この章では,個人辞書編集ユーティリティ (JDICEDIT) について説明します。
個人辞書編集ユーティリティ(JDICEDIT)は,日本語エディタなどの「かな漢字変換」 が使用する単語辞書(個人辞書)を編集するためのユーティリティで, 次の機能があります。
扱う単語辞書は「個人辞書」のみです。「システム辞書」の参照・変更はできません。 また,文節学習,文節切り学習データファイルの参照,変更もできません。
この節では,JDICEDITコマンドの形式,パラメータについて説明します。
個人辞書編集ユーティリティを起動します。
JEDIT/PERSONAL_DICTIONARY [ サブコマンド[ /修飾子...] [パラメータ] ]
JDICEDIT>
というプロンプトが表示され,サブコマンドの入力を要求します。
サブコマンドについての詳細は,第4.3節をご覧ください。
JDICEDITユーティリティには次のサブコマンドがあります。
サブコマンド | 機能 |
---|---|
APPEND | 単語ファイルの単語を辞書ファイルに追加登録します。 |
CREATE | 新しい辞書ファイルを作成します。 |
EDIT | 画面上で単語を登録・削除・検索します。 |
EXIT | 終了します。 |
EXTRACT | 辞書ファイルの単語をファイルに出力します。 |
HELP | ヘルプを表示します。 |
REBUILD | 辞書ファイルを再構成します。 |
SHOW DICTIONARY | 省略時の辞書ファイル名を表示します。 |
次の項から各サブコマンドについて説明します。
日本語エディタなどで作成した単語ファイルの単語を辞書ファイルに追加登録します。 辞書ファイルのバージョンは更新され, 旧バージョンの辞書ファイルはそのまま残ります。単語ファイルの形式については, 第4.6節を参照してください。
<形式>
JDICEDIT>APPEND [/修飾子][辞書ファイル名]
辞書ファイル名を省略した場合には,SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHOに追加登録します。 論理名JSY$KOJINが定義されているときは,その辞書ファイルに追加登録します。
<修飾子>
/INPUT [=ファイル指定 [,...] ]
入力する単語ファイル名を指定してください。ファイル名の省略時設定値は ‘辞書ファイル名.TANGO’です。
/LIST [=ファイル指定] /NOLIST (省略時設定)
単語ファイルの内容をエラー情報を含めて出力します。 ファイル名の省略時設定値は‘単語ファイル名.LIS’です。
/LOG (省略時設定) /NOLOG
更新された辞書ファイル名を表示します。
<形式>
JDICEDIT>CREATE [/修飾子]辞書ファイル名
新規に作成する辞書ファイル名を指定します。辞書ファイル名は省略できません。
<修飾子>
/LOG (省略時設定) /NOLOG
作成した辞書ファイル名を表示します。
辞書ファイルの単語を画面に表示して単語の登録・削除・検索を行います。 EDIT終了時に辞書ファイルの更新を指定すると, バージョンを更新した新しい辞書ファイルが作られ, 旧バージョンの辞書ファイルはそのまま残ります。
<形式>
JDICEDIT>EDIT [/修飾子][辞書ファイル名]
辞書ファイル名を省略した場合には,SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHOを編集します。 論理名 JSY$KOJINが定義されている場合は,そのファイルを編集します。
<修飾子>
/LOG (省略時設定) /NOLOG
出力した辞書ファイル名を表示します。
図 4-1にEDITの画面レイアウトを示します。
EDITの画面を表示中はキーパッドに 図 4-2の機能が定義されています。
読みをキーとして単語を検索します。GOLDキーの次に[PF3]キーを押し, 検索する単語の読みを入力します。
カーソルが示している行を削除します。矢印キー([↓] ,[↑])を押して, カーソルを削除する単語に移動し[PF4]キーを押します。
GOLDキーの次に[PF4]キーを押すと,最後に削除した単語を回復します。 同じ読みの単語が複数ある場合, カーソルがその読みを持つ単語を指しているときにはその行の上に挿入され, それ以外の単語を指しているときには,その読みを持つ単語の1番上に挿入されます。
