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あらゆる Files--11 ボリュームに対し,ボリューム初期化時に索引ファイルが作成されます。Files--11 ディスクとしてディスクを使用するには,INITIALIZE コマンドで初期化する必要があります。
INDEXF.SYS は,いくつかのセクションで構成される,大型の拡張可能なファイルです。これらのセクションには,オペレーティング・システムのほか,Files--11 ボリュームの識別,ボリュームへの初期アクセス,ボリューム上の全ファイルの確認に必要な情報が入っています (INDEXF.SYS 自体も含む)。
表 A-2 は,INDEXF.SYS に入っている情報を示しています。ブート・ブロック,ホーム・ブロック,ファイル・ヘッダについては,後の項で詳しく説明します。
用語 | 定義 |
---|---|
ブート・ブロック | 索引ファイルの仮想ブロック 1。ブート(またはブートストラップ)・ブロックは,たいていはボリュームの論理ブロック 0 にマップされる。ボリュームがシステム・ボリュームの場合は,ブート・ブロックには,オペレーティング・システムをメモリにロードするプログラムが入っている。ボリュームがシステム・ボリュームではない場合は,ブート・ブロックには,ボリュームがシステム装置ではなく,ユーザのファイルだけが入っていることを示すメッセージを表示するプログラムが入っている。 |
ホーム・ブロック | ボリューム固有のIDが入っている。具体的には,ボリュームの名前と保護,ボリュームに格納できる最大ファイル数,ボリューム所有権情報である。ホーム・ブロックは,索引ファイルの仮想ブロック番号 2 である。 |
バックアップ・ホーム・ブロック | ホーム・ブロックのコピー。1次ホーム・ブロックが破壊されても,ボリュームを使用できるようにする。 |
バックアップ索引ファイル・ヘッダ | 索引ファイル・ヘッダが壊れたときに,ボリューム上のデータを回復できるようにする。 v * 3 + 1 から v * 4 の仮想ブロックを占有する。 v は,ボリューム・クラスタの要素の数である。 |
索引ファイル・ビットマップ | ファイル・ヘッダの割り当てを制御し,結果的にボリューム上のファイル数を制御する。ファイル・ヘッダを示すビットが入っており,このビットが 0 である場合はファイルを作成でき, 1 である場合はファイルがすでに使用されている。 |
ファイル・ヘッダ | 索引ファイルの大部分を占める。索引ファイルへのアクセスに必要な全情報が入っている。1 つのファイル・ヘッダには,ボリュームに存在する 1 つのファイルに関する情報が入っている。情報の内容は,所有者 UIC,保護コード,作成日時,アクセス制御リスト (ACL) などである。また,ファイルを構成するエクステントのリストも入っており,ボリューム上の論理位置が示される。ファイル・ヘッダは,拡張ヘッダともなる。 |
索引ファイル代替ヘッダ | 索引ファイルの1次ヘッダが破損したときに,データを回復できるようにする。 |
システム・ディスクのブロック 0 は,ブート・ブロックです。ブート・ブロックには,システムのブート時に使用する一次ブートストラップ・イメージの記憶位置とサイズが入っています。一部のプロセッサをブートする場合,ブート・ブロックを読み込んでブート・イメージの記憶位置を取り出す必要があります。詳細は 第 4.7 節 を参照してください。
A.3.1.2 ホーム・ブロック
ホーム・ブロックは,通常,ブート・ブロックの次のブロックです。ホーム・ブロックは,ディスクが Files--11 ボリュームであることを示します。ホーム・ブロックを読み込めない場合,つまり物理的に使用不能である場合は,別のブロックがホーム・ブロックとして選択されます。ボリューム自体の情報やボリューム上のファイルの省略時の値など,次のような項目がホーム・ブロックに入っています。
Files--11 ボリュームでは,ホーム・ブロックのコピーがいくつか用意されるので,ホーム・ブロックの情報を誤って消してしまうことを防止でき,ファイルへのアクセスも常に確保できます。
A.3.1.3 ファイル・ヘッダ
