本書は,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS の日本語処理機能について説明します。
改訂情報: 改訂版
オペレーティング・システム: 日本語 OpenVMS VAX V7.1, V7.2
日本語 OpenVMS Alpha V7.1, V7.2-1
ソフトウェア・バージョン: 日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS V5.1
© Compaq Computer K.K. 2001 All rights reserved.
HPおよびHewlett-Packardは米国Hewlett-Packard社の商標です。
IBMおよび OS/2 は米国International Business Machines社の商標です。
MS-DOS は米国 Microsoft 社の商標です。
OSF/1はOpen Software Foundation社の商標です。
PostScriptおよびポストスクリプトは日本ならびに各国で登録されたアドビシステムズ社の商標です。
Sun,NFS,PC-NFS は米国Sun Microsystems社の商標です。
UNIXはX/Openカンパニーリミテッドがライセンスしている米国ならびに他の国における登録商標です。
本書で記載するその他の会社名または製品名は,各社の商標または登録商標です。
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日本語 OpenVMS では,日本語(漢字)の符号化に関して DEC 漢字が使われていますが,各社のコンピュータ上での日本語(漢字) の符号化にはシフト JIS,日本語 EUC, JIS 7 ビットなどさまざまな符号化方法が使用されているのが現状です。 TCP/IPに基づいたマルチベンダ環境のコンピュータ・ネットワークを構築する場合,これらの符号化方法の違いを考慮する必要があります。
たとえば SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)では, 8 ビット・データの送信が保証されていません。そのため多くの場合,ISO 2022 に基づいた JIS 7 ビット符号化が使用され, 8 ビット構成の DEC 漢字をそのままメール・メッセージとして送信しても正しく届けられません。同様に,SMTP でメールを受信する場合も,JIS 7 ビットのままで受信したメール・メッセージは,日本語OpenVMS上では,正しく表示されません。
また,シフト JIS を採用しているシステムへ OpenVMS から TELNET によりリモート・ログインを行った場合,漢字文字が正しく表示されません。
日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では,このような場合に起こる不都合を解決する手段として,DEC 漢字以外の日本語(漢字) コードからDEC 漢字への変換,およびその逆の変換を行うフィルタ機能を提供します (本書では,DEC 漢字は SS2 付きの半角カタカナを含む SuperDEC 漢字のことを指します)。以下のTCP/IPアプリケーションにおいて,これらの変換を行うためのフィルタが設定できます。
この機能により,前述したTCP/IP ネットワーク環境における日本語(漢字)の符号化にともなう問題点に対処することができます。
これらの TCP/IP アプリケーションにおけるフィルタの利用例を以下に示します。
図 1-1 :TELNET の場合
図 1-1 TELNET の場合
図 1-2 :FTP 送信の場合
図 1-2 FTP 送信の場合
図 1-3 :FTP 受信の場合
図 1-3 FTP 受信の場合
図 1-4 :SMTP 送信の場合
図 1-4 SMTP 送信の場合
図 1-5 :SMTP 受信の場合
図 1-5 SMTP 受信の場合
図 1-6 :リモート・プリント送信の場合
図 1-6 リモート・プリント送信の場合
図 1-7 :リモート・プリント受信の場合
図 1-7 リモート・プリント受信の場合
1.2 標準で提供される漢字フィルタの構成と種類
日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では, FTP,TELNET,SMTP,リモート・プリントそれぞれのユーティリティに対して,以下の構成で漢字フィルタの設定が可能です。
表 1-1 :漢字フィルタの設定
サービス | クライアント | サーバ |
---|---|---|
FTP | ○ | ○ |
TELNET | ○ | × |
SMTP | ○ | ○ |
リモート・プリント | ○ | ○ |
以下の漢字フィルタが標準で提供されています。これらのフィルタの詳細な仕様については, 第 4 章 を参照してください。
表 1-2 :標準で提供される漢字フィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
ユーザが必要に応じて,独自のフィルタ・ルーチンを作成して使用することも可能です。この方法については, 第 3 章 を参照してください。
また日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では, ANET+で用いられている漢字フィルタを使用することも可能です。この方法についても 第 3 章 を参照してください。
ANET+ は,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS と同様に OpenVMS 上で TCP/IP の通信プロトコルに基づいたサービスを提供するソフトウェアで,従来より弊社が開発,および販売しています。 |
FTP クライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。
UNIX 形式のコマンドを用いる場合
(UNIX 形式のコマンドの使用方法については,『 DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。)
$ FTP/FILTER=フィルタ名
または
FTP> filter [フィルタ名]
OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合
$ FTP/FILTER=フィルタ名
または
FTP> set filter フィルタ名
論理名を用いる場合
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名
