OpenVMS
システム管理者マニュアル


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14.6.4.6 メモリが制限されたシステムのためのオプション

メモリが制限されたシステムでは,すべてのバッチ・キューでバッチ・ワーキング・セットにとって必要なページの合計を求めます。また,会話型ジョブに対して十分な流動メモリが残るようにしなければなりません。

流動メモリは,スワッピングやページングによって 1 つのプロセスから別のプロセスに再割り当てできます。流動メモリは,総メモリから,オペレーティング・システムに永久的に割り当てられたページ数を差し引いたときに残る容量から計算できます。これらの値を求めるには,SHOW MEMORY コマンドを入力します。

14.6.4.7 SORT/MERGE ユーティリティ用バッチ・キューの最適化

ソートを行うジョブ専用のバッチ・キューを作成し,非常に大きなワーキング・セット・クォータを設定することによって, OpenVMS の SORT/MERGE ユーティリティの処理速度を向上させることができます。

また,プロセス割り当て量を設定することによって,最大の SORT 処理速度を実現することもできます。ここで推奨する値は,単純に SORT の効率性だけを考慮したものです。実際に適切な値を決定するにあたっては,その他の事項も考慮する必要があります。

14.6.4.8 リソース・アフィニティ・ドメイン (RAD) へのバッチ・キューの割り当て

NUMA 環境では,システム管理者が,バッチ・キューを特定のリソース・アフィニティ・ドメイン (RAD) に割り当てることができます (RAD についての詳細は,『Compaq OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』を参照してください)。

RAD 値は,0 〜 SYI$_RAD_MAX_RADS の間にある正の整数です。 SHOW/QUEUE/FULL コマンドを実行すると,出力に RAD が表示されます。

この節では,コマンドのシーケンスとそれがバッチ・キューに与える影響について説明します。それぞれの例では,SHOW コマンドを指定して,バッチ・キューを変更した結果を表示しています。

バッチ・キューの RAD 値を変更しても,現在バッチ・キューに存在するジョブは,キューに対して指定された新しい RAD 値を反映して動的に更新されるわけではありません。実行中のジョブは,元の RAD 値を使用して処理を完了します。保留中,保持中,または時間指定実行の状態にあるジョブは,ジョブの古い RAD 値を維持します。ただし,これらのジョブが実行可能になった時点で,ジョブが新しい RAD 値によって更新され,キューに指定された RAD で実行されます。

14.6.5 ジョブのスケジューリング優先順位の変更

キュー・マネージャは次の基準に従って,処理可能状態のバッチ・ジョブとプリント・ジョブのスケジューリング優先順位を決定します。

  1. ジョブ・スケジューリング優先順位
    キュー・マネージャは,ジョブのスケジューリング優先順位を調べ,最も優先順位の高いジョブを最初に処理する。ジョブ・スケジューリング優先順位は,基本プロセス優先順位や現在のプロセス優先順位とは異なる。ユーザは PRINT や SUBMIT コマンドで /PRIORITY 修飾子を使用して,ジョブ・スケジューリング優先順位を指定することができる。

  2. サイズ (任意,出力ジョブのみに適用)
    省略時の設定では,キュー・マネージャは出力ジョブのサイズを調べ,スケジューリング優先順位が同じジョブについては,小さいジョブを先に処理する。
    キューが /SCHEDULE=NOSIZE オプションを使用して作成,起動,または変更されている場合,ジョブのサイズはチェックされない。

  3. 登録時刻
    スケジューリング優先順位が同じジョブについては,キュー登録時刻が早い方のジョブを先に処理する。

作業方法

ジョブ・スケジューリング・オプションを指定するには,次の操作を実行します。

  1. ジョブのサイズを基準にして,プリント・ジョブの実行順序を設定するかどうかを指定する。

  2. 印刷するジョブに対して,ブロック制限を設定するかどうかを指定する。

ジョブ・スケジューリング・オプションのコマンド

ジョブ・スケジューリング・オプションを指定するコマンドを次に示します。

コマンド 説明
INITIALIZE/QUEUE/SCHEDULE=[NO]SIZE

START/QUEUE/SCHEDULE=[NO]SIZE

SET QUEUE/SCHEDULE=[NO]SIZE

出力実行キューで保留中のジョブを,ジョブのサイズを基準にして印刷のためにスケジューリングするかどうかを指定する (短いジョブは長いジョブより前に印刷される)。
INITIALIZE/QUEUE/[NO]BLOCK_LIMIT=
([下限,]上限)

START/QUEUE/[NO]BLOCK_LIMIT=
([下限,]上限)

SET QUEUE/[NO]BLOCK_LIMIT=
([下限,]上限)

出力実行キューで処理できるプリント・ジョブのサイズを制限する。
PRINT/PRIORITY=n

SUBMIT/PRIORITY=n

SET ENTRY/PRIORITY=n

プリント・ジョブのジョブ・スケジューリング優先順位を指定する。 n の値は0 〜 255 である。ただし,0 は最低の優先順位であり,255 は最高の優先順位である。

