日本語 hp DECwindows Motif for hp OpenVMS
日本語機能説明書


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第 5 章
フォント・コンバータ

フォント・コンバータとは,フォント・エディタによって作成したユーザ定義文字フォント・ファイルを PCF 形式(AXP の場合),または DECwindows 形式(VAX の場合)のフォント・ファイルに変換するものです。これにより,ユーザ定義文字をワークステーションのディスプレイ上に表示することができるようになります。

5.1 フォント・ファイル変換の方法

まず,次のようにフォント・コンバータをコマンドとして定義します。


$FONTCONVERTER := $SYS$COMMON:[SYSEXE]DECW$AFONTCONVERTER 

フォント・ファイル変換には,fontconverter を使用します。 fontconverter は,次のようにコマンド行から起動します。


$ fontconverter [-オプション] -font フォント名 [-preload] プリロード・ファイル名

fontconverter に指定できる省略可能なオプションには次のものがあります。

-merge このオプションを指定すると,ユーザ定義文字を指定フォントのすべての文字とマージします。このオプションを指定しない場合,指定されたフォントの省略時の文字だけをマージします。
-w width ユーザ定義文字の幅を指定します
-h height ユーザ定義文字の高さを指定します
-udc udc_name -merge を指定しなかった場合のフォントの registry を指定します。出力されるファイル名は,{udc_name}_{width}_{height}.pcf と {udc_name}_{width}_{height}.bdf(AXP の場合), {udc_name}_{width}_{height}.DECW$FONT と {udc_name}_{width}_{height}.DECW$BDF(VAX の場合)です。

次の2つの指定は省略することはできません。

-font フォント名 マージ先のフォントのフォント名を指定します。
-preload プリロード・ファイル名 ユーザ定義文字フォント・ファイル名を指定します。プリロード・ファイル名は省略できませんが,-preload は省略することができます。

5.2 フォント・ファイル変換の例

次の例では,プリロード・ファイル test.pre の中のユーザ定義文字を PCF/BDF ファイルに変換します。出力されるファイル名は,TEST_24_24.bdf と TEST_24_24.pcf(AXP),TEST_24_24.DECW$BDF と TEST_24_24.DECW$FONT (VAX)です。


$ fontconverter -w 24 -h 24 -udc TEST -font "*mincho*24*jisx0208.1983" test.pre

次の例では,プリロード・ファイル test.pre の中のユーザ定義文字を "*mincho*24*jisx0208.1983" の中の文字とマージします。出力されるファイル名は,JISX0208.1983_24_24.pcf(AXP),DECW$FONT(VAX)です。


$ fontconverter -merge -font "*mincho*24*jisx0208.1983" test.pre


第 6 章
日本語入力機能

本章では,日本語DECwindows Motif で提供する日本語入力機能について説明します。

日本語DECwindows Motif では,テキストの入力を行うことのできる箇所で日本語を入力することができます。日本語の入力は,ローマ字あるいは,かなで "読み" を入力してから "変換キー" を使用して漢字,ひらがな,カタカナなどに変換します。日本語入力の変換機能を 表 6-1 に示します。

表 6-1 日本語入力の変換機能
機能 説明
漢字変換,
文節次候補
漢字に変換します。
続けてもう一度押すと,次の候補が表示されます。
ひらがな変換,
文節ひらがな変換
ひらがなに変換します。
カタカナ変換,
文節カタカナ変換
カタカナに変換します。
全角変換 英数記号を全角に変換します。
半角変換 英数記号を半角に変換します。
記号変換,
コード入力
1〜3文字の英数記号を特殊な記号に変換します( 第 6.3.3 項 を参照)。あるいは,漢字コードから漢字に変換します( 第 6.3.4 項 を参照)。
大文字変換 英字を大文字に変換します。
小文字変換 英字を小文字に変換します。
次文節移動 漢字変換した文字列に複数の文節がある場合に,次の文節に移動します(次の文節を変換対象とする)。
前文節移動 漢字変換した文字列に複数の文節がある場合に,前の文節に移動します(前の文節を変換対象とする)。
文節縮小 変換対象である文節を縮小します。
文節拡大 変換対象である文節を拡大します。
文節前候補 一つ前の漢字変換の候補を表示します。
全文確定 入力した読み全体の変換を確定します。
文節確定 現在の変換対象である文節の変換を確定します(文節が複数ある場合は,次の文節が変換対象となります)。
変換取消,
無変換
読みを変換した直後は,変換開始前の読みを入力した状態にもどします(読みを修正することができます)。
読みを入力した直後は,入力した文字のまま確定します。

6.1 DEC 日本語入力サーバの使い方

DEC 日本語入力サーバは,X11R5 で採用された国際化入力方式であるR5 XIM, X11R6 で採用された国際化入力方式であるR6 XIMに対応した日本語入力サーバです。