索引ファイルの大部分は,ファイル・ヘッダです。 1 つのファイル・ヘッダには,ボリュームに存在するファイルの内,1 つのファイルに関する情報が入っています。具体的には,所有者 UIC,保護コード,作成日時,ACL (アクセス制御リスト) などです。さらに,ファイルを構成するエクステントのリストが入っており,ボリューム上におけるファイルの論理位置が分かります。多数のエクステントで構成されるファイルの場合,複数のファイル・ヘッダを使用することができます。各ファイル・ヘッダには,ファイル識別番号が付いています。
ファイルを作成する場合,通常は,OpenVMS RMS に対してファイル名を指定します。このファイル名は,Files--11 ボリューム上のファイルに割り当てられます。OpenVMS RMS は,新たに作成したファイルのファイル名とファイル識別子を,ファイルの記憶位置を示すエントリが入っているディレクトリに入れます。このファイルにアクセスするには,ファイル名を入力します。ファイル名は,ディレクトリ・エントリを通じてファイル識別子を指すパスとなります。ファイル識別子は,ファイル・ヘッダの記憶位置を指し,ファイル・ヘッダに入っているエクステント・リストによって,実データの記憶位置が分かります。
ファイル・ヘッダは,ファイルの現在の記憶状態を示すので, ANALYZE/DISK_STRUCTURE においては特に意味を持ちます。 Files--11 ディスク上のファイルは,INDEXF.SYS の1次ヘッダで表されます。必要に応じて,拡張ヘッダも使用されます。
各固定長ヘッダには,固定長データと可変長データの両方が入っています。このデータは, 表 A-3 に示す 6 つのエリアのいずれかに入っています。
データ・エリア | 説明 |
---|---|
Header | ヘッダ識別子,ファイル番号,ファイル・シーケンス番号,ファイルの保護コード,他のファイル・ヘッダ・エリアへのオフセットが入っている。 |
Ident | ファイルの識別子と会計情報データが入っている。具体的には,ファイル名,作成日時,バックアップ日時など。 |
Map | ファイルの仮想ブロックをボリュームの論理ブロックにマップする検索ポインタのリストが入っている。各ポインタは,ファイルに割り当てられている,連続番号が付いたブロックで構成されるグループを示す。検索ポインタの順序は,対応する仮想ブロックの順序となる。 |
Access control list | ACL 関係情報が入っている省略可能エリア。 |
Reserved | 特殊なアプリケーション用に予約されている。 |
End checksum | ファイル・ヘッダ末尾の 2 バイトは,その前の 255 ワードのチェックサムである。チェックサムにより,正しいファイル・ヘッダであるかどうかをチェックできる。 |
連続するクラスタの集合を,エクステント と呼びます。エクステントのサイズは,連続クラスタの数によって決まります。たとえば,1000 ブロックの容量を要するファイルがあるときに, 800 ブロックと 200 ブロックの連続空間が存在する場合,このファイルは 800 ブロックと 200 ブロックの 2 つのエクステントに入れられます。
ファイルの1次ヘッダは,そのファイルの第 1 エクステントをはじめ,1次ヘッダのマップ・エリアに入れることができる数のエクステントを指します。ファイルで必要なエクステントの数がマップ・エリアを超える場合や, ACL が1次ヘッダに入りきらないほど大きい場合, 拡張ヘッダ が割り当てられます。拡張ヘッダには,1次ヘッダの固定データのほか,拡張ヘッダが指すエクステントの記憶位置を指定する可変データ (ヘッダ・マップ・エリアとアクセス制御リスト) が入ります。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE は,1次ヘッダと拡張ヘッダのリスト全体に対し,ファイルの妥当性をチェックします。チェック対象項目は,ファイル・ヘッダ,拡張ヘッダを指す全ポインタで構成されるチェーン,全ヘッダの検索ポインタ,ファイルの属性です。
A.3.2 記憶ビットマップ・ファイル BITMAP.SYS
記憶ビットマップ・ファイルは,ボリューム上で使用できる空間量をファイル・システムが記録するために使用する連続ファイルです。このファイルには,記憶制御ブロック (SCB) が入っています。 SCB には,Files--11 空間割り当てを最適化するための情報と個々のブロックの使用可能性を示すビットマップが入っています。
