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3 プリント・キューの作成と変更

この章では,プリンティング・システムの起動およびテストについて説明します。


注意
キューを作成する前に,システム・ キュー・マネージャが起動していることを確認してください。

3.1 初めてソフトウェアをインストールする場合

初めてインストレーションを行う場合は,スタートアップ・テンプレート・ ファイルを使用してキューを設定するようにします。次のようにプリンタ・ スタートアップ・テンプレート・ファイルをコピーしてください。
$ COPY SYS$COMMON:[SYS$STARTUP]DCPS$STARTUP.TEMPLATE -
SYS$COMMON:[SYS$STARTUP]DCPS$STARTUP.COM

3.2 DECprintプリンティング・サービス・ ソフトウェア(CPS)からのアップグレードの場合

CPSからDCPSにアップグレードする場合は,次のようにCPS$STARTUP.COMファイルを変換してください。

  1. 次のコマンドを実行します。
    $ @SYS$STARTUP:CPS_TO_DCPS_STARTUP.COM
    

  2. 画面に表示される次のような問い合わせに対して,たとえば次のように入力します。
    Enter filename of CPS startup file to be converted;
    Default filename is SYS$SYSROOT:[SYS$STARTUP]CPS$STARTUP.COM
        [default]:
    
    disk$manager:[cps_conversion]cps$startup.com
    
    Enter filename of DCPS startup file to be created;
    Default filename is SYS$SYSROOT:[SYS$STARTUP]DCPS$STARTUP.COM
    
        [default]:
    
    disk$manager:[cps_conversion]dcps$startup.com
    
    Please read or run DIFFERENCES on the output file,
            DISK$MANAGER:[CPS_CONVERSION]DCPS$STARTUP.COM,
    to be sure the new file meets your needs.
    
コマンド・プロシージャにより,DECprint Supervisorが識別できるスタートアップ・ ファイルが作成されますが,既存のキュー定義は変更されません。 新しいキューを追加する必要がある場合は,第3.3 節を参照してください。

DCPS-Plusライセンスを取得している場合

システムにDCPS-Plusライセンスをインストールしている場合, 自動データ・タイプ検出機能を使用することができます。 この場合は,省略時のキュー設定あるいはPRINT コマンド実行時にデータ・タイプを指定する必要がなくなります。

ジェネリック・キューに省略時のデータ・タイプを定義している場合は, DCPS$STARTUP.COMを編集してその部分を削除してください。

3.3 実行キューの設定

各PostScriptプリンタに対して実行キューを作成しなければなりません。 実行キューはジョブの処理をスケジューリングし, プリンタにプリント・ジョブの実行を要求します。 実行キューは特定のプリンタに対応しています。

実行キューを作成する場合は, キュー名および省略時のパレメータ値などキューについての情報を入力します。 例 3-1に, PrintServerプリンタの実行キューの作成例を示します。 例 3-2に, シリアル・プリンタの実行キューの作成例を示します。 これらのコマンドは,DCPS$STARTUP.COMに記述されます。


注意
実行キューを起動する前に,必要なソフトウェアを起動しておくようにシステムを構成してください。 たとえば, ネットワーク・プリンタの場合は,対応するTCP/IP,LAT,DECnet, AppleTalk,PrintServer Supporting Hostソフトウェアが起動していることを確認してください。

直接DCPS$EXECUTION_QUEUE.COMを起動していて,DCPS$STARTUP.COMに同様のコマンドを追加していない場合,OpenVMS システムをブートするといくつかのDCPS キューが動作しない可能性があります。


例 3-1 PrintServerプリンタの実行キュー・エントリの作成

$ @SYS$STARTUP:DCPS$EXECUTION_QUEUE -
LPS20$BULL09 -    ! P1 - Execution queue name
"DECNET/BULL09" - ! P2 - Device name (PrintServer DECnet node name)
DCPS_LIB -        ! P3 - Logical name for your library search list
"SIDES=2" -       ! P4 - Defines a default queue parameter
"" -              ! P5 - Value to override/add to default qualifiers
"" -              ! P6 - Communication speed
"" -              ! P7 - Set device qualifier
""                ! P8 - Verify on/off

