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A New DesktopとCDE との相違

本付録では,OpenVMS AlphaのNew DesktopとUNIXシステムのCDEとの最も大きな相違点について説明します。OpenVMS Alpha に組み込まれていないいくつかの機能を除いて,New Desktop ではCDE と同様の外観を実現しています( 表 5-1を参照)。

共通する構成要素間の相違点は,主としてオペレーティング・システムの相違によるものです。 たとえば,ファイル名の指定が異なっていますし, New Desktopでは環境変数ではなく論理名を使用しているなどです。

A.1 全般的な相違

ファイル名は必ずOpenVMSのファイル指定方式で表示され,また受け付けられます。 ただし,UNIXパス指定もNew Desktopのあらゆるアプリケーションの入力として使用することができます。 たとえば/sys$manager /login.comは,SYS$MANAGER:LOGIN.COMに相当します。

いくつかのCDEファイルはシンボリック・リンクの使用によって,UNIX システムの複数の場所に現れます。New Desktopでは,ファイルは1ヶ所にしか現れません。アプリケーション専用のディレクトリ階層構造に置かれたアプリケーション専用ファイルに対するシンボリック・ リンクをシステム・ディレクトリに作成するdtappintegrate アプリケーションはありません。新規アプリケーション・ ファイルは,CDE$USER_DEFAULTS:[*...]システム・ディレクトリに置かれる必要があります。

OpenVMSのファイル名は大文字と小文字を区別しません。ファイル名を別のコンテキストで使用する場合, たとえばアクションとアクション(stub) ・ファイルとの対応付けに使用する場合や,パレットや背景の記述リソース名として使用する場合には, 小文字で指定しなければなりません。

A.2 ログイン・マネージャの相違

New Desktopのログイン・プロセスのユーザ・インタフェースはCDEのものと基本的に同じですが,OpenVMS Alpha のログイン・マネージャdtloginの仕様は異なっています。 主な相違は次のとおりです。

New Desktopのログイン・プロセスはXSESSION.COM ファイルを使用してdtsessionプロセスを起動し,New Desktopでは特殊な起動コマンド・ファイルの処理用にCDE$SYSTEM_ DEFAULTS:[BIN.XSESSION_D]ディレクトリを使用します。さらに,New Desktopは各国語対応バージョンを含む標準リソース・ファイル・セットをサポートしています。

A.3 ファイル・マネージャの相違

OpenVMSのファイル・マネージャは,次の部分でUNIXのものとは異なっています。

A.4 印刷に関する相違

New Desktopの印刷機能はCDEの印刷機能とは異なっています。CDEの現在の印刷機能は, 基本部分でUNIXのラインプリンタ・コマンドlp(1)とラインプリンタ・ デーモンlpd(8)に大きく依存しています。CDEの印刷環境は標準化されていないため, この種のオペレーティング・システム固有の仕様をOpenVMS Alpha に移植するのは実用的ではありません。

OpenVMS Alphaでは,New Desktopの印刷環境は[印刷ダイアログ]という新しいアプリケーションで構成されています。 このアプリケーションは,UIL (ユーザ・インタフェース言語)とDECwindows印刷ウィジェット (Motif ライブラリのDECWindows拡張機能の一部)を使用して,OpenVMS Alphaの印刷機能を起動できるようになっています。

New Desktopの仕様は異なりますが,印刷機能の使い勝手がCDEを実行するUNIX で印刷する場合と大きく違わないよう,OpenVMS Alphaの印刷機能のCDE への統合を試みました。OpenVMS Alphaでも,ファイル・アイコンをドラッグしてプリンタ・ アイコンにドロップするか,ファイルを選択して[ 印刷ダイアログ]ボックスを選択することによって印刷ジョブを開始し, プリンタをデスクトップ上のオブジェクトとして管理することができるようになりました。

[印刷ダイアログ]の実行可能ファイルは,次のディレクトリに他のNew Desktop実行可能ファイルとともに置かれています。

     CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[BIN]PRINTDIALOG.EXE

A.5 メッセージ交換の相違

New Desktopのメッセージ交換機能はCDE の機能よりも制約があります。UNIXのCDEで同期化している一部の動作は,New Desktop では同期化していなかったり,ユーザによる介入が必要な場合があります。 この制約は次の場合に顕著に現れます。

A.6 プロセス起動の相違

New Desktopで起動されるプロセスの大部分は,アクションに対応する実行文字列(EXEC_STRING) とともにアクションを使用して起動されます。New Desktopでは,これらのEXEC_STRINGは1つの有効なDCLコマンドであることが必要です。 ファイル名で始まる文字列は,フォーリン・コマンド行に自動的に変換されます。

A.7 New DesktopとCDEのディレクトリ構造

この節では,New Desktopのディレクトリ構造とCDE ディレクトリ構造との相違について説明します。

CDEはUNIXシステム用に開発されたもので,New Desktopでオンラインで用意されているCDE関連ドキュメントは,UNIX パス指定を使用します。

A.7.1 システムのデフォルトの構成ディレクトリ

表 A-1は,New Desktopのデフォルト構成ディレクトリに対応するCDEパス指定をまとめたものです。CDE ファイル・システムあるいはディレクトリ階層構造についての詳細は, マニュアル・ページ・ビューアにより表示できるdtfilsys.5 リファレンス・ページを参照してください。

[マニュアル・ページ・ビューア]はアプリケーション・マネージャの[デスクトップ・ アプリケーション]グループにあります。dtfilsys.5を表示させるには, マニュアル・ページ・ビューアを起動して,表示されるプロンプトでdtfilsys.5 を入力してください。

