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この節では,OpenVMS 環境で使用できるデバイスの概要を説明します。
1.6.1 大容量記憶デバイス
ディスクや磁気テープなどの大容量記憶デバイスは,ファイルの内容を磁気メディアにセーブします。磁気メディアにセーブされたファイルは,いつでもアクセス,更新,変更,再使用することができます。
1.6.2 レコード単位取り扱いデバイス
ターミナル,プリンタ,メールボックス,カード・リーダなどの
レコード単位取り扱いデバイスは,一度に 1 つの物理データ単位しか読み込んだり
書き込んだりすることができません。データのオンライン記憶デバイスも持ちません。プリンタとカード・リーダは,ユニット・レコード・デバイスとも呼ばれます。
1.6.3 ディスクおよび磁気テープ
頻繁にアクセスされるファイルはディスクや磁気テープに格納されます。ユーザ・ファイル・ディレクトリ (UFD) と省略時のディレクトリ,およびあらゆるファイルとサブディレクトリはディスクに格納されます。ディレクトリ情報が入ったファイル指定は,ファイルがディスクに登録されている場合しか使用できません。磁気テープはディレクトリ構造を持っていません。テープ上に格納されたファイルを取得するには,ファイル情報だけが入ったファイル指定を使用します。
省略時のデバイスにないファイルにアクセスする方法については, 第 5 章 を参照してください。システム全体では使用できないテープやディスク・デバイスを
プライベート・ボリュームといいます。プライベート・ボリュームの使用方法については, 第 12 章 を参照してください。
1.7 論理名
論理名とは,ある文字列または文字列のリストと同じ意味,機能,あるいは値を持つものとして定義された名前のことです。論理名の定義とは,1 つの文字列をある意味を持つ別の文字列 (同値文字列) と同じであると定義することです。同値文字列には通常,完全または部分ファイル指定,別の論理名,あるいはその他の任意の文字列を使用できます。 1 つまたは複数の同値文字列に対して論理名を定義しておけば,その論理名を使用してその同値を表すことができます。たとえば,論理名を省略時のディスクやディレクトリに割り当てることが可能です。論理名は,読みやすさとファイルの独立性の 2 つの働きをします。
第 13 章 では,論理名テーブルについての情報と,論理名の使用法について解説しています。
1.7.1 読みやすさ
頻繁に使用するファイル,ディレクトリ,またはデバイスに,短く分かりやすい論理名を定義することができます。こうした論理名は,完全なファイル指定より覚えやすく,入力も簡単です。使用頻度の高い名前は,ログイン・コマンド・プロシージャの中で定義します。システム上の多くのユーザが頻繁に使用する名前は,システム管理者がサイト別のシステム・スタートアップ・コマンド・プロシージャの中で定義します。
1.7.2 ファイルの独立性
論理名を使用すれば,プログラムやコマンド・プロシージャを物理的なファイル指定を意識せずに扱うことができます。たとえば,あるコマンド・プロシージャに論理名 ACCOUNTS を使おうとする場合,そのコマンド・プロシージャが物理的に存在する場所を含めたファイル指定を ACCOUNTS に定義しておけば,以後,物理的な格納場所などを意識せず,単に ACCOUNTS を使用するだけでコマンド・プロシージャを実行できます。
1.8 シンボル
シンボルは,数値,文字,論理値を表す名前です。 DCL コマンド行でシンボルを使用すると,DCL は,そのシンボルに割り当てられた値を使用します。シンボルをコマンド行として定義すると,シンボル名を入力するだけで,コマンドを実行できます。
パラメータ,修飾子,または値をいくつも指定しなければならない DCL コマンド行を入力するのは面倒で時間がかかります。 DCL との会話を簡単に,そして時間を節約するためには,頻繁に使用するコマンド名やコマンド文字列全体の代わりに シンボル を設定します。
また,コマンド・プロシージャ内でシンボルを使用して,特定のデータ型を収集したり,格納したり,操作することもできます。
DCL コマンドとコマンド・プロシージャの中でのシンボルの使い方については, 第 14 章 を参照してください。
1.9 コマンド・プロシージャ
コマンド・プロシージャ とは,一連の DCL コマンドが入っているファイルのことです。 1 つか 2 つの DCL コマンドしか入っていない簡単なコマンド・プロシージャもありますが,複雑なコマンド・プロシージャになると,洗練されたコンピュータ・プログラムのような働きをします。コマンド・プロシージャを実行すると,DCL インタプリタはファイルを読み込んで,その中に入っているコマンドを実行します。
1.9.1 システム・ログイン・コマンド・プロシージャ
システム管理者がシステム・ログイン・コマンド・プロシージャ を設定した場合には,ログイン時にそのシステム・ログイン・コマンド・プロシージャが実行されます。ログイン・コマンド・プロシージャを使用すれば,システム管理者は,自分を含むシステム上のすべてのユーザがログインしたときに,必ず特定のコマンドが実行されるように設定できます。
