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日本語 OpenVMS では,漢字プリンタ・ターミナルで日本語を取り扱うために,日本語機能を拡張した漢字プリント・シンビオントを提供します。
2.3.1 漢字プリント・シンビオント
2.3.1.1 漢字プリント・シンビオントの機能
漢字プリント・シンビオントでは,標準版のプリント・シンビオントに加えて以下の機能を追加しています。
以下に各機能について説明します。
ユーザ定義文字の印刷を行います。
漢字プリント・シンビオントは,印刷ファイルの中のユーザ定義文字を印刷可能な形式に変換し,印刷を行います。ユーザ定義文字はフォント管理ユーティリティで定義することができます。フォント管理ユーティリティについては『フォント管理ユーティリティ 利用者の手引き』を参照してください。
行間罫線をサポートしているプリンタでフォームを指定した場合に,位置の補正を行ないます。
JIS X0208 の第 2 水準漢字の ROM を持たないプリンタでは,第 2 水準漢字を印刷可能な形式に変換して印刷を行います。設定は,プリンタ・キューの起動時にシステム論理名テーブルに定義された論理名 JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name を参照することによって行います。 queue-name には,実際のキュー名を設定してください。定義する値は 表 2-1 を参照してください。
自動起動の設定がされているキューの論理名の設定では,論理名 JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name は, SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM で定義してください。 旧論理名は使用できますがサポートされませんので,新論理名をできるだけご使用ください。新旧両論理名を使用した場合は,新論理名が優先されます。 |
装置が DEC 漢字 1978 版の場合,DEC 漢字 1983 版の罫線コードを変換して印刷を行います。設定はプリンタ・キューの起動時に,システム論理名テーブルに定義された論理名 JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name を参照することによって行います。定義する値は 表 2-1 を参照してください。
漢字コード | プリンタのROM第1水準 | プリンタのROM第2水準 |
---|---|---|
JISX0208-1978 | 2 | 1 |
JISX0208-1983 | 設定できません | 01 |
※どの設定値でも拡張漢字のダイナミック・プリローディングと行間罫線のサポートは行います。
2.3.1.2 漢字プリント・シンビオントの種類
漢字プリント・シンビオントは,プリンタの接続方法によって,以下の 2 種類があります。
これらのシンビオントを使用することにより,拡張漢字や第 2 水準漢字 ( ハードウェアにない場合 ) を印字することができます。
2.3.2 LA86,LA88,LA90,LA280,LA380
専用プリント・シンビオントを使用するには,以下の例のように,プリント・キューの初期化の際に指定する必要があります。
専用プリント・シンビオントを使う場合は,対応するターミナル・ラインに対する KANJIGEN での設定は必要ありません。また,プリンタの設定は " オンデマンド・ローディングなし " になっていなければなりません。 |
$ INIT/QUEUE/START/PROC=JSY$PRTSMB/ON=_TTA0: SYS$PRINT
この例では,ホストに直結されたプリンタ (TTA0) 上のプリント・キュー SYS$PRINT で,漢字プリントシンビオントを使用するように初期化しています。
専用シンビオントは,起動時に論理名 JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name を参照し,ハードウェアの漢字コードの版と第 2 水準漢字の有無を調べます。各プリント・キューの起動前 (INIT/QUEUE/START または START/QUEUE の前 ) に,システム論理名テーブルを必ず定義してください。定義する値は 表 2-1 を参照してください。以下にターミナル,フォーム,プリント・キューの一連の設定例を示します。
$ SET TERMINAL _TTA0:/DEVICE=LA90/HOSTSYNCH/NOWRAP - /WIDTH=511/PAGE=0/PERMANENT $ SET DEVICE/SPOOLED=(JSY$PRINT,SYS$SYSDEVICE:) _TTA0: $ DEFINE/FORM LA90_FORM 80/MARGIN=(TOP=0,BOTTOM=0,LEFT=0) - /NOTRUNCATE/NOWRAP/STOCK=DEFAULT/WIDTH=132/LENGTH=66 $ DEFINE/SYSTEM JSY$PRTSMB_HWTYPE_JSY$PRINT 2 ! 第 1 水準のみ,DEC 漢字 1978 版 $ INITIALIZE/QUEUE/START/PROC=JSY$PRTSMB/FORM=LA90_FORM - /ON=_TTA0:/DEFAULT=(FORM=LA90_FORM) JSY$PRINT
