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21 ネットワークについて

本章では,OpenVMSシステムで使用できる基本的なソフトウェア・オプションについて紹介します。 本章では,それぞれを簡単に紹介するにとどめています。 それぞれの計画,インストール,構成,使用,または管理については, 使用するネットワーク製品に対応するドキュメント・セットを参照してください。

21.1 OpenVMSシステムで使用できるネットワーク・ オプション

OpenVMSシステムでは,次の3種類のネットワーク機能が提供されます。

DECnet-Plus,TCP/IP,およびDECnet Phase IVが動作するノードは,同じネットワーク内に共存させることができます。TCP/IP ソフトウェアを実行するとき, 同じシステム上でDECnet-PlusまたはDECnet Phase IVを動作させることができます。 表 21-1に,単一のノード上で組み合わせて使用できるさまざまなソフトウェアをリストします。 また,さまざまなシステムの組み合わせで通信する場合,どのアプリケーションが使用できるかについても示します。

表 21-1 ネットワーク・ソフトウェアの相互利用の可能性

システムAに存在するもの システムBに存在するもの システムAとシステムBの通信で
使用するもの
TCP/IP TCP/IP TCP/IPアプリケーション
DECnet Phase IV DECnet Phase IV DECnetアプリケーション
DECnet-Plus DECnet-Plus DECnetアプリケーションOSI アプリケーション
DECnet-Plus DECnet Phase IV DECnetアプリケーション
DECnet-PlusOSI OSIアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet Phase IV TCP/IP TCP/IPアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet Phase IV DECnet Phase IV DECnetアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet-Plus TCP/IP TCP/IPアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet-Plus DECnet-Plus DECnetアプリケーションOSIアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet-Plus TCP/IPおよびDECnet-Plus OSIアプリケーションDECnet アプリケーションTCP/IP (RFC 1859)+ を介したDECnet経由のDECnetアプリケーションTCP/IP (RFC 1006) を介したOSI経由のOSIアプリケーションTCP/IP アプリケーション
TCP/IPおよびDECnet-Plus (RFC 1006をサポートする) OSIおよびTCP/IP OSIアプリケーションTCP/IP (RFC 1006) を介したOSI TCP/IPアプリケーション
TCP/IPおよびDECnet-Plus (RFC 1006をサポートしない) OSIおよびTCP/IP OSIアプリケーションTCP/IP アプリケーション

+ RFC 1859はインターネットの草稿で,インターネット規格RFC 1006の拡張である。

DECnet-Plusの説明とドキュメント・セットのロードマップについては, 『DECnet-Plus for OpenVMS Introduction and User's Guide』を参照してください。

DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSの説明については,『DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning Guide』を参照してください。

DECnet-PlusおよびTCP/IP Services for OpenVMSのドキュメントについての包括的なリストが, 本章の最後にあります(第21.4 節を参照)。

以降の節では,DECnet-PlusおよびDIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS について紹介します。

21.2 DECnet-Plus for OpenVMSネットワーク

DECnet-Plus for OpenVMSを使用すると,さまざまなコンパックのオペレーティング・ システムが,コンパックのオペレーティング・システムや他のベンダ製のシステムと通信できるようになります。DECnet-Plus ネットワークは, 遠隔システムとの通信,リソースの共有,分散処理などをサポートします。 ネットワーク・ユーザは,ネットワーク上のすべてのシステム上にあるリソースにアクセスできるようになります。 ネットワークに参加しているそれぞれのシステムは, ネットワーク・ノードと呼ばれます。 さらに,DECnet-Plusは,インターネット規格RFC 1006とインターネットの草稿RFC 1859 をサポートしています。これによってOSIアプリケーションとDECnet アプリケーションが TCP/IPを介して動作するようになります。 このようにDECnet-Plusを使用することによって,コンパックのシステムからでも他のベンダのシステムからでも, アプリケーションは, 任意のDECnet Phase IVベースのシステムまたはOSIベースのシステム上の OSI およびDECnetアプリケーションと通信できるようになります。

表 21-2に,DECnet-Plusネットワークに関連する用語を定義します。

表 21-2 DECnet-Plus for OpenVMSネットワークの用語

用語 定義
アドレス/ アドレス・タワー DECnet-Plusシステムには複数のアドレス・ タワー(プロトコル・スタックとも呼ばれる)がある。アドレス・ タワーは,特定のノードで使用できるさまざまな通信プロトコルのセットを記述する。 これらのタワーは,ネームスペースに格納され,2 つのノードが共通して使うプロトコルを決定するときに使用される。これによってそれぞれのノード間で通信できるようになる。
自動構成 DECnet-Plusがサポートするオプションで, これを使用すると,隣接するルータが,エンド・ノードのネットワーク要素タイトル(NET) を自動的に構成できるようになる。
ドメイン 同じルーティング・ プロトコルを使用するシステムの集合。
要素 ネットワークを記述する属性,識別する名前, 管理操作をサポートするインタフェースなどによって構成されるネットワークの管理可能な個別の部分。 たとえば,ノード,ルーティング, OSI伝送など。
拡張アドレス DECnet Phase IVアドレッシングの制限内に収まらないときに,拡張アドレッシング機能を提供するDECnet-Plus ネットワーク・アドレス。 DECnet-Plusネットワーク・アドレスは,DECnet Phase IVと互換性がある。DECnet-Plus を構成するときに,ノードのPhase IVアドレスから拡張アドレスが自動的に構築される。 拡張アドレスは,ユーザとアプリケーションが, 他のOSIシステム(コンパックの場合またはコンパック以外の場合) との通信で拡張アドレッシングが必要な場合のみ問題になる。
マルチホーム 複数のネットワーク・ アドレスをシステムに割り当てるための機能。複数のアドレスを使用すると,DECnet-Plus 拡張アドレス,Phase IV互換アドレス, およびTCP/IPアドレスを組み合わせて使用することができる。そのためDECnet Phase IV ,OSI (またはDECnet-Plus),およびTCP/IPなどのシステムと通信できるようになる。 こうすることによって,ユーザが複数のネットワークに所属できるようになる。
ネーム・サービス ノード名とアドレッシング情報を管理するソフトウェア。DECnet-Plus では,ローカル・ネームスペース,Digital Distributed Name Service (DECdns) ,Domain Name System (DNS/BIND)の3つのネーム・サービスを提供している。
ネームスペース ネーム・サービスが格納するアクセス可能な名前のセット。
ネットワーク要素タイトル OSI用語では,ネットワーク要素タイトル(NET) は,ルーティングに使用するネットワーク層プロトコルの識別に使用されるネットワーク・ アドレスになる。DECnet-Plusシステムは,ルーティングを介した伝送操作ごとに1 つのNETを自動的に構築する(自動構成) 。
ネットワーク・サービス・アクセス・ ポイント(NSAP) 次のいずれかを示す。

