前へ | 次へ | 目次 | 索引 |
このサブルーチンは,特定のネットワーク・パスを記述するネットワーク・コンポーネントの方向付きリストを作成します。 SYS$LAVC_DEFINE_NET_PATH が正常終了すると, CLST データ構造が作成されます。1 つのノードがローカル・ノードの場合,このデータ構造は PEDRIVER チャネルに対応付けられます。さらに,リスト内の各ネットワーク・コンポーネントの参照カウントが増分されます。どのノードもローカル・ノードでない場合は, used_for_analysis_status アドレスにエラー状態が格納されます。
SYS$LAVC_DEFINE_NET_PATH サブルーチンは, 表 E-6 に示すように,レジスタ R0 に状態値を返し,ネットワーク・コンポーネント・リストが正しい構造であるかどうかを示します。
状態 | 結果 |
---|---|
Success | used_for_analysis_status の値は,ネットワーク・パスがローカル・ノードでネットワーク分析を実行するのに役立つかどうかを示す。 |
Failure | R0 に返されたエラー状態が SS$_INVCOMPID の場合は, bad_component_id アドレスに,バッファから検出された bad_component_id の値が格納される。 |
SYS$LAVC_DEFINE_NET_PATH は,以下の表に示すエラー状態コードを返すことがあります。
状態コード | 説明 |
---|---|
SS$_ACCVIO | この状態値は,以下の場合に返されることがある。
|
SS$_DEVACTIVE | 分析がすでに実行されている。ネットワーク・コンポーネントおよびネットワーク・コンポーネント・リストを定義する前に, SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS 機能を呼び出すことにより,分析を停止しなければならない。 |
SS$_INSFARG | 指定された引数の数が不足している。 |
SS$_INVCOMPID | バッファに指定されたネットワーク・コンポーネント ID が不正である。 bad_component_id アドレスに,エラーのあるコンポーネント ID が格納される。 |
SS$_INVCOMPLIST | この状態値は以下の場合に返されることがある。
|
SS$_IVBUFLEN | ネットワーク・コンポーネント ID バッファの長さが 16 未満であるか, 4 の倍数でないか,508 より大きい。 |
SS$_RMTPATH | ネットワーク・パスがローカル・ノードに関連付けられていない。この状態は,ローカル・ノードでのネットワーク障害分析で,このパスが必要かどうかを示すためだけに返される。 |
SYS$LAVC_ENABLE_ANALYSIS サブルーチンは,ネットワーク・コンポーネント障害分析を開始します。
例: 以下の例では,SYS$LAVC_ENABLE_ANALYSIS サブルーチンの使い方を示しています。
STATUS = SYS$LAVC_ENABLE_ANALYSIS ( ) |
このサブルーチンは,ネットワーク・コンポーネント障害分析コードを有効にしようとします。少なくとも 1 つのコンポーネント・リストが定義されていれば,分析は有効になります。
SYS$LAVC_ENABLE_ANALYSIS はレジスタ R0 に状態を返します。
E.6.2 エラー・メッセージ
SYS$LAVC_ENABLE_ANALYSIS は,以下の表に示すエラー状態コードを返すことがあります。
状態コード | 説明 |
---|---|
SS$_DEVOFFLINE | PEDRIVER が正しく初期化されていない。ROOT または PORT ブロックが使用できない状態である。 |
SS$_NOCOMPLSTS | ネットワーク接続リストが存在しない。ネットワーク分析が実行できない。 |
SS$_WASSET | ネットワーク・コンポーネント分析がすでに実行中である。 |
SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS サブルーチンは,ネットワーク・コンポーネント障害分析を停止します。
例: 以下の例は SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS の使い方を示しています。
STATUS = SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS ( ) |
このサブルーチンは,ネットワーク・コンポーネント障害分析コードを無効にし,分析が有効に設定されていた場合は,すべてのネットワーク・コンポーネント定義とネットワーク・コンポーネント・リスト・データ構造を非ページング・プールから削除します。
E.7.1 状態
SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS はレジスタ R0 に状態を返します。
E.7.2 エラー・メッセージ
SYS$LAVC_DISABLE_ANALYSIS は,以下の表に示すエラー状態コードを返すことがあります。
状態コード | 説明 |
---|---|
SS$_DEVOFFLINE | PEDRIVER が正しく初期化されていない。ROOT または PORT ブロックが使用できない状態である。 |
SS$_WASCLR | ネットワーク・コンポーネント分析はすでに停止されている。 |
NISCA は,イーサネットおよび FDDI LAN を介して,クラスタ内の他のノードにディスク I/O やロック・メッセージなどのメッセージを伝達するトランスポート・プロトコルです。NISCA という頭字語は, SCA (System Communications Architecture) に従ってイーサネットまたは FDDI ネットワーク・インターコネクト (NI) を実装しているプロトコルのことを示しています。
OpenVMS ソフトウェア・インタフェースは,NISCA プロトコルを使用して,CI ポート・インタフェースをエミュレートします。つまり,データが LAN を介して転送されることを除けば,ソフトウェア・インタフェースは CI バスのインタフェースと同じです。 NISCA プロトコルを使用することにより,OpenVMS Cluster は特殊なハードウェアを必要とせずに,LAN 上で通信を行うことができます。
