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2 テキスト・トランスレータ

この章では,コントロール・コードやエスケープ・シーケンスを含んだテキスト・ データを解釈して,PostScriptに変換する,テキスト・トランスレータについて説明します。

2.1 テキストのための4つのデータ・タイプ

日本語DECprint製品群では,従来のプリンタ装置に出力していたテキスト・ ファイルを,ユーザがPostScriptを意識せずに,従来のプリンタ装置と同様のインターフェイスで出力できるように, 以下の4種のデータ・タイプをサポートしています。 これらの4種類のデータ・タイプは,弊社が提供している実際のプリンタ装置と対応しています。 データ・タイプを適当に選択することによって, たとえば,従来漢字LA86に出力していたテキスト・ ファイルを,内容を変更することなしに日本語PostScriptプリンタに出力することができます。 機能の詳細な違いは次節以降で説明しますので, ここではおおまかな相違点のみを説明します。

  1. ANSI

    弊社のLN03およびDEClaser2100/2200プリンタに対応したインターフェイスを提供します。 すなわち,ISO/ANSI標準のコントロール機能により, 文字セット,フォント,タブ,マージン,文字間隔/行間隔などを変えたり, 文字列に対してアンダーライン,反転,網掛けなどの属性を指定することができます。 このデータ・タイプでの機能はKANJIデータ・ タイプと同じですが,初期状態での文字セット,フォント,文字間隔などが異なります。 たとえば,このデータ・タイプでの初期文字セットは,ASCII とDECサプリメンタル文字セットです。初期状態の詳細は 付録 C "テキスト・ トランスレータの初期設定値" を参照してください。また, 英語版ANSIトランスレータとの違いは,第2.2 節"拡張された機能" で説明します。

  2. KANJI

    弊社の漢字LN03およびDEClaser2300(漢字LN05)レーザ・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。 より正確には,DEClaser2300 のLN05モードに対応したインターフェイスです。機能はANSIデータ・ タイプと同じですが,初期状態が異なります。たとえば,このデータ・ タイプでの初期文字セットはJISローマ字とDEC漢字です。初期状態の詳細は 付録 C "テキスト・ トランスレータの初期設定値" を参照してください。

  3. KANJI78

    弊社の漢字LN03およびDEClaser2300レーザ・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。KANJI データ・タイプとの違いは, KANJIデータ・タイプがDEC漢字1983年版をサポートするのに対して, KANJI78はDEC漢字1978年版をサポートすることです。その他の機能には違いはありません。

  4. LA_KANJI

    弊社の漢字LA86ドットインパクト・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。 正確には,DEClaser2300のLA86モードに対応したインターフェイスです。DEC 漢字1983年版をサポートします。

    ANSIデータ・タイプ,KANJIデータ・タイプとの違いは,第2.2節で説明します。

これらのデータ・タイプでサポートされる命令(エスケープ・シーケンス, コントロール・シーケンス)の一覧を付録 A に示します。

2.2 拡張された機能

日本語テキスト・トランスレータは英語版のANSIトランスレータを日本語のために拡張したものです。 ここではこのANSIトランスレータとの相違を,4 つのデータ・タイプごとに説明します。ここで説明されていない部分については英語版ANSI トランスレータと同じなので,次の2冊,

「Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual」

「Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Supplement」

を参照してください。


注意
ANSIデータ・タイプを指定したときに, 英語版ANSIトランスレータを用いるか,日本語拡張版ANSIトランスレータを用いるかは, トランスレータをサポートするソフトウェアの設定によって変更できます。 英語版ANSIトランスレータを使用している場合は, 以下で説明される拡張された機能は使用できません。

2.2.1 日本語拡張版ANSIデータ・タイプ

以下の項目が拡張されています。

2.2.1.1 フォント

日本語フォントとして以下のフォントがサポートされています。


注意
  1. 明朝体とゴシック体のフォントは,実際にはPostScriptのアウトラインフォントを使用しているので, ここで示したドット数は目安です。

  2. 32×32は8ポイント9.38cpi,40×40は10ポイント7.5cpiです。 対応する半角フォントはそれぞれ18.75cpi,15cpiです。

  3. 32×32は6.7ポイント6.8cpiフォントとしても用いられます。 これは6.7ポイント13.6cpiフォントに対応する全角漢字フォントを提供するためです。

  4. これらの追加されたフォントはゴシック体を除いて,DEC BUILTIN1ファミリとしても登録されています。このことにより,英文書体であるクーリエと明朝体の違いを意識せずに, 文字セットの切り替えや文字サイズの切り替えが行えます。

  5. ゴシック体,縦32ドット×横32ドット相当のDEC漢字フォントは存在しません。

ANSIおよびKANJIデータ・タイプでサポートされる,すべてのフォントのフォントID とサンプル文字列を付録 Bに示します。

2.2.1.2 文字セット

文字セット指示命令SCS(Select Character Set)でサポートされる文字セットとして,JIS カタカナ・セットとDEC漢字指示セットが追加されています。DEC 漢字指示セットについては,「DEC漢字コード表」(AA- A056C-TE-JO)を参照してください。それ以外の文字セットのコード表は「Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual」のAppendix Aを参照してください。

  1. JISカタカナ

    JISカタカナは標準の94文字セットのSCSシーケンスを用いてG0,G1, G2,G3 のいずれかのコード・テーブルに指示(designate)することができます。 文字セット識別コードは"I"(4/9)です。

  2. 漢字

    漢字を使用するときは必ず,DEC漢字指示セットがG3コード・テーブルに指示(designate) されていなければなりません。以下のシーケンスは, すべてDEC漢字指示セットをG3コード・テーブルに指示します。G3 に指示された漢字セットは通常の文字セットの呼び出し(invoke)と同様に,GL またはGRコード・テーブルに呼びだして用います。