SCB の情報の内容は,クラスタの要素の数,ボリューム・サイズ,ブロッキング・ファクタなどです。ビットマップの各ビットは,各クラスタを示します。ビットが設定されている場合,対応するクラスタを使用することができます。ビットがクリアされている場合,クラスタを使用することはできません。
オペレーティング・システムは,ビットマップの一部をキャッシュ・メモリとの間で移動します。メモリ内の各ビットの状態は,クラスタを割り当てたり割り当て解除したりするたびに,変更されます。キャッシュに入っているビットマップをディスクに戻したとき,BITMAP.SYS は更新されます。ビットマップの一部は必ずキャッシュに入っているので,(ディスクをディスマウントするか,またはライト・ロックしないかぎり)ディスクに割り当てられているクラスタの現在の状態を BITMAP.SYS が反映することはあり得ません。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE には, INDEXF.SYS から取り出したデータをもとに BITMAP.SYS の現在のバージョンを作成し,ディスク上の空きクラスタの状態を BITMAP.SYS に正確に反映させるという機能があります。
A.3.3 不良ブロック・ファイル BADBLK.SYS
不良ブロック・ファイルには,ボリューム上の不良ブロックがすべて入ります。システムは不良ブロックを動的に検出し,不良ブロックを使用しているファイルを削除した後にこれらの不良ブロックが再び使用されることを防止します。
A.3.4 マスタ・ファイル・ディレクトリ
MFD は,Files-11 ボリューム・ディレクトリ構造を制御する予約ファイルを含むファイルです。また MFD は,ユーザが使用するファイルやディレクトリ,および既知ファイルをリストします。マスタ・ファイル・ディレクトリ自体は, MFD でリストされるファイル(000000.DIR;1) の 1 つです。
ただし,MFD は,予約ファイルとユーザのファイル・ディレクトリのリストに使用されることが多く,プライベート・ボリュームにおいてさえ,ユーザが MFD にファイルを入力することはほとんどありません。プライベート・ボリュームでは,システム・ディスクの省略時ディレクトリと同じ名前のディレクトリを作成した方が便利です。ユーザのファイル・ディレクトリとファイル指定については,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
BACKUP ユーティリティで順編成ディスク・セーブ・セットを作成すると,セーブ・セット・ファイルが MFD に格納されます。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE は,INDEXF.SYS との比較を行うことにより,ディレクトリ構造に属する全ファイルをチェックします。ディレクトリ構造で追跡できないファイルは," 失われた " ファイルです。 /REPAIR が指定されている場合,これらのファイルは最上位レベルの SYSLOST.DIR ディレクトリに入れられます。
A.3.5 コア・イメージ・ファイル CORIMG.SYS
オペレーティング・システムでは,コア・イメージ・ファイルを使用していません。
A.3.6 ボリューム・セット・リスト・ファイル VOLSET.SYS
ボリューム・セット・リスト・ファイルは,ボリューム・セットの相対ボリューム 1 でのみ使用します。このファイルには,ボリューム・セットに属する全ボリュームのラベルとボリューム・セット名が入っています。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE では,VOLSET.SYS を使用してボリューム・セット内の各ボリュームの記憶位置を調べ,各ボリュームの属性を確認します。すべてのボリューム・セット情報が相対ボリューム 1 の VOLSET.SYS に入っているので,他のボリュームに存在する VOLSET.SYS は無視されます。
A.3.7 継続ファイル CONTIN.SYS
継続ファイルは,1 つのファイルが 2 つのボリュームにまたがるときに拡張ファイル識別子として使用されます。このファイルは,順編成ディスク・セーブ・セットの最初のボリュームを除くすべてのボリュームに使用されます。
A.3.8 バックアップ・ログ・ファイル BACKUP.SYS
バックアップ・ログ・ファイルは,今後の使用のため予約されています。
A.3.9 保留不良ブロック・ログ・ファイル BADLOG.SYS