14.6.5.1 ジョブ・スケジューリング優先順位とサイズの制限の設定

この節では,ジョブの印刷の優先順位とサイズの設定方法について説明します。

サイズを基準にしたジョブの優先順位の付け方

サイズをもとにジョブの優先順位を付けるには, INITIALIZE/QUEUE,START/QUEUE,または SET QUEUE コマンドに /SCHEDULE=SIZE 修飾子を指定します (/SCHEDULE=NOSIZE 修飾子を指定すると,ジョブはサイズとは無関係に,キューに登録された順に印刷されます)。

次の例では,/SCHEDULE=SIZE (省略時の設定) が使用されているため,プリント・キュー LPA0_PRINT で短い(サイズの小さい)ジョブが長い(サイズの大きな) ジョブより前に印刷されます。


$ INITIALIZE/QUEUE/SCHEDULE=SIZE LPA0_PRINT

保留中のジョブがキューに登録されているときに,このコマンドを入力すると,この後登録されるジョブに対してコマンドがどのように影響するかは予測できません。

ジョブのサイズの制限方法

プリント・ジョブのサイズを制限するには, INITIALIZE/QUEUE,START/QUEUE,または SET QUEUE コマンドに /BLOCK_LIMIT 修飾子を指定します。省略時の設定では,プリンタ・キューとターミナル・キューはブロック制限を付けずに作成されます。したがって,どのようなサイズのジョブも印刷されます。上限だけを指定することも,上限と下限の両方を指定することもできます。

次の例では,LPB0_PRINT のブロック・サイズは 50 に制限されているため,このキューは 51 ブロックより小さいジョブ専用に使用されます。


$ INITIALIZE/QUEUE/BLOCK_LIMIT=50 LPB0_PRINT

1 日の特定の時間帯だけ,ジョブのサイズを制限しなければならないことがあります。たとえば,午前 8 時 00 分にキューの最大ブロック・サイズを 500 ブロックに制限するコマンド・プロシージャを実行するバッチ・ジョブをキューに登録できます。コマンドの実行後にこのコマンドプロシージャ自身をキューに再登録するように作成しておけば毎日午後 5:00 分以降に,ブロックの制限を解除することができます。このようにすると,通常の勤務時間が終了した後,印刷の作業負荷が軽減されたときに,ユーザはどのようなサイズのジョブも印刷できるようになります。特定の時刻以降にジョブを印刷することを指定するには,PRINT コマンドに /AFTER 修飾子を指定します。

14.6.5.2 ジョブのスケジューリング優先順位の変更

バッチ・ジョブやプリント・ジョブを処理できない場合には,そのジョブは保留状態になり,保留状態になった原因が解決されるまで処理されません。詳細は 第 14.8.2 項 を参照してください。

ジョブのスケジューリング優先順位を変更するには,次の形式で SET ENTRY コマンドに /PRIORITY 修飾子を指定します。


SET ENTRY/PRIORITY=n   エントリ番号 

次の例では,ジョブのスケジューリング優先順位を 50 に変更します。


$ SET ENTRY/PRIORITY=50 1131

ジョブのスケジューリング優先順位と,キューの基本プロセス優先順位を混同しないでください。ジョブのスケジューリング優先順位の値は 0 〜 255 の範囲です。ただし,0 は最低の優先順位であり,255 は最高の優先順位です。ジョブのスケジューリング優先順位を示す /PRIORITY の省略時の値は,システム・パラメータ DEFQUEPRI の値です (通常は 100 に設定されます)。

14.6.6 バナー・ページ

バナー・ページ とは,キューに対して設定できる,特殊な形式のページであり,印刷を終了するときに出力ジョブを識別し,ジョブの区切りを確認するのに役立ちます。また,バナー・ページはジョブに複数のジョブがある場合にそれらのファイルを区切り,識別するのにも役立ちます。

バナー・ページには次の 2 種類があります。

ほとんどのサイトでは,使用可能なバナー・ページのうち,その一部だけしか使用しません。次の表は使用できるバナー・ページのタイプを示しています。

タイプ 説明 参照箇所
ジョブ・ページ
フラグ・ページ 各ジョブの前にプリントされる 1 枚のページ 図 14-11
バースト・ページ 各ジョブの前にプリントされる,区切りバー (バースト・バー) で区切られた 2 枚のフラグ・ページ 図 14-11
トレーラ・ページ 各ジョブの最後にプリントされる 1 枚のページ 図 14-13
ファイル・ページ
フラグ・ページ ジョブの各ファイルの前にプリントされる 1 枚のページ 図 14-12
バースト・ページ ジョブの各ファイルの前にプリントされる,区切りバー(バースト・バー) で区切られた 2 枚のフラグ・ページ 図 14-12
トレーラ・ページ ジョブの各ファイルの最後にプリントされる1 枚のページ 図 14-13

注意

プリンタの出力ページをバーストする必要がない場合,たとえばプリンタでカット紙を使用している場合には,バースト・ページ・オプションは使用しないでください。通常,ジョブの最後を識別するには,フラグ・ページだけか,またはフラグ・ページとトレーラ・ページだけで十分です。