    ESC 1/11 $ 2/4 + 2/11 3 3/3 DEC漢字指示セット1983年版
    ESC 1/11 $ 2/4 + 2/11 B 4/2 JISX0208漢字指示セット1983年版

    以下の1978年版の指示シーケンスもサポートします。ただし,実際に指示されるのは1983 年版です。

    ESC 1/11 $ 2/4 + 2/11 1 3/1 DEC漢字指示セット1978年版(新コマンド)
    ESC 1/11 $ 2/4 + 2/11 @ 4/0 JISX0208漢字セット1978年版
    ESC 1/11 + 2/11 " 2/2 0 3/0 DEC漢字指示セット1978年版(旧コマンド)


注意
  1. 旧コマンドは,既存のプリンタとの互換性を保つためにサポートされていますが, 新しくテキスト・ファイルを生成する場合で,DEC 漢字指示セットの指示が必要なときは,旧コマンドは使わないようにしてください。

  2. DEC漢字指示セットをGLコード・テーブルに呼びだした場合, DEC拡張漢字領域は使用できません。

  3. ANSIデータ・タイプ,KANJIデータ・タイプ,およびLA_KANJI データ・タイプでは,DEC漢字1983年版のみをサポートします。

    DEC漢字1978年版は,KANJI78データ・タイプでサポートされています。

    DEC漢字1983年版では,DEC拡張罫線文字(コードFE21〜FE2B(16進))はサポートされません。


2.2.1.3 倍角文字

フォントがタイプ・ファミリで指定されているときには,文字サイズ変更命令GSM (Graphic Size Modification) を用いて,いわゆる横倍角,縦倍角,4 倍角文字(縦横倍角)が出力できます。

GSMでは文字の高さと幅の2つのパラメータを指定できますが,どちらのパラメータも, 現在有効なフォントのタイプ・サイズを基準にして,拡大率を百分率で指定します。 指定された大きさに該当するフォントが存在しない場合, その大きさよりも小さくて最も近いフォントを選びます。このとき, 既存のフォントの高さや幅を2倍に拡大すると目的のサイズに近いフォントが得られる場合,GSM は倍角文字を生成します。以下に例を示します。

  1. 縦倍角の例
          CSI 200  ;    100  SP    B
    
          9/11     3/11      2/0   4/2
    

    DEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき, 上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント・フォントが縦に2倍に拡大されたものになります。DEC BUILTIN1 ファミリの10ポイント・フォントでは,10, 10.3, 12, 15cpi ( 文字/インチ)といった複数のフォントが存在しますが,10cpi が,10ポイントの場合の文字幅100%を意味します。

  2. 横倍角の例1
         CSI 100  ; 200 SP  B
    

    同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき, 上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント10cpiフォントが横に2 倍に拡大されたものになります。すなわち,5cpiになります。

  3. 横倍角の例2
         CSI 100  ; 140 SP  B
    

    同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき, 上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント15cpiフォントが横に2 倍に拡大されたものになります。10cpiを100%の文字間隔とすると, ここで指定した文字幅パラメータ140%という値は約7.1cpiになり, このようなフォントは存在しません。そこで7.1cpiより文字幅が小さくて最も近いフォントを探しますが,15cpi フォントの横倍角が7.5cpi ですので,このフォントが選ばれます。

  4. 4倍角(縦横倍角)の例
         CSI 200  ; 200 SP  B
    

    縦も横も2倍に拡大されたものを4倍角といいます。DEC BUILTIN1ファミリで,10 ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10 ポイント10cpiフォントが縦横に2倍に拡大されたものになります。


注意
  1. 倍角はフォント・ローディング命令(DECLFF)によって,ダウンロードされたフォントに対しては無効です。

  2. 倍角をより確実に制御するために,タイプ・サイズ指定命令(GSS) によってフォントを選択してからGSMを用いることをお勧めします。

2.2.1.4 文字ピッチ

フォントがタイプ・ファミリで指定されていて,文字ピッチが現在有効なフォントの本来の文字ピッチから決まるのではない時, すなわち文字ピッチが明示的に指定されている時,DEC 漢字(2バイト文字セット)は常に1バイト文字セットの半分の文字ピッチで, すなわち倍の文字間隔で出力されます。 これがいわゆる全角/半角の文字関係です。

さらに,既存の漢字プリンタとの互換性のために,文字ピッチ指定命令, DECSHORP (Set Horizontal Pitch)に6.38cpiが追加されました。

     CSI     Ps      w
     9/11            7/7

表 2-1 DECSHORPのパラメータ

Ps cpi
0 現在有効なフォントの文字ピッチ
1 10文字/インチ
2 12文字/インチ
3 13.2文字/インチ
4 16.5文字/インチ
5 5文字/インチ
6 6文字/インチ
7 6.6文字/インチ
8 8.25文字/インチ
9 15文字/インチ
10 12.77文字/インチ
11 17.1文字/インチ,または6.38文字/インチ
12 8.55文字/インチ
13 18.0文字/インチ
14 9.0文字/インチ
15 10.3文字/インチ
16 6.38文字/インチ

Psが11のとき,ANSIデータ・タイプでは17.1cpiに,KANJI,KANJI78, LA_KANJIデータ・タイプでは6.38cpiになります。これは漢字LN03等との互換性を維持するための処理です。 将来,Psの11はどのデータ・タイプでもすべて17.1cpi として解釈されるようになる予定です。6.38cpiを使う場合は,Ps を16にしてください。