この場合,以下の点に注意してください。
2.3.2.1 ホストのシリアルデバイスポートへの接続
ホスト直結のプリンタ(ホストのシリアルデバイスポート)への接続は,次のように行います。
以下の例では装置名 TTA3: に接続されているターミナルのデバイス・タイプを LA84 に設定しています。
$ SET TERMINAL _TTA3:/PERMANENT/NOBROADCAST/NOTYPEAHEAD/NOWRAP - /SPEED=(9600)/WIDTH=(511)/PAGE=(66)/DEVICE=LA84 |
LA86,LA88,LA90,LA280,LA380 のデバイス・タイプにはすべて LA84 を指定してください。 |
以下の例では装置名 TTA3: に接続されているデバイスをスプールド・デバイスとして設定しています。
$ SET DEVICE/SPOOLED=(SYS$PRINT, SYS$SYSDEVICE:) _TTA3: |
以下の例ではフォーム名 LA84_FORM を定義しています。
$ DEFINE/FORM LA84_FORM 80/MARGIN=(TOP=0,BOTTOM=0,LEFT=0) - /NOTRUNCATE/NOWRAP/STOCK=DEFAULT/WIDTH=132/LENGTH=66 |
フォーム名,フォーム番号は他のフォームと重複しないよう割り当ててください。フォームを定義する場合は,以下の修飾子を必ずつけてください。
|
定義値に関しては, 表 2-1 を参照してください。以下の例ではプリンタが第2水準の ROM を持っておらず,かつ DEC 漢字 1978 版の場合の設定をしています。
$ DEFINE/SYSTEM JSY$PRTSMB_HWTYPE_JSY$PRINT 2 |
以下の例ではプリンタ・キュー JSY$PRINT を次のように設定しています。
装置名 : TTA3: プリント・シンビオント : SYS$SYSTEM:JSY$PRTSMB フォーム名 : LA84_FORM |
$ INITIALIZE/QUEUE/START/PROCESSOR=JSY$PRTSMB/ON=_TTA3: - /FORM_MOUNTED=LA84_FORM/DEFAULT=(FORM=LA84_FORM) - JSY$PRINT |
ターミナル・サーバへの接続は,次のように行います。
以下の例ではターミナル・サーバ名 VMSDEV2,ポート名 PORT_2 に接続されているプリンタを装置名 LTA2: として設定しています。 LAT の設定については『 OpenVMS システム管理者マニュアル』を,ターミナル・サーバ名,ポート名の設定方法については,ターミナル・サーバのユーザーズ・ガイド等を参照してください。
$ MCR LATCP CREATE PORT LTA2:/NOLOG $ MCR LATCP SET PORT LTA2:/APPLICATION/NODE=VMSDEV2/PORT=PORT_2 |
以下の例では装置名 LTA3: に接続されているターミナルのデバイス・タイプを LA84 に設定しています。
$ SET TERMINAL _LTA3:/PERMANENT/NOBROADCAST/NOTYPEAHEAD/NOWRAP - /SPEED=(9600)/WIDTH=(511)/PAGE=(66)/DEVICE=LA84 |
LA86,LA88,LA90,LA280,LA380 のデバイス・タイプにはすべて LA84 を指定してください |
以下の例では装置名 LTA2: に接続されているデバイスをスプールド・デバイスとして設定しています。
$ SET DEVICE/SPOOLED=(LAT$PRINT, SYS$SYSDEVICE:) _LTA2: |
以下の例ではフォーム名 LA84_FORM を定義しています。
$ DEFINE/FORM LA84_FORM 80/MARGIN=(TOP=0,BOTTOM=0,LEFT=0) - /NOTRUNCATE/NOWRAP/STOCK=DEFAULT/WIDTH=132/LENGTH=66 |
フォーム名,フォーム番号は他のフォームと重複しないよう割り当ててください。フォームを定義する場合は,以下の修飾子を必ずつけてください。
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定義値に関しては, 表 2-1 を参照してください。以下の例ではプリンタが第 2 水準の ROM を持っておらず,かつ DEC 漢字 1978 版の場合の設定をしています。
$ DEFINE/SYSTEM JSY$PRTSMB_HWTYPE_JSY$PRINT 2 |
以下の例ではプリンタ・キュー LAT$PRINT を次のように設定しています。
装置名: LTA2: プリント・シンビオント: SYS$SYSTEM:JSY$LATSYM フォーム名: LA84_FORM |
$ INITIALIZE/QUEUE/START/PROCESSOR=JSY$LATSYM/ON=_LTA2: - /FORM_MOUNTED=LA84_FORM/DEFAULT=(FORM=LA84_FORM) - LAT$PRINT |