表 A-1 システムのデフォルトの構成ディレクトリ

OpenVMSのディレクトリ名 UNIXのパス指定
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[000000] /usr/dt
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APP-DEFAULTS.lang[1]][2] /usr/dt/app-defaults/<lang>
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APPCONFIG] /usr/dt/appconfig
CDE$SYSTEM_DEFAULTS: -
[APPCONFIG.APPMANAGER.lang[1]]
/usr/dt/appconfig/appmanager
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APPCONFIG.HELP.lang[1]] /usr/dt/appconfig/help
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APPCONFIG.ICONS.lang[1]][3] /usr/dt/appconfig/icons
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APPCONFIG.TYPES.lang[1]] /usr/dt/appconfig/types
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[BACKDROPS] /usr/dt/backdrops[4]
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[BIN] /usr/dt/bin
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[CONFIG] /usr/dt/config
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[CONFIG.lang[1]] /usr/dt/config/<lang>
- /usr/dt/dthelp[5]
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[EXAMPLES] /usr/dt/examples[4]
- /usr/dt/include[5]
DECW$INCLUDE:, DT: /usr/dt/include/Dt[4]
SYS$MANAGER:CDE$STARTUP.COM /usr/dt/install/dec/start.cde.dec
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[LIB] /usr/dt/lib
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[MAN] /usr/dt/man[4]
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[PALETTES] /usr/dt/palettes[4]
- /usr/dt/share[5]

[1] OpenVMSのディレクトリ名やファイル名のlang (または%L)の値, ロケール名の点(.)やアット・マーク(@)は,下線(_)に変換されます。 たとえば,UNIXのja_JP.deckanjiはOpenVMSのJA_JP_DECKANJIのことです。

[2] UNIXのアプリケーション用デフォルト・ファイルにはファイル拡張子がありません。 OpenVMSでは[APP-DEFAULTS]ディレクトリの各アプリケーション用デフォルト・ファイルには, ファイル拡張子.DATが付いています。 たとえば, /usr/dt/app-defaults/C/Dtpad はNew DesktopではCDE$SYSTEM_DEFAULTS:[APP-DEFAULTS.C]DTPAD.DATです。 (これは構成ディレクトリ構造にあるリソース・ファイルには適用されません。)

[3] ファイル名に複数のコンマ(.)がある, アイコンのピックスマップおよびビットマップのファイルは, OpenVMSファイル指定に変換されています。 ファイル名の2番目の点は,New Desktopでは下線になります。 たとえば,sysinfo.l.pmはSYSINFO.L_PMになります。

[4] UNIXシステムではbackdrop ,examples, include, man, palettesの各ディレクトリのファイルのパス指定は, 共有ディレクトリにリンク付けされます。 OpenVMS Alphaシステムでは, 上記と同じファイル用のディレクトリには実際のファイルが入っています。

[5] New Desktopにはこれに対応するディレクトリはありません。

A.7.2 ノードとクラスタの構成ディレクトリ

表 A-2は,システム全体で有効となるようにカスタマイズしたリソース, アプリケーション・デフォルト,構成の各ファイルを入れるシステム管理者が作成するディレクトリをまとめたものです。 対応するUNIXパス指定も記載してあります。

表 A-2 ノードとクラスタの構成ディレクトリ

OpenVMSのディレクトリ名 UNIXのパス指定
CDE$USER_DEFAULTS:[000000] /etc/dt
CDE$USER_DEFAULTS:[APPCONFIG] /etc/dt/appconfig
CDE$USER_DEFAULTS: -
[APPCONFIG.APPMANAGER.lang]
/etc/dt/appconfig/appmanager/<lang>
CDE$USER_DEFAULTS:[APPCONFIG.HELP.lang] /etc/dt/appconfig/help/<lang>
CDE$USER_DEFAULTS:[APPCONFIG.ICONS.lang] /etc/dt/appconfig/icons/<lang>
CDE$USER_DEFAULTS:[APPCONFIG.TYPES.lang] /etc/dt/appconfig/types/<lang>
CDE$USER_DEFAULTS:[BACKDROPS] /etc/dt/backdrops
CDE$USER_DEFAULTS:[CONFIG] /etc/dt/config
CDE$USER_DEFAULTS:[CONFIG.lang] /etc/dt/config/<lang>
CDE$USER_DEFAULTS:[PALETTES] /etc/dt/palettes

A.7.3 ユーザの構成ディレクトリ

表 A-3は,個々のユーザがカスタマイズ設定用に使用するディレクトリをまとめたものです。

表 A-3 ユーザ構成ディレクトリ

OpenVMSのディレクトリ名 UNIXのパス指定
disk$:[user.DT] $HOME/.dt
disk$:[user.DT.APPMANAGER] $HOME/.dt/appmanager
disk$:[user.DT.HELP] $HOME/.dt/help
disk$:[user.DT.ICONS] $HOME/.dt/icons
disk$:[user.DT.PALETTES] $HOME/.dt/palettes
disk$:[user.DT.SESSIONS] $HOME/.dt/sessions
disk$:[user.DT.TMP] $HOME/.dt/tmp
disk$:[user.DT.TYPES] $HOME/.dt/types

A.7.4 フォント・ディレクトリ

表 A-4は, New Desktopのフォント・ディレクトリとこれに対応するUNIXのパス指定をまとめたものです。

表 A-4 フォント・ディレクトリ

OpenVMSのディレクトリ名 UNIXのパス指定
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[CONFIG.XFONTS.JA_JP_DECKANJI.100DPI] /usr/dt/config/xfonts/ja_JP.deckanji/100dpi
CDE$SYSTEM_DEFAULTS:[CONFIG.XFONTS.JA_JP_DECKANJI.75DPI] /usr/dt/config/xfonts/ja_JP.deckanji/75dpi


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