注意
  1. ANSI,KANJI,KANJI78データ・タイプでは,フォントがタイプ・ ファミリで指定されている状態(初期状態)で文字ピッチの指定をしたときには, ピッチに合わせて最適の大きさのフォントをそのタイプ・ ファミリの中から選択しますが,このとき,横倍角のフォントは選択の対象にはなりません。

  2. 文字ピッチ指定命令(DECSHORP)でパラメータPsを0にするか, またはパラメータを省略した場合,全角文字(2バイト文字)の文字ピッチがテキスト・ トランスレータと漢字LN03とで異なります。テキスト・ トランスレータはフォントの文字幅をそのまま使用しますが,漢字LN03 は全角文字に対して1バイト文字の倍の文字幅を割り当てます。 互換性を維持するためには,文字ピッチ指定命令で0以外のパラメータを指定してください。

2.2.1.5 文字属性

文字属性指定命令,SGR(Select Graphic Rendition)に反転,網掛けが追加されました。

     CSI     Ps    ;     ...;Ps    m
     9/11          3/11            6/13

表 2-2 SGRのパラメータ

Ps 文字属性
0 すべての属性解除
1 太字(ボールド)
2 細字
3 斜体(イタリック)
4 下線(アンダーライン)
?4 スーパースクリプト(上付き)
?5 サブスクリプト(下付き)
?6 上線(オーバーライン)
7 白黒反転
?7 網掛け
9 消去線(ストライクスルー)
10から19 フォント選択
21 二重下線
22 太字/細字解除
23 斜体解除
24 下線/二重下線解除
?24 スーパースクリプト/サブスクリプト解除
?26 上線解除
27 白黒反転解除
29 消去線解除


注意
  1. 太字,斜字体,白黒反転を指定した場合,トランスレータは該当する属性を有するフォントがあればそのフォントを選択し, なければ独自のアルゴリズムに従ってその属性を表現します。

  2. 細字は,該当する属性を持つフォントがある場合にのみ有効です。

  3. 複数の属性を同時に有効にして表示することができますが(たとえば, 太字の斜体),下線と二重下線,太字と細字およびスーパースクリプトとサブスクリプトは同時に表示することはできません。

  4. 1回のSGRの中で,複数の属性を一度に指定することができますが, 網掛けについては,他の属性と同時に指定することはできません。

  5. 網掛け属性の解除には,全属性の解除(パラメータ=0)を用います。

  6. 斜字体と白黒反転,または斜字体と網掛けを同時に使用するときに, 文字間隔を詰めると文字の一部が欠けることがあります。文字間隔を十分広くとってください。

  7. フォントのタイプ・サイズが異なるとき,およびスーパースクリプト/ サブスクリプトを指定したときには,下線,二重下線,消去線, 反転,網掛けは,一般にずれます(つながりません)。タイプ・サイズが同じでも, タイプ・ファミリが異なると同様にずれることがあります。

  8. 白黒反転を下線または二重下線と同時に指定した場合,一般に下線, 二重下線は見えなくなります。

2.2.1.6 縦書き

漢字縦書き指定命令,DECKVPM(Kanji Vertical Printing Mode)を用いて,DEC 漢字(2バイト文字)を縦書きにすることができます。この命令を生成した次のページから縦書きになります。 縦書きの解除は,縦書き解除命令によって行います。 縦書きの解除も,命令を生成した次のページから有効になります。

この命令では,印字方向と印字開始位置の両方が変更されるので, ページのオリエンテーションは変化しません。図 2-1 を参照してください。

CSI 9/11 ? 3/15 7 3/7 5 3/5 h 6/8 縦書き指定
CSI 9/11 ? 3/15 7 3/7 5 3/5 1 6/12 縦書き解除

図 2-1 DECKVPMによる縦書き(1)


注意
  1. 縦書き指定によって,ページの上下マージンと左右マージンは入れ替わります。 縦書きが解除された時は元に戻ります。

  2. 文字属性指定(SGR)によって斜字体が指定されているとき,縦書きされた2 バイト文字は,右下がりの字体になります。この機能は将来変更される可能性があります。

  3. 文字サイズ変更(GSM)によるいわゆる横倍角は,縦書きのときには縦倍角になります。 同様に縦倍角は横倍角になります。この機能は将来変更される可能性があります。

2.2.1.7 フォーム・オーバーレイ

フォーム・オーバーレイとは,あらかじめ見出しや罫線などのフォーム・ データをトランスレータに登録し,後で入力したデータを重ねて印刷する機能です。 フォームの登録および設定は,以下のシーケンスを使用します。

フォーム・データには,見出しなどに使用する文字の他,直線(DECVEC)や印刷位置設定(VPA など)のシーケンスを含めることができます。ただし, フォームに重ねて印刷するデータと区別するために,フォーム・データはシクセル形式で登録します。 フォーム・データは,ジョブごとに最高16ページまで登録して使用することができます。DECLKF および,DECKSPPのシーケンスを以下に示します。


注意
  1. フォーム・データ中に,DECLKFとDECKSPPのシーケンスを指定することはできません。

  2. フォーム・データ中にリセットシーケンス(DECSTR,RIS)を指定すると, 正常に動作しません。

  3. 漢字LN05プリンタのフォーム・オーバーレイ機能と,以下の点で異なります。

    • 漢字LN05では,一度登録されたフォーム・データはジョブにまたがって使用することができます。 トランスレータによるフォーム・ オーバーレイでは,各ファイルごとにフォーム・データ,およびロック機能をリセットします。 よって,フォーム・オーバーレイを使用する場合は, 各ファイルごとにDECLKFシーケンスでフォーム・ データを登録する必要があります。複数のファイルで共通なフォーム・ データは,SETUPモジュールに登録して使用することをお勧めします。