日本語 DECwindows Motif V1.3 では, XmText,XmTextField および DXmCSText ウィジェットで日本語入力ができます。

日本語入力を行うには,アプリケーションが表示されるディスプレイ・サーバ上にあらかじめ DEC 日本語入力サーバが起動されている必要があります。

6.1.1 日本語入力サーバ

セッション・マネージャや各アプリケーションで日本語入力を行うには,それらを表示しているディスプレイ上で日本語入力サーバが動作している必要があります。

1つの日本語入力サーバが同一ディスプレイ上の複数のアプリケーションに対して日本語入力機能を提供します。この場合,リモート・ノードからネットワークを経由して同一ディスプレイに表示されているアプリケーションも日本語入力サーバによる日本語入力を受けることができます。

日本語 DECwindows Motif は,従来のバージョンにて提供されてきた日本語入力サーバである DECW$JIM に代わり,新しい入力サーバ (DECW$IM) を提供します。入力サーバは,セッション・マネージャの自動起動の項目に含まれるよう設定されていますので,セッションを開始すると自動的に起動されます。ただし,日本語 DECwindows Motif の以前のバージョンでセッション・マネージャのカスタマイズを行っているユーザの場合, DECW$IM が自動起動されない場合があります。この場合,セッション・マネージャの「設定」メニューから「自動起動...」を選択し,DEC 日本語入力サーバを自動起動項目に加え,その設定を保存してください。なお,この新しい日本語入力サーバは DECW$JIM というファイル名でも提供されており,既存の入力サーバ起動用コマンド・プロシージャ等がそのままお使いいただけます。

DEC 日本語入力サーバは以下のコマンドで起動することもできます。


  SPAWN/NOWAIT RUN SYS$SYSTEM:DECW$JIM 

6.1.2 DEC 日本語入力サーバによる日本語入力

DEC 日本語入力サーバが動作しているディスプレイでアプリケーションを起動し,文字入力領域にフォーカスをあてると,DEC 日本語入力サーバのタイトルが入力スタイルを表示するよう変化します。この状態で,日本語入力が可能です。 DEC 日本語入力サーバは on-the-spot,over-the-spot,off-the-spot, root-window の4つの入力スタイルをサポートしており,省略時のスタイルは over-the-spot です。

over-the-spot のスタイルでは,日本語変換はアプリケーションのウィンドウの上で行われますので,特に DEC 日本語入力サーバを意識せずに日本語入力を行うことができます。ただし,変換中の文字列は,アプリケーションのウィンドウの上に表示されるので,既に存在する文字列の途中に文字を挿入する場合は変換が確定するまで,既存の文字列の一部が被い隠されることがあります。

on-the-spot スタイルでは,日本語変換はアプリケーションのウィンドウ内で行われ,特に DEC 日本語入力サーバを意識せずに日本語入力を行うことができます。既に存在する文字列の途中に文字を入力する場合でも,既存の文字列の一部が被い隠されることはありません。

off-the-spot スタイルでは,アプリケーションのウィンドウの下部に日本語入力用のウィンドウが表示され,入力された文字列はそのウィンドウ内に表示されます。日本語変換が確定するまでは,変換中の文字列はすべて日本語入力用ウィンドウ内に表示されますので注意が必要です。

root-window スタイルでは,アプリケーションのウィンドウに入力された文字列は,DEC 日本語入力サーバのウィンドウ内に表示されます。日本語変換が確定するまでは,変換中の文字列はすべて DEC 日本語入力サーバのウィンドウ内に表示されますので注意が必要です。

入力スタイルの設定方法については 第 6.1.4 項 を参照してください。

6.1.3 DEC日本語入力サーバの設定

DEC日本語入力サーバ・ウィンドウには「漢字変換」あるいは「ASCII」のいずれかの文字列が表示されます。「漢字変換」が表示されている場合,アプリケーションはDEC日本語入力サーバを使用して日本語を入力することができます。「ASCII」が表示されている場合は,日本語入力ができません。

「ASCII」の状態から「漢字変換」の状態に変更するためのキーを始動キーと呼びます。逆に「漢字変換」から「ASCII」の状態に変更するためのキーを終了キーと呼びます。

始動キーおよび終了キーの標準値は,Shift-Space ( [Shift]キーを押しながらスペース・バーを押す)です。アプリケーション起動時には, DEC日本語入力サーバの状態は「漢字変換」になっています。始動キーおよび終了キーの設定の変更は「言語の設定」ダイアログボックスで行います。「言語の設定」ダイアログボックスは,「オプション」メニューから「設定」メニューを選択することにより表示されます。「言語の設定」ダイアログボックスで行った始動キーと終了キーの変更は,すべてのアプリケーションに対して有効です。

