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この章では
ファイルを管理するためには,ファイルやデバイスを認識するための情報をシステムに与える必要があります。ここでは,ファイルを指定する方法について説明します。
関連資料
8.1 ファイル指定の要素と形式
日本語 OpenVMS での完全なファイルの指定は,6 つの要素を次の形式で指定します。
コンピュータ・システムの名前。ノード名の後には :: を付けます。
ネットワークを使って他のコンピュータにアクセスする場合に指定します。同じコンピュータ内での指定には必要ありません。
ファイルが存在するデバイスの名前。デバイス名の後には : を付けます。
ファイルの名前などの情報が登録されているファイル。ファイルを使用目的などによって分類する場合に使用します。ディレクトリ名は [ ] で囲みます。
ファイルの固有名。(通常,ファイルの内容を示す名前。)
ファイルの性質を示します。ファイル・タイプの前にはピリオド(.) を付けます。
ファイル・タイプは任意の名前を付けることができますが,ファイルの性質または用途によって日本語 OpenVMS が自動的に付ける場合があります。たとえば,ディレクトリ・ファイルにはファイル・タイプとして DIR が付けられます。また,ファイル・タイプは省略できます。ファイル・タイプを省略した場合には,あらかじめ決まっているファイル・タイプを指定したとみなされます。
ファイルのバージョンを示します。バージョン番号の前にはセミコロン(;) を付けます。
バージョンは 10 進数で表され,最初に作成したファイルは,バージョン番号が 1 です。
ファイルを更新すると,更新後のファイルにはファイル名,ファイル・タイプが同じで,1 が加算されたバージョン番号が付けられます。ユーザが指定しない場合にはシステムが自動的にバージョン番号を割り当てます。日本語 OpenVMS では,ファイルの変更前の内容と,変更後の内容を同じファイル名とファイル・タイプで別々に保存することができます。
バ
ージョン番号を省略した場合,最大のバージョン番号を指定したとみなされます。
8.2 ファイル指定の規則
ファイル指定には,次の規則があります。
ただし,ハイフン(-)は,最初の文字としては使用できない。
使用できる文字数 | |||
---|---|---|---|
要素 | 英数字(1 バイト) | 日本語(2 バイト) | 例 |
ノード名 | 1 〜 6 文字 | ― | MOON |
デバイス名 | 4 〜 15 文字 | ― | DKA300 |
ディレクトリ名 | 1 〜 39 文字 | 1 〜 118 文字 | REPORT,開発課 |
ファイル名 | 0 〜 39 文字 | 118 文字(ファイル名とファイル・タイプ,区切りのピリオド(.)合わせて) | JAN,山田 |
ファイル・タイプ | 0 〜 39 文字 | 118 文字(ファイル名とファイル・タイプ,区切りのピリオド(.)合わせて) | TXT,書類 |
バージョン番号 | 整数の 1 〜 32767 | ― | 3 |
ファイル指定全体の長さは 252 バイト以内でなければなりません。日本語ファイル名が使える場合は 4096 バイト以内です。
8.3 ファイル指定のデフォルト
ファイル指定の各要素にはデフォルト(省略時の値)が決まっています。ユーザがファイルの指定の一部を省略すると,デフォルトが使用されます。ファイル指定の各要素とデフォルトの内容を 表 8-2 にまとめます。
要素 | デフォルト |
---|---|
ノード名 | ローカル・ノード,つまり使用しているコンピュータ・システム名 |
デバイス名 | ログイン時,または SET DEFAULT コマンドによって指定されたデバイス |
ディレクトリ名 | ログイン時,または SET DEFAULT コマンドによって指定されたディレクトリ名 |
ファイル名 | デフォルトは適用されない |
ファイル・タイプ | DCL コマンドごとに異なる |
バージョン番号 | 一番大きい番号のバージョン |
8.4 現在のデフォルトを参照する -- SHOW DEFAULT
現在のデフォルトを参照するには,次のコマンドを入力します。
$ SHOW DEFAULT |
デフォルトを指定するには,デバイス名 :[ ディレクトリ ] または [ ディレクトリ ] のみを入力します。
$ SET DEFAULT デバイス名:[ディレクトリ] |
現在のデフォルトのデバイス名とディレクトリ名を調べます。
$ SHOW DEFAULT |
デフォルトはデバイス名 DKA0,ディレクトリ名 [YAMADA] です。
DKA0:[YAMADA] |
デフォルトを DKB0:[PROJECT] に変更します。