  • DECnet-Plusシステムのグローバル・ネットワーク・アドレス。

  • ネットワーク要素がネットワーク・ユーザにサービスを提供するアドレス可能なポイント。

  • 特定のネットワーク・システムと,そのシステム上でデータを受信する伝送モジュールの両方を識別する完全なアドレス。
NSAPは,すべてのパケットでデスティネーション・ノードを決定するときに使用されるため, ネットワーク内で一意でなければならない。NSAPは00以外のセレクタ・ フィールドを持つNETになる(セレクタ・フィールドは使用される伝送を識別する) 。
オブジェクト/アプリケーション DECnet Phase IVの場合,オブジェクトは,論理リンクが接続するプロセスになる。 オブジェクトは,DECnetを使用するレイヤード・ プロダクトにより設定される。オブジェクトには,たとえばMailオブジェクトなどの DECnet システム・プログラムもある。その他のオブジェクトはユーザが記述するプログラムになる。

DECnet-Plusの場合,オブジェクトはアプリケーションとして参照される。Phase IV にオブジェクト・データベースがあるように,DECnet-Plus にはアプリケーション・データベースがある。

Phase IV互換アドレス Phase IVアドレッシングの制限内に収まるDECnet-Plus ネットワーク・アドレス。つまりPhase IVの領域とノードの制限に準拠しているもの。 その場合,領域番号が1〜63, ノード番号が1〜1023の範囲になり,36.515のようになる。同一ネットワーク内のDECnet Phase IV ノードと通信するために,DECnet-PlusシステムではPhase IV 互換アドレスが必要。
タイム・サービス ネットワークに接続しているコンピュータについてシステム・ クロックの同期をとるソフトウェア。 Digital Distributed Time Service (DECdts)を使用すると,分散アプリケーションが別のシステム上で動作する場合でも適切なシーケンスで実行できるようになる。

21.2.1 DECnet-Plusの機能

DECnet-Plusでは,ネットワーク機能を拡張するためのさまざまな機能が用意されています。 これらの機能を次に示します。

これらの新しい機能を十分に活用するためには,場合によっては,現在のネットワークを変更する必要があります。 第21.2.4 項では,アップグレードの前に決定する事項について概説しています。

21.2.2 DECnet-Plus for OpenVMSソフトウェアの構成要素

DECnet-Plusは,基本システムの構成要素とオプションの構成要素で構成されています。 インストール・プロシージャを開始すると,構成要素の基本システムが自動的にインストールされます。 基本システムの構成要素には, 次のようなものがあります。

次の構成要素は,オプションでインストールされます。

21.2.3 ライセンスとその従属関係

DECnet-Plus for OpenVMSまたはDECnet Phase IVソフトウェアを使用するには, 適切なソフトウェア・ライセンスが必要です。表 21-3 に,2つの基本ライセンス(エンド・ システムおよび拡張機能)と,DECnet Phase IVおよびDECnet-Plusの3 つのライセンス・キーを示します。

表 21-3 DECnet Phase IVとDECnet-Plusのライセンス

VAX Phase IV VAX DECnet- Plus Alpha Phase IV Alpha DECnet-Plus
エンド・システム・ライセンス
DVNETEND DVNETEND DVNETEND DVNETEND
クラスタの別名とルーティングを除くすべてのDECnet Phase IV の機能 クラスタの別名,OSI API [1],OSIアプリケーション・ゲートウェイ, DECdnsサーバ, ルーティングを除くすべてのDECnet-Plusの機能 クラスタの別名を除くすべてのDECnet Phase IV の機能 クラスタの別名,OSI API [1], OSIアプリケーション・ゲートウェイ,ルーティングを除くすべての DECnet-Plus の機能
拡張機能ライセンス
DVNETRTG DVNETRTG DVNETEXT DVNETEXT
クラスタの別名とルーティングを含むすべてのDECnet Phase IV の機能 クラスタの別名[2],OSI API,OSIアプリケーション・ ゲートウェイ, DECdnsサーバ,ホスト・ベースのルーティング[3]を含むすべてのDECnet-Plus の機能 クラスタの別名[2]を含むがルーティング [4]は除くすべてのDECnet Phase IVの機能 クラスタの別名[2],OSI API[1], OSIアプリケーション・ゲートウェイ, ホスト・ベースのルーティング[3]を含むすべてのDECnet-Plusの機能

[1]アプリケーション・プログラミング・インタフェース

[2]クラスタの別名を使用可能にするためには,クラスタの1つのノードに DVNETRTG ライセンスが必要。

[3] DECnet-Plus (バージョン7.1)でホスト・ベースのルーティングが使用可能。 バージョン7.1より前の DECnet Phase V (DECnet/OSI)システムでは使用できない。

[4] DECnet Phase IV OpenVMS Alphaシステムでは,ルーティングがサポートされていない。

21.2.4 ネットワークに参加するための準備

DECnet-Plusノードを構成する前に,アドレッシング,ネーム・サービスの使用, タイム・サービス,ルータについて決定しておく必要があります。 またX.25ソフトウェアに固有のライセンスの従属関係についても注意する必要があります。 これらについては,以降の節でさらに詳しく説明します。

21.2.4.1 ネットワーク・アドレッシング

DECnet-Plusネットワーク上のユーザが,電子メール,EDI,FTAM,VTPなどのインターネットワーク・ ユーティリティを使用して,他のOSIネットワーク上のユーザと通信できるようにする必要がある場合は,ANSI などの公認機関から, 新規ドメイン部分(IDP)と呼ばれる一意なネットワーク識別子を受け取る必要があります。 これはNSAPの一部になります。

ユーザがOSIネットワーク上の他のユーザと通信する必要がない場合は, DECnet-Plus により,構成時に使用できる省略時のIDPが提供されます。 アドレッシングについての詳細は,『DECnet-Plus Planning Guide』を参照してください。

21.2.4.2 ネーム・サービスの選択

ノード名とノード・アドレスとをマッピングする場合,ローカル・ネームスペース,DECdns ,DNS/BINDの3つのネーム・サービスのうちいずれか1つ以上が必要になります。DECnet-Plus ネットワークでは,1つのネーム・サービスだけを排他的に使用できるようになっています。 また,1つまたは複数のネーム・ サービスを使用するシステムを,複数用意することもできます。DECnet-Plus を構成するとき,使用可能な3つのネーム・サービスの中から, ノードで使用するものをいくつか指定します。使用するネーム・ サービスを決定する際には,以下の表を参考にしてください。また,ネットワーク内の他のノードによって使用されているネーム・ サービスについてもチェックします。 たとえば,ネットワーク内の他のノードがすでにDECdns を使用している場合,通常はDECdnsを使用して,既存のネームスペースに参加します。

