日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS

日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS

日本語機能の手引き

AA-PUL3K-TE


2004 年 1 月

本書は,日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS の日本語処理機能について説明します。

改訂情報: 改訂版

オペレーティング・システム: 日本語 OpenVMS Alpha V7.3-1, V7.3-2

ソフトウェア・バージョン: 日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS V5.4


2004 年 1 月

Copyright 2004 Hewlett-Packard Development Company, L.P.

本書に記載しているすべての製品名は,それぞれの会社の商標です。

次へ 目次 索引


第 1 章
日本語機能の概要

1.1 漢字フィルタ

日本語 OpenVMS では,日本語(漢字)の符号化に関して DEC 漢字が使われていますが,各社のコンピュータ上での日本語(漢字) の符号化にはシフト JIS,日本語 EUC, JIS 7 ビットなどさまざまな符号化方法が使用されているのが現状です。 TCP/IPに基づいたマルチベンダ環境のコンピュータ・ネットワークを構築する場合,これらの符号化方法の違いを考慮する必要があります。

たとえば SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)では, 8 ビット・データの送信が保証されていません。そのため多くの場合,ISO 2022 に基づいた JIS 7 ビット符号化が使用され, 8 ビット構成の DEC 漢字をそのままメール・メッセージとして送信しても正しく届けられません。同様に,SMTP でメールを受信する場合も,JIS 7 ビットのままで受信したメール・メッセージは,日本語OpenVMS上では,正しく表示されません。

また,シフト JIS を採用しているシステムへ OpenVMS から TELNET によりリモート・ログインを行った場合,漢字文字が正しく表示されません。

日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS では,このような場合に起こる不都合を解決する手段として,DEC 漢字以外の日本語(漢字) コードからDEC 漢字への変換,およびその逆の変換を行うフィルタ機能を提供します (本書では,DEC 漢字は SS2 付きの半角カタカナを含む SuperDEC 漢字のことを指します)。以下のTCP/IPアプリケーションにおいて,これらの変換を行うためのフィルタが設定できます。

この機能により,前述したTCP/IP ネットワーク環境における日本語(漢字)の符号化にともなう問題点に対処することができます。

これらの TCP/IP アプリケーションにおけるフィルタの利用例を以下に示します。

図 1-1 :TELNET の場合

図 1-1 TELNET の場合


図 1-2 :FTP 送信の場合

図 1-2 FTP 送信の場合


図 1-3 :FTP 受信の場合

図 1-3 FTP 受信の場合


図 1-4 :SMTP 送信の場合

図 1-4 SMTP 送信の場合


図 1-5 :SMTP 受信の場合

図 1-5 SMTP 受信の場合


図 1-6 :リモート・プリント送信の場合

図 1-6 リモート・プリント送信の場合


図 1-7 :リモート・プリント受信の場合

図 1-7 リモート・プリント受信の場合


1.2 標準で提供される漢字フィルタの構成と種類

日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS では, FTP,TELNET,SMTP,リモート・プリントそれぞれのユーティリティに対して,以下の構成で漢字フィルタの設定が可能です。

表 1-1 :漢字フィルタの設定

表 1-1 漢字フィルタの設定
サービス クライアント サーバ
FTP
TELNET ×
SMTP
リモート・プリント

以下の漢字フィルタが標準で提供されています。これらのフィルタの詳細な仕様については, 第 4 章 を参照してください。

表 1-2 :標準で提供される漢字フィルタ

表 1-2 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

ユーザが必要に応じて,独自のフィルタ・ルーチンを作成して使用することも可能です。この方法については, 第 3 章 を参照してください。

また日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS では, ANET+で用いられている漢字フィルタを使用することも可能です。この方法についても 第 3 章 を参照してください。

注意

ANET+ は,日本語 HP TCP/IP Services for OpenVMS と同様に OpenVMS 上で TCP/IP の通信プロトコルに基づいたサービスを提供するソフトウェアで,従来より弊社が開発,および販売しています。


第 2 章
漢字フィルタの使用方法

2.1 FTP での漢字フィルタ使用方法

FTP クライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。

UNIX 形式のコマンドを用いる場合

(UNIX 形式のコマンドの使用方法については,『 HP TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。)

