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14 共用メモリとの通信

この章では,次の2つのOpenVMS内部機能について説明します。これらの機能は, 共用メモリを使用して,OpenVMS Galaxyコンピューティング環境のインスタンス間で通信を行います。

14.1 共用メモリ・クラスタ・インターコネクト(SMCI)

共用メモリ・クラスタ・インターコネクト(SMCI)は,Galaxyインスタンス間で通信するためのシステム通信サービス(SCS) ポートです。OpenVMSインスタンスがGalaxy およびOpenVMS Clusterメンバの両方としてブートされると,SMCI ドライバがロードされます。このSCSポート・ドライバは,共用メモリを介して同じGalaxy 内の他のクラスタ・インスタンスと通信します。 この機能は,OpenVMS Galaxyソフトウェア・アーキテクチャが備えている性能向上のための主要な機能の1 つです。共用メモリを介してクラスタ接続された他のインスタンスと通信できる機能は, 従来のクラスタ・インターコネクトより大幅に性能を向上することができます。

14.1.1 SYS$PBDRIVERポート・デバイス

Galaxyおよびクラスタ・メンバの両方としてブートすると,デフォルトでSYS$PBDRIVER がロードされます。このドライバをロードすると,デバイスPBA xが作成されます。ただし,xはGalaxyパーティションID です。他のインスタンスがブートされると,PBAxデバイスも作成されます。SMCI は他のインスタンスをただちに識別し,そのインスタンスへの通信チャネルを作成します。 従来のクラスタ・インターコネクトと異なり, 他のインスタンスと通信するために新しいデバイスが作成されます。 このデバイスにもPBAxという名前が割り当てられます。 ただし,xは,このデバイスの通信相手であるインスタンスのGalaxy パーティションIDです。

たとえば,MILKYとWAYという2つのインスタンスで構成されるOpenVMS Galaxyについて考えてみましょう。MILKYはインスタンス0であり,WAYはインスタンス1 です。ノードMILKYがブートされると,デバイスPBA0が作成されます。 ノードWAYがブートされると,PBA1が作成されます。2つのノードが相互に相手を" 検出"すると,MILKYはWAYと通信するためにPBA1を作成し,WAY はMILKYと通信するためにPBA0を作成します。

                 MILKY                 WAY

                 PBA0:                 PBA1:

                 PBA1:   <------->     PBA0:

14.1.2 1つのGalaxy内の複数のクラスタ

SYS$PBDRIVERは同じGalaxy内で複数のクラスタをサポートできます。この機能は,SYS$PEDRIVER を使用して,同じLANで複数のクラスタがサポートされるのと同じ方法で実現されます。SYS$PEDRIVER で使用されるクラスタ・ グループ番号とパスワードは,同じGalaxyコミュニティ内の異なるクラスタを区別するために,SYS$PBDRIVER でも使用されます。GalaxyインスタンスがLAN を介して他のOpenVMSインスタンスとクラスタ接続もされている場合は, クラスタ・グループ番号はCLUSTER_CONFIGによって適切に設定されます。 現在のクラスタ・グループ番号を判断するには,次のコマンドを実行します。

     $ MCR SYMAN
     SYSMAN> CONFIGURATION SHOW CLUSTER_AUTHORIZATION
     Node: MILKY   Cluster group number: 0
     Multicast address: xx-xx-xx-xx-xx-xx
     SYSMAN>

LANを介してクラスタ接続されていないときに,同じGalaxyコミュニティ内で複数のクラスタを稼動する場合は, クラスタ・グループ番号を設定しなければなりません。 グループ番号とパスワードは,同じクラスタ内のすべてのGalaxy インスタンスで同一でなければなりません。

     $ MCR SYSMAN
     SYSMAN> CONFIGURATION SET
     CLUSTER_AUTHORIZATION/GROUP_NUMBER=222/PASSWORD=xxxx
     SYSMAN>

GalaxyインスタンスがLANを介してクラスタ接続もされている場合は, CLUSTER_CONFIGはクラスタ・グループ番号を質問し,Galaxyインスタンスはこれらのグループ番号を使用します。LAN を介してクラスタ接続されていない場合は, グループ番号のデフォルトは0になります。つまり, Galaxy内のすべてのインスタンスは同じクラスタ内に存在します。

