユーザのプロセスが作成可能なサブプロセス数を制限する。
システムにログインしたときに作成されるプロセスはサブプロセスを作成することができる。そうしたすべてのサブプロセスはそれを作成したプロセスのユーザの所有であり,初期プロセスに割り当てられた資源を共用する。 Prclm はプール型制限である。 |
タイマ・キュー・エントリ制限 (TQElm) | 次の合計を制限する。
パーマネント・イベント・フラグ・クラスの作成が,この制限の影響を受けることはない。 タイマ・キュー・エントリは時間依存型のスケジューリングで使用され,共通イベント・フラグは協同動作するプロセスのグループ間の処理の同期に使用される。 TQElm はプール型制限である。 |
省略時のワーキング・セット・サイズ (WSdef) | ユーザのプロセスに対する初期ワーキング・セットの大きさを制限する。
WSdef は差し引き不可制限である。指定値が WSQUO 値を超えている場合は,WSQUO 値の方が使用される。 |
ワーキング・セット超過制限 (WSextent) | ユーザが使用する物理メモリが増えたときに,システムの負荷に関係なくユーザが使用可能な最大メモリ量を指定する。こうした物理メモリの拡大は,ワーキング・セット制限調整 ($ADJWSL) システム・サービスで行うが,通常は,ページ・フォルトが頻発したときに,オペレーティング・システムによって自動的に行われる。
WSextent は差し引き不可制限である。この制限値は,WSQUO 値以上であることが必要。またこの値は,システム・パラメータ WSMAX によって左右される。 PQL_MWSEXTENT が WSextent より大きい場合には, PQL_MWSEXTENT が WSextent のアカウント値を上書きすることに注意。 |
ワーキング・セット・クォータ (WSQUO) | ワーキング・セットのクォータを指定する。これは,ユーザ・プロセスがワーキング・セットにロックすることが可能な最大物理メモリ量である。またこのクォータは,システムがプロセスに確保可能な最大スワップ空間量と,システム単位のメモリ要求が重要になったときにプロセスが消費可能な最大物理メモリ量も表す。このパラメータにより,ユーザには決まったページ数の物理メモリが保証される。 WSQUO の最大値は 64K ページである。
WSQUO は差し引き不可制限である。この制限値は,WSdef 値以上であることが必要。またこの値は,システム・パラメータ WSMAX によって左右される。 |
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