例 3-2 シリアル・プリンタの実行キュー・エントリの作成

$ @SYS$STARTUP:DCPS$EXECUTION_QUEUE -
2UP -             ! P1 - Execution queue name
"SERIAL/TTB4" -   ! P2 - Device name
DCPS_LIB -        ! P3 - Logical name for your library search list
"NUMBER_UP=2" -   ! P4 - Defines a default queue parameter
"/DEFAULT=(FLAG,FORM=MYFORM,NOFEED)" -
! P5 - Value to override or add to default qualifiers
"" -              ! P6 - Communication speed
"/SPOOL=(2UP,DISK1$:)" -
! P7 - Set device qualifier
""                ! P8 - Verify on/off
以降の各節では,DCPS$EXECUTION_QUEUE.COMに記述する情報の各項目について説明します。

3.3.1 実行キューの名前の指定(P1)

キュー名は1〜31文字の長さであり,使用できる文字は英字の大文字と小文字, 数字,ドル記号($),およびアンダースコア(_)です。キュー名では少なくとも1 文字の英字を使用しなければならず,スペースを使用することはできません。

3.3.2 プリンタ装置名の指定(P2)

プリンタ装置名には,プリンタにアクセスするために使用する接続方法および装置, ならびにその装置が存在するVMSclusterメンバ・ノードを指定します。

次の形式で装置名を指定します。


node::"interconnect/interconnect_specific_device_address"
各接続形態の指定方法については次の各項を参照してください。

プリンタの接続形態 参照項
IP_RAWTCP 第3.3.2.1項
シリアル 第3.3.2.2項
IP_CPAP 第3.3.2.3項
DECnet 第3.3.2.4項
AppleTalk 第3.3.2.5項

3.3.2.1 TCP/IPネットワークに接続しraw TCP/IPソケットを使用しているプリンタの場合

次の形式で装置情報を入力してください。
"IP_RawTCP/address:port"
addressは,名前表記あるいは数値表記によるNIC,プリント・サーバ, ターミナル・サーバのIPアドレスです。

portは,ネットワーク装置のraw TCPポート番号です。 使用するポート番号については,NIC, プリント・サーバ,ターミナル・サーバのIPアドレスのドキュメントを参照してください。 一般的に共通の値は次のとおりです。

9100 Hewlett-Packard JetDirect,XCD,LexmarkのNIC
2501 EmulexのNIC
20nn DECservers,nnは物理ポート番号
3001 RapidPrint 500プリント・サーバ

たとえばraw TCP/IPプリンタについては,次のいずれかで指定することができます。

"IP_RAWTCP/ln17ps.my.org:2501"
"IP_RAWTCP/8.9.10.11:2501"


注意
プリンタに間違ったポート番号を指定した場合,DCPS はそのプリンタと通信することができません。しかし, プリンタのビジー状態あるいはオフライン状態などとの区別ができないため, ポート番号が間違っていることは通知されません。

3.3.2.2 LATネットワーク接続あるいは直接接続のプリンタである場合

シリアル・プリンタについては,次の形式を使用してください。

プリンタの接続形態 形式 説明
ローカル・シリアル・ライン "SERIAL/Txyn" xはプリンタのタイプ・コード,yコントローラ名, nはホスト・システムのユニット番号です。
LATポート "SERIAL/LTAn" nはホスト・システムのユニット番号です。


注意
SET TERMINALおよびSET DEVICEコマンドは, シリアル・プリンタのプリンタ名を変換します。コマンドがプリンタ名を変換しないように, プリンタ名の前にアンダースコア(_)を付けてください。

3.3.2.3 TCP/IPネットワークを使用したPrintServerプリンタである場合

次の形式で装置情報を入力してください。
"IP_CPAP/address"
addressは,名前表記あるいは数値表記のいずれかの形式による弊社のPrintServer プリンタのIPアドレスです。

たとえばPrintServer TCP/IPノードは,次のいずれかで指定することができます。

"IP_CPAP/garmnd.dsg.dec.com"
"IP_CPAP/16.128.144.11"

3.3.2.4 DECnetネットワークを使用したPrintServerプリンタである場合

次の形式で装置情報を入力してください。
"DECNET/nodename"
addressは,弊社のPrintServerプリンタのDECnetノード名です。

たとえばPrintServer DECnetノードは,次のように指定することができます。

"DECNET/GARMND"

3.3.2.5 AppleTalkネットワークを使用したプリンタである場合

AppleTalkネットワークに接続されたプリンタを,プリンティング・システムに組み込むことができます。AppleTalk プリンタをネットワークで共有するには,DCPS キューが起動されているノードでPATHWORKS AppleTalk for VMSソフトウェア・ コンポーネントを稼動しておかなければなりません。