ネーム・サービス 使用する状況
ローカル・ ネームスペース 分散ネームスペースを使用する必要のない小規模なネットワークの場合に使用される( 名前のマッピングが各ノードで別々に管理される) 。ローカル・ネームスペースは,パーマネント・ ノード・データベース(NETNODE_REMOTE.DAT)に似ており,DECnet Phase IVシステムで使用される。ローカル・ネームスペースを使用する場合には, 他にソフトウェアを追加する必要がない。
DECdns 1箇所の記憶位置でノード名の管理と格納を行う, 比較的大規模なネットワークの場合に使用される。この場合, DECdnsソフトウェアが動作する複数のサーバが必要になる。DECdnsサーバ・ ソフトウェアは,オプションのソフトウェアで,DECnet-Plus for OpenVMSソフトウェア・キットに入っている。詳細は次を参照。
『DECnet-Plus Planning Guide』
『DECnet- Plus for OpenVMS Applications Installation and Advanced Configuration』
『DECnet-Plus DECdns Management』
DNS/BIND DECnet-PlusアプリケーションがTCP/IP を介して動作する場合に使用される。

DNS/BINDでは,IPアドレスの格納とノードの同意語の使用がサポートされているため, 長いドメイン名を使用できない古いアプリケーションとの下位互換性が保たれている。DECnet-Plus では,ネットワークに1つまたは複数のDNS/BIND サーバが必要になる。DNS/BINDについての詳細は,適切なTCP/IP のドキュメントを参照。

21.2.4.3 DECdtsタイム・サーバの選択

DECdtsは,ネットワーク接続されているコンピュータでシステム・クロックの同期をとります。DECdts クラークは,DECnet-Plus for OpenVMSの構成プロシージャにより自動構成されます。 ネットワークが複数のDECdnsサーバを使用する場合, またはネットワーク・クロックの同期をとる必要がある場合,1 つのLANにDECdtsサーバを3つ以上インストールしてください。 詳細は『DECnet-Plus DECdts Management』を参照してください。

21.2.4.4 ルータの設定

高いスループットが必要な大規模なネットワークでは,ネットワーク単位で専用のルータが1 つまたは複数必要です。高いスループットを必要としない環境では,DECnet Phase IV ホスト・ベース・ルータを置換する,またはルーティングする目的でのみ, ホスト・ベース・ルータを使用してください。

21.2.4.5 X.25ライセンスと従属

DECnet-Plus for OpenVMS VAXシステムのライセンスには,X.25 Accessソフトウェア( 以前はVAX P.S.I. Accessと呼ばれていた)を使用する権利も含まれています。X.25 Native Mode ソフトウェア(以前はVAX P.S.I.と呼ばれていた) を使用する場合は,追加のライセンスが必要です。

DECnet-Plus for OpenVMSのX.25ソフトウェアは,古いVAX P.S.I.が動作するシステムと下位互換になっています。X.25 についての詳細は, 『DECnet-Plus for OpenVMS Introduction and User's Guide』を参照してください。

DECnet-Plus for OpenVMS Alphaシステムでは,次のライセンスが必要です。

21.2.4.6 TCP/IPを介したDECnetまたはOSIの実行

OpenVMSシステムでTCP/IP機能を介してDECnetを使用する場合,またはTCP /IP機能を介してOSIを使用する場合は,TCP/IPソフトウェアが必要になります。 システムで使用するTCP/IPソフトウェアは,PATHWORKS Internet Protocol(PWIP)インタフェースをサポートしなければなりません。

21.2.5 DECnet-Plusのノード名

DECnetノード名の命名規則は,次の2種類のDECnet機能に対応しています。

完全な名前の構文

完全な名前では,一般的に次のような形式が使用されます。

ネームスペース:.ディレクトリ... .ディレクトリ.ノード名

ネームスペース グローバル・ネーム・ サービスを指定
ディレクトリ... .ディレクトリ ネーム・サービス内の階層化ディレクトリ・ パスを定義
ノード名 DECnetノードを定義する特定のオブジェクト

次に,ローカル・ネームスペース,DECdns,DNS/BINDに対応する完全なノード名の例を示します。

      ローカル・ネームスペース -  LOCAL:.CPlace
      DECdns          -  ACME:.warren.CPlace
      Domain          -  CPlace.warren.acme.com

ユーザが入力した完全な名前は,大文字と小文字が区別された状態でシステムに格納されます。 ただしエントリと,格納された名前をマッチングさせる時には, システムは大文字と小文字を区別しません。つまりユーザがAcme と入力した場合でも,システムは,それをACMEと認識します。

完全な名前についての詳細は,DECnet-Plusのドキュメントを参照してください。

21.2.6 OpenVMS Clusterシステムのサポート

DECnet-Plus for OpenVMSソフトウェアでは,OpenVMS Clusterシステムをサポート, およびOpenVMS Clusterの別名の使用についてもサポートしています。 DECnet-Plus では,それぞれのOpenVMS Clusterに対して別名を3 つ使用できるようになっています。 DECnet Phase IVの場合,ノードをDECnet-Plus の別名のメンバにすることはできません。それぞれの別名を,DECnet Phase IV のノードで使用するよう構成する必要があります。

CLUSTER_CONFIG.COMコマンド・プロシージャは, OpenVMS Clusterの構成を実行します。 このとき任意のクラスタ・メンバから,クラスタのすべてのメンバについて構成することができます。 これにより,DECnet- Plus for OpenVMSのNET$CONFIGURE.COMコマンド・プロシージャが起動され, NCL 初期化スクリプトに対して必要な変更が行われます。 OpenVMS Clusterを構成するにはCLUSTER_CONFIG.COMを使用します。 CLUSTER_ CONFIG.COMがすでに使用されている場合に, DECnet-Plusのサテライト・ ノードを構成するには, NET$CONFIGURE.COMを直接使用します。

21.2.7 DECnet-Plusの構成

NET$CONFIGURE.COM構成プロシージャでは, DECnet-Plusの構成を行うための3 つのオプションがあります。表 21-4では, これらのオプションについて説明しています。

