ソフトウェア・バージョン: | OpenVMS AXP 6.1 |
以下は他社の商標です。
BASIC は,米国 Dartmouth College 社の商標です。
Futurebus+ は,ドイツ Federal Republic 社の商標です。
INGRES は,米国 Whitmoore Group 社の商標です。
Internet は,米国 Internet 社の商標です。
Motif および OSF/1 は,米国 Open Software Foundation 社の商標です。
ORACLE は,米国 Oracle 社の商標です。
PostScriptは,Adobe Systems Incorporated の商標です。
Windows NT は,米国Microsoft Corporation 社の商標です。
その他すべての商標は,それぞれの所有者のものです。
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本書は,VAXシステムからAXPシステムに既存のアプリケーションを移行する処理の概要をまとめた解説書であり,実際の移行作業の計画を立てるのに役立つ情報が記載されています。本書では,移行を計画するときに判断しなければならない事柄と,それらの判断を下すのに必要な情報の入手方法について説明します。実際の移行プロセスの技術的な説明についの詳細は,このまえがきの"参考文献"という節に示した解説書を参照してください。
本書は,OpenVMS VAXシステムからOpenVMS AXPシステムに移行する際に,アプリケーションを評価し,移行の計画を立てる責任者を対象にしています。
本書は,6つの章と2つの付録,用語集で構成されています。
第 1 章 |
以下のように,OpenVMSとVAXアーキテクチャおよびAlpha AXPアーキテクチャの関係をまとめます。
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第 2 章 |
AXPシステムに移行するプロセスの概要を示します。特に次の情報を示します。
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第3章以降では,移行プロセスの実際の操作を説明し,VAXアプリケーションを移行するための作業の各段階と,効果的な移行計画の作成方法について説明します。
第 3 章 | アプリケーション全体を分析し,正確に何を移行するのかを判断する方法について説明します。 |
第 4 章 | 2つの主な移行の手段の相違点を考慮し,アプリケーションを移行するときに,その手段の選択について判断しなければならない問題点を説明します。また,アプリケーションの各部分を分析して,アーキテクチャの違いが,移行にどのような影響を与えるかを判断する方法と,これらの違いを解決するために,何が必要であるかを評価する方法について説明します。 |
第 5 章 | VAXからAXPへの移行計画の作成方法について説明します。 |
第 6 章 | 実際の移行の実施について,移行環境の設定をはじめ,移行したアプリケーションを新しい環境に統合する方法まで,詳しく説明します。 |
付録 A | OpenVMS VAXからOpenVMS AXPに移行するアプリケーションを評価するときに使用できるチェック・リストを示します。 |
付録 B | 移行計画の例を示します。 |
用語集 | 本書で紹介した用語の定義を示します。 |
OpenVMS AXPへの移行に関する参考文献として,次のマニュアルがあります。
このマニュアルでは,VAXアプリケーションを再コンパイルし,再リンクすることにより,そのアプリケーションのAXPバージョンを構築する方法について説明します。既存のアプリケーションがVAXアーキテクチャ固有の機能に依存している場合には(たとえば,ページ・サイズや同期,条件処理などに関する仮定など),ネイティブなAXPバージョンを作成するために,これらの部分を変更しなければなりません。さらに,このマニュアルでは,ネイティブなAXPのコンポーネントが,トランスレートされたVAXのコンポーネントと相互にやりとりできるようなアプリケーションの作成方法についても説明します。
このマニュアルでは,VAX Environment Software Translator(VEST)ユーティリティについて説明します。VESTは,DECmigrate for OpenVMS AXPというオプションのレイヤード・プロダクトに付属しており,VAXアプリケーションをOpenVMS AXPに移行する処理をサポートします。このマニュアルでは,大部分のユーザ・モードVAX イメージを,AXPシステムで実行可能なトランスレートされたイメージに変換するためにVESTを使用する方法,トランスレートされたイメージの実行時性能を向上する方法,VAXイメージの中でAXPと互換性のない部分を元のソース・ファイルでトレースするためにVESTを使用する方法,ネイティブなランタイム・ライブラリとトランスレートされたランタイム・ライブラリの間で互換性を維持するためにVESTを使用する方法について説明します。このマニュアルではまた,完全なVESTコマンド・リファレンスも示します。
このマニュアルでは,VAX MACRO-32 Compiler for OpenVMS AXPを使用して VAX MACROコードを AXPシステムに移植する方法およびコンパイラの機能,移植不可能なコーディング様式の識別法,このようなコーディング様式のかわりとなる適切な方法などについて説明します。このマニュアルではまた,コンパイラの修飾子,ディレクティブ,および組み込み機能と,OpenVMS AXPに移植するために作成されたシステム・マクロの詳細な説明を示したリファレンスも記載されています。