設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。
UNIX 形式のコマンドを用いる場合
FTP> status
OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合
FTP> show status
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-1 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
FTP サーバでのフィルタの指定は,FTPのプロトコルで定義されている "QUOTE"と "SITE"コマンドを使用してリモートの FTP クライアントから行います。以下に,設定例を示しますが,ユーザの使用するコマンドの形式は,クライアント・システムにより,異なる場合もありますのでご注意ください。
なお,FTP サーバでは論理名でフィルタを指定することはできません。
ftp> quote "site filter フィルタ名"
設定したフィルタを解除するには,次のようにフィルタ名を指定せずに SITE FILTER コマンドを実行します。
ftp> quote "site filter"
FTP では,バイナリ・モードのときには FILTER の指定を無視します。 |
TELNETクライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。
コマンドでの指定は以下のようになります。
$ TELNET/FILTER=フィルタ名
または
TELNET> CONNECT/FILTER=フィルタ名
論理名での指定は以下のようになります。
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER フィルタ名
TELNETクライアントでは,サーバ(リモート・ノード)からクライアント(自ノード)方向の転送のみにフィルタ機能が提供されます。また,TELNETサーバとしては,フィルタ設定はできません。あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-2 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
フィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。
TELNET> status
または
TELNET> show status
マルチセッションの場合, "$ TELNET/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは最初のセッションのみに有効で, "TELNET> CONNECT/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは,そのセッションのみに有効です。 マルチセッションの詳細に関しては,『 DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。 |
SMTPでは以下のように,TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。
形式 :
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER フィルタ名 |
SMTP受信フィルタの設定は,システム(/SYSTEM)論理名定義で行います。個別ユーザの設定は行えません。SMTP送信フィルタの設定は,/SYSTEM で定義された設定が全てのユーザに適用されますが,各ユーザが個別に(プロセス) 論理名を定義すれば,そのフィルタ設定が有効となります。
SMTP で漢字フィルタを使用する場合,以下のことに注意してください。
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-3 : 標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
2.4 リモート・プリントでの漢字フィルタ使用方法
リモート・プリント・クライアントで漢字フィルタを使用するには TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。PRINTCAPファイルの設定方法については,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。
:kf=フィルタ名 |
この時,以下のように,PRINTコマンドの中にフィルタの指定がある場合は,指定されたフィルタが優先的に選択されます。
$ PRINT/PARAMETER=(FILTER=フィルタ名)
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-4 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は, 第 4 章 を参照してください。
リモート・プリント・サーバで漢字フィルタを使用する場合,同様に TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。この場合は,リモート・ノードからのフィルタ設定の変更はできません。
:kf=フィルタ名 |
COPY コマンドを用いて FTP を行う場合,以下のように TCPIP$FTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,COPY コマンドでは, /FILTER 修飾子は指定できません。
形式:
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名 |
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
2.6 SET HOST/TELNET での漢字フィルタの使用方法
SET HOST コマンドを用いて TELNET を行う場合,以下のように TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,SET HOST コマンドでは /FILTER 修飾子は指定できません。
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
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