ここでは,NISCA トランスポート・プロトコルについて説明し,ネットワーク・マネージャがネットワーク関連の問題を突き止めるのに役立つトラブルシューティングの手法についても示します。LAN で発生したハードウェア・コンポーネント障害のトラブルシューティングは, LAN アナライザを使用して行うのが最適なので,この付録では, LAN 分析ツールの機能と設定についても説明します。
改訂した PEDRIVER 固有のトラブルシューティングの追加情報については,本書の次の改訂版に記載される予定です。 |
NISCA プロトコルは,SCA の PPD (Port-to-Port Driver) プロトコルを実装したものです。
F.1.1 SCA プロトコル
第 2 章 で説明したように,SCA は,下位レベルの分散アプリケーション (たとえばデバイス・ドライバ,ファイル・サービス,ネットワーク・マネージャ) に効率のよい通信サービスを提供するソフトウェア・アーキテクチャです。
SCA では,SYSAP (System Applications), SCS (System Communications Services),PPD (Port-to-Port Driver),デバイス・ドライバと LAN アダプタの PI (Physical Interconnect: 物理インターコネクト) も含めて, OpenVMS Cluster システム用に多くのプロトコルが指定されています。 図 F-1 では,SCA アーキテクチャを構成する相互に依存するレベルとして,これらのプロトコルを示しています。 図 F-1 では, NISCA プロトコルは,SCA アーキテクチャの PPD レイヤの特定の実装として示されています。
図 F-1 SCA アーキテクチャのプロトコル
表 F-1 は, 図 F-1 に示した SCA プロトコルの各レベルについて説明しています。
プロトコル | 説明 | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SYSAP | 各ノードで実行されるクラスタ単位のシステム・アプリケーションを表す。これらのシステム・アプリケーションは,ノード間でメッセージを送信するために通信パスを共用する。システム・アプリケーションの例として,ディスク・クラス・ドライバ (DUDRIVER など), MSCP サーバ,接続マネージャなどがある。 | ||||||||||||||||||||||||
SCS | OpenVMS Cluster を中心とした接続を管理し, 仮想サーキットと呼ばれる共通のトランスポートを介して,システム・アプリケーション間のメッセージを多重化する ( 付録 F.1.2 項 を参照)。また,SCS レイヤは,接続で障害が発生したときに,個々のシステム・アプリケーションが適切に応答できるように,各アプリケーションに通知を出す。たとえば, SCS からの通知によって DUDRIVER が起動されてディスクがフェールオーバされたり,クラスタの状態遷移が開始されたりする。 SCS はまた,再接続間隔 (RECNXINTERVAL) の時間のカウントを開始するように,接続マネージャに通知する。 | ||||||||||||||||||||||||
PPD |
OpenVMS Cluster システム内の他のノードにメッセージ配布サービスを提供する。
|
||||||||||||||||||||||||
PI | LAN デバイスへの接続を提供する。PI は,パケットが送受信されるときに使用される LAN ドライバとアダプタを表す。
|
F.1.2 通信のために使用されるパス
NISCA プロトコルは, 表 F-2 で説明しているパス上の通信を制御します。
パス | 説明 |
---|---|
仮想サーキット | 以下の目的で,OpenVMS Cluster 内のノード間の信頼性の高いポート間通信を提供する共通のトランスポート。
各ポートの仮想サーキット記述子テーブルは,そのポート間サーキットの状態を示す。2 つのポート間に仮想サーキットが作成された後,ノード内の SYSAP 間で通信を確立することができる。 |
チャネル | 異なるノードにある 2 つの LAN アダプタ間の論理通信パス。ノード間のチャネルは,2 つ 1 組のアダプタとそれを接続するネットワークによって決定される。たとえば,それぞれ 2 つのアダプタを装備している 2 つのノードは,4 つのチャネルを確立することができる。特定の仮想サーキットによって伝達されたメッセージは,2 つのノードを接続するどのチャネルを介しても送信できる。 |
注意: チャネルと仮想サーキットの相違は,チャネルがデータグラム・サービスのためのパスを提供できるという点にあります。仮想サーキットはチャネルの上の層にあり,ノード間にエラーのないパスを提供します。OpenVMS Cluster では,ノード間に複数のチャネルが存在できますが,仮想サーキットは同時に 2 つのノード間に 1 つしか存在できません。
F.1.3 PEDRIVER
ポート・エミュレータ・ドライバである PEDRIVER は, NISCA プロトコルを実装し,ローカル LAN ポートとリモート LAN ポートの間の通信のためのチャネルを確立し,制御します。
PEDRIVER は,メッセージが順に配布されることを保証するパケット配布サービス (NISCA プロトコルの TR レベル) を実装します。特定の仮想サーキットによって伝達されるメッセージは,2 つのノードを接続するどのチャネルを通じても送信できます。チャネルの選択は,メッセージの送信側 (PEDRIVER) によって決定されます。メッセージを送信するノードは,どのチャネルも選択できるため,受信側の PEDRIVER は,どのチャネルからでもメッセージを受信できる準備をしておかなければなりません。
どの時点でも,TR レベルは特定の仮想サーキットのトラフィックを伝達するために,1 つの "優先チャネル" を使用します。
関連項目: 転送チャネルの選択方法については, 付録 G を参照してください。
前へ | 次へ | 目次 | 索引 |