Compaq OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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11.6 状態遷移の手法

OpenVMS Cluster の状態遷移は,OpenVMS Cluster システムに対してシステムを追加したり削除したとき,そして OpenVMS Cluster がクォーラム・ディスクの状態遷移を検出すると発生します。接続マネージャは,これらのイベントを受けて OpenVMS Cluster 内のデータの一貫性を維持するように対応します。

状態遷移が問題になるのは,システムが OpenVMS Cluster システムに対して頻繁に追加あるいは削除され,それによって障害が発生する場合です。

ユーザとアプリケーションに対する状態遷移の間隔と効果は,遷移の理由,構成,使用中のアプリケーションによって決まります。遷移を有効に管理すれば,システム・マネージャは以下の対応ができます。

11.6.1 状態遷移の処理

以下の指針は,実際の遷移時間を短縮し,遷移後の影響を最小限にするための方法をまとめたものです。

関連項目: OpenVMS Cluster 遷移とそのフェーズ,システム・パラメータ,クォーラム管理の詳細については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

11.7 マルチ・バージョンの移行サポートと保証サポート

Compaq では,複合バージョンと複合アーキテクチャの OpenVMS Cluster システムに対し,2 つのレベルのサポート,移行サポートと保証サポートを提供しています。

保証サポートとは,OpenVMS Cluster 上に 2 つのバージョンが共存することを認めているものであり,これらの構成を使用している利用者から寄せられた問題にはすべて回答します。

移行サポートは,OpenVMS の旧リリースで提供されていた Rolling Upgrade サポートの上位セットであり,保証されていない複合バージョンで利用できます。移行サポートとは,新しいバージョンの OpenVMS VAX や OpenVMS Alpha に段階的に移行しつつある構成で,共に使用できるバージョンを明確に示すサポートです。弊社は,これらの構成に対して提出される問題レポートに回答します。ただし,例外事例については,問題に対する回答の中で,保証されている構成に移行するよう依頼する場合があります。

弊社は,アーキテクチャに関係なく,クラスタ内で同時に実行できる OpenVMS のバージョンを 2 つだけサポートします。移行サポートは,カスタマのクラスタ環境に対して,最小限の影響で,保証されている OpenVMS Cluster 複合バージョンに移行するのを支援するサポートです。

表 11-6 は,各バージョンの組み合わせに対するサポート・レベルです。

表 11-6 OpenVMS Cluster の保証サポートと移行サポート
  Alpha/VAX V7.3 Alpha V7.2--xxx/
VAX V7.2
Alpha/VAX V7.1
Alpha/VAX V7.3 保証 移行 移行
Alpha V7.2-- xxx/
VAX V7.2
移行 保証 移行
Alpha/VAX V7.1 移行 移行 保証

複合バージョンのクラスタでは,OpenVMS の旧バージョンに修正キットをインストールする必要があります。 OpenVMS バージョン 7.3 の場合, OpenVMS の旧バージョンを実行しているすべてのノードに,必要な修正キットをインストールしていない限り,2 つの機能,XFC およびボリューム・シャドウイングの minicopy 操作は,複合バージョンのクラスタのどのノードでも実行できません。修正キットは,OpenVMS Alpha/VAX バージョン 7.1 のボリューム・シャドウイングの minicopy 操作を除き,すべてのバージョンでどちらの機能についても利用できます。

必要な修正キットの完全なリストについては,『 OpenVMS V 7.3 リリース・ノート【翻訳版】』を参照してください。

11.8 1 つの OpenVMS Cluster に Alpha システムと VAX システム

OpenVMS Alpha システムと OpenVMS VAX システムは,同じ OpenVMS Cluster に組み込んで,両方の柔軟性と移行の機能を利用できます。Alpha の処理能力を既存の VAXcluster に追加することで,システムやハードウェアに固有のアプリケーションを活用できます。

表 11-6 は,弊社が移行サポートと保証サポートを提供する OpenVMS バージョン・ペアです。

11.8.1 アーキテクチャを横断しての OpenVMS Cluster のサテライト・ブート

OpenVMS Alpha バージョン 7.1 と OpenVMS VAX バージョン 7.1 では,VAX ブート・ノードから Alpha サテライトとブート・サービスを提供でき,また逆に,Alpha ブート・ノードからは VAX サテライトにブート・サービスを提供することができます。このサポートをクロス・アーキテクチャ・ブートといい,構成の柔軟性とサテライトに対するブート・サーバの可用性を高めることができます。