$ SET DEFAULT DKB0:[PROJECT] |
デフォルト指定を調べます。
$ SHOW DEFAULT |
デフォルトが DKB0:[PROJECT] に変更されました。
DKB0:[PROJECT] |
ワイルドカードは,ファイルやディレクトリの名前に指定できる特別な文字です。ワイルドカードを指定すると,名前のすべての文字列を指定しなくてもファイルやディレクトリを指定することができます。また,複数のファイルやディレクトリを指定する場合,ワイルドカードを使用して簡単に指定することができます。
8.7.1 ワイルドカード文字の種類
ファイルやディレクトリの名前に使用できるワイルドカード文字は,次のとおりです。
文字 | 機能 |
---|---|
* | 文字数や文字の種類に関係なく,任意の 0 文字以上の文字を指定したとみなされる。ディレクトリ名,ファイル名,ファイル・タイプ,バージョン番号に使用できる。 |
% | 1 文字を指定したとみなされる。ディレクトリ名,ファイル名,ファイル・タイプに使用できる。バージョン番号には使用できない。 |
? | 日本語ファイル名の使用が有効な時(第 8.9 節 を参照)のみに使用できる。1 文字を指定したとみなされ,ディレクトリ名,ファイル名,ファイル・タイプに使用できる。バージョン番号には使用できない。 |
たとえば,ディレクトリ [YAMADA.REPORT] に以下のファイルがあるとします。
Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY.TXT;2 DAY.TXT;1 DAY1.TXT;1 DAY2.TXT;15 DAYOFF.TXT;3 PRODUCT.TXT;6 REPORT.LIS;8 REPORT.MEM;8 Total of 8 files. |
ワイルドカードは,次のように使用できます。
DAY.TXT のすべてのバージョンを表示する場合
$ DIRECTORY DAY.TXT;* Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY.TXT;2 DAY.TXT;1 Total of 2 files. |
バージョン番号が 1 であるファイルをすべて表示する場合
$ DIRECTORY *.*;1 Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY.TXT;1 DAY1.TXT;1 Total of 2 files. |
すべてのファイルを表示する場合
$ DIRECTORY *.*;* Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY.TXT;2 DAY.TXT;1 DAY1.TXT;1 DAY2.TXT;15 DAYOFF.TXT;3 PRODUCT.TXT;6 REPORT.LIS;8 REPORT.MEM;8 Total of 8 files. |
ファイル・タイプが TXT であり,ファイル名が DAY で始まり,その後に 1 文字が続くファイルのすべてのバージョンを表示する場合
$ DIRECTORY DAY%.TXT;* Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY1.TXT;1 DAY2.TXT;15 Total of 2 files. |
最初の 3 文字が DAY であるすべてのファイルを表示する場合
$ DIRECTORY DAY*.*;* Directory DKA0:[YAMADA.REPORT] DAY.TXT;2 DAY.TXT;1 DAY1.TXT;1 DAY2.TXT;15 DAYOFF.TXT;3 Total of 5 files. |
ファイル名に日本語(かな漢字)を使用するには,次の 2 つの条件を満たしている必要があります。
ディスクの形式が ODS-5 かどうかは,次のコマンドで調べることができます。
$ SHOW DEVICE <ディスク> /FULL |
Disk TOKYO$DKA100:, device type RZ26, is online, mounted, file-oriented device, shareable, available to cluster, error logging is enabled. Error count 0 Operations completed 16 Owner process "" Owner UIC [SYSTEM] Owner process ID 00000000 Dev Prot S:RWPL,O:RWPL,G:R,W Reference count 1 Default buffer size 512 Total