この章では日本語EVEとそれを構成するDEC XTPUの概要について説明します。
日本語EVE (Japanese Extensible Versatile Editor)は, 日本語OpenVMSオペレーティング・システム上で動く対話型のテキスト・エディタです。 日本語EVEは,手紙やレポートなど, いろいろな種類のファイルを編集できるだけでなく, プログラミング言語の編集などにも使えます。
日本語EVEを使えば,新しいテキスト・ファイルの作成や, すでに存在するテキスト・ファイルの編集などを簡単に行うことができます。 また,日本語EVEは対話型エディタですから, テキスト・ファイルの内容を画面で見ながら編集できます。
DECTPU (DEC Text Processing Utility)は, 高性能のプログラム可能なテキスト処理ユーティリティです。 DEC XTPU (DEC eXtended Text Processing Utility)は, DECTPUに複数コードセットを扱う機能を拡張した, 新しいテキスト処理ユーティリティです。日本語EVEは, DEC XTPUを用いて作成されています。
DEC XTPUのセクション・ファイルの形式は DECTPU (VAXTPU)や日本語VAXTPUと異なっています。このため, DECTPU (VAXTPU)または日本語VAXTPUで作られたセクション・ファイルを, DEC XTPUで使うことはできません。
DEC XTPUのコマンド・ファイルの仕様はDECTPUの上位互換となっていますが, DEC XTPUの拡張のため,期待と異なる動作をすることがあります。また, 日本語VAXTPU用のコマンド・ファイルは使用できません。
日本語EVEは,ユーザが容易に効率よくテキストの編集を行えるように, いろいろな機能を備えています。
2つのテキスト入力モードがあります。 入力モードは編集セッション中に自由に切り替えることができます (第2.3節を参照)。
オンライン・ヘルプ機能が提供されていますので,作業を中断せずに, 編集コマンドに関する情報を表示できます (第7.3節を参照)。
画面を分割することにより,2つ以上のウィンドウを1画面に表示できるので, 同一ファイルの異なる場所や,複数のファイルを同時に表示し, 編集することができます (第7.7節を参照)。
DCLバッファを使用して,サブプロセスで日本語OpenVMSのDCLコマンドを実行し, その結果をバッファに得ることができます (第7.9節を参照)。
キーを定義することにより,日本語EVEコマンドのタイプ入力を省略したり, 学習シーケンスと呼ばれる一連のキーストロークを入力できます。 LEARN コマンドを使用すれば,1つのキーを押すだけで, 同じ一連のキーストローク(学習シーケンス)をバッファに何回でも入力できます (第7.8節を参照)。
独自に拡張したインターフェイスを, セクション・ファイルとして保存することで再利用できます。
DECwindowsの環境で日本語EVEを使用できます (『日本語EVE リファレンス・マニュアル』第3章を参照)。
日本語EVEは,漢字を入力するための変換キーパッドとして,EVEJ, JVMS,JEDI,LEIA,TAROの5種類を提供しています。これらは, 日本語EVEの SET KEYPAD コマンド[1]で切り替えることができます。
TAROキーパッドは,"一太郎Ver.3 " [2]の漢字変換キーパッドのエミュレーション・モードです。 このキーパッドを選択すると,[ Ctrl ]キーを使わずに, スペース・バーで漢字変換を行うことができます (第4章を参照)。
変換キーを2度以上続けて押すと,自動的に複数の変換候補が画面の下に表示され, 数字キーによって選択することができます( 第3章,第4章,または 第5章を参照)。
ENTER TANGO コマンドを使って, 個人辞書に単語とその読みを登録できます。 個人名や地名などを変換したいときに便利です。 登録した単語を辞書から削除するには,DELETE TANGO コマンドを使います。
記号の入力には,KIGOU コマンドを使います。TAROキーパッドの場合は, [ F10 ]キーで記号モードにはいれます。
DRAW KEISEN コマンドを実行すると,罫線モードにはいります。
SET CONVERSON DYNAMIC コマンドを実行すると, 変換キーの定義が動的になり,変換キーは変換対象領域があるときだけ有効になります。
たとえば,EVEJキーパッドの場合,[ Ctrl/H ]キーは, 変換対象領域があるときはひらがな変換,ないときは START OF LINE コマンドになります。
SET CONVERSION NN コマンドを実行すると, ローマ字かな変換で" nn "と2つ続くnを"ん"と変換します。
HENKAN MODE [ON|OFF|TOGGLE|ROTATE] コマンドによって, 変換モードを切り替えることができます。TAROキーパッドの[ F10 ]キーには, HENKAN MODE ROTATE コマンドが定義してあります。
入力中の変換対象文字列を,矢印キー([→],[←]),<X] キーで 編集することができます。また,エコー・モードと同じ変換操作をしたあと (たとえば,ASCIIエコーのときに半角変換を行った後)でも編集できます。ただし, この機能は SET CONVERSION DYNAMIC コマンドを実行したときのみ有効です。
日本語とASCII文字が混在しているときに, フリー・カーソル・モードで上下移動しても, カラム位置をできるだけ保持するように動きます (第7.2.1項を参照)。
日本語EVEでは,
の5つのコードセットをサポートしています (第7.14節を参照)。