Compaq OpenVMS
V7.3 新機能説明書


前へ 次へ 目次 索引


4.4.5 AlphaServer GS シリーズ・システムでの専用 CPU Lock Manager の使用

新しい AlphaServer GS シリーズ・システム (GS80,GS160,GS320) では, NUMA メモリ機能を利用できます。これらのシステムで専用 CPU Lock Manager を使用する場合,1 つの Quad Building Block (QBB) から CPU とメモリを利用することで,最適なパフォーマンスを達成できます。

OpenVMS バージョン 7.3 では,専用 CPU Lock Manager は,どの QBB メモリから割り当てなければならないかを判断する機能を備えていません。しかし,ロック・マネージャのメモリを低い QBB からあらかじめ割り当てることは可能です。この処理を行うには,LOCKIDTBL システム・パラメータを使用します。このシステム・パラメータは,ロック ID テーブルの初期サイズと,ロック・マネージャ・データ構造のためにあらかじめ割り当てる初期メモリ容量を示します。

適切な容量のメモリをあらかじめ割り当てるには,このシステム・パラメータをシステムで発生する最大数のロックおよびリソースの合計に設定しなければなりません。この情報は,MONITOR LOCK コマンドを使用して確認できます。システムのロックの数が 100,000 で,リソースの数が 50,000 であることが MONITOR から示された場合,LOCKIDTBL をこの 2 つの値の合計に設定することで,十分なメモリを初期割り当てすることができます。また,追加オーバヘッドをある程度加算しておくと役立ちます。この例では,LOCKIDTBL を 200,000 に設定すると適切でしょう。

必要に応じて,LCKMGR_CPUID システム・パラメータを使用して, LCKMGR_SERVER が低い QBB の CPU で実行されることを確認してください。

4.5 OpenVMS Enterprise Directory for e-Business ( Alpha ) 1

OpenVMS Enterprise Directory for e-Business は非常に拡張性の高いディレクトリ・サービスであり,追加ライセンス料金を必要とせずに, OpenVMS Alpha で X.500 サービスと LDAPv3 サービスの両方を提供します。OpenVMS Enterprise Directory for e-Business には次の機能があります。

詳細については,OpenVMS バージョン 7.3 の CD-ROM キットに同梱されている Compaq OpenVMS e-Business Infrastructure CD-ROM パッケージを参照してください。

注意

1 OpenVMS VAX では,Compaq X.500 Directory Service バージョン 3.1 によって同様のサービスが提供されますが, LDAP のサポートは提供されず,パフォーマンスも制限されています。

4.6 Extended File Cache (Alpha)

Extended File Cache (XFC) は,仮想 I/O キャッシュの代わりに OpenVMS Alpha バージョン 7.3 で提供されるようになった新しい仮想ブロック・データ・キャッシュです。

仮想 I/O キャッシュと同様に,XFC はクラスタ全体で有効なファイル・システム・データ・キャッシュです。どちらのファイル・システム・データ・キャッシュも OpenVMS Cluster 内で互換性があり,共存可能です。

XFC では,仮想 I/O キャッシュにはなかった以下の機能により, I/O パフォーマンスが向上しています。

詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』のデータ・キャッシュの管理に関する章を参照してください。

4.7 INSTALL ユーティリティに追加された /ARB_SUPPORT 修飾子 (Alpha)

OpenVMS Alpha バージョン 7.3 以降,INSTALL ユーティリティの ADD コマンド,CREATE コマンド,REPLACE コマンドで /ARB_SUPPORT 修飾子を使用できるようになりました。 /ARB_SUPPORT 修飾子を使用すると,スレッドごとのセキュリティ Persona Security Block (PSB) データ構造をまだ更新していない製品に Access Rights Block (ARB) のサポートが提供されます。

この新しい修飾子は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の INSTALL ユーティリティのドキュメントに説明されています。

4.8 MONITOR ユーティリティの新機能

MONITOR ユーティリティで,RLOCK と TIMER という 2 つの新しいクラス名が追加されました。次の方法で使用できます。

この拡張機能の詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の MONITOR の項,およびそのマニュアルで MONITOR レコードの形式について説明している付録を参照してください。

また,MONITOR ユーティリティでは,MONITOR CLUSTER, PROCESSES/TOPCPU,SYSTEM の表示画面も変更され,スケール値をこれまでより大きく設定できるようになりました。詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (下巻) 』を参照してください。