blocks 2050860 Sectors per track 57 Total cylinders 2570 Tracks per cylinder 14 Volume label "USER" Relative volume number 0 Cluster size 4 Transaction count 1 Free blocks 39104 Maximum files allowed 410172 Extend quantity 5 Mount count 1 Mount status System Cache name "_TOKYO$DKA0:XQPCACHE" Extent cache size 64 Maximum blocks in extent cache 3910 File ID cache size 64 Blocks in extent cache 0 Quota cache size 0 Maximum buffers in FCP cache 2894 Volume owner UIC [SYSTEM] Vol Prot S:RWCD,O:RWCD,G:RWCD,W:RWCD Volume Status: ODS-5, subject to mount verification, write-back caching enabled. |
最後の行の Volume Status: の部分を確認します。ODS-5 と記述されている場合,ディスクの形式が ODS-5 であることを示しています。
ユーザの環境で日本語ファイル名を有効にするには,以下のコマンドを入力します。
$ JSY$CONTROL:==$SYS$SYSTEM:JSY$CONTROL.EXE $ JSY$CONTROL SET RMS/FILENAME=SDECKANJI |
これにより,DCL コマンドや日本語ユーティリティ等でファイル名に日本語を使用できるようになります。(日本語ファイル名を使用できるのは,日本語 OpenVMS バージョン 7.2 からです。)
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ディレクトリとは,ファイルの登録簿です。日本語 OpenVMS のもとで,ディスク上に作成されるファイルは,必ずディレクトリに登録されます。
ここでは,ディレクトリの階層構造や,ディレクトリの作成方法等について説明します。
関連資料
9.1 ディレクトリとは
日本語 OpenVMS のもとで,ディスク上に作成されるファイルは,必ずディレクトリに登録されます。つまり,ディレクトリはファイルの登録簿です。ディレクトリの内容は,登録されているファイルのファイル名,ファイル・タイプ,バージョン番号,ファイルの位置に関する情報です。
ディレクトリ自身も,ディスク上の情報であり 1 つのファイルです(ディレクトリ自身のことをディレクトリ・ファイルということもあります)。ファイル名 = ディレクトリ名で,ファイル・タイプは .DIR,バージョン番号は 1 です。
9.2 ディレクトリの種類と階層構造
ディレクトリは,ツリー状の階層構造になっています。そのためディレクトリの名前を指定する場合には,階層構造のどこにあるかを明示する必要があります。ディレクトリには,次の 3 種類があります。
すべてのユーザファイル・ディレクトリを登録してあるディレクトリ。ルート・ディレクトリは 1 個のディスクに必ず 1 個だけ存在します。ルート・ディレクトリのファイル名は 000000,ファイル・タイプは .DIR です。
[000000] |
ユーザの持つディレクトリ。ユーザファイル・ディレクトリはディレクトリ名を [ ] で囲んで指定します。
ユーザファイル・ディレクトリを指定する際にルート・ディレクトリの指定は省略できます。たとえば DKA0:[000000.YAMADA] と指定すると,ディスク DKA0 の中にある [YAMADA] というユーザファイル・ディレクトリを指定することになります。
[YAMADA] |
ユーザファイル・ディレクトリの下に作るディレクトリ。ディレクトリ名をピリオドで区切って指定します。
サブファイル・ディレクトリは,ユーザファイル・ディレクトリを含めて 255 階層まで作成することができます。(日本語 OpenVMS のバージョン 7.2 より前のバージョンでは 8 階層まで。)
[YAMADA.PROJECT.REPORT] |
ディレクトリ・ファイルやファイルの関係を 図 9-1 に示します。
図 9-1 ディレクトリ階層構造
ディレクトリ名は,次の規則に従って付けます。
ただし,ハイフン(-)は,最初の文字としては使用できない。
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