表 21-4 DECnet-Plus構成オプション

オプション 使用する状況
FAST 次の状況で簡単な構成を実行する場合に使用する。

  • DECnet-Plus (Phase V)システムが,DECnet Phase IVシステムと同じ方法で動作するようにする場合

  • DECnet-Plus製品のことを十分に理解していない場合に, DECnet Phase IVノードをDECnet-Plusにアップグレードするとき。

DECnet-Plusシステムは,Phase IVおよびOpenVMSのオペレーティング・システム・ パラメータを決めることによって自身を構成する。ローカル・ネームスペースが命名情報として使用される。 後でシステムを再構成して, 機能を追加することもできる。

OpenVMS Clusterで動作するノード,およびDECdnsサーバになっているノードの場合,FAST オプションはサポートされていない。

BASIC ほとんどの構成要素について省略時の設定を使用し, 次のようないくつかの要素だけをカスタマイズする場合に使用する。

  • DECnet-Plus通信で使用される1つまたは複数の通信装置

  • すべての装置およびルーティング・サーキットの名前

  • ネットワーク・アドレスの自動構成
詳細は『DECnet-Plus for OpenVMS Installation and Basic Configuration』を参照。
ADVANCED 次の状況のように, システムのネットワーク構成をカスタマイズする場合。

  • TCP/IPを介してDECnet-Plusを使用する場合,またはTCP/IPを介してOSI を使用する場合

  • 複数のプロトコルを混在させて,複数の通信装置をサポートする場合

  • X.25サービスを実行する方法に柔軟性を持たせる場合

  • 特定のネットワーク構成要素で,省略時の名前を使用せずに独自の名前を指定する場合

  • DECnet-Plus for OpenVMS VT,OSAK,FTAMの各ソフトウェアについて構成する場合

  • システムをDECdnsサーバとして構成する場合

  • 自動構成を実行しないで独自のNETを構成する場合
詳細は『DECnet- Plus for OpenVMS Applications Installation and Advanced Configuration』を参照。

ローカルのDECnet-Plus for OpenVMSシステムのすべての要素,または各要素を再構成する場合にも,NET$CONFIGURE.COM を使用することができます。 この構成プロシージャを再実行すると,関連する初期化スクリプト・ ファイルが変更または置換されますが,動作中のシステムには影響しません。 その後,これらの変更を適用するために,変更された初期化スクリプト・ ファイルを実行します。

初期化スクリプトにより,必要な要素がすべて作成され,使用可能になります。 それぞれの要素は,個別のNCLスクリプト・ファイルを実行することにより初期化されます。NCL スクリプトを使用して DECnet-Plus for OpenVMSシステムを初期化すると,各ノードでDECnetパーマネント構成データベースを作成するための Phase IV 要件を置換します。遠隔ノード情報は, ローカル・ネームスペースまたは分散ネームスペース(DECdnsまたはDNS/BIND) のいずれかにあります。

詳細は『DECnet-Plus Network Management guide』を参照してください。

21.2.8 Phase IVネットワークからDECnet-Plusへの移行

ネットワークをDECnet Phase IVからDECnet-Plusへ移行する場合,移行の対象を, ネットワークの一部にするか,またはネットワーク全体にするかを選択できます。DECnet-Plus は下位互換になっています。つまり, DECnet Phase IVアプリケーションやルーティングなどを使用する場合に, システムやネットワークが以前と同じ方法で動作するように選択することができます。 またDECnet-Plusで使用できる追加機能を,いつでもインプリメントできます。 変更は,ほとんどがネットワーク管理に関連するものです。 これらは,ユーザとアプリケーションからほとんど透過的に実行されます。

DECnet-Plusの全機能に簡単に移行できるようにするため,簡略化された構成プロシージャや, さまざまな自動化ツール(DECnet移行ユーティリティおよびNCP Emulator) を使用することができます。

『DECnet-Plus Planning Guide』で,ネットワークの移行手順について詳細に記述しています。

21.2.9 ネットワーク管理ツール

DECnet-Plus for OpenVMSで提供されるツールにより,次の作業ができるようになります。

21.2.10 ネットワーク管理タスク

最も重要なネットワーク管理タスクとして,次のようなものがあります。

以降の項では,これらのタスクについて簡単に説明します。管理ツールの使用方法についての詳細は 『DECnet-Plus for OpenVMS Introduction and User's Guide』を,ネットワークの保守,制御,シャット・ ダウン,および再始動についての詳細は『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』をそれぞれ参照してください。 『DECnet-Plus Problem Solving』には,テストとトラブルシューティングについて記述されています。

21.2.10.1 ノードのセキュリティの提供

DECnet-Plusでは,ネットワークへのアクセスをさまざまなレベルで制限することができます。 それぞれのレベルには,次のようなものがあります。

以降の項では,これらの制御のレベルについて説明します。

必要な権利識別子

DECnet-Plus for OpenVMSでは,権利識別子を使用して,管理可能なすべての要素でアクセス・ チェックを行います。これは,Phase IVソフトウェアの場合と異なります。Phase IV ソフトウェアの場合,パーマネント・データベースへのアクセスや書き込みアクセスの管理に,OpenVMS 特権が使用されます。 そのため,Phase IVの場合,運用時データベースに対する読み込みアクセスについては保護されません。

DECnet-Plus for OpenVMSでは,ネットワーク・マネージャで3種類の権利識別子を使用することによって, ネットワーク・パラメータへのアクセスを制限しています。 OpenVMS では,それぞれのユーザにAuthorizeユーティリティ(AUTHORIZE) を使用することにより,アクセス権を付与します。 これらの識別子は次のように使用されます。

権利の識別子 付与されるアクセス
NET$EXAMINE ネットワーク構成データに対する読み込みアクセス。 次に例を示す。
     UAF> grant/id net$examine Joe
NET$MANAGE ネットワーク構成データに対する読み書きアクセス。 次に例を示す。
     UAF> grant/id net$manage  Joe
NET$SECURITY 省略時アカウントを設定する機能。 次に例を示す。
     UAF> grant/id net$security Joe

NET$MANAGE権利の代わりに, BYPASS特権で読み書きアクセスを付与することもできます。

アクセス制御

DECnetノードは,遠隔のDECnet-Plusノードに接続しようとする場合は常に, 遠隔ノード上にあるセッション制御要素にアクセス制御情報を送信します。 アクセス制御により,ノード間の接続を制御します。アクセス制御情報は, さまざまなソースから作成されます。次のリストでは,アクセス制御の階層を, 優先順位の低いものから順番に紹介しています。詳細は『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide 』を参照してください。

  1. ローカル・ノード上のネットワーク・ユーザは,アクセス制御情報を明示的に送信することができる。 次に例を示す。
         $ MCR NCL SHOW NODE CPLACE"NOWAK QUICKONE" ALL
    