2.2.1.8 外字のローディング

DECの他の漢字プリンタと同様に,ユーザ定義文字を印字することができます。 以下に,VMSとULTRIXでのユーザ定義文字の利用方法を示します。


注意
  1. トランスレータの行うユーザ定義文字のローディングは, PostScriptのフォント定義によって実現されています。このことは, ユーザ定義文字の使用によって印字性能が低下することを意味します。 同じ文字が何度も現れる場合は,この制限は緩和されますが,具体的な性能は文字の現れる頻度や分布の仕方によって変化します。

  2. ユーザ定義文字のプリロード機能は,トランスレータではサポートされません。

  3. 漢字LN03/DEClaser2300と異なり,トランスレータのユーザ定義文字は, プリント・ジョブごとにリセット(削除)されます。

2.2.1.8.1 VMS

日本語VMSではユーザ定義文字の作成,管理のために,FEDITユーティリティを提供していますが, 日本語VMS V5.5ではさらにCHARACTER_MANAGERユーティリティV2.0 ( 以下CMGRユーティリティと記述します)も提供されるようになりました。 このため,テキスト・トランスレータは,DEC拡張漢字領域の文字コードに遭遇した場合, そのときのシステム環境によって, 以下のような動作を行います。

  1. CMGRユーティリティが設定されているシステム上では,CMGRデータベースに登録されているユーザ定義文字を使用します。

  2. CMGRユーティリティが設定されていないシステム上では,その時の漢字フォントに対応した, 以下のフォント・ファイルを使用します。

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO40.DAT 明朝体40×40ドット

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO32.DAT 明朝体32×32ドット

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_GOTHIC40.DAT ゴシック体40×40ドット


注意
  1. 日本語VMS V5.4で堤供されているCMGR V1.0は,テキスト・トランスレータからは利用できません。

  2. JSY$SYSTEMは,日本語VMSのシステム・ディレクトリの一つを指すシステム論理名です。 もしも旧システムの論理名SYS$KANJIを使用している場合には,JSY$SYSTEM がSYS$KANJIも参照するように定義してください。

テキスト・トランスレータが遭遇したユーザ定義文字の文字コードに対応する字形が登録されていれば, その文字が印字されます。該当する文字が登録されていないか, 該当するフォント・ファイルが存在しない場合,逆クエスチョンマークが印字されます。

ユーザ定義文字の作成は,CMGRユーティリティか,またはFEDITユーティリティを使用します。CMGR ユーティリティの使用方法に関しては,『フォント管理ユーティリティ利用者の手引き』第5 章および付録Aを参照してください。 また,FEDITユーティリティの使用方法に関しては,『日本語VMS 漢字フォント・ユーティリティ利用者の手引き』第9章または,『フォント管理ユーティリティ利用者の手引き』付録C を参照してください。

1. CMGRユーティリティによるユーザ定義文字の使用方法

CMGRユーティリティでは,システム・フォント・データベースとしてCMGR_DEFAULT とGOTHICの2つが提供されます。テキスト・トランスレータは, 明朝体としてCMGR_DEFAULTデータベース(40×40ドット,32×32ドット) を,またゴシック体としてGOTHICデータベース(40×40ドット)を使用します。 これ以外のデータベース名およびサイズで登録されているユーザ定義文字を使用することはできません。

2. FEDITユーティリティによるユーザ定義文字の使用方法

FEDITユーティリティで作成したフォント・ファイルはシーケンシャル・ ファイルですが,テキスト・トランスレータで利用するためには, CONVERTユーティリティで漢字コードをキーとしたインデクス・ファイルに変換する必要があります。 日本語DECprint プリンティング・サービスでは,この変換のためのFDLファイルを提供します。 ファイル名はSYS$COMMON:[SYSHLP.EXAMPLES.CPS]TRN$KANJI_CONVERT.FDL です。以下に,ユーザ定義文字を使用できるようにするまでの流れを,例をとって説明します。

  1. FEDITユーティリティを用いて,ユーザ定義可能領域の文字コードの中から適当な文字コードを割り当ててユーザ定義文字を作成します。 ここでは,40×40ドットの明朝体文字を作り,出力ファイルをKANJI_FILE.TMP とします。

  2. CONVERTユーティリティで,KANJI_FILE.TMPをインデクス・ファイルに変換し,JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO40.DAT を作成します。
         $ CONVERT/FDL=SYS$COMMON:[SYSHLP.EXAMPLES.CPS]TRN$KANJI_CONVERT -
           KANJI_FILE.TMP JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO40.DAT
    

    これだけで,定義した文字が使えるようになります。

  3. さらに文字を追加したいときは,KANJI_FILE.TMPをFEDITユーティリティの入力ファイルとして1, 2 を繰り返してください。

つぎに,FEDITユーティリティによる外字機能から,CMGRユーティリティによる外字機能への移行方法について説明します。

  1. JSY$SYSTEMディレクトリにある以下のフォント・ファイルを, インデクス・ファイルからシーケンシャル・ファイルに変換します。

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO40.DAT 明朝体40×40ドット

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO32.DAT 明朝体32×32ドット

    JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_GOTHIC40.DAT ゴシック体40×40ドット

    日本語DECprintプリンティング・サービスでは,この変換のためのFDL ファイルを堤供します。ファイル名は, SYS$COMMON:[SYSHLP.EXAMPLES.CPS]TRN$CMGR_CONVERT.FDL です。この例では,明朝体40×40ドットのフォント・ファイルをシーケンシャル・ ファイルに変換し,KANJI_FILE.TMPに出力します。

