本書は,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS の日本語処理機能について説明します。
改訂情報: 改訂版
オペレーティング・システム: 日本語 OpenVMS Alpha V7.2-2, V7.3
日本語 OpenVMS VAX V7.2, V7.3
ソフトウェア・バージョン: 日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS V5.3
(c) 2002 Compaq Computer K.K.
Compaq,Compaq ロゴ,Alpha,DCPS,DECnet,OpenVMS,VAX および VMS は, Compaq Information Technologies Group, L.P. の商標です。
本書に記載しているその他すべての製品名は,それぞれの会社の商標です。
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日本語 OpenVMS では,日本語(漢字)の符号化に関して DEC 漢字が使われていますが,各社のコンピュータ上での日本語(漢字) の符号化にはシフト JIS,日本語 EUC, JIS 7 ビットなどさまざまな符号化方法が使用されているのが現状です。 TCP/IPに基づいたマルチベンダ環境のコンピュータ・ネットワークを構築する場合,これらの符号化方法の違いを考慮する必要があります。
たとえば SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)では, 8 ビット・データの送信が保証されていません。そのため多くの場合,ISO 2022 に基づいた JIS 7 ビット符号化が使用され, 8 ビット構成の DEC 漢字をそのままメール・メッセージとして送信しても正しく届けられません。同様に,SMTP でメールを受信する場合も,JIS 7 ビットのままで受信したメール・メッセージは,日本語OpenVMS上では,正しく表示されません。
また,シフト JIS を採用しているシステムへ OpenVMS から TELNET によりリモート・ログインを行った場合,漢字文字が正しく表示されません。
日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では,このような場合に起こる不都合を解決する手段として,DEC 漢字以外の日本語(漢字) コードからDEC 漢字への変換,およびその逆の変換を行うフィルタ機能を提供します (本書では,DEC 漢字は SS2 付きの半角カタカナを含む SuperDEC 漢字のことを指します)。以下のTCP/IPアプリケーションにおいて,これらの変換を行うためのフィルタが設定できます。
この機能により,前述したTCP/IP ネットワーク環境における日本語(漢字)の符号化にともなう問題点に対処することができます。
これらの TCP/IP アプリケーションにおけるフィルタの利用例を以下に示します。
図 1-1 :TELNET の場合
図 1-1 TELNET の場合
図 1-2 :FTP 送信の場合
図 1-2 FTP 送信の場合
図 1-3 :FTP 受信の場合
図 1-3 FTP 受信の場合
図 1-4 :SMTP 送信の場合
図 1-4 SMTP 送信の場合
図 1-5 :SMTP 受信の場合
図 1-5 SMTP 受信の場合
図 1-6 :リモート・プリント送信の場合
図 1-6 リモート・プリント送信の場合
図 1-7 :リモート・プリント受信の場合
図 1-7 リモート・プリント受信の場合
1.2 標準で提供される漢字フィルタの構成と種類
日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では, FTP,TELNET,SMTP,リモート・プリントそれぞれのユーティリティに対して,以下の構成で漢字フィルタの設定が可能です。
表 1-1 :漢字フィルタの設定
サービス | クライアント | サーバ |
---|---|---|
FTP | ○ | ○ |
TELNET | ○ | × |
SMTP | ○ | ○ |
リモート・プリント | ○ | ○ |
以下の漢字フィルタが標準で提供されています。これらのフィルタの詳細な仕様については, 第 4 章 を参照してください。
表 1-2 :標準で提供される漢字フィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
ユーザが必要に応じて,独自のフィルタ・ルーチンを作成して使用することも可能です。この方法については, 第 3 章 を参照してください。
また日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS では, ANET+で用いられている漢字フィルタを使用することも可能です。この方法についても 第 3 章 を参照してください。
ANET+ は,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS と同様に OpenVMS 上で TCP/IP の通信プロトコルに基づいたサービスを提供するソフトウェアで,従来より弊社が開発,および販売しています。 |
FTP クライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。
UNIX 形式のコマンドを用いる場合
(UNIX 形式のコマンドの使用方法については,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。)
$ FTP/FILTER=フィルタ名
または
FTP> filter [フィルタ名]
OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合
$ FTP/FILTER=フィルタ名
または
FTP> set filter フィルタ名
論理名を用いる場合
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名
設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。
UNIX 形式のコマンドを用いる場合
FTP> status
OpenVMS 形式のコマンドを用いる場合
FTP> show status