4.9 OpenVMS Cluster システム

ここでは,次の OpenVMS Cluster 機能について説明します。

4.9.1 クラスタ単位の侵入検出機能

OpenVMS バージョン 7.3 では,クラスタ単位の侵入検出機能が提供されます。この機能を利用すると,クラスタ全体であらゆる種類の攻撃に対する保護機能を強化できます。各システムから集められた侵入データおよび情報が統合され,クラスタ全体が保護されます。OpenVMS バージョン 7.3 より前のバージョンを実行しているメンバ・システム,およびこの機能が無効に設定されているメンバ・システムは個別に保護されますが,クラスタ全体での侵入情報の共用に参加しません。

クラスタ内のメンバ・システムで SECURITY_POLICY システム・パラメータを変更することで,不正な操作や侵入イベントの状態が登録されているローカルの侵入データベースまたはクラスタ単位の侵入データベースを管理できます。

SECURITY_POLICY のビット 7 がクリアされている場合,システムが攻撃されたり,侵入イベントが記録されると,そのことがすべてのクラスタ・メンバに通知されます。 1 つのシステムにイベントが記録されると,クラスタ内の他のシステムは侵入防止のための処置を講じることができます (たとえば,ログインしようとしている人を細かく監視し,一定時間内のログインの試行を特定の回数に制限できます。試行回数または時間制限を超えた場合は,そのユーザはログインできません)。デフォルト設定では,SECURITY_POLICY のビット 7 はクリアされています。

システム・サービス $DELETE_INTRUSION,$SCAN_INTRUSION,$SHOW_INTRUSION の詳細については,『OpenVMS System Services Reference Manual』を参照してください。

DCL コマンド DELETE/INTRUSION_RECORD と SHOW INTRUSION の詳細については,『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。

クラスタ単位の侵入検出機能の詳細については,『OpenVMS Guide to System Security』を参照してください。

4.9.2 Fast Path for SCSI および Fibre Channel (Alpha)

Fast Path for SCSI および Fibre Channel (FC) は OpenVMS バージョン 7.3 で導入された新機能です。この機能により,特定の SCSI ポートや FC を使用する対称型マルチプロセシング (SMP) マシンのパフォーマンスを向上できます。

OpenVMS の以前のバージョンでは,SCSI および FC の I/O の完了はプライマリ CPU によってのみ処理されていました。Fast Path が有効に設定されていると,I/O の完了処理は SMP システムのすべてのプロセッサで行うことができます。この結果, SMP システムで実現可能な I/O のスループットを大幅に向上でき,プライマリ CPU が飽和状態になるのを防止するのに役立ちます。

Fast Path for SCSI および FC を制御するために導入された SYSGEN パラメータ,FAST_PATH_PORTS の詳細については, 第 4.12.2 項 を参照してください。

4.9.3 OpenVMS Cluster システムでサービスされるフロッピー・ディスク (Alpha)

本リリースまで,MSCP はディスクのサービスに限定されていました。 OpenVMS バージョン 7.3 から OpenVMS Cluster システムでフロッピー・ディスクのサービスがサポートされるようになり,この機能は MSCP で有効になります。

OpenVMS Cluster システムでフロッピー・ディスクをサービスするには,フロッピー・ディスクの名前がポート割り当てクラス名の命名規則に従っていなければなりません。ポート割り当てクラスを含むデバイス名の命名の詳細については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

OpenVMS VAX クライアントは,OpenVMS Alpha バージョン 7.3 の MSCP サーバからサービスされるフロッピー・ディスクにアクセスできますが,OpenVMS VAX システムがフロッピー・ディスクをサービスすることはできません。クライアント・システムは,ポート割り当てクラスをサポートするバージョンであれば,どのバージョンでもかまいません。

4.9.4 新しい Fibre Channel のサポート (Alpha)

新しい Fibre Channel ハードウェアのサポート,従来より大規模な構成,Fibre Channel Fast Path,従来より大きな I/O 操作が OpenVMS バージョン 7.3 で提供されるようになりました。次の機能が提供されます。

OpenVMS バージョン 7.2-1 および OpenVMS バージョン 7.3 では,次の新しい Fibre Channel ハードウェアが正常に動作することが確認されています。

OpenVMS は Fibre Channel ファブリック をサポートするようになりました。Fibre Channel ファブリックは,相互に接続された複数の Fibre Channel スイッチです (Fibre Channel ファブリックはカスケード・スイッチとも呼ばれます)。

Fibre Channel ファブリックを使用する構成は非常に大規模になる可能性があります。複数サイトの OpenVMS Cluster システムでは,最大 100 キロメートルまでの距離がサポートされます。OpenVMS は Fibre Channel SAN 構成をサポートします。この構成については, Compaq StorageWorks Heterogeneous Open SAN Design Reference Guide を参照してください。このマニュアルは次のアドレスの Compaq Web サイトから入手できます。


http://www.compaq.com/storage 

Fast Path for Fibre Channel を有効にすると,SMP システムで I/O スループットを大幅に向上できます。この新機能の詳細については, 第 4.9.2 項 を参照してください。