この他にも,次に示すような移行プロセスで役立つ解説書があります。
このマニュアルには,システム全体を移行するにあたって,システム管理に関して考慮しなければならない情報がまとめられています。
このマニュアルには,OpenVMS VAX と OpenVMS AXP の相違点に関する詳しい情報がまとめられています。
このマニュアルには,Alpha AXPアーキテクチャの定義が示されています。機械語プログラムから見たAlpha AXP CPUの動作の,詳しい説明が記載されています。
このマニュアルでは,OpenVMS AXPオペレーティング・システムの内部構造について説明されています。
このマニュアルでは,別のプロシージャを呼び出すときにプロシージャが使用する規則を規定し,これらの規則をサポートするための引数の受け渡し方法とその構造を定義します。
本書は,『Migrating to an OpenVMS Alpha System: Planning for Migration』の日本語翻訳版です。日本DEC の提供するサービスについては記述と異なる場合がありますので,詳細については日本DECにお問い合わせください。
本書では,以下の表記がそれぞれ,
を意味しています。 |
本書では次の表記法を使用します。
表記法 | 意味 |
---|---|
[Return] | 四角形で囲まれたこの記号は,キーボードのキーを押すことを示します。たとえば,[Return]は Returnキーを押すことを示します。 |
[Ctrl/x] | [Ctrl/x] の記号は,Ctrl キーを押しながら,同時にあるキーを押すことを示します。たとえば,[Ctrl/c] は Ctrl キーと c 文字キーを同時に押します。 |
[PF1/X] | [PF1/X]の記号は,最初に[PF1]キーを押し,離した後,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
... | 例の中で水平反復記号は,次のいずれかを示します。
|
. . . |
垂直反復記号は,コード例やコマンド形式から項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要でないからです。 |
() | 括弧は,複数のオプションを選択するときに,選択項目を括弧で囲まなければならないことを示す。 |
<lbrack symbol> <rbrack symbol> | 大括弧は,項目が省略可能であることを示します(しかし,VMSファイル指定のディレクトリ名の構文や,代入文の部分文字列指定の構文では,大括弧は省略可能ではありません)。 |
<lbrace symbol> <rbrace symbol> | 中括弧は,必ず1つを選択しなければならない項目を囲むために使用します。 |
太字 | 太字のテキストは,用語集で説明されている新しい用語を導入する場合や,引数,属性,条件の名前を示すために使用します。 また,マニュアルのオンライン・バージョンでユーザ入力を示す場合も,太字のテキストを使用します。 |
イタリック体 | イタリック体のテキストは,システム・メッセージやコマンド・ラインの中で,変化する可能性のある情報を表現します。 |
英大文字 | 英大文字は,コマンド,修飾子,パラメータ,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。 |
− | コード例で使用されているハイフンは,要求に対する追加引数が後続の行に指定されることを示します。 |
数字 | 特に示した場合を除き,説明文の内部で使用している数字はすべて 10 進数です。数値が 10 進数以外(2進数,8進数,16 進数)の場合には,そのことが明記されます。 |
「 」 | かぎ括弧は,この製品のドキュメント構成に含まれるマニュアル名を示します。 |
『 』 | 二重かぎ括弧は,この製品のドキュメント構成に含まれないマニュアル名または,別の製品のマニュアル名を示します。 |
多くのアプリケーションにとって,OpenVMS VAXからOpenVMS AXPへの移行(migration)は簡単です。アプリケーションがユーザ・モードでのみ実行され,標準的な高級言語で作成されている場合には,ほとんどの場合,AXPコンパイラを使用してそのアプリケーションを再コンパイルし,再リンクすることにより,AXPシステムで実行可能なバージョンを作成できます。本書では,移行するアプリケーションを評価する方法,およびもっと複雑で特殊な場合の対処方法について説明します。
1.1 VAXシステムとAXPシステムの互換性
OpenVMS AXPオペレーティング・システムは,OpenVMS VAXのユーザ,システム管理,およびプログラミングの環境とできるだけ互換性(compatibility)を維持するように設計されています。一般的なユーザとシステム管理者にとって,OpenVMS AXP は OpenVMS VAX と同じインターフェイスを備えています。プログラマにとっての目標は,「再コンパイル,再リンク,実行」という移行のモデルにできるだけ近づけることです。
OpenVMS VAXシステムで動作しているアプリケーションの場合,ほとんどの部分は OpenVMS AXPシステムでも変更されません。