このタイプのネットワークの構成については,PATHWORKS for VMS (Macintosh)の『Introduction to the AppleTalk Network System』マニュアルを参照してください。

次の形式で装置情報を入力してください。

"APPLETALK/printername@zone@type"
printernameだけが必要である場合,P2の情報は"APPLETALK /printername" となります。

AppleTalkプリンタは,次のいずれかの形式で指定することができます。

"APPLETALK/Paul's Printer"
"APPLETALK/Paul's Printer@MRO"
"APPLETALK/Paul's Printer@MRO@LaserWriter"

3.3.3 ライブラリ論理名の指定(P3)

標準装置制御ライブラリの名前はDCPS$DEVCTLです。このパラメータを指定しなかった場合には, このDCPS$DEVCTLが省略時のライブラリ名として使用されます。 装置制御ライブラリの作成および装置制御ライブラリ論理名の定義についての詳細は, 第7章を参照してください。

3.3.4 キューに対する省略時のPRINT コマンド・パラメータの割り当て(P4)

キューに対応させて省略時のPRINTコマンド・パラメータを指定することができます。 任意のPRINTパラメータをキューに対応させることができます。特定のキューにプリント・ ジョブを出力する際に,PRINTコマンド行に異なるパラメータ値を指定していない場合は, 省略時のPRINTパラメータが使用されます。PRINT コマンド行で指定されたパラメータ値は,省略時のキュー・パラメータを無効とします。

次の例に示すように,省略時のPRINTパラメータは引用符で囲んでください。

$ @SYS$STARTUP:DCPS$EXECUTION_QUEUE -
2UP -             ! P1 - Execution queue name
"SERIAL/TTB4" -   ! P2 - Device name
DCPS_LIB -        ! P3 - Logical name for your library search list
"NUMBER_UP=2"     ! P4 - Defines a default queue parameter

DECprint SupervisorのPRINTパラメータの優先順位

PRINTコマンドの/PARAMETERS修飾子によって設定されるパラメータは,キューに対して設定された省略時の値より優先されます。DECprint Supervisor は,次に示す優先順位に従って省略時のパラメータ値を使用します。

  1. PRINTコマンドで指定したパラメータ

  2. ジェネリック・キューの省略時の設定

  3. 実行キューの省略時の設定

  4. DCPSソフトウェアに組み込まれている省略時の設定
    DATA_TYPE=AUTOMATIC (DCPS-PLUSライセンスをインストールしている場合)
    DATA_TYPE=ANSI (上記ライセンスをインストールしていない場合)
    INPUT_TRAY=プリンタ固有の値
    LAYUP_DEFINITION=省略時のレイアップ定義ファイルなし
    MESSAGES=NOMESSAGES
    NUMBER_UP=0
    OUTPUT_TRAY=プリンタ固有の値[1]
    PAGE_LIMIT=制限なし
    PAGE_ORIENTATION=PORTRAIT
    PAGE_SIZE=(SHEET_SIZEと同じ)
    SHEET_COUNT=1
    SHEET_SIZE=プリンタ固有の値[1]
    SIDES=プリンタ固有の値[1]
    TAB=NOTAB

    [1] これらの設定はプリンタのPostScriptインタプリタの設定に応じて異なります。
一部のパラメータ値はプリンタ・ハードウェアによって制御され, DECprint Supervisorソフトウェア以外の手段によって設定されます。弊社のPrintServer プリンタはPrintServerソフトウェアの影響を受けます。その他のプリンタは, プリンタ制御パネルあるいはスイッチによって制御されます。

3.3.5 省略時のキュー属性の指定(P5)

省略時のキュー属性に追加する値あるいは上書きする値を指定することができます。 これらの修飾子の設定には,INITIALIZE/QUEUEコマンドを使用しないで, キュー定義に記述してください。

省略時の設定では,プリンタ・スタートアップ・コマンド・プロシージャは次のINITIALIZE/QUEUE コマンドの修飾子を使用してプリント・キューを作成します。


注意
キュー定義に複数の修飾子を指定する場合は, 値を引用符で囲むようにしてください。

3.3.6 シリアル・プリンタの通信速度の設定(P6)

OpenVMSシステムに直接接続されているシリアル・プリンタの通信速度を設定することができます。 このパラメータがブランクの場合,省略時の設定は9600 ボーです。通信速度を変更するには,ヌル文字列("")の代わりに"19200" のように指定します。ネットワーク接続を使用するプリンタについては, このパラメータは無視されます。