         $ CONVERT/FDL=SYS$COMMON:[SYSHLP.EXAMPLES.CPS]TRN$KANJI_CONVERT.FDL -
           JSY$SYSTEM:TRN$KANJI_FONT_MINCHO40.DAT KANJI_FILE.TMP
    


    注意

    FEDITユーティリティの出力であるシーケンシャル・ ファイルを保存してある場合は,この操作は必要ありません。


  2. CMGRユーティリティのCONVERT FONT_FILEコマンドを使用して, フォント・ファイルをプリロード・ファイルに変換します。この例では,KANJI_FILE.TMP をフォント・ファイルとし,プリロード・ファイルとしてKANJI_FILE.PRE を作成します。
         $ CHARACTER_MANAGER CONVERT FONT_FILE KANJI_FILE.TMP KANJI_FILE.PRE
    

  3. CMGRデータベースとして,CMGR_DEFAULTを指定します。
         $ CHARACTER_MANAGER SET DATABASE CMGR_DEFAULT
    

  4. CMGRデータベースのアップデートを行います。
         $ CHARACTER_MANAGER UPDATE/SIZE=40 KANJI_FILE.PRE
    

2.2.1.8.2 ULTRIX

日本語ULTRIX/UWSでは,テキスト・トランスレータはDEC拡張漢字領域の文字コードに遭遇すると, そのときの漢字フォントに対応して,以下のフォント・ ファイルを探します。

/usr/jsy/etc/trn_kanji_font_mincho40.{dir,pag} 明朝体40×40ドット

/usr/jsy/etc/trn_kanji_font_mincho32.{dir,pag} 明朝体32×32ドット

/usr/jsy/etc/trn_kanji_font_gothic40.{dir,pag} ゴシック体40×40ドット

このファイルの中に,該当する文字コードの字形が登録されていればその文字を印字します。 該当する文字が登録されていないか,該当するフォント・ ファイルが存在しない場合,逆クエスチョンマークが印字されます。

ユーザ定義文字の作成は日本語ULTRIXでサポートされているfeditユーティリティを用います。fedit ユーティリティの使用方法に関しては, 『日本語ULTRIXリファレンス・マニュアル』fedit(1)を参照してください。fedit ユーティリティで作成したフォント・ファイルはシーケンシャル・ ファイルですが,テキスト・トランスレータで利用するためには, lpsfgen(8)ユーティリティで漢字コードをキーとしてハッシュをかける必要があります。 以下に,ユーザ定義文字を使用できるようにするまでの流れを, 例をとって説明します。

  1. fedit(1)ユーティリティを用いて,ユーザ定義可能領域の文字コードの中から適当な文字コードを割り当ててユーザ定義文字を作成します。 ここでは40×40ドットの明朝体文字を作り,出力ファイルをkanji_file.tmp とします。

  2. lpsfgen(8)ユーティリティで,kanji_file.tmpから/usr/jsy /etc/trn_kanji_font_mincho40.{dir,pag}を作成します。
         # /usr/jsy/etc/lpsfgen kanji_file.tmp mincho40
    

  3. これだけで,定義した文字が使えるようになります。文字をさらに追加したいときは,kanji_file.tmp をfedit(1)ユーティリティの入力ファイルとして1, 2 を繰り返してください。

2.2.1.9 sixelグラフィックス

既存の日本語プリンタとの互換性のために,sixelモードのマクロパラメータ(Ps1) として,グリッド・サイズ0.0056, 0.0167, 0.0111が追加されています。

     DCS  Ps1 ; Ps2 ; Ps3 q picture_definition ST
     9/0     3/11        7/1                  9/12

表 2-3 sixelのマクロパラメータ

Ps1 水平グリッド・サイズ 解像度
縦:横
垂直グリッド・サイズ
0 0.0067インチ 200:100 0.0133インチ
1 0.0067インチ 200:100 0.0133インチ
2 0.003インチ 450:100 0.0133インチ
3 0.0045インチ 300:100 0.0133インチ
4 0.0053インチ 250:100 0.0133インチ
5 0.0075インチ 183:100 0.0133インチ
6 0.009インチ 150:100 0.0133インチ
7 0.0105インチ 130:100 0.0133インチ
8 0.0120インチ 112:100 0.0133インチ
9 0.0153インチ 100:100 0.0133インチ
10 0.0056インチ 100:100 0.0056インチ
11 0.0167インチ 100:100 0.0167インチ
12 0.0111インチ 150:100 0.0167インチ

2.2.2 KANJIデータ・タイプ

KANJIデータ・タイプは,DEClaser2300レーザ・プリンタの基本モードであるLN05 モードとの互換性を保つように,日本語拡張版ANSIトランスレータの初期状態を変更したものです。 使用できる命令(コントロール・コード, コントロール・シーケンス,エスケープ・シーケンス)およびその機能においては, 拡張ANSIデータ・タイプとの違いはありません。


注意
テキスト・トランスレータのリセット命令(DECSTR ,RIS)は,トランスレータを,そのデータ・タイプ固有の初期状態に復帰させます。 これに対して命令表示モード,CRM (Control Rendition Mode)をセットした場合,および適合レベル選択命令,DECSCL (Select Conformance Level) を使用すると,ANSIデータ・タイプで, 紙サイズをレターサイズ,ポートレート・オリエンテーションで指定した場合と同じ初期状態にリセットされます。