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-1 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
FTP サーバでのフィルタの指定は,FTPのプロトコルで定義されている "QUOTE"と "SITE"コマンドを使用してリモートの FTP クライアントから行います。以下に,設定例を示しますが,ユーザの使用するコマンドの形式は,クライアント・システムにより,異なる場合もありますのでご注意ください。
なお,FTP サーバでは論理名でフィルタを指定することはできません。
ftp> quote "site filter フィルタ名"
設定したフィルタを解除するには,次のようにフィルタ名を指定せずに SITE FILTER コマンドを実行します。
ftp> quote "site filter"
FTP では,バイナリ・モードのときには FILTER の指定を無視します。 |
TELNETクライアントでの漢字フィルタの設定には,コマンド・インタフェースによる方法と,論理名で指定する方法の 2 通りがあります。コマンドと論理名の両方で別々のフィルタを指定した場合は,コマンドによる指定が優先されます。
コマンドでの指定は以下のようになります。
$ TELNET/FILTER=フィルタ名
または
TELNET> CONNECT/FILTER=フィルタ名
論理名での指定は以下のようになります。
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER フィルタ名
TELNETクライアントでは,サーバ(リモート・ノード)からクライアント(自ノード)方向の転送のみにフィルタ機能が提供されます。また,TELNETサーバとしては,フィルタ設定はできません。あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-2 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
フィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
設定したフィルタの確認は,以下のコマンドで行います。
TELNET> status
または
TELNET> show status
マルチセッションの場合, "$ TELNET/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは最初のセッションのみに有効で, "TELNET> CONNECT/FILTER= フィルタ名 ホスト名" で指定した漢字フィルタは,そのセッションのみに有効です。 マルチセッションの詳細に関しては,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』を参照してください。 |
SMTPでは以下のように,TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。
形式 :
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$SMTP_KANJI_FILTER フィルタ名 |
SMTP受信フィルタの設定は,システム(/SYSTEM)論理名定義で行います。個別ユーザの設定は行えません。SMTP送信フィルタの設定は,/SYSTEM で定義された設定が全てのユーザに適用されますが,各ユーザが個別に(プロセス) 論理名を定義すれば,そのフィルタ設定が有効となります。
SMTP で漢字フィルタを使用する場合,以下のことに注意してください。
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-3 : 標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は 第 4 章 を参照してください。
2.4 リモート・プリントでの漢字フィルタ使用方法
リモート・プリント・クライアントで漢字フィルタを使用するには TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。PRINTCAPファイルの設定方法については,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。
:kf=フィルタ名 |
この時,以下のように,PRINTコマンドの中にフィルタの指定がある場合は,指定されたフィルタが優先的に選択されます。
$ PRINT/PARAMETER=(FILTER=フィルタ名)
あらかじめ提供されるフィルタは,以下の4つです。
表 2-4 :標準で提供されるフィルタ
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
それぞれのフィルタについての詳細は, 第 4 章 を参照してください。
リモート・プリント・サーバで漢字フィルタを使用する場合,同様に TCPIP$PRINTCAP.DAT中に以下のエントリを追加します。この場合は,リモート・ノードからのフィルタ設定の変更はできません。
:kf=フィルタ名 |
COPY コマンドを用いて FTP を行う場合,以下のように TCPIP$FTP_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,COPY コマンドでは, /FILTER 修飾子は指定できません。
形式:
$ DEFINE [/SYSTEM] TCPIP$FTP_KANJI_FILTER フィルタ名 |
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
2.6 SET HOST/TELNET での漢字フィルタの使用方法
SET HOST コマンドを用いて TELNET を行う場合,以下のように TCPIP$TELNET_KANJI_FILTER という論理名に,設定したいフィルタ名を定義します。なお,SET HOST コマンドでは /FILTER 修飾子は指定できません。
フィルタ名 | |
---|---|
7 ビット JIS 漢字フィルタ (1) | JIS |
7 ビット JIS 漢字フィルタ (2) | JISM |
シフト JIS 漢字フィルタ | SJIS |
UJIS 漢字フィルタ | UJIS |
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