    この場合,遠隔ノードがこのアクセス制御情報を使用する。

  2. 明示的なアクセス制御情報が送信されていない場合,ローカル・ ノードは,ローカル・ノードまたはアプリケーションで,出力されているプロキシ・ アクセスが許可されているかどうかチェックする。 プロキシが許可されている場合,ローカル・ノードは接続を開始し, 遠隔ノードのセッション制御要素で,開始したユーザにプロキシ・ アクセスがあるかどうか調べる。

  3. 遠隔ノードで,明示的なアクセス制御が指定されておらず, しかも一致するプロキシのないことが検出されると,アプリケーション・ データベースがチェックされる。このデータベースにアプリケーション・ ユーザ名が含まれている場合は,その名前が使用される。

  4. アプリケーション・データベースに省略時のアプリケーション・ ユーザ名が存在しない場合,遠隔ノードでセッション制御要素属性がチェックされ, 省略時の非特権DECnetユーザ名情報があるかどうか調べられる。 この情報があれば,遠隔ノードで,省略時の非特権DECnet ユーザ名が使用される。

    省略時のDECnetユーザ名により,ユーザ名とパスワードを指定せずに異なるノード間で電子メールを交換するなど, 特定のネットワーク操作をユーザが実行できるようになる。 省略時のDECnetユーザ名は,アクセス制御情報が提供されない場合のファイル操作にも使用される。 たとえば,ワールド・アクセスができるようファイル保護が設定されているローカル・ ファイルに対して,遠隔ユーザがアクセスできるようになる。 ユーザのノードに対して遠隔ユーザがアクセスできないように設定したい場合は, 省略時のDECnetユーザ名を作成しないようにする。

これらのソースにより有効なアクセス制御情報が提供されない場合,接続は最終的に失敗します。


注意
DECnet-Plusの場合,「非特権」は, NET$DECNETACCESS 権の他にTMPMBX特権とNETMBX特権があることを示します。 これらは,ネットワーク処理では最低のレベルの権利と特権になります。 「特権」とは,NET$DECNETACCESS権およびTMPMBX特権とNETMBX 特権の他に,何らかの権利と特権があることを示しています。

Phase IVの場合,「非特権」は,NETMBX特権とTMPMBX特権のみがあることを示します。 NETMBX 特権とTMPMBX特権は,ネットワーク処理では最低レベルの要件です。 「特権」とは,NETMBX特権とTMPMBX特権の他に,何らかの特権があることを示しています。


次のコマンドを使用することにより,セッション制御に対応する省略時非特権ユーザ名があるかどうかチェックすることができます。

     ncl> show session control non privileged user

次のコマンドを使用することにより,アプリケーションに対応する省略時非特権アカウントがあるかどうかチェックすることができます。

     ncl> show session control application fal user name

NET$CONFIGURE.COMを使用すると,省略時非特権DECnetアカウントおよびディレクトリを自動的に設定することができます。 『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』で紹介されている方法で,省略時非特権DECnet アカウントを手動で追加することもできます。


注意
プログラムに対する接続でアプリケーション名が宣言されている場合, およびDECnetとは関係なく接続が行われている場合, アクセス制御情報を使用する必要はありません。 ただし,入力される接続を受信することを宣言する必要があるためNET$DECLAREOBJECT 権が必要になります。

ルーティング初期化パスワードの指定

ルーティング初期化パスワードの指定方法は,『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』に記述されています。

21.2.10.2 ネームスペース情報の管理

DECnet-Plusでは,DECNET_REGISTERツールが提供されています。このツールは, ローカル・ネームスペースおよびDECdnsネームスペースでノード名の管理と登録を支援します。 このツールを使用すると,適切なアクセス制御でディレクトリが作成されるようになります。 ディレクトリの設定とアクセス制御についての詳細は, 『DECnet-Plus Planning Guide』を参照してください。 またDNS/BINDについての詳細は,適切なTCP/IPのドキュメントを参照してください。DECNET_REGISTER はメニュー方式のユーティリティです。

DECNET_REGISTERコマンドのMANAGEは,必要なディレクトリの階層を作成し, それらのディレクトリに対してアクセス権の設定と変更を行って,自動登録の許可と禁止を実行することにより,DECdns 分散ネームスペースの設定と管理を支援します。DECNET_REGISTER ツールを使用して DECdnsネームスペースのノードを登録するとき, ディレクトリは,存在しない完全なノード名で作成されます。

DECnet-Plusにアップグレードしていない(DECnet Phase V)ノードがネットワーク内にある場合, その名前とアドレスについても,使用するネームスペースに登録しておく必要があります。 これを怠ると,それらのノードと, 同じネットワーク内のDECnet-Plusノードとの間で通信できなくなります。DECNET_REGISTER を使用して,ネームスペースでDECnetフェーズIV ノードを登録することができます。またこのツールを使用して,DECnet Phase IVノード・データベースからノード情報を抜き出して,それをネームスペースにいれることもできます。

DECnet以外のノードは,ネームスペースに登録しないでください。 DECnet間のアプリケーションのみが,ネームスペースのノード名とアドレッシング情報を使用します。 OSI アプリケーションでは,独自のプライベート命名データベース, DNS/BIND やX.500が使用されます。

DECNET_REGISTERの使用方法についての詳細は,『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』を参照してください。このドキュメントの付録には, リファレンス情報もあります。

21.2.10.3 ネットワークの監視

ネットワークを監視するときは,次のようなツールを使用することができます。

論理名は,ネットワークのスタートアップと構成についての情報を取得するときに使用します。 状態を表示するときはSHOW LOGICAL NET$STARTUP_ STATUSコマンドを使用します。

DECnet-Plusのイベント・ディスパッチ用ソフトウェアでは,ネットワーク操作で発生した重大なイベントが報告されます。 イベント・レコードを使用すると, ネットワーク構成要素の状態を追跡することができます。

イベントを報告する要素については,『DECnet-Plus Network Control Language Reference』を参照してください。このドキュメントには, イベント,イベントが発生した理由,イベント・ディスパッチャに報告される引数などがリストされています。

イベントのディスパッチは,特定のノードで,2つのシステム間で,または複数の分散システム間で設定できます。DECnet-Plus のイベント・ディスパッチ機能は,DECnet-Plus ソフトウェアが動作するシステムで発生するイベントだけでなく,D ECnet Phase IV が動作するシステムで発生するイベントについても記録します。 イベント・ディスパッチの設定方法についての詳細は, 『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』を参照してください。