表 2-4に初期状態での主な相違点を示します。 詳しくは,付録 C " テキスト・ トランスレータの初期設定値" を参照してください。

表 2-4 拡張ANSIとKANJIの違い

ANSI KANJI
文字セット
GL, ASCII JISローマ字
GR, DECサプリメンタル DEC漢字指示
G0, ASCII JISローマ字
G1, ASCII VT100ラインドローディング
G2, DECサプリメンタル JISカタカナ
G3, DECサプリメンタル (厳密には,DECサプリメンタルはUser Preferenceセットとして指定されている) DEC漢字指示
フォント SGR 10 =DEC BUILTIN 1 SGR 10 =DEC BUILTIN 1 (同じタイプ・ファミリだが,初期文字ピッチが異なるので使用されるフォントも異なる。 実際はANSIではクーリエ書体になり,KANJIでは明朝体になる)
SGR17 DEC BUILTIN 1ファミリ 明朝体10ポイント
SGR18 DEC BUILTIN 1ファミリ 明朝体8ポイント(パラメータ17,18以外のフォント割当ての初期設定値は同じ)
ポートレートでの文字ピッチ 10 cpi(フォントの値) 12.77 cpi(固定)
DECSHORP 11 17.1 cpi 6.38 cpi

2.2.3 KANJI78データ・タイプ

KANJI78データ・タイプは,1978年版DEC漢字コードをサポートするために, 提供しているものです。DEC漢字コード以外の機能に関しては,KANJI と変わりありません。以下の文字セット指示シーケンスは,すべてDEC漢字1978 年版をG3コード・テーブルに指示します。

ESC $ + 1
1/11 2/4 2/11 3/1

ESC $ + @
1/11 2/4 2/11 4/0

ESC + " 0
1/11 2/11 2/2 3/0

ESC $ + 3
1/11 2/4 2/11 3/3

ESC $ + B
1/11 2/4 2/11 4/2

KANJI78データ・タイプは,DEC漢字1983年版文字セットを用いて,DEC漢字1978 年版文字セットを表現しています。1983年版で文字コードが変わったものについては,1978 年版のコードを変換して,同じ文字が出力されるようにしていますが,1983 年版で字形が変わった文字もあるため,完全には1978 年版と同一にならない場合があります。付録 E "JIS漢字1978年版と1983年版の違い" を参照してください。


注意
  1. DEC罫線(コードFE21〜FE2B(16進))は,1983年版罫線を使用してサポートされます。

  2. DEC漢字1978年版は,将来サポートされなくなる可能性があります。 現在1978年版を使用している利用者の方には,できるだけ早く,1983 年版に移行することをお勧めします。

2.2.4 LA_KANJIデータ・タイプ

LA_KANJIデータ・タイプは,漢字LA86/LA280/LA380プリンタおよび漢字LN03/LN05 レーザプリンタのLA86モードとの互換機能を提供します。この節ではANSI およびKANJIとの相違点を説明します。


注意
LA_KANJIでは拡張ANSIやKANJI データ・タイプで使用できる命令は,この節で述べる例外を除いてすべて利用できますが, 他製品との互換性および将来のバージョンアップでの互換性を維持するためには, 本来のLA86/280/380プリンタでサポートされていない機能を使用することは避けてください。 LA_KANJIデータ・タイプは,すでにLA86/280/380用に作成された日本語文書がある場合を想定して提供されたものです。 はじめから日本語トランスレータでの印刷を考えるなら,KANJI データ・タイプを使用してください。

2.2.4.1 DEC漢字

KANJIデータ・タイプと同様に,LA_KANJIデータ・タイプでは,DEC漢字1983 年版のみをサポートします。

2.2.4.2 縦書き

LA_KANJIでの縦書きは,文字属性指定命令(SGR)のパラメータ10/11で行います。 縦書き指定命令(DECKVPM)はLA_KANJIでは無視されます。初期状態は横書き(SGR パラメータ=10)です。

Ps 意味
10 縦書き解除
11 縦書き
12から19 無視されます


注意
SGRの10〜19以外のパラメータの意味は, 拡張ANSIおよびKANJIと同じです。

このSGRでの縦書き指定/解除は,DECKVPMとは異なり,印字方向も印字開始位置も変えません。DEC 漢字(2バイト・コード)だけが,左に90度回転させられたようにみえます。 さらに,DECKVPMと異なり,命令指定時点からすぐに有効になります。 図 2-2を参照してください。

図 2-2 DECKVPMによる縦書き(2)


注意
LA_KANJIでは,SGRの10〜19はフォントの選択に使用することはできません。 したがって,LA_KANJIではゴシック体フォントを表示することはできません。

2.2.4.3 文字サイズ変更命令(GSM)

LA_KANJIでは,文字サイズ変更命令(GSM)のパラメータ値として,100または200 のみが有効です。パラメータ値200が指定されると,文字を縦または横に倍に拡大します。 すでに倍角になっている場合はさらに倍にはなりません。LA_KANJI では,GSMの他に,文字ピッチ指定命令(DECSHORP),行拡大命令(DECDWL ,DECDHLT,DECDHLB)を使用しても倍角文字が表示できます。

2.2.4.4 文字ピッチ指定命令(DECSHORP)

文字ピッチ指定命令(DECSHORP)はANSIおよびKANJIのDECSHORPとは機能が異なり, フォントの変更と横倍角の選択ができます。ポートレート・ オリエンテーションとランドスケープ・オリエンテーションで,使用されるフォントは変わります。 表 2-5表 2-6 をご覧ください。