DEC日本語入力サーバは,ユーザ・キー定義ライブラリ IMLIB を使用しています。ユーザ・キー定義は, DEC日本語入力サーバを起動したユーザのキー定義が使用されます。 IMLIB を使用した日本語入力の変換キー,ユーザ・キー定義については『ユーザ・キー定義 利用者の手引き』を参照してください。

「オプション」メニューから「キー定義」を選択することにより,変換キーを変更することができます。これにより変更できるのは変換キーの定義のみで,エコーの仕方の変更はできません。変換キーの変更は,変更時に日本語を入力していたウィジェットにのみ適用されます。

アプリケーションの入力スタイルが Off-the-spot もしくは Root の場合,クライアントの入力領域とは別にプリエディット用の領域が作成されます。プリエディットを確定しアプリケーションに入力を行うためのキーを確定キーと呼びます。確定キーの標準値は [Return]キーです。

確定キーの変更は「入力メソッドの設定」ダイアログボックスで行います。変更した確定キーは,Off-the-spot もしくはRoot入力スタイルを使用するすべてのアプリケーションに適用されます。

6.1.4 入力スタイル

X11R6 ではテキストウィンドウへの入力スタイルとして, on-the-spot,over-the-spot,off-the-spot,root-window を挙げています。 DEC 日本語入力サーバでは,これら 4 つの入力スタイルをすべてサポートしています。また,X11R6 ではプリエディットの状態表示としていくつか挙げていますが, DEC 日本語入力サーバではいづれもサポートしていません。 DEC 日本語入力サーバでは,接続しているクライアントの状態を表示する機能を持っています。

XmText,XmTextField およびDXmCSText ウィジェットでは, VendorShell ウィジェットの XmNpreeditType リソースを使用して入力スタイルの設定を行うことができます。 XmNpreeditType リソースには次のいずれかの値を指定します。

OnTheSpot
OverTheSpot
Root
OffTheSpot

また,XmNpreeditType リソースには複数の値を設定することも可能です。複数の値を設定する場合には,それぞれの値をカンマ "," で区切ってください。

省略時の入力スタイルは OverTheSpot,OffTheSpot,Root です。 OverTheSpot の場合,入力交換中の文字列はすでに存在しているテキストの上に上書きされ,変換が確定すると全体のテキストへ挿入されます。

6.1.5 over-the-spot 入力スタイル使用時の注意

DEC 日本語入力サーバを用いて,over-the-spot 入力スタイルで文字を入力する場合, preedit 中の文字は Text widget 上に表示されていても,実際には Text widget には入力されていないので,XmTextGetString 等の関数を呼んでもその文字は受け取れません。preedit 中の文字とはアンダーラインが引かれてる文字です。

文字の入力から次の操作へ移る前に preedit 状態を終了させ Text widget への入力を完了させる必要があります。

日本語 OpenVMS の IMLIB の TARO キー以外のキー定義の初期状態では, preedit を終了させるキーの定義がありません。そこで,そのようなキーの定義を行う必要があります。

以下は,日本語 OpenVMS V6.0 のシステムで,標準の JVMS キー定義ファイルを変更して,preedit を終了させるキーを gold + Ctrl/N として追加する例です。 IMLIB のキー定義について詳しくは『ユーザ・キー定義利用者の手引き』を参照してください。

  1. JVMS キー用のマクロ・ファイルと本体を自分のログイン・ディレクトリにコピーします。


    $ SET DEFAULT SYS$LOGIN: 
    $ COPY JSY$EXAMPLES:IM$KEY_JVMS_LEVEL2.DAT MY_KEY.DAT 
    $ COPY JSY$EXAMPLES:IM$KEY_COMMON_BODY_LEVEL2.DAT MY_KEY_BODY.DAT 
    

  2. エディタを使って MY_KEY.DAT を変更します。

  3. エディタを使って MY_KEY_BODY.DAT を変更します。

  4. 変更されたファイルをコンパイルします。


    $ KEYBIND MY_KEY.DAT 
    

  5. profile を自分のログイン・ディレクトリにコピーします。すでにログイン・ディレクトリにある場合は必要ありません。


    $ COPY SYS$LIBRARY:IM$PROFILE.DAT SYS$LOGIN: 
    

  6. エディタを使って,ログイン・ディレクトリにある IM$PROFILE.DAT の中の次の行を変更します。


    (変更前)DEC-JAPANESE.KEY.keybind : IM$KEY_JVMS_LEVEL2 
    (変更後)DEC-JAPANESE.KEY.keybind : SYS$LOGIN:MY_KEY 
    

6.2 日本語入力の変換キー

テキストを入力する際に使用する変換キーには,次の4つの変換キー定義があります。このうちのいずれか1つを使用することができます。特に何も指定しない限り,変換キー定義は JVMS となります。変換キー定義の変更方法に関しては 第 6.2.1 項 を参照してください。