21.2.10.4 ノードのネットワーク構成の変更

システム上でDECnet-Plusを再構成する必要がある場合は,次のいずれかの方法で変更できます。

可能であれば,構成プロシージャを使用して,永久に変更を行うようにします。 構成プロシージャの守備範囲を超えて,システムをカスタマイズする場合は, 構成プロシージャによって作成されるNCLスクリプトを使用します。 テストの場合などのように一時的に変更するときは,NCLを会話形式で使用します。

構成プロシージャにより,構成できるモジュールごとにNCLスクリプト・ ファイルが作成されます。タスクによっては,プロシージャが複数のスクリプト・ ファイルを作成する場合もあります。そのため構成を手動で変更する場合, 複数のNCLスクリプト・ファイルを編集しなければならないこともあります。 NCL スクリプト・ファイルには,次のようなものがあります。

『DECnet-Plus for OpenVMS configuration guides』では,構成プロシージャによって作成されるNCL スクリプト・ファイルについて詳細に記述しています。 『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management guide』には, これらのファイルを編集する方法が記述されています。

21.2.10.5 DECnet-Plusの開始とシャット・ ダウン

OpenVMSオペレーティング・システムが起動するとき,DECnet-Plusも自動的に開始します。 何らかの理由でDECnet-Plusを再起動する必要がある場合( たとえばSYS$STARTUP:NET$SHUTDOWN.COMを実行することによりネットワークをシャット・ ダウンした後),SYS$STARTUP:NET$STARTUP.COMを使用してネットワークを再起動することができます。 ネットワークを開始する前に, 以下に説明する方法でシステムの論理名を使用して,ネットワークの構成要素を変更することができます。

SYS$MANAGER:NET$SHUTDOWN.COMを使用してDECnet-Plusをシャット・ダウンすると, プロシージャによりすべての論理リンクと OSI構成要素(OSAK ,VT,FTAM)が停止します。またX.25 Accessソフトウェアが動作している場合は, このソフトウェアも停止します。 LATが動作している場合を除きCSMA-CD も停止します。プロシージャは,ほとんどのDECnet-Plus要素を使用不可能にして削除しますが, すべての要素を削除するわけではありません。 特に,Data Link要素は停止しませんし, Session要素も使用不可能になりますが削除はされません。

ネットワークが自動的に再起動しないようにする場合は,以下に説明する方法でNET$IGNORE_DECNET 論理を定義します。NET$STARTUP.COMでネットワークを開始する前に, 次のシステム論理名を使用して,さまざまな構成要素を変更することができます。

ネットワークが開始する前に,オペレーティング・システムでこれらの論理を定義しておきたい場合は, これらのシステム論理名定義をSYS$MANAGER:NET$LOGICALS.COM ファイルにいれておきます。システムにSYS$MANAGER:NET$LOGICALS.COM ファイルがない場合は, SYS$MANAGER:NET$LOGICALS.TEMPLATEを使用して作成します。

21.3 OpenVMSのTCP/IPネットワーク・サポート

OpenVMSシステムは, OpenVMSシステムやUNIXシステムなど,TCP/IPプロトコル・ スイートをサポートするシステムの間で相互操作やリソースの共有ができる, オプションのレイヤード・ソフトウェア・プロダクトをサポートしています。 このようなソフトウェアの例として, DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSがあります。

以降の項では,TCP/IPネットワークの概念とDIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSネットワーク製品について紹介し, TCP/IPネットワークに参加するための準備について説明します。 TCP/IP ネットワーク,インターネット, 一般的に使用される TCP/IP構成要素などについての詳細は, 『TCP/IP Networking on OpenVMS Systems』を参照してください。このマニュアルでは,DCL TCP/IPコマンドについても解説しています。 TCP/IP ソフトウェアの構成と管理についての詳細は, TCP/IP レイヤード・プロダクトのドキュメントを参照してください。

表 21-5では, TCP/IPネットワークに関連する用語について定義しています。

表 21-5 TCP/IPの用語

用語 定義
DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS 補助制御プロセス(ACP) およびネットワーク装置ドライバ(BG Driver)として, OpenVMS にインプリメントされるコンパックのソフトウェア製品。 エグゼクティブ・レベルの構成要素とユーザ・アプリケーションを持つ。
ドメイン インターネット命名階層の一部。 構文上,インターネット・ドメイン名は, ピリオド(ドット)で区切られた一連の名前(ラベル)を持つ。たとえば, tundra.mpk.ca.us. のようになっている。
Domain Name Service (DNS) ホストとインターネットのアドレスについての情報を提供するインターネット・ ネーム・サービス。
ドット10進表記法 4つの8ビットの数字をピリオド( ドット)で区切って構成する 32ビット整数の構文の表現方法。 192.67.67.20のような表記になり,インターネットのIPアドレスを表現するときに使用する。 多くのインターネット・アプリケーション・プログラムでは, デスティネーション・マシンの名前の代わりにドット10 進表記法が使用できる。
ファイル・サーバ ファイルの格納とファイルへのネットワーク・アクセスの提供が基本的な目的になっているホスト。
ファイル・システム ボリューム上のファイルの記録, カタログ作成,アクセスの方法。
ファイル転送システム(FTP) あるホスト上のユーザが,ネットワークを介して別のホストとの間でファイル・ アクセスや転送を行うためのプロトコルおよびソフトウェア。
ゲートウェイ 2つのネットワークを相互接続するルーティング・ホスト。
ハードウェア・アドレス ホストのネットワーク・コントローラとネットワーク・ケーブルとの間の接続装置を識別するアドレス。
ホスト・ アドレス ネットワーク上のどのホストのアドレスが指定されているかを識別する IP アドレスの一部。
ホスト・データベース 省略時に作成されるTCP/IP データベース。これにより,ユーザがホスト名を使用できるようになる。 このデータベースには,ホスト名,ホストのIPアドレス,ホストの別名なども含まれる。
ホスト名 ネットワーク・ホストの名前。
インターネット(internet) インターネットワーキングの省略形。相互接続したTCP/IP ネットワークで, 1つの巨大な仮想ネットワークとして機能する。
インターネット(Internet) TCP/IPプロトコル・スイートを使用するネットワークおよびゲートウェイの集合で, ARPANET ,MILNET,NSFnetなどが含まれる。1 つの巨大な仮想ネットワークとして機能する。インターネットでは, 多くの大学,政府研究機関,軍事施設,私企業などが接続される。
Internet Protocol (IP) インターネット層に常駐し,インターネットワーク・アドレッシングとメッセージのフラグメンテーションという2 つの機能を実行するプロトコル。 インターネット・プロトコル・スートは, IPが2つの基本プロトコルのうちの1 つになっており,多くの場合TCP/IPと呼ばれる。
InterNIC Registration Services インターネット・ コミュニティに,登録,ディレクトリ,データベース,情報などのサービスを提供する組織。
IPアドレス TCP/IPを使用するノードのネットワーク・コントローラとネットワーク・ ケーブルとの間の接続を識別するアドレス。 32ビットのアドレスになっており, ネットワーク番号とホスト番号の2つの部分で構成される。
IPデータグラム インターネット経由で渡される情報の基本単位。ソース・アドレスとデスティネーション・ アドレス,データ,データグラムを定義するフィールド, ヘッダのチェックサム,データグラムが断片化しているかどうかを示すフラグなどが含まれる。 IP データグラムとインターネットとの関係は, ハードウェア・パケットと物理ネットワークとの関係と同じである。
Network File System (NFS) ディレクトリとファイルをネットワーク上で共有するための, クライアント/サーバ・アプリケーション。 NFSを使用すると, ユーザとプログラムが,ローカル・ファイルと同じような感覚で遠隔のコンピュータ上にあるファイルにアクセスできるようになる。 ユーザは, ファイルが実際にどこに格納されているか知っておく必要がなく,またそれに注意を払う必要もない。
ルーティング 中間システムにインプリメントされるネットワーク層機能で, データがデスティネーションへ到達するための経路やそのデータの移動先を決定する。
サブネット・マスク IPアドレスのサブネットワークを判断するときに使用するマスク。 マスクでオンになっている(2進数の1)各ビットをネットワークおよびサブネットワークのアドレスの一部として変換する。 ネットワーク・ マスクと同意語。
Transmission Control Protocol (TCP) 多くのアプリケーション・プロトコルが従属する, 信頼性のある全二重ストリーム・サービスを提供するインターネット伝送レベル・ プロトコル。 TCPを使用すると,あるホストから別のホスト上のプロセスにデータのストリームを送信できるようになる。 このプロトコルは接続用のプロトコルで,参加者はデータの伝送を実行する前に接続を設定しておかなければならない。