1.9.2 パーソナル・ログイン・コマンド・プロシージャ
システム・ログイン・コマンド・プロシージャを実行した後,システムはパーソナル・ログイン・コマンド・プロシージャを実行します (存在する場合のみ)。パーソナル・ログイン・コマンド・プロシージャは,システム環境をカスタマイズするためのものです。パーソナル・ログイン・コマンド・プロシージャに登録されているコマンドは,ログインするたびに実行されます。つまり,ログイン時には,最大 2 つのログイン・コマンド・プロシージャが自動的に実行されます (システム全体のログイン・コマンド・プロシージャのほかにユーザ独自のログイン・コマンド・プロシージャがある場合はその両方)。
ユーザのアカウントを設定した人が,ユーザの最上位ディレクトリにログイン・コマンド・プロシージャを格納することもあります。ログイン・コマンド・プロシージャが最上位のディレクトリに格納されていない場合には,自分でコマンド・プロシージャを作成し, LOGIN.COM という名前を付け,最上位ディレクトリに格納することもできます。システム管理者が他に指定しないかぎり,ユーザがログインしたとき,そのユーザが作成した LOGIN.COM ファイルが実行されます。 第 15 章 にはパーソナル・ログイン・コマンド・プロシージャのサンプルがあります。
付録 C には,完全なコマンド・プロシージャがいくつかあります。
1.10 レキシカル関数
レキシカル関数は,コマンド行またはコマンド・プロシージャに情報を戻します。戻される情報は,プロセス,システム,ファイルとデバイス,論理名,文字列,データ型に関するものです。レキシカル関数には,接頭辞 F$ が付いています。
レキシカル関数は,通常,シンボルや式を使用するコンテキストの中で使用します。コマンド・プロシージャの中では,論理名を変換したり,文字列処理を行ったり,プロシージャの現在の処理モードを判別したりするのに使用します。
第 17 章 は,レキシカル関数を使って,コマンド・プロシージャの内部での情報の取得や処理をしたりする方法について説明します。
1.11 プロセスとプログラム
プロセスには, 独立プロセス(他のプロセスから独立しているプロセス) と サブプロセス(別のプロセスに従属して存在し,資源を得ているプロセス) があります。メイン・プロセスは親プロセスとも呼ばれ,独立プロセスの 1 つです。
プロセスを使用してシステム・タスクを実行する方法については, 第 18 章 を参照してください。
プログラムは,イメージ または実行可能イメージとも呼ばれ,命令やデータが機械が読み取り可能な形式で入っているファイルのことです。プログラムによっては,DCL コマンドに関連付けられたり, DCL コマンドによって起動されるものもあります。たとえば,DCL の COPY コマンドを入力した場合,システムは SYS$SYSTEM:COPY.EXE というプログラムを実行します。また,DCL の RUN コマンドの後にプログラム名を入力して起動するプログラムもあります。
1.11.1 利用者登録ファイル(UAF)
システムは,プロセス固有の特性を
利用者登録ファイル (UAF) から取得します。 UAF は,システムへアクセスを許可されたユーザをリストして,それぞれのユーザのプロセスの特性を定義します。通常,UAF の管理はシステム管理者が行います。システムは一度に 1 つずつプログラム (イメージまたは実行可能イメージとも呼ぶ) を実行しますが,これらのプログラムはプロセスと呼ばれる環境内で実行されます。
1.11.2 イメージ・ファイルの作成
イメージ・ファイルには,オペレーティング・システムが提供するものと,ユーザが作成するものがあります。通常,イメージ・ファイルのファイル・タイプは .EXE です。イメージ・ファイルは ASCII 文字では構成されていないので, DCL のコマンド TYPE,PRINT,または EDIT によって内容を見ることはできません。一方,テキスト・ファイルは,英字,句読点,数字などの特殊記号を表す標準的な方式である ASCII 文字で構成されています。
プログラムの使い方については, 第 18 章 を参照してください。
1.12 システム・セキュリティ
システムにはそれぞれ,独自のセキュリティに関する要件があります。このため,システムごとに,システム管理者とユーザに対する物理的および ソフトウェア的なセキュリティ要件を示すシステム・セキュリティ方針を明らかにしておく必要があります。オペレーティング・システムで使用可能なセキュリティ機能と,アカウントとシステムのセキュリティを保つために,システム管理者が実行可能なタスクについては,『OpenVMS Guide to System Security』を参照してください。
第 2 章 では,パスワード管理とアカウント・セキュリティを説明します。 第 4 章 と 第 5 章 はユーザが自分のファイルとディレクトリを不当なアクセスから保護する方法を説明します。
1.12.1 保護されたオブジェクト