注意

ワークステーションで日本語キーボードを使う場合は,『リリース・ノート』の「日本語キーボード」節に記述されている省略時の設定を行ってください。

表 6-2 JVMS変換キー定義
機能 キー操作1
漢字変換/文節次候補 [Ctrl+スペース]
漢字候補一覧 2 [Ctrl+]`
ひらがな変換/文節ひらがな変換 [Ctrl+L]
カタカナ変換/文節カタカナ変換 [Ctrl+K]
半角カナ変換 [Ctrl+G] [Ctrl+K]
全角変換 [Ctrl+F]
半角変換 [Ctrl+G] [Ctrl+F]
記号変換/コード入力 [Ctrl+]]
大文字変換 ---
小文字変換 ---
次文節移動 [Ctrl+P]
前文節移動 [Ctrl+G] [Ctrl+P]
文節縮小 [Ctrl+/]
文節拡大 [Ctrl+G] [Ctrl+/]
文節前候補 [Ctrl+G] [Ctrl+スペース]
または [Ctrl+G] [Ctrl+L]
全文確定 [Ctrl+G] [Ctrl+N]
文節確定 ---
変換取消/無変換 [Ctrl+N]


1[Ctrl+スペース][Ctrl]キーを押しながら [スペース] キーを押すことを示します。
[Ctrl+G] [Ctrl+K][Ctrl+G] を押した後に [Ctrl+K] を押すことを示します。
2[ ]` はキーボードの左上のキーです。

表 6-3 EVEJ変換キー定義
機能 キー操作1
漢字変換/文節次候補 [Ctrl+スペース]
漢字候補一覧 2 [Ctrl+]`
ひらがな変換/文節ひらがな変換 [Ctrl+H]
カタカナ変換/文節カタカナ変換 [Ctrl+K]
半角カナ変換 [PF1] [Ctrl+K]
全角変換 [Ctrl+F]
半角変換 [Ctrl+E]
記号変換/コード入力 [PF1] [ Z ]
大文字変換 ---
小文字変換 ---
次文節移動 [Ctrl+P]
前文節移動 [PF1] [Ctrl+P]
文節縮小 [Ctrl+A]
文節拡大 [PF1] [Ctrl+A]
文節前候補 [PF1] [Ctrl+スペース]
全文確定 ---
文節確定 ---
変換取消/無変換 [Ctrl+N]


1[Ctrl+スペース][Ctrl]キーを押しながら [スペース] キーを押すことを示します。
[PF1] [ Z ][PF1] を押した後に [ Z ] を押すことを示します。
2[ ]` はキーボードの左上のキーです。

表 6-4 LEIA変換キー定義
機能 キー操作1
漢字変換/文節次候補 [KP7]
漢字候補一覧 2 [Ctrl+]`
ひらがな変換/文節ひらがな変換 [KP1]
カタカナ変換/文節カタカナ変換 [KP2]
半角カナ変換 [KP6]
全角変換 [KP3]
半角変換 [KP9]
記号変換/コード入力 [KP8]
大文字変換 ---
小文字変換 ---
次文節移動 [KP5]
前文節移動 [PF1] [KP5]
文節縮小 [KP4]
文節拡大 [PF1] [KP4]
文節前候補 [PF1] [KP7]
全文確定 ---
文節確定 ---
変換取消/無変換 [KP0]


1[KP0][KP9]は数字キーパッドの[ 0 ][ 9 ]を表します。
[PF1] [KP6][PF1] を押した後に [KP6] を押すことを示します。
2[ ]` はキーボードの左上のキーです。

表 6-5 TARO変換キー定義
機能 キー操作1
漢字変換/文節次候補 [スペース]
漢字候補一覧 2 [Ctrl+]`
ひらがな変換/文節ひらがな変換 [F11]
カタカナ変換/文節カタカナ変換 [F12]
全角変換 3 [F14]
半角変換 3 [F13]
記号変換/コード入力 [Ctrl+]]
大文字変換 ---
小文字変換 ---
次文節移動 [↓]
前文節移動 ---
文節縮小 [←]
文節拡大 [→]
文節前候補 [↑]
全文確定 [Return]
文節確定 [↓]
変換取消 4 < X|


1[Ctrl+]] は [Ctrl]キーを押しながら [ ]] キーを押すことを示します。
2[ ]` はキーボードの左上のキーです。
3漢字/カタカナ/ひらがな変換を行った後に全角/半角変換を行うことはできません。この場合は,変換取消を行った後に全角/半角変換を行ってください。
4TARO変換キー定義には無変換キーはありません。

注意

1 一太郎は株式会社ジャストシステムの登録商標です。


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