Compaq OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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D.3.2 DS3 通信サービス (T3 通信サービス)

図 D-4 に示すように,DS3 通信サービスは全二重通信を提供します。 DS3 (T3 ともいう) では,45 Mb/s の T3 標準ビット・レートを利用できます。T3 は,北米や他の多くの国々に普及している標準サービスです。

図 D-4 DS3 Service


D.3.3 FDDI-to-WAN ブリッジ

図 D-5 に示すように,FDDI-to-WAN (たとえば,FDDI-to-ATM と FDDI-to-DS3 のどちらか,または両方) ブリッジは,距離を隔てて配置されたサイトにノードがある OpenVMS Cluster の構成に使用できます。この図では,各サイトの OpenVMS Cluster ノード同士は,2 つのサイトが FDDI で接続されている場合と同様に通信できます。FDDI-to-WAN ブリッジにより,OpenVMS Cluster ソフトウェアにとって ATM と DS3 の存在は透過になります。

図 D-5 DS3 で結合したマルチサイト OpenVMS Cluster 構成


図 D-5 で,FDDI-to-DS3 ブリッジと DS3 は以下のように動作します。

  1. ローカル FDDI-to-DS3 ブリッジが,他のサイトのノードにアドレス指定された FDDI パケットを受け取ります。

  2. ブリッジは FDDI パケットを DS3 パケットに変換し,そのパケットを DS3 リンクで他のサイトに送信します。.

  3. 受信側 FDDI-to-DS3 ブリッジは,DS3 パケットを FDDI パケットに変換し,それを,そのサイトの FDDI リングで発信します。

FDDI-to-WAN ブリッジの構築には,GIGAswitch/FDDI システムの使用を推奨します。 GIGAswitch/FDDI は,DEFGT WAN T3/SONET オプション・カードと組み合わせて,マルチサイト OpenVMS Cluster システムにおける ATM 通信サービスと DS3 通信サービスの認定テストに使用していました。

D.3.4 OpenVMS Cluster システムにおける ATM と DS3 の構成指針

マルチサイト OpenVMS Cluster の構成では,サイト間リンクの遅延,帯域幅,可用性,ビット・エラー率の特性がアプリケーションのニーズを満たしているか確認する必要があります。この項では,それらの要件とともに推奨値について説明します。

D.3.4.1 要件

Compaq の認定構成として,マルチサイト OpenVMS Cluster は以下の規則に従います。

サイト間リンクの最長経路 マルチサイト OpenVMS Cluster のメンバ間で,サイト間リンクのケーブル経路の最長距離は 242 km とします。正確な測定距離については,ATM サプライヤか DS3 サプライヤに確認してください。

この距離の許容上限値は, Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS を利用することにより,引き上げることができます。 Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMSは, OpenVMS ディザスタ・トレラントなクラスタを構成し管理するためのシステム管理機能であり,ソフトウェア・パッケージです。

サイト間リンクの最大利用率 サイト間リンクの任意の 10 秒間の平均利用率は,両方向とも,リンクの帯域幅の 80% を超えないものとします。この利用率を超えると,許容範囲を超えるキュー遅延やパケット・ロスが頻繁に発生する可能性があります。
サイト間リンクの仕様 サイト間リンクは, 表 D-3 で指定した OpenVMS Cluster 要件を満たす必要があります。
OpenVMS Cluster LAN 構成規則 LAN 上の OpenVMS Cluster システムの構成規則を構成に適用します。構成規則の内容については, 付録 D.1.3 項 を参照してください。

D.3.4.2 推奨値

DS3 インターコネクトの構成時には,『OpenVMS Cluster Software SPD』 (SPD 29.78.nn) ,および,本書に掲載してあるLAN 接続の OpenVMS Cluster システムの構成指針に従ってください。各サイトの OpenVMS Cluster メンバには,サテライト,システム,その他 CI や DSSI などのインターコネクトを任意で組み合わせて組み込めます。

この項では,マルチサイト OpenVMS Cluster システムの構成に必要なその他の推奨値を紹介します。

DS3 リンク・キャパシティ/プロトコル

WAN T3/SONET オプション・カード付きの GIGAswitch では,全二重の,155 Mb/s ATM/SONET リンクを利用できます。このリンクの全帯域幅は,すべて WAN オプション・カードに充てられます。ただし,GIGAswitch/FDDI の内部デザインは, FDDI に対する全二重拡張機能を基にしています。したがって,GIGAswitch/FDDI のデザインにより,ATM/SONET リンクのキャパシティは両方向とも 100 Mb/s に制限されます。

WAN T3/SONET オプション・カード付き GIGAswitch には,DS3 リンクで使用できるプロトコル・オプションがあります。DS3 リンクは,全帯域幅が WAN オプション・カードに充てられるクリアなチャンネル・モードで使用してください。DS3 リンクのキャパシティは,選択したプロトコル・オプションによって異なります。プロトコル・オプションについては, 表 D-1 を参照してください。