     $ FTP/FILTER=フィルタ名

     または

     FTP> filter [フィルタ名]

OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合

     $ FTP/FILTER=フィルタ名

     または

     FTP> set filter フィルタ名

論理名を用いる場合

     $ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名

設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。

UNIX 形式のコマンドを用いる場合

     FTP> status

OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合

     FTP> show status

あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。

表 2-1 :標準で提供されるフィルタ

表 2-1 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。

FTP サーバでのフィルタの指定は,FTPのプロトコルで定義されている "QUOTE"と "SITE"コマンドを使用してリモートの FTP クライアントから行います。以下に,設定例を示しますが,ユーザの使用するコマンドの形式は,クライアント・システムにより,異なる場合もありますのでご注意ください。

なお,FTP サーバでは論理名でフィルタを指定することはできません。

     ftp> quote "site filter フィルタ名"

設定したフィルタを解除するには,次のようにフィルタ名を指定せずに SITE FILTER コマンドを実行します。

     ftp> quote "site filter"

注意

FTP では,バイナリ・モードのときには FILTER の指定を無視します。

2.2 TELNETでの漢字フィルタ使用方法

TELNETクライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。

コマンドでの指定は以下のようになります。

     $ TELNET/FILTER=フィルタ名

     または

     TELNET> CONNECT/FILTER=フィルタ名

論理名での指定は以下のようになります。

     $ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER フィルタ名

TELNETクライアントでは,サーバ(リモート・ノード)からクライアント(自ノード)方向の転送のみにフィルタ機能が提供されます。また,TELNETサーバとしては,フィルタ設定はできません。あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。

表 2-2 :標準で提供されるフィルタ

表 2-2 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

フィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。

設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。

     TELNET> status

     または

     TELNET> show status

注意

マルチセッションの場合, "$ TELNET/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは最初のセッションのみに有効で, "TELNET> CONNECT/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは,そのセッションのみに有効です。

マルチセッションの詳細に関しては,『 HP TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。

2.3 SMTPでの漢字フィルタ使用方法

SMTPでは以下のように,TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。

形式 :


$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER フィルタ名 

SMTP受信フィルタの設定は,システム(/SYSTEM)論理名定義で行います。個別ユーザの設定は行えません。SMTP送信フィルタの設定は,/SYSTEM で定義された設定が全てのユーザに適用されますが,各ユーザが個別に(プロセス) 論理名を定義すれば,そのフィルタ設定が有効となります。

SMTP で漢字フィルタを使用する場合,以下のことに注意してください。

あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。

表 2-3 : 標準で提供されるフィルタ

表 2-3 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。

2.4 リモート・プリントでの漢字フィルタ使用方法

リモート・プリント・クライアントで漢字フィルタを使用するには TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。PRINTCAPファイルの設定方法については,『 HP TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。


:kf=フィルタ名: 

この時,以下のように,PRINTコマンドの中にフィルタの指定がある場合は,指定されたフィルタが優先的に選択されます。

     $ PRINT/PARAMETER=(FILTER=フィルタ名)

あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。

表 2-4 :標準で提供されるフィルタ

表 2-4 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

それぞれのフィルタについての詳細は, 第 4 章 を参照してください。

リモート・プリント・サーバで漢字フィルタを使用する場合,同様に TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。この場合は,リモート・ノードからのフィルタ設定の変更はできません。


:kf=フィルタ名: 

2.5 COPY/FTP での漢字フィルタ使用方法

COPY コマンドを用いて FTP を行う場合,以下のように TCPIP$FTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,COPY コマンドでは, /FILTER 修飾子は指定できません。

形式:


$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名 

表 2-5 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS

2.6 SET HOST/TELNET での漢字フィルタの使用方法

SET HOST コマンドを用いて TELNET を行う場合,以下のように TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,SET HOST コマンドでは /FILTER 修飾子は指定できません。

表 2-6 標準で提供される漢字フィルタ
  フィルタ名
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) JIS
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) JISM
シフト JIS 漢字フィルタ SJIS
UJIS 漢字フィルタ UJIS


次へ 目次 索引