3.3.7 キューに対するSET DEVICE修飾子の指定(P7)

キューに対するSET DEVICEコマンドの修飾子を指定することができます。 たとえば, プリンタでエラー・ログ機能を有効にする場合は,次の文字列を指定します。
"/ERROR_LOGGING"
上記の設定により,プリンタから通知されるすべてのエラー・メッセージはエラー・ ログ・ファイルSYS$ERRORLOG:ERRLOG.SYSに記録されます。このファイルはANALYZE/ERROR コマンドを使用して読みことができます。

このパラメータはシリアル・プリンタに対してのみ有効です。

3.3.8 キュー初期化時のSET VERIFYの有効化(P8)

DCPS$EXECUTION_QUEUE.COMコマンド・プロシージャに対してSET VERIFYコマンドを有効にすることができます。 ログ・ファイルのサイズとコンソール・ ログのサイズを節約するために,省略時の設定はNOVERIFYです。p8の値が1 の場合はSET VERIFYが有効となり,プリンタ・スタートアップ・ファイルの問題を特定するために役立ちます。(SET [NO]VERIFY コマンドについての詳細は, 『OpenVMS DCL Dictionary』を参照してください。)

3.4 実行キューの動作のカスタマイズ

数多くの方法で,DCPSプリント・シンビオントおよび対応する実行キューの動作を変更することができます。 いくつかの方法については,この節に記述されています。 その他のオプションについては,変更方法の一般的なガイドライントとともに 付録 Bに一覧されています。 いくつかのカスマイズはすべてのDCPSキューに適用され,その他のカスタマイズは特定のキューにだけ適用されます。

3.4.1 マルチストリーム・プロセスとしてのDCPSの稼動

DCPSシンビオントはマルチストリーム・プロセスとして稼動することができます。 マルチストリーム・シンビオント・プロセスである場合,1つのDCPSプロセスは複数のDCPS 実行キューを稼動することができます。現在のすべてのプロセスが指定されたキュー(" ストリーム")の最大数をサポートしている場合を除き,DCPS プリント・キューが起動されるたびに新しいDCPSプロセスが起動することはありません。DCPS シンビオント・プロセスがサポートするキューの数は, そのプロセスが起動される場合の論理名DCPS$MAX_STREAMSの値によって決定されます。

DCPSは,DCPSシンビオント・プロセス当たり最大32実行キューをサポートするように構成することができます。DCPS シンビオント・プロセス当たりのキューの数の指定には, 論理名DCPS$MAX_STREAMSが使用されます。 この論理名を定義するには,DCPS$STARTUP.COMファイル(テンプレートがDCPS$STARTUP.TEMPLATE として提供されています)に次のコマンドを記述し, プロセス当たりに使用するキューの数を代入してください。論理名を定義しない場合,DCPS はただ1つの実行キューをサポートします。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$MAX_STREAMS max-number
DCPS$STARTUP.COMファイルを実行してこの論理名を有効とし,DCPSをマルチストリーム・ プロセスとしてキューを起動します。

DCPSプロセスは,そのプロセスに対応しているすべてのキューが停止した場合にかぎり終了します。

3.4.1.1 マルチストリームを稼動している場合のプリント・ キューの管理

OpenVMSキュー・マネージャは,シンビオント・プロセスの作成および停止のタイミングを制御します。 一般的に,新しいDCPSシンビオント・プロセスは, 既存のすべてのDCPSシンビオント・プロセス内に未使用のストリームがない場合に作成されます。 すでに説明したように,DCPSプロセスがサポートするストリーム( キュー)の数は,新しいプロセスが起動される場合の論理名DCPS$MAX_STREAMS の値によって決定されます。シンビオント・プロセスは, そのプロセスによってサポートされているすべてのキューが停止した場合に終了します。

1つのDCPSシンビオント・プロセスがサポートするプリント・キューは, キューが起動された順番,およびその後のキューの停止(STOP/QUEUE /RESET あるいはSTOP/QUEUE/NEXT )ならびにキューの起動( START/QUEUE )によって決定されます。DCPSは,キューのプロセスID を識別する1つの論理名を定義します(第5.8 節)。この論理名を使用して,そのキューをサポートしているプロセスおよび同一プロセスでサポートされている1 組のキューを判定することができます。