クロス・アーキテクチャ・ブートが必要な構成状況としては,次の 2 通りが考えられます。

11.8.2 制限事項

OpenVMS オペレーティング・システムおよびレイヤード・プロダクトのインストールとアップグレードは,アーキテクチャを越えて実行することはできません。たとえば, OpenVMS Alpha ソフトウェアのインストールとアップグレードには Alpha システムを使用します。クロス・アーキテクチャ・ブートを利用できる OpenVMS Cluster システムを構成するとき,各アーキテクチャから少なくとも 1 システムは,インストールとアップグレードに使用できるディスクで構成してください。

システム・ディスクに常駐できる OpenVMS オペレーティング・システムのバージョンは 1 つだけであり,アーキテクチャ固有のバージョンとします。たとえば, OpenVMS VAX バージョン 7.1 を OpenVMS Alpha バージョン 7.1 のシステム・ディスクに共存させることはできません。

11.9 バックアップとストレージの管理手法の選択

どのようなシステムでも,人的ミスと同様にハードウェア障害や電気的障害から逃れることはできません。重要なデータは,バックアップをとり,このようなエラーを最小限に抑えるようにしなければなりません。バックアップに利用できる時間とリソースによって方法はさまざまです。

11.9.1 バックアップ手法の選択手順

バックアップ手法を選択するには,以下の手順に従ってください。

手順 説明
1 障害の発生時に失われる作業量の範囲を決めます。これにより,バックアップ実行の必要頻度が決まります。
2 バックアップ時に,データを使用できない時間を決めます。これで,バックアップの方法が決まります。
3 頻度,バックアップを実行する頻度や時刻,日にち,週などのバックアップ・スケジュールを作成します。

次の項目を決めます。

  • 毎日,毎週,毎月のバックアップ・データ量。

  • バックアップはフル・バックアップとするか,増分バックアップとするか。それぞれの実行頻度。

4 十分なバックアップ媒体が得られるかを確認します。当初必要なバックアップ媒体の容量と,必要量の増加ペースを決定します。
5 採用するバックアップ手法で,バックアップ媒体をサイト外部で保管する必要があるかどうかを決定します。

11.10 ディスク・バックアップ

表 11-7 は,バックアップ用のデータ・コピーの提供方法を示しています。

表 11-7 データのバックアップ方法
データの種類 バックアップ方法
データベースが常時変化。トランザクションは必ず保存する。 データベース・バックアップ (静的であることがわかっているタイミングで) とデータベースに対するジャーナル・トランザクションを組み合わせて使用します。

関連項目: その他補足情報については,以下のマニュアルも参照してください。

  • 『RMS Journaling for OpenVMS Manual』

  • 『Guide to OpenVMS File Applications』

  • 『DEC Rdb Guide to Database Design and Definition』

  • 『DEC DBMS Database Design Guide』

  • 『DEC DBMS Database Maintenance and Performance Guide』

夜昼,週末を問わず常時データにアクセスする必要がある。 Volume Shadowing for OpenVMS ソフトウェアを利用してファースト・ディスク・バックアップを実行します。シャドウ・セットのマウントを解除し,シャドウ・セットを 2 メンバで再マウントし,3 番目のディスクを磁気テープにコピーして 3 メンバ・シャドウ・セットからメンバを削除します。この後,3 番目のディスクを再びシャドウ・セットに組み込むことができます。
バックアップ時間が長くてもデータを利用できるものとする。 OpenVMS Backup ユーティリティ (BACKUP) を利用してボリュームのイメージ・バックアップや,指定ファイル・セットのファイル単位コピーを作成します。 BACKUP では,コピーを別のディスク (またはディスク・セット) または磁気テープに作成できます。イメージ・コピーの復元では,イメージ全体をディスクに書き込む必要があります。復元したファイルは,復元したディスクから目的の宛先までコピーされます。

一方,イメージ・コピーは,ファイルを 1 つずつコピーするファイル単位コピーよりも高速です。バックアップ・コピーから 1 つのファイルを復元するのは簡単です。フィルタ単位復元では,復元したディスクのフラグメンテーションを大幅に削減できます。