2.3.3 ln03,DEClaser 2300,DEClaser 2400
DEC 漢字 1983 年版の漢字 ROM を持つ LN03, DEClaser 2300 および DEClaser 2400 は KANJIGEN ユーティリティによる設定を行う必 要はありません。 DEC 漢字 1978 年版の漢字 ROM を持つ LN03 に対しては KANJIGEN ユーティリティで使用する漢字コードの設定が必要です。詳しくは,後述の「DEC 漢字 1978 年版漢字ターミナルの追加設定」の項をご覧ください。
プリンタの設定は”オンデマンド・ローディングなし”になっていなければなりません。 |
以下の例を参考にして設定してください。
$ SET TERMINAL TTA0:/DEVICE=LN03 - /HOSTSYNCH/NOWRAP/WIDTH=511/PAGE=0/PERMANENT $ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN ! DEC 漢字 1978 年版 KANJIGEN> SET TTA0:/NOFONT/KCODE_TYPE=DEC78 ! LN03 以外の KANJIGEN> EXIT ! プリンタでは不要 $ SET DEVICE TTA0:/SPOOLED $ DEFINE/FORM LN03_FORM 03 /MARGIN=(TOP=0,BOTTOM=0,LEFT=0) - /NOTRUNCATE/NOWRAP/STOCK=DEFAULT/WIDTH=80/LENGTH=66 $ INITIALIZE/QUEUE/START/TERMINAL/FORM=LN03_FORM - /ON=TTA0:/DEFAULT=(FORM=LN03_FORM) JSY$PRINT
この場合,以下の点に注意してください。
2.4 DEC 漢字 1978 年版漢字ターミナルの追加設定
1978 年版漢字ターミナルは,日本語ユーティリティが使用する 8 区の罫線コードを出力できません。 8 区の罫線を出力するには, KANJIGEN ユーティリティで以下の例のように設定してください。
$ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN KANJIGEN> SET ターミナル名/KCODE_TYPE=DEC78 KANJIGEN> EXIT |
このように設定すると,出力時に 8 区の罫線コードは, DEC 漢字 1978 年版の拡張 94 区の罫線コードに変換されますから,これまでどおり罫線を使用できます。漢字ターミナル以外の場合,および漢字ターミナルをカナ・モードで使用する場合には, "/KCODE_TYPE=DEC78" には 設定しないで ください。
2.5 KANJITERM.COM
JSY$SYSTEM:KANJITERM.COM は SYLOGIN.COM,LOGIN.COM などから使用できるコマンド・プロシージャです。 このコマンド・プロシージャはログインしたビデオ・ターミナルが以下のことをターミナルに問合せ,ビデオ・ターミナルの場合のみ KANJIGEN ユーティリティの SET コマンドを実行します。
したがって,ターミナルを持たないバッチ・ジョブでは KANJITERM.COM は使用できません。
SET コマンドで必ず指定したい修飾子 ( たとえば /PRELOAD など)がある場合はパラメータ (P1) で指定します。
LOGIN.COM などで $ $ @JSY$SYSTEM:KANJITERM $ とします。 拡張漢字 94 区の罫線をプリロードする場合は, パラメータに"/PRELOAD"をつけて $ $ @JSY$SYSTEM:KANJITERM "/PRELOAD" $ とします。
漢字ターミナルの初期設定をシステム起動時に行う場合は,
JSY$SYSTEM:KANJIUP.COM をお持ちの機器構成に合わせて変更してください。このプロシージャは,システムのブート時に
SYS$STARTUP:JSY$STARTUP.COM の中で実行されます。
2.7 その他の設定
日本語 OpenVMS をさらに使いやすくするために,以下のような設定もできます。
DCL の自動フォーリン・コマンド(パス)の機能を利用して JSY$SYSTEM に提供されている KANJIGEN などのユーティリティを,シンボル定義することなく起動することができます。たとえば,次のような論理名を SYS$MANAGER:SYLOGIN.COM または各ユーザの LOGIN.COM で定義します。
$ DEFINE DCL$PATH SYS$SYSTEM,JSY$SYSTEM,SYS$LOGIN,SYS$DISK:[] |
これにより,DCL$PATH で参照されるディレクトリ・パスに存在する実行イメージやコマンド・プロシージャのファイル名のみを入力するだけで,次のように日本語 OpenVMS のユーティリティを起動できます。
$ KANJIGEN |
$ JSY$SWITCH JAPANESE |
DCL$PATH は日本語 OpenVMS V6.2 以上で利用できます。
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