表 2-5 LA_KANJIのDECSHORP -ポートレート・オリエンテーションのとき

Ps cpi 使用されるフォント
0 10文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 10cpi
1 10文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 10cpi
2 12文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 12cpi
3 13.2文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi
4 16.5文字/インチ DEC BUILTIN 1 8ポイント 18.75cpi
5 5文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 10cpi横倍角
6 6文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 12cpi横倍角
7 6.6文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi横倍角
8 8.25文字/インチ DEC BUILTIN 1 8ポイント 18.75cpi横倍角
9 15文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi
10 12.77文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi
11 6.38文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi横倍角
12 8.55文字/インチ DEC BUILTIN 1 8ポイント 18.75cpi横倍角
13 18文字/インチ DEC BUILTIN 1 8ポイント 18.75cpi
14 9文字/インチ DEC BUILTIN 1 8ポイント 18.75cpi横倍角
15 10.3文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 10.3cpi
16 6.38文字/インチ DEC BUILTIN 1 10ポイント 15cpi横倍角

表 2-6 LA_KANJIのDECSHORP -ランドスケープ・ オリエンテーションのとき

Ps cpi 使用されるフォント
0 13.6文字/インチ DEC BUILTIN1 6.7ポイント 13.6cpi(フォントの値)
1 10文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
2 12文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
3 13.2文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
4 16.5文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
5 5文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角
6 6文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角
7 6.6文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角
8 8.25文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角
9 15文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
10 12.77文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
11 6.38文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角
12 8.55文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
13 18文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
14 9文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
15 10.3文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi
16 6.38文字/インチ DEC BUILTIN 1 6.7ポイント 13.6cpi横倍角


注意
  1. 将来,Psの11は全て17.1cpiとして解釈されるようになる予定です。 将来の互換性が必要なら,6.38cpiを使う場合は,Psを16にしてください。

  2. テキスト・トランスレータでは,従来の132桁印字をサポートするために, ランドスケープ・オリエンテーションでの印字で自動的に文字サイズを縮小して132 桁印字ができるようにしています。ランドスケープのときには,6.7 ポイント13.6cpiが初期状態となります。すなわち, 従来LA86/280/380で印刷した場合は10cpiであった文字が, LA_KANJIのランドスケープでは6.7ポイントになります。この状態でDECSHORP を用いて文字間隔を変更した場合,たとえば5cpiにしたとすると,LA86/280/380 では10cpiから5cpiに変わりますが,LA_KANJIでは,13.6cpi から5cpiに変わることになります。 要するに,ランドスケープ・オリエンテーションにおいては,LA_ KANJIとLA86/280/380で互換性を保てない場合が生じます。

2.2.4.5 行拡大命令(DECDHLT,DECDHLB,DECSWL, DECDWL)

LA_KANJIでは,VTシリーズ・ビデオ端末の機能である4つの行拡大命令をサポートしています。

DECDHLT ESC
1/11
#
2/3
3
3/3
4倍角文字(この行のみ有効)
DECDHLB ESC
1/11
#
2/3
4
3/4
空白行(この行のみ有効)
DECSWL ESC
1/11
#
2/3
5
3/5
倍角解除(この行のみ有効)
DECDWL ESC
1/11
#
2/3
6
3/6
横倍角文字(この行のみ有効)


注意
  1. VTシリーズ端末では,DECDHLTは拡大文字の上半分を,DECDHLB は拡大文字の下半分を表示しますが,LA_KANJIではDECDHLTで,拡大した文字全体を印字し,DECDHLB は空白を印字することにより,同じ機能を実現しています。 したがって,DECDHLTとDECDHLBは必ずこの順番で, 続けて使用するようにしてください。

  2. 行拡大命令は,VTシリーズ端末の画面出力をプリンタ上でも表示できるようにしますが,VT シリーズ端末ではこれらは行に対する属性です。 したがって行拡大命令を同じ行の中で組み合わせて使用することはできません。LA_KANJI では文字に対する属性として扱われますので, 組み合わせての使用は可能ですが,将来のバージョンアップにおける互換性の維持に障害となる可能性がありますので, 同じ行のなかで行拡大命令を組み合わせることは避けてください。 さらに,行拡大命令をプリンタ固有の命令( たとえば,DECSHORP,GSM等)と組み合わせて使用することは避けてください。 やはり将来のバージョンアップにおける互換性の維持に障害となる可能性があります。

2.2.4.6 行ピッチ指定命令(DECVERP)

LA_KANJIでは行ピッチ指定命令のパラメータ値0は,6行/インチです。一方,ANSI およびKANJIではパラメータ値0は,現在有効なフォントの持つ行間隔の値を反映させます。

2.3 既存のプリンタとの相違

データ・タイプはいずれも,既存のDEC社のプリンタ製品との互換性を保つようにしていますが, いくつかの相違点もあります。ここでは, データ・タイプごとに,対応するプリンタとの機能の違いを述べます。ANSI データ・タイプと他の英語版プリンタとの違いは「Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Supplement」で述べられていますので, ここでは弊社の漢字プリンタとの違いのみを述べます。


注意
XON/XOFF,DECRFS,DECFSR, DSR,DA,パリティ,C1コントロールenable/disableモード等の通信制御/ ハードウェア状態の報告機能等は,トランスレータの性質上使用できませんので, 以下の相違点の説明からは省いてあります。

