OpenVMS
システム管理者マニュアル


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27.14 XA Gateway の使用 (Alpha のみ)

DECdtm/XA は,XA を使用するトランザクションを調整し,管理するためのサポートを提供します。XA Gateway を使用することにより, DECdtm/XA は,他のトランザクション・マネージャ (TM) によって管理されるトランザクション内の他のリソース・マネージャ (RM) を参加させることができます。このセクションでは,DECdtm XA Gateway サポートを設定し,使用する方法について説明します。

注意

本章では, XA SpecificationDistributed Transaction Processing: The XA Specification を意味します。

DECdtm/XA を使用し,DECdtm/XA サービスのスタートアップおよびシャットダウンが確実に正しく実行されるようにするには,以下のファイルを起動する必要があります。

コマンド @SYS$STARTUP:DDTM$XA_STARTUP.COM を,スタートアップ・データベースまたはコマンド・ファイル SYS$MANAGER:SYSTARTUP_VMS.COM に追加します。

コマンド @SYS$STARTUP:DDTM$XA_SHUTDOWN.COM をコマンド・ファイル SYS$MANAGER:SYSHUTDWN.COM 2追加します。

以下の手順を実行して, DECdtm XA サービスが正しく実行されていることを確認します。

  1. XGCP ユーティリティを使用して,ローカルの OpenVMS ノードと同じ名前のゲートウェイ・ログ・ファイルを作成する。詳細は, 第 27.14.1 項 および『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照。

  2. SYS$TEST:DECDTM_XG_IVP.EXE を実行する。

  3. XGCP ユーティリティを使用して,ゲートウェイ・サーバを終了し,再起動する。ゲートウェイにローカルの OpenVMS ノードと異なる名前をつけて設定する場合には,この手順が必須である。XGCP ユーティリティについての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照。

27.14.1 ゲートウェイの設定

XA Gateway は,XA 対応のリソース・マネージャとして,各トランザクション処理 (TP) プロセスに設定されます。 XA Gateway は XA トランザクション・マネージャ (TM) からの XA 呼び出しを処理し,これらの呼び出しを DECdtm システム・サービスの呼び出しにマップします。これにより,DECdtm は,1 つの TP プロセスで使用されるどの DECdtm 対応のリソース・マネージャ (RM) に対しても,正しいイベントを送信できるようになります。

XA Gateway の操作は,RM からは透過的です。このため, DECdtm の RM は,何も変更することなく XA Gateway で使用することができます。

XA Gateway では,ログ・ファイルを使用して, XA のトランザクションと DECdtm のトランザクションとのマッピングを記録します。このログ・ファイルは,ゲートウェイ・サーバ・プロセス DDTM$XG_SERVER によって管理されます。

ゲートウェイ・ログ・ファイルは,XGCP ユーティリティを使用して作成します ( 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照)。ゲートウェイ・ログ・ファイルのサイズは,同時にアクティブになっているトランザクションの数によって決まります。サイズは,XA TM が使用するトランザクション ID (TID) のサイズによって異なりますが,アクティブな各トランザクションごとに,最大で 600 バイトが必要です。このゲートウェイ・ログ・ファイルは,必要に応じて自動的に拡張されます。

ゲートウェイ・ログ・ファイルは,論理名 SYS$JOURNAL によって指定されたディレクトリに常駐し,フォームの名前は SYSTEM$name.DDTM$XG_JOURNAL になります。性能の最適化のために,各ゲートウェイ・ログ・ファイルおよび DECdtm ログ・ファイルを,個別の物理装置に移動し,物理装置のセットに対する検索リストとして SYS$JOURNAL を定義します。

XA Gateway では,各 OpenVMS Cluster ノードごとに, XA トランザクション・マネージャと XA Gateway ログ・ファイルとの間に関連付けが必要です。この関連付けは,ゲートウェイ名を以下のように指定することによって管理されます。

同じローカル・ノードで実行されるすべての XA アプリケーションは,同じゲートウェイ名を使用して設定する必要があります。同じ名前を使用している複数の XA アプリケーションを,他の OpenVMS Cluster ノードで実行することはできません。したがって,通常は OpenVMS Cluster の各ノードごとに, 1 つのゲートウェイ名を定義し, 1 つのゲートウェイ・ログ・ファイルを作成します。

ゲートウェイ名の関連付けを変更して,ゲートウェイ名を別の OpenVMS Cluster ノードに結び付けることができます。ただし,そのノードがゲートウェイ・ログ・ファイルにアクセスできることが必要条件です。ゲートウェイ名の関連付けを変更するには,以下の手順を実行します。