あまり発生することではありませんが,同一プロセスでサポートされるキューであるために,1 つのキューで発生する問題が別のキューに存在する問題の結果である場合があります。 問題を特定するには,1つのキュー上の1つのジョブの状態を調べるだけでは十分ではありません。 そのDCPSプロセスでサポートされているすべてのキュー上の第1 ジョブの状態を調べる必要があります。

DCPSキューを,そのキューをサポートしているDCPSプロセスを停止することによって停止してはなりません。 STOP/ID を使用してDCPSシンビオント・ プロセスが停止すると,そのプロセスがサポートしているすべてのキューが停止します。

3.4.1.2 マルチストリームを稼動している場合のDCPS 環境の変更

単一ストリームのDCPSシンビオント・プロセスについては,変更する内容にもよりますが,DCPS 論理名およびDCPS環境のその他の状態を変更した場合, 対応したキューについてSTOP/RESET コマンド,続いて START コマンドを実行するまでは,その変更は有効となりません。

マルチストリーム・プロセスに対応した単一のDCPSキューについての動作を変更するには, そのシンビオント・プロセスに対応したすべてのDCPSキューを停止した後に再起動して, 変更を有効とする必要があります。これは,環境のいくつかの状態はDCPS シンビオント・プロセスが起動した場合にかぎって決定され, 対応するすべてのキューが停止するまでそのシンビオント・プロセスが停止しないためです。

3.4.2 ジョブ起動時の"Busy"状態のプリンタへの割り込み

通常DCPSは,raw TCP/IP,LAT,シリアル・プリンタのいずれかに新しいジョブを送信する前に, そのプリンタが"Idle"状態となるまで待ちます。これは,DECserver 装置あるいはその他のネットワーク・ターミナル・サーバを介して接続しているプリンタを,DCPS キュー,LATSYMキュー,WindowsおよびUNIX ホストなどで共有することができるネットワーク環境で本質的に重要なことです。

バージョン1.2より前のバージョンでは,DCPSはアグレッシブ同期シーケンスを使用してプリンタのPostScript インタプリタの制御を取得していました。 この方式はDCPSのみの環境では正しく動作していましたが,複数のホスト環境では, プリント・ジョブが別のシステムによって出力が完了しないうちに終了させられてしまう場合がありました。

別のキュー上のジョブを起動することで1つのキュー上の不正なPostScriptジョブを強制終了させるというDCPS の以前の動作を期待している場合は,次のようなシステム全体で有効な論理名を定義することによってアグレッシブ方式の動作を復元することができます。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$queuename_INTERRUPT_WHEN_BUSY 1

3.4.3 ジョブ起動時のPostScript同期の制限

DCPSは,PostScriptインタプリタと同期してraw TCP/IP,LAT, シリアル・プリンタ上のジョブを起動することにより, インタプリタがコマンドを受け付ける準備ができていることを保証しています。 ただし,いくつかのPostScript は同期制御文字を常に識別できる状態にあるとはかぎりません。 特に,HP PCLなどの付加的なプリンタ言語をサポートしているいくつかのプリンタの場合, 特定の状況ではこのシーケンスに正しく対応することができません。 たとえばDEClaser 3500がPS/PCLセンス・モードである場合,DCPSがそのシリアル・ ポートにCtrl/T文字を送信すると,間違ってPCLモードに切り替わります。 このプリンタは続いてPostScriptモードを抜けて応答しなくなり, プリント・ジョブは"Starting"状態となります。

論理名を定義することにより,raw TCP/IP, LAT,シリアル接続を使用するプリンタについて,DCPS シンビオントが通常の同期シーケンスの使用を避けることができます。 raw TCP/IP, LAT,シリアル接続以外で接続されたプリンタを使用している場合, この論理名はなんらの影響も与えません。プリンタ固有の情報については, 第10章を参照してください。

プリンタ・キューの同期シーケンスを無効とするには,次のコマンドを使用します。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$queuename_NO_SYNC 1
最近のほとんどのシリアル接続プリンタについては,同期手順を行わないことが問題となることは一般的にありません。 これは,インタプリタがデータを受け付けられる状態にない場合, このようなプリンタはフロー制御を使用してデータ受信を待つことができるからです。 ただし,ボー・レートあるいはストップ・ ビットなどの通信パラメータが正しく設定されていない場合は, プリンタが不要なものを出力してジョブを消失する可能性があります。 また,構成によっては,プリンタのデータ・ケーブルが接続されていない場合, あるいはプリンタの電源が落ちている場合,プリント・ジョブが消失する可能性があります。