表 D-1 DS3 プロトコル・オプション
プロトコル・オプション リンク・キャパシティ
PLCP 3 無効の ATM 1 AAL-5 2 モード 39 Mb/s
PLCP 有効の ATM AAL-5 モード 33 Mb/s
HDLC 4 モード (現在は使用可能) 43 Mb/s


1非同期転送モード
2ATM 適合レイヤ
3物理レイヤ収束プロトコル
4高速データリンク制御

リンク・キャパシティを最大限にするには,PLCP を無効にしてATM AAL-5 モードを使用するようWAN T3/SONET オプション・カードを構成することをお勧めします。

サイト間帯域幅

サイト間帯域幅により,アプリケーション・ロッキング,I/O パフォーマンス (ボリューム・シャドウイングや RAID 設定コピー回数),ロック・マネージャのパフォーマンスが制約されることがあります。

適切な応答時間を達成するには,平均トラフィックがサイト間リンクの両方向とも,任意の 10 秒間にリンクの帯域幅の 60% を超えないよう設定してください。これを超えると,FDDI-to-WAN ブリッジ内の遅延によりアプリケーション・パフォーマンスが悪化します。

リンクの利用状況を計算するときは,OpenVMS Cluster 通信 (ロッキングや I/O) とネットワーク通信 (TCP/IP,LAT,DECnet など) を必ず考慮してください。

サイト間遅延

サイト間リンクでは,サイト間ケーブル長 100 マイルにつき最高 1 ms の一方向遅延と,両端の FDDI-to-WAN ブリッジにおける遅延を合わせた遅延が生じます。アプリケーション応答時間とスループットに対するサイト間遅延の影響を忘れないでください。

たとえば,サイト間リンクの一方向パス遅延には,以下のような構成要素があります。

ラウンド・トリップ遅延は,以下のように計算します。

WAN ラウンド・トリップ遅延 = 2 x (N マイル x 0.01 ms/マイル + 2 x 0.5 ms/マイル FDDI-WAN ブリッジ)

MSCP サービスによる I/O 書き込み操作には,少なくともラウンド・トリップ・パケット交換が 2 回必要です。

WAN I/O 書き込み遅延 = 2 x WAN ラウンド・トリップ遅延

したがって,100 マイル WAN リンクによる I/O 書き込みは,短い,ローカル FDDI による同じ I/O 書き込みよりも,少なくとも 8 ms 余分にかかります。

同じく,ロック操作では,パケットのラウンド・トリップ交換が少なくとも 2 回は必要です。

WAN ロック操作遅延 = WAN ラウンド・トリップ遅延

I/O 操作において,同期のために N 回ロックをすると,WAN による遅延は以下のようになります。

WAN ロックの I/O 操作遅延 = (N x WAN ロック操作遅延) + WAN I/O 遅延

ビット・エラー率

ビット・エラー率 (BER) パラメータは,サイト間リンクにおけるビット・エラーの発生確度を示す重要な尺度です。マルチサイト OpenVMS Cluster を構成するときは,アプリケーション・スループットと応答に対するビット・エラーの影響を考慮する必要があります。サイト間リンク・ビット・エラーが発生すると,パケットが失われたり,アプリケーション I/O 応答時間 ( 付録 D.3.6 項 参照)の遅延後に再送されることがあります。ビット・エラーごとのアプリケーション遅延が, 200 ミリ秒から 300 ミリ秒になると,パケットが失われる可能性があります。

サイト間リンクの可用性

サイト間リンク・サービスに割り込みがあると,接続が復元されるまで 1 個所以上のサイトのリソースが利用できなくなることがあります ( 付録 D.3.5 項 参照)。

システム・ディスク

クォーラム・ボーツに寄与するノードを備えたサイトには,ローカル・システム・ディスクやそれらのノード用のディスクがあります。

システム管理

大規模なマルチサイト OpenVMS Cluster には,各種業務担当者が使用する多数の異種システムからなる環境をサポートできるよう,トレーニングを受けたシステム管理スタッフが必要です。

マイクロ波 DS3 リンク

DS3 リンクには部分的に,マイクロ波無線器機を接続できます。 付録 D.3.6 項 の仕様は,DS3 リンクに適用します。マイクロ波無線部分の BER と可用性は,局地的な天候やリンクのマイクロ波部分の長さの影響を受けます。マイクロ波を DS3 リンクの部分として使用する場合は,マイクロ波コンサルタントの協力を得てください。

D.3.5 可用性の考慮

複数のサイトを接続する FDDI-to-WAN ブリッジとリンクが一時的に利用できなくなった場合は,以下のような状況になります。

多くの通信事業者は,パスの多様性,保護の切り替え,その他,サイト間リンクの可用性を大幅に増加するオプションなど,可用性強化オプションを用意しています。

D.3.6 仕様

この項では,WAN 通信サービスにおける通信とパフォーマンスの要件について説明します。

WAN サービス・サプライヤとの交渉上の便宜を考え,この項では,電気通信事業者が広く使用している WAN 仕様の用語と定義を使用します。これらの要件と目標値は, Bellcore Communications Research の仕様と,OpenVMS Clusters のエラーによる影響を弊社で解析した結果の組み合わせから抽出したものです。