OpenVMS Alpha バージョン 7.3 より以前のバージョンでは, 127 ブロックより大きい I/O 要求は Fibre Channel ドライバによって複数の I/O 要求に分割されていました。一般に,細かく分割された I/O 操作は 1 つの大きい I/O よりパフォーマンスが低下します。 OpenVMS バージョン 7.3 では,最大 256 ブロックまでの I/O 要求は分割されません。

OpenVMS Cluster 構成で Fibre Channel を使用する方法については,『Compaq OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.9.4.1 新しい Fibre Channel テープのサポート (Alpha)

Fibre Channel テープ機能とは,共用 Fibre Channel ストレージを装備した OpenVMS Cluster システム内で提供される SCSI テープおよび SCSI テープ・ライブラリのサポートのことです。 SCSI テープおよびライブラリは,MDR (Modular Data Router) という Fibre-to-SCSI ブリッジによって Fibre Channel に接続されます。

構成情報については,『Compaq OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.9.5 クラスタ・インターコネクトとしての LAN

OpenVMS Cluster システムでは,イーサネット,Fast Ethernet, Gigabit Ethernet,ATM,FDDI など,複数の LAN インターコネクトをノード間通信のために使用できます。

クラスタ・ポート・ドライバである PEDRIVER は,NISCA プロトコルを使用して LAN 上でクラスタ通信を可能にします。PEDRIVER はもともとブロードキャスト・メディア用に設計されており,全二重伝送やもっと複雑なネットワーク・トポロジも含めて,スイッチ LAN で提供されるすべての機能を活用できるように,設計が見直されました。

ノード間クラスタ通信のために LAN を使用すると,再設計された PEDRIVER から次のメリットが得られます。

4.9.5.1 SCA Control Program

SCA Control Program (SCACP) ユーティリティは,クラスタ通信の監視と管理を行うことができるように設計されています (SCA は Systems Communications Architecture の略称であり, OpenVMS Cluster システム内のノードが通信できるようにするための通信メカニズムを定義します)。

OpenVMS バージョン 7.3 では,SCACP を使用して,SCA での LAN パスの使用を管理できます。将来は,SCACP を使用して,他の OpenVMS Cluster インターコネクトを介した SCA 通信の監視と管理も行うことができるようになる予定です。

このユーティリティの詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (下巻) 』の新しい章を参照してください。

4.9.5.2 パケットの紛失に関する新しいエラー・メッセージ

OpenVMS バージョン 7.3 より以前のバージョンでは, SCS 仮想サーキットのクローズは,LAN パスが使用できなくなることを示す最初の前兆現象でした。 OpenVMS バージョン 7.3 では,使用可能な最後の LAN パスが非常に高い率でパケットを紛失するようになると,PEDRIVER が次のコンソール・メッセージを表示します。


%PEA0, Excessive packet losses on LAN Path from local-device-name - 
 _  to device-name on REMOTE NODE node-name

このメッセージは,PEDRIVER がローカル・デバイス,中間ネットワーク,リモート・ノードのデバイスで構成される LAN パス上でパケットの再送を非常に高い頻度で実行するようになった後表示されます。このメッセージは, LAN パスの品質が低下し,リモート・ノードとの信頼できる通信がもはや不可能になるポイントに近づいているか,またはそのようなポイントに到達したことを示します。パケットの紛失が続く場合は,リモート・ノードとの仮想サーキットがクローズされる可能性が高くなります。さらに,LAN パケットの紛失率が高い状態で操作を続行すると,パケット紛失検出タイムアウトおよびパケットの再送によって通信の遅延時間が発生するため,パフォーマンスが大幅に低下します。

この問題が発生した場合は,次の操作を行ってください。

  1. ローカルおよびリモートの LAN デバイスのエラー・カウントを調べ,問題がデバイスに存在するかどうか確認します。各ノードで次のコマンドを実行します。


    $ SHOW DEVICE local-device-name
    $ MC SCACP 
    SCACP> SHOW LAN device-name
    $ MC LANCP 
    LANCP> SHOW DEVICE device-name/COUNT 
    

  2. ローカル・デバイスのデバイス・エラー・カウントが正常値の範囲内である場合は,ネットワーク管理者に連絡して,デバイス間の LAN パスを診断してもらってください。

    必要に応じて,コンパックのサポート担当者に連絡し,LAN パスの問題の診断について,支援を要請してください。

PEDRIVER のトラブルシューティングの詳細については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』の付録 F を参照してください。


前へ 次へ 目次 索引