21.3.1 TCP/IPネットワークを介した通信

TCP/IPネットワークに接続するエンド・システムは,ホスト と呼ばれます。それぞれのホストには,一意な名前とアドレスがあります。 ローカル・ホストとは使用中のシステムを示し,遠隔のホストとは通信相手のシステムを示します。 ホストはラインで接続され, このラインを使用してホスト間で情報を移動します。ラインは,あるホストから別のホストへデータが渡されるときに使用される物理的な経路です。 ラインの例としては,電話回線や光ファイバ・ケーブルなどがあります。

TCP/IPネットワークは,パケット交換網と呼ばれます。情報は,ホスト間を連続的な流れで移動するのではなく, 小さなデータ・パケット単位で送信されます。 たとえば,あるホストから別のホストへ送信されるファイルは, 多くの小さなパケットに分割されて,一度にまとめてネットワーク経由で送られます。 それぞれのパケットには,デスティネーション・ホストのアドレスに関する情報が含まれます。 デスティネーションに着いてから, これらのパケットが集められて再構成されます。

ネットワーク・トラフィックを構成するパケットは,高容量のマシン相互接続に組み込まれて( 多重化),ネットワークまたはインターネット経由で転送されます。 異なるソースから送られたパケットが混在することになるため, 多くのユーザが同じラインを同時に使用することができます。それぞれのパケットごとに, ディスティネーションへの経路を変えることもできます。TCP/IP で送信されるデータの基本単位はデータグラムと呼ばれます。

ソース・ホストからデスティネーション・ホストへデータ・メッセージを送信するプロセスは, ルーティングと呼ばれます。直接接続されていないホストの場合, データは,ソースからデスティネーションまでのさまざまなホストを転々としながら転送されます。

TCP/IPプロトコルは,ほとんどすべてのネットワーク・ハードウェア・テクノロジに適応させることができます。TCP/IP ホストは,LANやWANに接続することもできます。

複数のネットワークは,ゲートウェイを使用して相互接続することができ, これによってインターネットが構築されます。図 21-1 を参照してください。ゲートウェイ は,2つのネットワークに接続されているコンピュータで, パケットを1つのコンピュータからもう1つのコンピュータにルーティングします。TCP/IP ゲートウェイは,ある物理ネットワークから(デスティネーション・ ホストではない)別のネットワークへトラフィックをルーティングします。

図 21-1 TCP/IPゲートウェイで接続された2つのネットワーク

21.3.2 TCP/IP Services for OpenVMSソフトウェアの構成要素

TCP/IP Services for OpenVMSソフトウェアには,コア(カーネル)環境, ネットワーク・サービス,エンド・ユーザ・サービスが含まれます。

コア環境

TCP/IP Services for OpenVMSカーネルは,次の機能で構成されています。

ネットワーク・サービス

TCP/IP Services for OpenVMS製品では,次のようなネットワーク・サービスが提供されます。

エンド・ユーザ・サービス

TCP/IP Services for OpenVMS製品では,次のエンド・ユーザ・サービスが用意されています。

21.3.3 ネットワークに参加するための準備

ホストでTCP/IPを構成するためには,その前に,一意なIPアドレスとホスト名が必要になります。 ネットワーク・ハードウェア・アドレスは,ハードコード化されていて固定されていますが, IP アドレスはそれと異なり, ネットワーク管理者によって割り当てられます。ネットワークを公的なインターネットに接続する場合は, InterNIC から公式の一意なネットワークID を取得する必要があります。 IPアドレスは32ビットの長さ(8ビットが4 つ)になっており,これでネットワークとホストを識別します。ホスト名は, 通信を簡単にする目的で,コンピュータに割り当てられた名前です。

IPアドレスは,ホストIDとネットワークIDを指定し,ホストがどのパケットを受信して, どのパケットを無視するか決定するための判断材料を提供します。 ホストは,自身のアドレスおよびデスティネーション・コンピュータのアドレスを, サブネット・マスクと比較して,別のホストが同じサブネットにあるのか異なるサブネットにあるのか判断します。 デスティネーションのネットワークID がソースのネットワークIDと一致する場合,パケットはローカル・ ネットワークのデスティネーション・ホストに配布されます。 2 つのネットワークIDが一致しない場合,パケットはIPルータを経由してデスティネーション・ コンピュータ宛に転送されます。