表 D-2 で説明する用語は, 表 D-3 で使用した Bellcore と OpenVMS Cluster の要件と目標値の説明に使用されます。

表 D-3 で指定した ATM/SONET - OC3 と DS3 サービス・エラー・パフォーマンス (品質) のBellcore 要件と OpenVMS Cluster 要件は,サービス・サプライヤのサービス品質,可用性,ダウン・タイム,サービス割り込み頻度の目標値がシステムにどう影響するかを評価するときに使用します。

注意

OpenVMS Cluster システムがアプリケーションの応答時間の要件を満たしているかを確認するには, 表 D-3 で定めた Bellcore と OpenVMS Cluster の要件および目標値を超える WAN 要件を達成する必要があります。

表 D-2 Bellcore と OpenVMS Cluster の要件と目標値の用語
仕様 要件 目標
Bellcore Communications Research Bellcoreの仕様は,Bellcore Technical Reference TR--TSY--000499 TSGR: Common Requirements にまとめられた推奨の"一般的なエラー・パフォーマンス要件と目標値"です。これらの仕様は,WAN サプライヤがサービス保証として採用しています。FCC でも,これらを通信事業者間のタリフ・サービスとして採用しています。ただし,サプライヤによっては,顧客の要求に応じてさらに高品質なサービス提供を契約をする場合もあります。

他の国々では,Bellcore 仕様とパラメータに匹敵する仕様とパラメータを用意しています。

これらは推奨最低値です。Bellcore では,これらの目標値を TSGR: Common Requirements マニュアルの"目標値" と呼んでいます。
OpenVMS Cluster コンパックが構成を認定するには, 表 D-3 のOpenVMS Cluster 要件列に示す値以上の値にパラメータが応じる必要があります。

目標値を達成していない値があると,インターコネクト・エラー回復遅延と, OpenVMS Cluster の状態遷移とサイト・フェールオーバのどちらか,または両方の原因になる VC 閉止により,OpenVMS Cluster で満足なパフォーマンスが得られなくなります。

これらの値が目標値以上であれば,インターコネクト・ビット・エラー関連の回復遅延があっても OpenVMS Cluster の平均スループットが極端に悪化するのを防ぐことができます。また,OpenVMS Cluster の応答時間は,全般的に満足できる値になります。

要件が満たされないと, 1 時間当たり複数回のアプリケーション一時停止が発生します。 1

OpenVMS Cluster 操作を最適化するには,すべてのパラメータが OpenVMS Cluster の目標値以上の値を満足するものとします。

これらの目標値以上の値が満足されている場合は,インターコネクト・ビット・エラーとビット・エラー回復遅延があっても,OpenVMS Cluster の平均スループットが極端に悪化するのを防ぐことができます。

アプリケーションの短時間の一時停止が 毎日2,3 回発生するかもしれませんが,OpenVMS Cluster の応答時間は,全般的に満足できる値になります。 2


1ビット・エラーによるパケット・ロスのため,アプリケーションの一時停止はほぼ毎時間発生します (OpenVMS Cluster 要件の説明と同様)。
2一時停止の原因は,1 個所以上の NISCA 伝送仮想回路上の損失パケットによる仮想回路の再送タイムアウトです。1 回の一時停止は, 200〜300 ミリ秒から 2〜3 秒続きます。

表 D-3 OpenVMS Cluster DS3 と SONET OC3 エラー・パフォーマンスの要件
パラメータ Bellcore の要件 Bellcore の目標値 OpenVMS Cluster の要件1 OpenVMS Cluster の目標値1 単位
エラー秒 (% ES) <1.0% <0.4% <1.0% <0.028% % ES/24 hr
  次のように,ES パラメータは,エラー秒でも表すことができます。
  <864 <345 <864 <24 ES per 24-hr period
バースト・エラー秒 (BES) 2 <= 4 -- <= 4 Bellcore の目標値 BES/day
ビット・エラー率 (BER) 3 1 x 10 -9 2 x 10 -10 1 x 10 -9 6 x 10 -12 Errored bits/bit
DS3 チャンネルの使用不可状態 なし <= 97 @ 250 マイル,24 @<= 25 マイルまで直線的に低下 なし Bellcore の目標値 Min/yr
SONET チャンネルの使用不可状態 なし <= 105 @ 250 マイル,21 @<= 50 マイル直線的に低下 なし Bellcore の目標値 Min/yr
チャンネルの使用不可イベント 4 なし なし なし 1 から 2 Event/year


1アプリケーション要件は,OpenVMS Cluster 要件列に表示した値よりも厳しくなる場合があります。
2多数の日数の平均値。
3測定期間中に発生したバースト・エラー秒を含まず。
41 年に発生したチャンネル・ダウンタイム期間の平均回数。このパラメータは,チャンネルが使用できなくなる頻度を指定するときに使用します。

テーブル・キー



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