システム・セキュリティを確実にするために, OpenVMSオペレーティング・システムでは,システムへのアクセスと,共用可能情報を登録したオブジェクトへのアクセスの両方を制御します。デバイスやボリューム,論理名テーブル,ファイル,キューなどのオブジェクトを保護されたオブジェクトと呼びます。保護されたオブジェクトはすべて,誰がそのオブジェクトに特定の方法でアクセスできるかを指定するアクセス条件一覧を定義しています。
第 19 章 では,保護されたオブジェクトへのアクセスの制御や,リモート・システムのデータへのアクセスなど,セキュリティについて一般的に説明します。
本章では,OpenVMS オペレーティング・システムと会話するのに必要な,次の基本的な情報について説明します。
詳細情報については,次のものを参照してください。
OpenVMS オペレーティング・システムへのログイン方法,または OpenVMS オペレーティング・システムからのログアウト方法は,システムの設定によって異なります。本章は,OpenVMS オペレーティング・システムへのログインとオペレーティング・システムからのログアウトについての概論です。個々のシステムに固有な手順については,システム管理者に問い合わせてください。
システムにログインするには,ユーザ名とパスワードの 2 種類の情報が必要です。通常,アカウントを設定して,ユーザにユーザ名とパスワードを与えるのはシステム管理者です ( 第 2.2.1 項 を参照)。
以下にシステムにログインする手順を示します。
手順 | タスク |
---|---|
1 | ターミナルが電源に接続され,電源が投入されていることを確認する。 |
2 | Return キーを押して,ログインしたいことをシステムに知らせる。次のように,ユーザ名を求めるプロンプトが表示される。なお,システムが応答するまで,Return キーを数回押さなければならないこともある。
システムがユーザ名を入力するプロンプトが表示される。
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3 | ユーザ名を入力してから Return を押す。なお,ユーザ名の入力は約 30 秒以内に終える必要がある。 30 秒以上経過すると,「
タイムアウト」となり,ログイン操作を最初からやり直さなくてはならない。
スクリーンに入力したユーザ名が表示される。
続いて,パスワードを要求するプロンプトが表示される。
|
4 | パスワードを入力し,Returnを押す。パスワードは画面に表示されない。このことを"エコーなし"と呼ぶことがある。 |
5 | システム管理者がアカウントをどのように設定したかに応じて,第2パスワードを入力しなければならないことがあり,また,自動的に生成されたパスワードを使用しなければならないことがある ( 第 2.2.4 項 を参照)。 |
ログインが成功すると,画面の左端にドル記号 ($) が表示されます。ドル記号は,デフォルトの DCL プロンプトです。これは,システムが使用可能な状態であることを示します。
次に,ログインの成功例を示します。
[Return] Username: CASEY [Return] Password: [Return] Welcome to OpenVMS on node MARS Last interactive login on Friday, 11-DEC-1996 08:41 Last non-interactive login on Thursday, 10-DEC-1996 11:05 $ |
ユーザ名やパスワードの入力を間違えたり,パスワードの期限が満了していると,
User authorization failureというメッセージが表示されて,ログインできません。入力を間違えた場合には,Return を押して,もう一度入力してください。パスワードの期限が満了している場合には,パスワードを変更しなければなりません。このため,Set Password: プロンプトが自動的に表示されます。この場合のパスワードの変更についての説明は
第 2.6 節 を参照してください。ログインに関して他に問題がある場合には,使用しているアカウントの設定者にご相談ください。
2.2 アカウントのパスワードの選択
安全なパスワードを選択するには,次のガイドラインに従ってください。
システム管理者やセキュリティ管理者は,たとえば10文字未満のパスワードや,パスワードの反復を禁止するなど,それ以外に制約を設定することもできます。
次の表は,安全なパスワードと危険性の高いパスワード (他人が簡単に推測できるパスワード) の例を示しています。
安全なパスワード | 危険なパスワード |
---|---|
意味のないつづり:
aladaskgam eojfuvcue joxtyois |
個人的な関わりの強い言葉:
自分の名前 恋人の名前 ペットの名前 住んでいる町の名前 自分の自動車の名前 |
混合文字列:
492_weid $924spa zu_$rags |
仕事に関連する用語:
会社名 特殊プロジェクト名 作業グループ名 |
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