IPアドレスとホスト名の他に,次の情報をネットワーク管理者から聞いておく必要があります。

また,どのエンド・ユーザ・サービスを提供するかということと,ユーザのシステムがクライアントとして動作するか, サーバとして動作するか, あるいは両方として動作するかについても決定しておく必要があります。

詳細は『DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning Guide』を参照してください。

21.3.3.1 TCP/IPソフトウェアの構成

DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSソフトウェアを構成するときは, メニュー・ベースの構成プロシージャSYS$MANAGER:UCX$CONFIG を使用します。詳細は『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Installation and Configuration』を参照してください。

21.3.3.2 OpenVMS Clusterシステムのサポート

DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMS製品では, OpenVMS Clusterシステムとクラスタの別名の使用がサポートされています。 ネットワークでは, このクラスタは1つの名前(インターネットの別名)を持つシステムとして認識されます。 遠隔ホストでは,クラスタの別名を使用して,クラスタを1 つのホストとしてアドレス指定することができます。また,クラスタ・ メンバのホスト名を使用して,クラスタ・メンバを個別にアドレス指定することもできます。

21.3.4 アクセス制御のための識別コードの使用

TCP/IPネットワーク・アプリケーションでは,ファイルなどのリソースにアクセスする一般的なユーザ操作がサポートされています。 オペレーティング・ システムのリソースにアクセスできるユーザを制御する手段として, ユーザに識別コードを割り当てる方法があります。

OpenVMSベースのシステムでもUNIXベースのシステムでも,リソース保護の一般的な方法として識別コードが使用されます。TCP/IP ソフトウェアは元々UNIX マシンで使用するためにUNIXマシン上で開発されたものであるため,TCP/IP のインプリメントでは,UNIXスタイルの識別コードが使用されます。OpenVMS システムで動作するTCP/IPアプリケーションの中には, UNIXの識別コードをOpenVMS識別コードにマッピングする必要のあるものもあります。

OpenVMSでユーザ名とUICにより識別が行われているのと同じように,UNIX では,ユーザをユーザ,および利用者識別番号(UID)とグループ識別番号(GID) の組み合わせでユーザを識別します。UIDもGIDも,システム上のユーザを識別できる単純な番号になっています。

TCP/IPアプリケーションによっては,ユーザを識別するために UIDとGID を組み合わせて使用しなければならないものもあります。このような識別子を必要とするもっとも一般的なアプリケーションに,NFS (Network File System)のクライアント/サーバ・アプリケーションがあります。このアプリケーションをOpenVMS で使用するときは,OpenVMSユーザ名をUNIX スタイルのGIDとUIDの組み合わせにマッピングする必要があります。

OpenVMS用のTCP/IPを提供するすべてのベンダは,OpenVMSユーザ名をUID とGIDの組み合わせにマッピングするメカニズムをサポートしています。 詳細は『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Management』,または特定のOpenVMS TCP/IPレイヤード・ プロダクトに対応する適切なベンダのドキュメントを参照してください。

21.3.5 ネットワークの開始と停止

TCP/IP Services for OpenVMSを開始するときは,次のコマンドを実行します。

     $ @UCX$STARTUP

スタートアップ・プロシージャにより,アプリケーション層より下にあるすべてのソフトウェアが起動し, 構成されたサービスが使用可能になって, 構成されたネットワーク・インタフェースが初期化されます。

ソフトウェアを停止するときは,次のコマンドを実行します。

     $ UCX$SHUTDOWN

シャットダウン・プロシージャにより,ネットワーク通信が停止し,アクティブなサービスが使用不可能になって, ネットワーク・インタフェースの定義が削除されます。 同時に,定義されている論理名の割り当てが解除され, インストールされているイメージが削除されます。

21.4 関連ドキュメント

DECnet-Plus Starter Documentation Kitでは, DECnet-Plusについてさらに詳細に解説しています。 表 21-6に,このキットの内容をリストします。

表 21-6 DECnet-Plus Starter Documentation Kit

マニュアル 説明
『DECnet-Plus for OpenVMS Release Notes』 ソフトウェアの変更, インストール,アップグレード,互換性などの情報,新旧のソフトウェアの問題, 制限事項などについて解説している。またソフトウェアとドキュメントの訂正事項についても説明している。 このテキスト・ ファイルは,構成プロシージャでプリントすることができる。
『DECnet-Plus for OpenVMS Introduction and User's Guide』 システムのネットワークについて紹介し, ユーザ情報について解説している。
『DECnet- Plus for OpenVMS Installation and Basic Configuration』 DECnet-Plusのインストール方法, BASIC構成オプションの実行方法について説明している。
『DECnet-Plus for OpenVMS Applications Installation and Advanced Configuration』 ネットワーク・アプリケーションのインストール方法と構成方法について説明し, ADVANCED 構成オプションの実行方法について説明している。
『DECnet-Plus for OpenVMS Installation Quick Reference Card』 インストール時にシステムをDECnet-Plus にアップグレードする場合に使用できる簡単なリファレンスが提供される。
『DECnet-Plus Planning Guide』 DECnet Phase IVの機能をDECnet Phase Vに移行する手順を紹介している。
『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management Quick Reference Guide』 DECnet-Plusのネットワーク管理を実行する場合に使用できる簡単なリファレンスが提供される。
『DECnet-Plus for OpenVMS Network Management』 DECnet-Plusシステムのネットワーク管理の概念とタスクについて解説している。
『DECnet-Plus Network Control Language Reference』 すべてのNCLコマンドの解説と例を紹介している。
『DECnet-Plus Problem Solving』 ネットワークが動作しているときに発生する DECnet-Plus の問題を特定し解決する方法について説明している。 またループバック・テストを実行する方法についても説明している。

DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSのドキュメント・セット(表 21-7 を参照)では, DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSについて詳細に解説しています。

表 21-7 DIGITAL TCP/IP Service for OpenVMSのドキュメント・ セット

マニュアル 説明
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning』 TCP/IP の概念と構成要素について紹介し,ソフトウェア構成の計画をたてる上で役に立つ情報を提供している。
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Release Notes』 ソフトウェアの変更, インストール,アップグレード,互換などの情報,新旧のソフトウェアの問題, 制限事項などについて解説している。またソフトウェアとドキュメントの訂正事項についても説明している。
『Digital TCP /IP Services for OpenVMS Installation and Configuration』 DIGITAL TCP/IP Services for OpenVMSのインストール方法と構成方法について説明している。
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide』 ユーザ情報を紹介している。
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Management』 TCP/IPソフトウェアの管理とトラブルシューティングについての情報を紹介している。
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Management Command Reference』 TCP /IP Services for OpenVMSの管理コマンドのリファレンス情報と例を紹介している。


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