DIGITALコマンド言語(DCL)はOpenVMSに対する標準的なユーザ・インターフェイスであり,OpenVMS AXPでも変更されません。OpenVMS VAXで使用できるすべてのコマンド,修飾子,およびレキシカル関数はOpenVMS AXPでも使用できます。
OpenVMS VAXの以前のバージョンを対象に作成されたコマンド・プロシージャは,OpenVMS AXPシステムでもまったく変更せずに動作します。しかし,ビルド・プロシージャなどのある特定のコマンド・プロシージャは,新しいコンパイラ修飾子やリンカ・スイッチに対応できるように変更しなければならないことがあります。リンカ・オプション・ファイルも変更が必要な場合があり,特に共有可能イメージ(shareable image)の場合は変更が必要となります。
ウィンドウ・インターフェイスであるDECwindows Motifは変更されません。
DECformsインターフェイスは変更されません。
2つの標準的なOpenVMSエディタであるEVEとEDTは変更されません。
システム管理ユーティリティはほとんど変更されません。ただし,おもな例外が1つあります。それはデバイス構成管理機能で,OpenVMS VAXシステムでは System Generation utility(SYSGEN)で提供される機能ですが,OpenVMS AXPでは System Generation utility(SYSMAN)で提供されます。詳しくは『A Comparison of System Management on OpenVMS AXP and OpenVMS VAX』を参照してください。
概して,システム・サービスおよびランタイム・ライブラリ(RTL)呼び出しインターフェイスは変更されません。引数の定義を変更する必要はありません。相違点がいくつかありますが,これらの相違点は,次の2種類に分類されます。
- 一部のシステム・サービスとランタイム・ライブラリ・ルーチン(メモリ管理システムと例外処理サービス)は,VAXシステムとAXPシステムとでは,少し異なる方法で動作します。詳しくは『OpenVMS System Services Reference Manual』と『OpenVMS RTL Library(LIB$)Manual』を参照してください。
- 一部のランタイム・ライブラリ・ルーチンはVAXアーキテクチャに密接に関係しており,AXPシステムでは意味がありません。これらのルーチンは次のとおりです。
ルーチン名 制約事項 LIB$DECODE_FAULT VAX命令をデコードする LIB$DEC_OVER VAXプロセッサ・ステータス・ロングワード(PSL)のみに適用される LIB$ESTABLISH AXPシステムでは,類似する機能をコンパイラがサポートする LIB$FIXUP_FLT VAX PSLのみに適用される LIB$FLT_UNDER VAX PSLのみに適用される LIB$INT_OVER VAX PSLのみに適用される LIB$REVERT AXPシステムではコンパイラがサポートする LIB$SIM_TRAP VAXコードに適用される LIB$TPARSE 動作ルーチンのインターフェイスの変更が必要である。LIB$TABLE_PARSEに置換されている
これらのサービスとルーチンを呼び出すVAXイメージの大部分は,VEST(VAX Environment Software Translator)を使ってトランスレートし,OpenVMS AXPのTIE(Translated Image Environment)のもとで実行すれば,正しく動作します。TIEについての詳しい説明は,第 6.2.2.1 項 と『DECmigrate for OpenVMS AXP Systems Translating Images』を参照してください。
ODS-2データ・ファイルのディスク上でのフォーマットは,VAXシステムとAXPシステムとで同じです。しかし,ODS-1ファイルはOpenVMS AXPでサポートされません。レコード管理サービス(RMS)とファイル管理インターフェイスは変更されていません。
IEEEリトル・エンディアン・データ型であるS浮動小数点(S_floating)と T浮動小数点(T_floating)が追加されました。
大部分のVAXデータ型(data type)はAlpha AXPアーキテクチャでもそのまま使用できます。しかし,システム全体の性能を向上するために,H浮動小数点(H_floating)と完全な精度のD浮動小数点(G_floating)のハードウェアによるサポートはなくなりました。
AXPハードウェアはD浮動小数点データを処理のためにG浮動小数点に変換します。VAXシステムでは,D浮動小数点は56ビット(D56)であり,16桁の精度です。AXPシステムでは,D浮動小数点は53ビット(D53)であり,15桁の精度です。
H浮動小数点データ型とD浮動小数点データ型は通常,G浮動小数点または IEEEフォーマットのいずれかに変換されます。しかし,H浮動小数点が必要な場合や,D56(56ビットのD浮動小数点)の精度が必要な場合には,アプリケーションの一部をトランスレートしなければなりません。
標準的なDECのデータベース(Rdb/VMSなど)は,VAXシステムとAXPシステムで同様に機能します。
VAXシステムとAXPシステムはどちらも次のインターフェイスをサポートします。
- インターコネクト
- プロトコル
- 周辺装置接続
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