3.4.4 シンビオント・プロセスのワーキング・ セットの削除

DCPSシンビオントがアイドル状態のまま特定の時間が経過すると,システム・ リソースを節約するためにそのワーキング・セットを削除します。この遅延時間は, 多くの作業要求がある場合にシステムがプログラムを物理メモリに保持したままでいることを避けるためです。

省略時の設定では,DCPSは10分間のアイドル状態の後にそのワーキング・ セットを削除します。 必要に応じてシステム全体で有効な論理名を定義することで, この値を増やすことができます。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$PURGE_TIME "0 hh:mm:ss.00"
ここでhh:mm:ss.00は,必要な遅延時間を指定するOpenVMSのデルタ時間です。 この値が省略時の値である10秒よりも小さい場合は,省略時の値が使用されます。

3.4.5 OPCOMメッセージの"User Name Not Found"の制限

DCPSがクラスタ環境で動作していて,クラスタ・メンバ間でUAFファイルが異なる場合, 次のようなOPCOMメッセージが表示されますが,ジョブは正常に出力されます。
%%%%%%%%%%%  OPCOM   1-OCT-1999 18:43:55.87  %%%%%%%%%%%
Message from user SYSTEM on LITERA
Queue SHARIE: %DCPS-W-USERNOTFOUND, user name FOO not found,
  no log files created
-RMS-E-RNF, record not found
ユーザ名を見つけることができないため,シンビオントは MESSAGES=KEEP あるいはMESSAGES=PRINT パラメータ要求を実行することができません。

すべてのジョブについて,このOPCOMメッセージが表示されないようにするには, 次の論理名を定義します。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$queuename_IGNORE_UNKNOWN_USER 1

3.4.6 A4ランドスケープでの古いANSIトランスレータのページ・ サイズの使用

DCPS V1.1Aよりも前のすべてのANSIトランスレータのバージョンでは,A4用紙にランドスケープ・ モードで66行のテキストを出力する場合に問題があります。 特定のプリンタでは,A4用紙を使用した場合,印字領域が平均よりも若干小さいため, PAGE_SIZE=A4,PAGE_ORIENTATION=LANDSCAPE というプリント修飾子を使用すると,66行目が消失するか途中で切れてしまいます。

現在ANSIトランスレータは,A4用紙にランドスケープ・モードで66行のテキストを正しく出力することができます。 この修正には,使用されているフォントの行間のスペースの変更(SGR 15),A4用紙での最大印字領域の訂正が含まれます。

古いトランスレータの動作に依存したあらかじめ用意されたフォームを使用している場合は, 次のDCPS論理名を定義することにより以前の動作に戻すことができます。

$ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE DCPS$queuename_OLD_ANSI_PAGE_SIZES 1

3.5 ジェネリック・キューの設定

ジェネリック・キューは特定のプリンタに対応付けられたものではなく, 実行キューに対応しているものです。 ジェネリック・キューを複数の実行キューに対応付けておくと, プリント・ジョブを複数のキューに分散することができます。 また,特定のDECprint Supervisor機能をプリント・ジョブに対応させるためにジェネリック・ キューを使用することもできます。ジェネリック・ キューは省略可能です。

例 3-3に,レイアップ定義ファイルを使用した出力用のジェネリック・ キューの設定方法を示しています。このジェネリック・ キューは,2つのScriptPrinterの実行キューのいずれかにプリント・ ジョブを送信します。

例 3-3 ジェネリック・キューの設定

$ @SYS$STARTUP:DCPS$GENERIC_QUEUE -
DRAFT_DOCS -              ! P1 - Generic queue name
"LN03R_TTB4,LN03R_TTB7" - ! P2 - Execution queue names
"LAYUP=LPS$SINGLEHOLES"   ! P3 - Default queue parameters
"" -                      ! P4 - Default queue qualifiers
""                        ! P5 - Verify on/off