14.1.3 SYS$PBDRIVERのSYSGENパラメータ

ほとんどの場合,SYS$PBDRIVERのデフォルト設定を使用すると適切です。 しかし,いくつかのSYSGENパラメータも準備されています。SMCI_PORTSとSMCI_FLAGS の2つのSYSGENパラメータはSYS$PBDRIVERを制御します。

14.1.3.1 SMCI_PORTS

SMCI_PORTS SYSGENパラメータは,SYS$PBDRIVERの初期ロードを制御します。 このパラメータはビットマスクであり,ビット0〜25はそれぞれコントローラ名を表します。 ビット0がセットされている場合は, PBAxがロードされます。これはデフォルト設定です。ビット1 がセットされている場合は,PBBxがロードされ,以下同様で, ビット25がセットされている場合は,PBZxがロードされます。 OpenVMS Alphaバージョン7.2-1の場合,このパラメータはデフォルト値の1 のままにしておいてください。

追加ポートをロードすると,Galaxyインスタンス間で複数のパスを使用できます。OpenVMS Alpha バージョン7.2-1では,SYS$PBDRIVERは当初,Fast Pathをサポートしないので,複数の通信チャネルを使用しても利点がありません。OpenVMS の将来のリリースでは,SYS$PBDRIVER用にFast Pathがサポートされるようになる予定です。Fast Path がサポートされるようになれば, 複数のCPUが割り当てられたインスタンスは,インスタンス間に複数の通信チャネルを持つことで, スループットを向上できます。

14.1.4 SMCI_FLAGS

SMCI_FLAGS SYSGENパラメータは,SYS$PBDRIVERの動作を制御します。現在定義されているフラグはビット1 だけです。これは,ポート・デバイスがそれ自体との通信をサポートするかどうかを制御します。 それ自体とのSCS 通信をサポートする機能は,主にテストのために使用されます。デフォルト設定では, このビットはオフに設定され,システム・リソースを節約するために, ローカルなSCS通信のサポートは無効になります。このパラメータは動的であり, このビットをオンにすると,SCS仮想サーキットがただちに作成されます。

ビット マスク 説明
0 0 0 =ローカル通信チャネルを作成しない(SYSGENのデフォルト)。ローカルSCS 通信は主にテストで使用され,通常の操作では必要ない。このビットをオフにしておけば, リソースとオーバーヘッドを削減できる。

1 =ローカル通信チャネルを作成する。

1 2 0 = Galaxyおよびクラスタの両方としてブートされた場合は,SYS$PBDRIVER をロードする(SYSGENのデフォルト)。

1 = Galaxyとしてブートされた場合は,SYS$PBDRIVERをロードする。

2 4 0 =必要最低限のコンソール出力(SYSGENのデフォルト)

1 =完全なコンソール出力,SYS$PBDRIVERは,通信チャネルを作成するときと, 通信チャネルを破棄するときに,コンソール・メッセージを表示する。

14.2 LAN共用メモリ・デバイス・ドライバ

OpenVMS Galaxyインスタンス間のローカル・エリア・ネットワーク(LAN) 通信は,イーサネットLAN共用メモリ・ドライバでサポートされます。このLAN ドライバは共用メモリを介して,同じOpenVMS Galaxyシステム内の他のインスタンスと通信します。 共用メモリを介して他のインスタンスと通信すれば, 従来のLANを介した通信より性能を大幅に向上できます。

LAN共用メモリ・ドライバSYS$EBDRIVERをロードするには,次のコマンドを入力します。

     $ MCR SYSMAN
     SYSMAN> IO CONN EBA/DRIVER=SYS$EBDRIVER/NOADAPTER

OpenVMSバージョン7.2-1で,LANプロトコルがこのLANデバイス(EBAn,ただしn はユニット番号)を介して自動的に起動するように設定するには,このドライバをロードするためのプロシージャを構成プロシージャに追加する必要があります。 SYS$MANAGER:SYCONFIG.COM .

LANドライバはEthernet/IEEE 802.3と同じフレーム形式でイーサネットLAN をエミュレートしますが,最大フレーム・サイズは1518から7360バイトに拡大しています。LAN ドライバは標準のOpenVMS QIOおよびVCIインタフェースをアプリケーションに提供します。 既存のQIOおよびVCI LANアプリケーションはすべて, 変更せずに動作するはずです。

将来のリリースでは,SYS$EBDRIVERデバイス・ドライバは自動的にロードされるようになります。


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