編集中の辞書ファイルの最後の単語を選択します。
編集中の辞書ファイルの先頭の単語を選択します。
[KP4](後方向),[KP5](前方向)で定められた方向に10行づつカーソルを移動します。
[KP4](後方向),[KP5](前方向)で定められた方向に1行づつカーソルを移動します。
行移動([KP0])および数行移動([KP8])の方向を, 辞書ファイルの終わりに向かう方向にセットします。
行移動([KP0])および数行移動([KP8])の方向を, 辞書ファイルの先頭に向かう方向にセットします。
キーパッド9番([KP9])キーを押すと,単語登録が開始します。 単語登録時の画面レイアウトを図 4-3に示します。
単語の読み・表記を入力後,矢印キーとスペース・キーを用いて文法情報をセットし, [ENTER]キーで登録してください。登録された単語が画面上に表示されます。 登録前の単語をキャンセルしたいときは[CTRL/C]を,単語登録モードを終了するときは [CTRL/Z]を押してください。単語の読み,表記,文法情報については 第4.4節と 第4.5節を参照してください。
単語の読み・表記の入力にはかな漢字変換の機能が利用できます。 JDICEDITユーティリティはキー定義ライブラリ(IMLIB) に準じていますので, 利用者がかな漢字変換に用いられるキー定義を変更することができます。 キーの定義方法およびキー定義ライブラリについては, 『キー定義ライブラリ 利用者の手引き』を参照してください。
JDICEDITユーティリティを終了します。
<形式>
JDICEDIT>EXIT
辞書ファイルの単語を単語ファイルに出力します。
<形式>
JDICEDIT>EXTRACT [/修飾子][辞書ファイル名]
辞書ファイル名を省略した場合には,SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHOの単語を出力します。 論理名JSY$KOJINが定義されているときは,その辞書ファイルの単語を出力します。
<修飾子>
/OUTPUT=file-spec
出力する単語ファイル名を指定します。ファイル名の省略時設定値は ‘辞書ファイル名.TANGO’です。
/USER_REGISTERED
辞書ファイルの単語の中から利用者登録語だけを単語ファイルに出力します。 省略時は,すべての単語を出力します。
/LOG (省略時設定) /NOLOG
出力した単語ファイル名と出力した単語数を表示します。
JDICEDITユーティリティのHELPを表示します。
<形式>
JDICEDIT>HELP [トピック]
HELPを表示するトピックを指定します。トピックが指定されなかった場合は, すべてのトピックが表示され,会話的に選ぶことができます。[CTRL/Z]または [Return]を押すと,もとのモードに戻ります。
辞書ファイルを再構成し,新しいバージョンの辞書ファイルを作ります。 旧バージョンの辞書ファイルはそのまま残ります。 REBUILDサブコマンドによる辞書ファイルの再構成は,以下のようなときに有効です。
ある特定の読みの単語の数が多すぎて, 追加登録ができないときは上記のエラーが発生します。このような辞書ファイルを REBUILDサブコマンドで再構成します。ただし,再構成しても, なおかつ特定の読みの単語の数が多すぎるときは警告メッセージで通知しますから, その場合は不要な単語をEDITサブコマンドを使用して削除してください。
<形式>
JDICEDIT>REBUILD [/修飾子][辞書ファイル名]
辞書ファイル名を省略した場合には,SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHO を再構成します。 論理名JSY$KOJIN が定義されているときは,その辞書ファイルを再構成します。
<修飾子>
/LOG (省略時設定) /NOLOG
出力した辞書ファイル名を表示します。
各サブコマンドにおいて辞書ファイル名の指定を省略した場合に使用する 省略時設定の辞書ファイル名を表示します。省略時設定の辞書ファイルは,論理名 JSY$KOJIN が定義されているときはそのファイル,定義されていないときは SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHO です。
<形式>
JDICEDIT>SHOW DICTIONARY