ジョブ・フラグ・ページ,ファイル・フラグ・ページ,ジョブ・トレーラ・ページ,ファイル・トレーラ・ページの詳細は 表 14-2 を参照してください。

表 14-2 ジョブ・ページとファイル・ページの内容
項目 説明
ヘッダ・バー 次のもので構成されるセグメント化されたバー。

ジョブ・フラグ・ページ:

次のもので構成されるシングル・セグメント・バー。

  • キュー内でのジョブの順序を示す数値を繰り返した行。

  • PSM$ANNOUNCE システム論理名を定義することにより指定される,埋め込みテキスト文字列。文字列の長さは 1 枚のフォーム幅に制限される。 PSM$ANNOUNCE が定義されていない場合には,省略時のテキスト文字列は "Compaq Computer Corporation" とシステム・バージョン番号である (フォーム幅が狭いときは "Compaq" を使用する)。

ファイル・フラグ・ページ:

次のもので構成される 3 セグメント・バー。

  • 中央のセグメントはジョブ・フラグ・ページと同一である。

  • ジョブ内でのファイルの順序を示す文字を繰り返した行で構成される両側のセグメント。

ジョブ・トレーラ・ページ:

次のもので構成される 3 セグメント・バー:

  • "END OF JOB" というバナーのついた中央セグメント。

  • ジョブの順序を示す数値を印刷した両側のセグメント。

ファイル・トレーラ・ページ:

次の要素で構成される 5 セグメント・バー。

  • "END OF FILE" というバナーのついた中央セグメント。

  • ジョブの順序を示す数字を印刷した両側の内側のセグメント。

  • ファイルの順序を示す文字を印刷した両側の外側のセグメント。

注記 PRINT/NOTE コマンドを使用してユーザが指定する 255 文字以内の文字列。
識別バナー ジョブを登録したプロセスのユーザ名,ジョブ名,ジョブ番号を印刷する。
修飾子句 (ファイル・トレーラ・ページのみ) ジョブがキューに登録されたときにアクティブだったプリント修飾子,キュー修飾子,フォーム修飾子を印刷する。アクティブでなかった修飾子は印刷しない (ただし,/NORECORD_BLOCKING と /NOFEED は例外である)。
ファイル文 (ファイル・フラグ・ページとファイル・トレーラ・ページのみ) 次の情報を示す。

  • 完全なファイル指定 (装置とディレクトリ,ファイル名,ファイル・タイプ,バージョン,更新日時)

  • ファイル・サイズ (ブロック数)

  • ファイルの編成方式

  • ファイルの所有者の UIC

  • ファイル・レコード特性: レコード・タイプ,キャリッジ制御,最大レコード・サイズ

受信ボックス (ジョブ・トレーラ・ページのみ) Received:,Date:,Operator: というサインオフ・フィールドを印刷する。
ジョブ文 次の情報を示す。

  • ジョブ名とジョブ番号

  • ジョブが登録されたキューの名前

  • 登録の日時

  • プロセス・ユーザ名,UIC,アカウント

  • ジョブのスケジューリング優先順位

  • プリント装置名

  • ジョブの起動時刻

  • 実行キュー名

フッタ・バー 次の要素で構成されるセグメント化されたバー:

ジョブ・フラグ・ページ:

ジョブ・フラグ・ヘッダ・バーと同一であるが,システム論理名 (PSM$ANNOUNCE) の定義は埋め込み文字列として使用されない。埋め込み文字列として常に省略時のテキストが使用される。

ファイル・フラグ・ページ:

ファイル・フラグ・ヘッダ・バーと同一であるが,埋め込みテキスト文字列は "Compaq Computer Corporation" とオペレーティング・システムのバージョン番号である。

ジョブ・トレーラ・ページ:

ジョブ・フラグ・ヘッダ・バーと同一であるが,システム論理名 (PSM$ANNOUNCE) の定義は埋め込み文字列として使用されない。

ファイル・トレーラ・ページ:

ファイル・フラグ・ヘッダ・バーと同一であるが,埋め込みテキスト文字列は "Compaq Computer Corporation" とオペレーティング・システムのバージョン番号である。

ルーラ (ファイル・トレーラ・ページとジョブ・トレーラ・ページのみ) フォームの最後までカウントした一連の数字。

図 14-11 は,ジョブのフラグ・ページとバースト・ページの例です。 図 14-12 は,ファイル・フラグ・ページとファイル・バースト・ページの例です。 図 14-13 は,ファイル・トレーラ・ページとジョブ・トレーラ・ページの例です。

図 14-11 ジョブのフラグ・ページとバースト・ページ


図 14-12 ファイルのフラグ・ページとバースト・ページ


図 14-13 ファイルとジョブのトレーラ・ページ


ファイルとジョブのバナー・ページでサポートされているフォームのサイズは,幅が 40 文字以上,200 文字以下,長さが 40 文字以上です。200 文字を超える幅のページが要求された場合は,書式整形されて,200 文字の幅でプリントされます。長さが 40 文字より短いページが要求された場合は,40 文字のしきい値を超えるまで拡張されます。バナー・ページの書式整形では,マージンは考慮されません。


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