保留不良ブロック・ログ・ファイルには,不良ブロック・ファイルに入っていないけれども不良であると思われるブロックのリストが入っています。
A.3.10 クォータ・ファイル QUOTA.SYS
クォータ・ファイルは,ボリューム上の各 UIC のディスク使用量を記録するためにファイル・システムが使用する,予約ファイルです。 ボリュームのクォータ・チェックを許可している場合,ボリューム上の全 UIC が QUOTA.SYS ファイルに格納されます。 QUOTA.SYS は常に更新されるので,現在のディスク使用量,許可されている最大ディスク使用量,許可されている超過値が,UIC ごとに示されます。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE は,その動作時に,各 UIC の実際のディスク使用量を反映する QUOTA.SYS のコピーをメモリに作成します。このコピーは,ディスク上の QUOTA.SYS と比較されます。矛盾点がある場合は,メッセージが表示されます。 /REPAIR 修飾子を指定した場合,ディスク上の QUOTA.SYS が更新されます。
A.3.11 ボリューム機密保護プロファイル SECURITY.SYS
ボリューム機密保護プロファイルには,ボリュームの所有者 UIC,ボリュームのシステム - 所有者 - グループ - 一般ユーザ (SOGW) 保護マスク,およびボリュームのアクセス制御リスト (ACL) が含まれます。
A.4 Files--11 ODS レベル 1 と 2,5 の違い (VAX のみ)
VAX システムでは,性能,信頼性,機密保護の点で,ODS レベル 1 の互換スーパーセットである Files--11 ODS レベル 2 が標準のディスク構造です。ボリューム初期化時の省略時の値は,構造レベル2 です。『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』の INITIALIZE コマンドを参照してください。
RSX-11M,RSX-11D,RSX-11M-PLUS,IAS は ODS レベル 1 以外をサポートしていないので,これらのシステムに移植する必要がある VAX ボリュームの場合には,ODS レベル 1 を指定します。また,これらのシステムから移植した構造レベル 1 ボリュームを扱う必要が生じる場合もあります。
構造レベル 1 のボリュームを使用している場合, 表 A-4 に示す制限に注意してください。
ディスク | 保護対象オブジェクトは,Files--11 ODS-2 ディスクだけである。 |
ディレクトリ | ディレクトリとサブディレクトリの階層がなく,ディレクトリ・エントリつまりファイル名の順序も定められていない。RSX-11M,RSX-11D,RSX-11M-PLUS,IAS は,サブディレクトリをサポートしておらず,ディレクトリ・エントリをアルファベット順に並べない。 |
ディスク・クォータ | サポートしていない。 |
マルチボリューム・ファイルとボリューム・セット | サポートしていない。 |
位置制御 | サポートしていない。 |
キャッシュ | ファイル・ヘッダ・ブロック,ファイル識別スロット,エクステント・エントリのキャッシングを行わない。 |
システム・ディスク | 構造レベル 1 ボリュームを使用できない。 |
OpenVMS Cluster アクセス | ローカル・アクセスのみ。クラスタ全体で共用できない。 |
クラスタ化割り当て | サポートしていない。 |
バックアップ・ホーム・ブロック | サポートしていない。 |
保護コード E | E は,RSX-11M オペレーティング・システムで " 拡張 " を意味するが,OpenVMS では無視される。 |
ファイル・バージョン | 32,767 までに制限される。バージョン制限はサポートしていない。 |
高度保護機能 (アクセス制御リストなど) | サポートしていない。 |
ロング・ファイル名 | サポートしていない。 |
RMS ジャーナル機能 | サポートしていない。 |
RMS 実行統計監視 | サポートしていない。 |
OpenVMS ソフトウェアの今後の機能強化では,構造レベル 5 が中心となります。したがって,構造レベル 1 における制限はさらに多くなる可能性があります。
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