2.3.1 KANJIデータ・タイプ

KANJIデータ・タイプは,DEClaser2300レーザ・プリンタのLN05モードに対応しています。 表 2-7に両者の相違点を示します。

表 2-7 漢字LN05とKANJIの相違点

相違点 漢字LN05 KANJI
紙サイズ A4,B4,B5,*A5,*官製はがき,*自由(*手差しのみ) A3,A4,A5,B4,B5レター,リーガル,B(11"×17"),エグゼクティブ(7.5"×10.5")
ページ・オリエンテーション 1. PFS/DECVPFS命令で設定
2.ハードウェアのSET_UPで設定
1. PFS/DECVPFS命令による
2. PRINTコマンドのパラメータ(PAGE_ORIENTATIONによる。 トランスレータのランドスケープ・オリエンテーションでは, 文字サイズなどの初期設定値がポートレート・オリエンテーションとは異なる)
オートラップ/トランケート 1. DECAWMモードで設定
2. SET_UPで設定
3.フォーム定義で設定
1. DECAWMモードによる
2.初期設定は必ずオートラップ
3.フォーム定義による
初期文字セット
GL
GR
漢字コード
SET_UPで設定
SET_UPで設定
SET_UPで1978年版と1983年版切り換え可能
常にG0
常にG3(ANSIではG2)
常に1983年版(1978年版は,KANJI78による)
ユーザ指定文字セット(User Preference) SET_UPでDECサプリメントとISOLATIN1 サプリメントの切り換え可能 常にDECサプリメント
フォント
英文書体 ビットマップ
クーリエ,エリート,PI
アウトライン
クーリエ
和文書体 ビットマップ
明朝体OCR-B
カタカナ
アウトライン
明朝体・ゴシック体
OCR-Bカタカナ(OCR-Bカタカナフォントのないプリンタに対してはゴシック体カタカナで代用する)
(トランスレータでは,エリートフォント,PI フォントはクーリエフォントで代用している。クーリエ,明朝も書体デザインはLN05 と異なる)
エラー文字
未定義コード 逆クエスチョンマーク 逆クエスチョンマーク
未定義フォント ブロッブ(黒い四角) 逆クエスチョンマーク
未定義ユーザ文字 四角 逆クエスチョンマーク
縦書き文字 SET_UPによって以下の文字も縦書き用にできる( , .−÷≠<>≦≧) これらの文字は縦書き用にならない
文字ピッチの変更 文字間隔を変えるだけ 同時に適当なピッチのフォントに変える(サイズも変わることがある)
斜字体(イタリック)の代用 アンダライン 正体フォントから計算によって作成
オンデマンド・ローディング SET_UPで有効/無効を選択可能 常に有効ただしプリント・ジョブごとにリセットされる
プリローディング(漢字) 不可
フォームオーバーレイ あり あり
ただしプリント・ジョブごとにリセットされる
テキストとTektronixの混在 不可
SGR スーパースクリプト,サブスクリプト,オーバーラインが使用できる
DECSHORP パラメータ11はSET_UPで6.38CPIまたは17.1CPIに設定できる パラメータ11は常に6.38CPI(ANSIでは常に17.1CPI)
パラメータ12〜16が追加されている
DECSHORP 0の時の漢字のピッチ SET_UPによって,漢字フォント本来のピッチか1byte文字フォントの半分のピッチかを選択できる 常に漢字フォント本来のピッチ
DECVERP パラメータ12〜16が追加されている

2.3.2 LA_KANJI

LA_KANJIデータ・タイプは,漢字LA86/LA280/LA380プリンタに対応しています。 また,漢字LN03/DEClaser2300レーザ・プリンタのLA86モードにも対応します。 これらの相違点を表 2-8に示します。

表 2-8 LA86/LA280/LA380とLA_KANJIの相違点

相違点 LA86 LA280 /LA380 漢字LN03/LN05 LA86 mode LA_KANJI
紙サイズ 連続紙最大幅16インチ 連続紙最大幅16インチ カット紙A4,レター(LN03)A4, B4, B5(LN05) カット紙A4,レター,リーガル, B,A3,A5,B4,B5
解像度 180dpi 180dpi 300dpi 300dpiまたは400dpi(LN82R)
初期設定文字ピッチ SET_UP SET_UP 12.77cpi 12.77cpi(ポートレート)
13.6cpi(ランドスケープ)
行ピッチ SET_UP SET_UP 6.25cpi 6.25cpi(ポートレート)
8.33cpi(ランドスケープ)
オートラップモード SET_UP SET_UP SET_UP オートラップ
文字セット
G0
G1
GR

JISローマ字
DECVT100
SET_UP

SET_UP[1]
SET_UP[1]
SET_UP[1]

JISローマ字
DECVT100
漢字[2]

JISローマ字
DECVT100
漢字
DEC漢字 SET_UP[3] SET_UP[3] SET_UP[3] 1983年版
ESC + " 0 ◯(1983年版)
ESC $ + 1 ◯(1983年版)
ESC $ + @ ◯(1983年版)
ESC $ + 3
ESC $ + B
SGRでの淡印字 不可 不可
DECSHORPパラメータ
3 13.33cpi 13.33cpi 6.7ポイント13.6cpiフォント 10ポイント15cpiフォント
7 6.67cpi(横倍角) 6.67cpi 6.7ポイント13.6cpiの横倍角 10ポイント15cpiの横倍角
8 8.18cpi(横倍角) なし 8ポイント18.75cpiの横倍角 8ポイント18.75cpiの横倍角
BELL(0/7) あり あり なし なし
リセット命令 なし なし あり あり
セルフテスト命令 あり あり なし なし
印字濃度選択命令 あり あり なし なし
ページオリエンテーション なし なし SET_UP あり(初期値が異なる)
sixelデフォルトグリッド・サイズ(インチ) 横 縦
.0056 .0056
横 縦
.0056 .0056
横 縦
.0067 .0133
横 縦
.0067 .0133

[1] LA380では,G0〜G3に各種文字セットをSET_UPで設定可能。
[2] LA05ではSET_UP設定。
[3] SET_UPで1978年版か1983年版かを選択可能。


注意
漢字LN03のLN03S-JAモードとKANJI データ・タイプの違いは,漢字LN03のLA86モードとLA_KANJIとの違いにもあてはまります。


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