データは静的である。 データのコピーを磁気テープにアーカイブし,オンライン・ファイルは他のバックアップ手順から除外するだけで十分です。このバックアップ方法は,プログラム・ソース,ドキュメンテーション・ファイル,配布キットに使用します。
スクラッチ・ファイルと中間ファイル。 これらのファイルにはバックアップをしなくてもかまいません。

11.11 テープのバックアップ

バックアップ・テープ・ストレージは,最も経済的なストレージ媒体です。テープは,オフライン・ストレージとして最も一般的な媒体であり,容量,経費,保存寿命もさまざまです。一般に,テープ・ストレージはリムーバブルであり,通常オフラインです。

11.11.1 バックアップのその他の情報

バックアップ手順の詳細については,以下のマニュアルを参照してください。

11.11.2 無人バックアップの長所

現在のテープ・ドライブ・テクノロジでは,オペレータの操作 (テープの交換など) なしで実行できる大規模バックアップ操作が可能です。このような無人バックアップでは,時間と人件費を大幅に節約できます。Tx 8x7 や TA91 などのテープ・マガジン付きのカートリッジ・テープ・ローダでは,オンライン・ストレージをほぼ 42 GB まで無人でバックアップすることができます。また, TC44 インターコネクト・アダプタを経由して,StorageTek 4400 ACS のようなロボットによる媒体アクセスをする装置を使用するとテラバイト容量のバックアップ・アーカイブが可能です。

11.11.3 Archive/Backup System for OpenVMS

Archive/Backup System for OpenVMS は,Storage Library System (SLS) に代わるシステムです。Archive/Backup では,経済的にシステム管理ができ,また器機の経費も削減できるだけでなく,データのセキュリティも守られます。 POLYCENTER Media Library Manager (MLM) と POLYCENTER Media Robot Manager (MRM) により,データを経済的なテープに保存し,バックアップしてアーカイブしたデータを簡単に探し出すことができます。POLYCENTER MLM と MRM は,OpenVMS ユーザに安全で信頼性が高く,テープと光学リムーバブル媒体までの完全アクセス自動化を,Odetics 5480 や Tx8x7 ファミリなど,ロー・コストな媒体ロボットにより実現した最初の Compaq 製品です。

11.11.4 StorageTek 4400 ACS

StorageTek 4400 ACS ストレージ・サイロは,TC44 アダプタを利用して HSC に,あるいは KCM44 アダプタを利用してシステムの XMI バスに直接接続できます。 StorageTek Silo は,IBM 3480 互換カートリッジ・テープのライブラリへのアクセスを自動化します。ライブラリには,最高で 16 のライブラリ・ストレージ・モジュールを保管できます。各モジュールには,最大で 1.2 TB のデータを 6000 本のテープ・カートリッジで保管できます。テープを要求すると,ロボット・アームが 45 秒から 90 秒以内にテープを探し出してマウントします。OpenVMS Backup ユーティリティなど,テープ・アプリケーションのデータ移動は TA90 テープ・ドライブと同じ方法で実行します。

11.11.5 テープ・ドライブのパフォーマンスとキャパシティ

表 11-8 は,さまざまなテープ・ドライブとそれを接続するインターコネクトについて,パフォーマンスとキャパシティを示しています。

表 11-8 テープ・ドライブ・パフォーマンスとキャパシティ
インターコネクト 説明
CI (STI テープ) TA92 は 2.6 MB/s でデータを転送できます。 IBM 3480 互換マガジン・カートリッジ・テープでは,38 GB のバックアップを無人で実行できます。パフォーマンスを最大限に発揮するには,TA92 を KDM70 コントローラで接続するか,テープ・ドライブまでのパスをディスク・ドライブまでのパスと分けるため,複数の CI アダプタで構成します。
DSSI The TF867 では,最高のテープ・パフォーマンスを実現できます。 1/2 インチ・カートリッジ・テープのマガジンには,最高で 42 GB のデータを無人バックアップできます。転送速度は 0.8 MB/s です。TF857 は TK50 テープと TK70 テープを読み取ることができ,そのマガジンには最高で 18 GB のデータを保存できます。
SCSI TSZ07 では,SCSI 構成により,9 トラックのリール間テープのアクセスが可能です。容量はリール当たり 140 MB,転送速度は 750 KB/s です。TZK10 は経済的ですが,SCSI 構成のテープ方式としては低速です。525 MB を保存できる 1/4 インチ・カートリッジを使用し,200 KB/s で転送することができます。


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