この節では,単語の読みと表記について説明します。
単語の読み
単語の表記
サ変名詞 | 5段動詞 | 上1 | 下1 | 形容詞 | 形容動詞 | |
---|---|---|---|---|---|---|
未然 | 運転しない | 書かない | 見ない | 投げない | 寒かろう | 静かだろう |
連用 | 運転します | 書きます | 見ます | 投げます | 寒く | 静かに |
終止 | 運転する | 書く | 見る | 投げる | 寒い | 静かだ |
連体 | 運転するとき | 書くとき | 見るとき | 投げるとき | 寒いとき | 静かな |
仮定 | 運転すれば | 書けば | 見れば | 投げれば | 寒ければ | 静かならば |
命令 | 運転せよ | 書け | 見ろ | 投げろ |
単語の表記に‘#’を使うと, その部分がかな漢字変換入力時の数字部分と置き換えられます。
(例)読み:#かい
表記:#階 4かい -(漢字変換)→ 4階 35かい -(漢字変換)→ 35階
- 注意
- ‘#’は1つの単語に1つしか使えません。また ‘*'と同時に使用することはできません。
単語の表記に‘*’を使うと,その部分がかな漢字変換入力時のカタカナ・全角・ 半角文字列部分と置き換えられます。
(例)読み:*ご
表記:*語 スペインご -(漢字変換)→ スペイン語 サンスクリットご -(漢字変換)→ サンスクリット語
- 注意
- ‘*’だけからなる表記は,登録可能ですが, かな漢字変換に悪影響を及ぼすことがありますので, 登録しないように注意してください。
‘*’は1つの単語に1つしか使えません。また ‘#'と同時に使用することはできません。
XTPU/JEVE,日本語ライブラリのJLB$GET_INPUTルーチンなどでは, 入力文字列を全角ひらがな変換してからかな変換ルーチンを渡すため ‘*’は変換に反映されません。
単語の文法情報について表 4-2にまとめます。
日本語エディタで単語ファイルを作り,これを APPENDサブコマンドで辞書ファイルに追加登録できます。
単語ファイルは以下の形式で作成します。
[!]読み "表記" [文法情報キーワード,,,] [!]読み "表記" [文法情報キーワード,,,] ........................ ........................
名 | サ名 | 人名 | 地名 | 副 | 感動 | 接続 | 連体 |
接頭 | 形容 | 形動 | トタル | 尾名 | 尾人 | 尾地 | 上下 |
サ変 | ザ変 | カ変 | カ5 | ガ5 | サ5 | タ5 | ナ5 |
バ5 | マ5 | ラ5 | ワ5 |
個人辞書編集ユーティリティには,次の制限事項があります。
この節では,いくつかの使用例を示します。
$ RUN JSY$SYSTEM:JDICEDIT JDICEDIT> EDIT DICTIONARY.JISHO ・・・・・ 辞書を更新しますか?(YES or NO) [YES]: YES %JDICEDIT-I -UPDDIC ,辞書を更新して DICTIONARY.JISHO;2 に 出力しました。 JDICEDIT> EXIT $
$ RUN JSY$SYSTEM:JDICEDIT JDICEDIT> EXTRACT/OUTPUT=DIC_A.TANGO/USER DIC_A.JISHO;1 %JDICEDIT-I -EXTUSR,DIC_A.JISHO;1 の単語を XX語 DIC_A.TANGO に出力しました。 JDICEDIT> APPEND/INPUT=DIC_A.TANGO DIC_B.JISHO;1 %JDICEDIT-I -UPDDIC ,辞書を更新して DIC_B.JISHO;2 に出力しました。 JDICEDIT> EXIT $
$ JEDIT TANGO_FILE.TANGO ・・・・・ $ RUN JSY$SYSTEM:JDICEDIT JDICEDIT> CREATE NEW_DIC.JISHO %JDICEDIT-I -CREDIC ,新たに辞書 NEW_DIC.JISHO;1 を作成しました。 JDICEDIT> APPEND/INPUT=TANGO_FILE.TANGO NEW_DIC.JISHO;1 %JDICEDIT-I -UPDDIC ,辞書を更新して NEW_DIC.JISHO;2 に出力しました。 JDICEDIT> EXIT $