表 3-1 ジェネリック・キューのパラメータ値

パラメータ
P1 (必須) ジェネリック・キュー名です。 例 3-3では, DRAFT_DOCSがプリント・ジョブを送信するジェネリック・キューです。
P2 (必須) ジェネリック・キューがジョブを送信する実行キュー名です。 各ジェネリック・キューの定義について, 少なくとも1つの実行キューを指定しなければなりません。 例 3-3では, ジェネリック・キューはプリント・ジョブをLN03R_TTB4およびLN03R_TTB7という2つの実行キューに送信します。
P3 (省略可能) 省略時のPRINT修飾子です。 例 3-3では, LAYUP=LPS$SINGLEHOLESがジェネリック・キューの省略時のレイアップ定義を提供します。
P4 (省略可能) INITIALIZE/QUEUE修飾子の指定です。
P5 (省略可能) SET VERIFYコマンドの設定です。 省略時の設定はSET NOVERIFYです。

3.6 キュー定義の変更の有効化

DCPS$STARTUP.COMファイルを作成または変更した場合,新しいキュー定義を使用するためにDECprint Supervisor に加えた変更を有効としなければなりません。 変更結果を有効とするには,システムを停止させた後に再起動するか, または次の方法でDCPS$STARTUP.COMファイルを実行してください。

  1. 変更したプリント・キューを停止させます。修飾子を加えたキューがマルチストリーム・ シンビオント上で起動されている場合は, 同一のシンビオントを使用しているすべてのキューを停止させます(第3.4.1.2項を参照してください。) 。各プリント・ キューに対して次のコマンドを実行して,キューを停止させます。
    $ STOP/QUEUE/NEXT queuename
    

  2. システム・スタートアップ・ファイルSYS$MANAGER:SYSTARTUP_ VMS.COMを編集して,DCPS$STARTUP.COMを起動するコマンドを記入します。 システム・スタートアップ・ファイル内に次のコマンドが含まれていることを確認します。
    $ @SYS$STARTUP:DCPS$STARTUP
    
    システム・スタートアップ・ファイル内に上記のコマンドが含まれていない場合は, 次のガイドラインに従ってこのコマンドを追加してください。

  3. プリンタ・スタートアップ・コマンド・ファイルを実行します。
    $ @SYS$STARTUP:DCPS$STARTUP.COM
    
キューがVMSclusterシステム上にある場合は,上記のコマンドをクラスタ内のすべてのノードから実行しなければなりません。

プリンタ・スタートアップ・コマンド・ファイルによってプリント・ キューが起動されます。新しいキュー定義をテストする場合は, 第3.7節を参照してください。

3.7 プリンティング・システムのテスト


注意
IVP (@SYS$TEST:DCPS$IVP )を実行しても,プリンタには影響を与えません。

SYS$COMMON:[SYSTEST.DCPS]にあるIVPファイルを出力することで,プリンティング・ システムをテストすることができます。IVPファイルは,DCPS がサポートするデータ・タイプに対応しています。 表 3-2にIVPファイルの一覧を示します。

表 3-2 異なるデータ・タイプに対応したIVPファイル

ファイル名 ファイル・タイプ DCPS-PLUSライスンスの必要性
DCPS$IVP_ANSI.DAT ASCIIファイル No
DCPS$IVP_LIST.DAT 単純なASCII Yes
DCPS$IVP_PCL.DAT PCL Level 4ファイル Yes[1]
DCPS$IVP_POST.DAT PostScriptファイル No
DCPS$IVP_PROPRINTER.DAT Proprinterファイル Yes
DCPS$IVP_REGIS.DAT ReGISファイル Yes
DCPS$IVP_TEK4014.DAT Tektronix 4010/4014ファイル Yes


[1] プリンタがネイティブPCLインタプリタを持っていない場合。 持っている場合は"no"。

DCPS-Plusライセンスをインストールしている場合は,ソフトウェアがファイルのデータ・ タイプを自動的に検出することができます。コマンド行にデータ・ タイプを指定する必要がなくなります。たとえば,次のPRINTコマンドを実行することができます。

$ PRINT/QUEUE=queuename/NOTIFY DCPS$IVP_data-type.DAT
DCPS-PLUSライセンスをインストールしていない場合,あるいはプリント・ キューが特定のデータ・ タイプに対応している場合,あるいはLISTデータ・タイプをテストしている場合は, ファイルのデータ・タイプを指定してください。 たとえばDCPS$IVP_POST.DATを出力する場合は,次のPRINTコマンドを使用します。
$ PRINT/QUEUE=queuename -
  /PARAMETERS=DATA_TYPE=POSTSCRIPT/NOTIFY -
  SYS$COMMON:[SYSTEST.DCPS]DCPS$IVP_POST.DAT


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