  1. 元のノードで実行中のすべての XA アプリケーションを終了する。

  2. XGCP ユーティリティを使用して,元のノードで実行中のゲートウェイ・サーバを終了する。

  3. 新しいノードで実行中のすべての XA アプリケーションを終了する。

  4. 新しいノードで実行中のゲートウェイ・サーバを終了し,ゲートウェイを再起動する。

  5. 新しいノードで,元の XA アプリケーションを実行する。

注意

ゲートウェイ・ログ・ファイルを損失から保護するため,常駐している装置のシャドウイングを実行するなどの対策を講じる必要があります。新しいログ・ファイルを生成したり,古いログ・ファイルを使用したりすると,元の記録ではすでにコミットしたことになっているトランザクションが,間違ってロール・バックされる可能性があります。これは,データベースの間で相互に一貫性が失われたり,他のシステムまたはユーザに送信されるレポートとの一貫性が失われたりする原因になります。

ゲートウェイ・ログ・ファイルはサイズが大きいので,できるだけ削除しないようにしてください。不要なゲートウェイ・ログ・ファイルをどうしても削除する場合には,まず DECdtm XGCP ユーティリティを使用して,このゲートウェイがもうどの用意されたトランザクションの参加者にもなっていないことを確認します。このゲートウェイの参加者名は DDTM$XG/name です。

ゲートウェイ・サーバは,以下のシステム論理名を使用します。


第 28 章
特殊処理環境の管理

OpenVMS オペレーティング・システムは以下の特殊環境をサポートします。

本章では,これらの特殊処理環境の設定と管理について説明します。

本章の内容

本章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
マルチプロセッシング環境の作成 第 28.2.1 項
マルチプロセッシング環境の監視 第 28.2.2 項
+ ベクタ処理サポート・コードのロード 第 28.4.1 項
+ ベクタ処理システムの構成 第 28.4.2 項
+ ベクタ・プロセスの管理 第 28.4.3 項
+ACL によるベクタ・プロセッサへのアクセス制限 第 28.4.4 項
+ ベクタ処理システムに関する情報の入手 第 28.4.5 項
+VAX ベクタ命令エミュレーション機能 (VVIEF) のロード 第 28.4.6 項


+VAX のみ

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
対称型マルチプロセッシング 第 28.1 節
1次プロセッサと2次プロセッサ 第 28.1.1 項
アベイラブル・セットとアクティブ・セット 第 28.1.2 項
ベクタ処理 第 28.3 節
+VAX におけるベクタ処理のサポート 第 28.3.1 項
+VAX ベクタ命令エミュレーション機能 (VVIEF) 第 28.3.2 項


+VAX のみ

28.1 マルチプロセッシングについて

マルチプロセッシング・システムは,メモリの共通プールにアドレスして同時に命令を実行することが可能な 2 つ以上の CPU から構成されます。

OpenVMS オペレーティング・システムは密結合対称型マルチプロセッシング (SMP) システムをサポートします。密結合 SMP システムでは,すべてのプロセッサがオペレーティング・システムの単一のコピーを実行し,すべてのオペレーティング・システム・コードとシステム資源に対する等しいアクセス権を持っています。 OpenVMS SMP は,プロセス優先権に基づいてプロセスが実行される CPU を動的に選択します。

マルチプロセッシング・システムは,独立したシステム,ネットワーク上のノード,または OpenVMS Cluster を構成するメンバとして機能することができます。マルチプロセッシング・システムおよびユニプロセッシング・システムは,同じオペレーティング・システムを実行します。ただし,マルチプロセッシングは特定の VAX および Alpha プロセッサ上でしか行うことができません。 1 つのマルチプロセッシング環境を構成するすべてのプロセッサのハードウェアとファームウェアは同じレベルであることが必要です。これは,特定のプロセッサから,システム上の別のプロセッサで実行されていたプロセスの実行スレッドを再開できるようにするためです。

28.1.1 1次プロセッサと2次プロセッサ

マルチプロセッシング・システムでは,コンソール・デバイスに論理的または物理的に付加された 1 つのプロセッサがシステム内の他のプロセッサの起動を担当します。そのようなプロセッサを1次プロセッサ と呼びます。 1次プロセッサ自身は,マルチプロセッシング・システムをブートするコンソール・コマンドのターゲットとなります。1次プロセッサは,システム全体のオペレーティング・システム環境の定義やメモリの準備のための初期化を単独で行います。さらに,1次プロセッサはシステム内の計時を担当し,システム時間の管理,およびタイマ・キューに登録された各要素がタイムアウトになっていないかどうかの監視を行います。一方,マルチプロセッシング・システム内のこれらの役割を持たないプロセッサを2次プロセッサと呼びます。

28.1.2 アベイラブル・セットとアクティブ・セット

システムのハードウェア電源投入時の診断テストにパスしたプロセッサの集合をアベイラブル・セットと呼んでいます。このとき,各プロセッサがシステムに対してアクティブに関与しているかどうかは問題にされません。 1次プロセッサと2次プロセッサは,マルチプロセッシング・システムのアクティブ・セットから構成されます。

アクティブ・セットとは, VAX または Alpha システムを構成するプロセッサのうち,電源投入時の診断テストにパスし,システム動作にアクティブに関与しているプロセッサの集合をいいます。オペレーティング・システムはこれらのセットに含まれる各プロセッサを CPU ID で識別します。 CPU ID の値は,DCL やユーティリティの特定のコマンドの構文や表示の中に頻繁に現れます。

28.1.3 プロセッサの機能

マルチプロセッシング・システムはシステム上で実行中のプロセスに特定の機能を提供します。次の機能がサポートされています。

さらに,他の機能を追加したり,削除したりするメカニズムもあります。

実行機能は,CPU の開始動作と停止動作に影響します。

28.2 対称型マルチプロセッシング (SMP) 環境の管理

対称型マルチプロセッシング・システム(SMP)の管理には,マルチプロセッシング環境の作成と監視があります。

28.2.1 マルチプロセッシング環境の作成

マルチプロセッシング・システムの構成要素と特性は,適切なシステム・パラメータを設定することによって,システムのブート時に制御できます。マルチプロセッシング・システムを管理するシステム・パラメータには以下のものがあります。

パラメータ 機能
MULTIPROCESSING ブート時にオペレーティング・システムにロードする同期イメージを決定する。
SMP_CPUS ブート時に,アベイラブル・セットからマルチプロセッシング環境に追加するプロセッサを決定する。

以上のようなシステム・パラメータについては,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。

ブート時に,アベイラブル・セットの中のプロセッサをアクティブ・セットに追加することができます。また,DCL の START/CPU コマンドを使用すれば,ブート後にプロセッサの追加を行うことができます。アクティブ・セットからプロセッサを削除するときには, DCL の STOP/CPU コマンドを使用します。

SMP Extension License

Alpha システムでは,SMP システムを使用している場合には, SMP Extension Licenseを登録する必要があります。このライセンスは Operating System Base License および全 Interactive User ライセンスをアップグレードして,システムのマルチプロセッシング・レベルに合わせます。

SMP Extension License は,既存の Base ライセンスおよび User ライセンスがユニプロセッシング・レベルで提供するすべての権利を付与するので,マルチプロセッシング・システムにアップグレードする際に,これらのライセンスを再インストールする必要はありません。システムを新しいマルチプロセッシング・レベルにアップグレードする場合には,既存のライセンスに SMP Extension License を追加してください。

28.2.2 マルチプロセッシング環境の監視

オペレーティング・システムのいくつかの機能により,マルチプロセッサ・システムの特性,能力,および状態に関する特別な情報を入手することができます。これらを可能にするものには, DCL の SHOW CPU コマンド,MONITOR ユーティリティなどがあります。

マルチプロセッサ構成に関する情報の入手

SHOW CPU コマンドにより,マルチプロセッシング・システムの構成および状態を示す 3 つのレベルの情報が表示されます。

レベル コマンドの例 表示内容
要約 SHOW CPU 1次プロセッサ,システム構成に加えられているプロセッサ,アクティブなプロセッサを示し,システム内のプロセッサの最低リビジョン・レベルとシステム・パラメータ MULTIPROCESSING の設定内容を表示する。また,マルチプロセッシング環境が使用可能になっているかどうかが示される。
簡易 SHOW CPU/BRIEF 要約レベルの情報から抽出される。構成に追加されている各プロセッサの現在の CPU の状態と,現在稼働中のプロセスがあればその状態を示す。
詳細 SHOW CPU/FULL 要約レベルおよび追加の情報から抽出される。構成に追加されている各プロセッサの現在の CPU の状態,現在稼働中のプロセスがあればその状態,リビジョン・レベル,および能力を示す。また,特定のプロセッサ上でしか実行できないプロセスを示す。

SMP に関連する DCL のコマンドについては,『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。 MONITOR ユーティリティについては,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の MONITOR のパートを参照してください。


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