Compaq OpenVMS
Extended File Specifications の手引き


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2.3.1 VAX ユーザによる ODS-5 ボリュームへのアクセスの禁止

次の操作を実行することによって,ユーザが VAX ノードから ODS-5 ボリュームにアクセスすることを禁止することができます。

  1. OpenVMS VAX ノード上で処理を実行しているユーザを識別する識別子 (VAX_NODE など ) を定義します。次に例を示します。


     
    $ RUN SYS$SYSTEM:AUTHORIZE 
     
    UAF> ADD /IDENTIFIER VAX_NODE 
     
    %UAF-I-RDBADDMSG, identifier VAX_NODE value %X80010037 added to 
            rights database 
    

  2. 各 VAX ノード上で,システム・ライト・リストに VAX_NODE を追加します。次に例を示します。


    $SET RIGHTS_LIST /ENABLE /SYSTEM VAX_NODE 
    


    コマンドの /ENABLE 識別子により,VAX_NODE が,システム・ライト・リストに追加されます。
    さらに,このコマンドを SYSTARTUP_VMS.COM コマンド・プロシージャにも追加します。

  3. VAX ノード上のユーザが ODS-5 ボリュームにアクセスできないようにするには, VAX_NODE 識別子の保持者のアクセスを拒否するアクセス制御エントリ (ACE) を設定します。次に例を示します。


    $ SET SECURITY /CLASS=VOLUME ODS5_DISK - 
    _$ /ACL=(ID=VAX_NODE,ACCESS=NONE) 
    

2.3.2 テストされていないアプリケーションによる ODS-5 ボリュームへのアクセスの禁止

次の操作を実行することによって,テストされていないアプリケーションが ODS-5 ボリュームにアクセスすることを禁止できます。

  1. ODS-5 ボリュームへのアクセスを禁止する対象アプリケーションを識別する識別子 (ODS5_UNSAFE など) を定義します。次に例を示します。


    UAF> ADD /IDENTIFIER ODS5_UNSAFE /ATTR=SUBSYSTEM 
     
    %UAF-I-RDBADDMSG, identifier ODS5_UNSAFE value %X80010039 added to 
           rights database 
    

  2. ODS5_UNSAFE 識別子を持つアプリケーションに,保護サブシステム ACE を設定します。次に例を示します。


    $ SET SECURITY /CLASS=FILE SYS$SYSTEM:APPLICATION.EXE - 
    _$ /ACL=(SUBSYSTEM,ID=ODS5_UNSAFE) 
    

  3. 各 ODS-5 ボリュームに対して,識別子の保持者による ODS-5 ボリュームへのアクセスを拒否する ACE を設定します。次に例を示します。


     
    $ SET SECURITY /CLASS=VOLUME ODS5_DISK/ - 
    _$ ACL=(ID=ODS5_UNSAFE,ACCESS=NONE) 
    

最後の手順の制約を無効にし,訓練を受けたユーザだけが,テストされていないアプリケーションにアクセスできるように設定することもできます。そのためには,次の手順を実行します。

  1. 別の識別子を作成します (ODS5_UNTRAINED など)。


    UAF> ADD /IDENTIFIER ODS5_UNTRAINED 
     
    %UAF-I-RDBADDMSG, identifier ODS5_UNTRAINED value %X80010038 added to 
           rights database 
    

  2. この識別子をすべてのユーザに割り当てます。次に例を示します。


    UAF> GRANT/IDENTIFIER ODS5_UNTRAINED * 
     
    %UAF-I-GRANTMSG, identifier ODS5_UNTRAINED granted to * 
    

  3. 手順 3 の代わりに, ODS5_UNTRAINED 識別子の保持者によるアクセスを拒否するボリュームに対して,アクセス制御エントリ (ACE) を設定します。次に例を示します。


    $ SET SECURITY /CLASS=VOLUME ODS5_DISK/ - 
    _$ ACL=(ID=ODS5_UNSAFE+ODS5_UNTRAINED,ACCESS=NONE) 
    


    このコマンドにより,ODS5_UNTRAINED ユーザは ODS5_UNSAFE アプリケーションを使用してこのボリュームにアクセスできなくなります。

  4. ODS-5 ボリューム上でどのようなアプリケーションでも使用できる対象ユーザについては,この識別子を削除します。次に例を示します。


    UAF> REVOKE/IDENTIFIER ODS5_UNTRAINED SHEILA_USER 
     
    %UAF-I-REVOKEMSG, identifier ODS5_UNTRAINED revoked from SHEILA_USER 
    

これらの手順を実行すると,次のような結果になります。

2.4 システム管理ユーティリティの変更点

この後の項では,拡張ファイル名をサポートするために OpenVMS システム管理ユーティリティに加えられた変更点について説明します。

2.4.1 Analyze/Disk_Structure ユーティリティ

Analyze/Disk_Structure ユーティリティ (ANALYZE/DISK_STRUCTURE) は, Files-11 オン・ディスク構造 (ODS) レベル 1,2,および 5 のディスク・ボリュームの可読性と有効性をチェックするようになりました。

また,次に示す修飾子が新たに追加されました。

/STATISTICS

この修飾子により,有効性チェックの対象となるボリュームに関する統計情報を生成し,ボリュームごとの統計情報が含まれているファイル STATS.DAT が作成されます。 STATS.DAT に含まれる情報は,次のとおりです。

2.4.2 Backup ユーティリティ (Alpha システムのみ)

Backup ユーティリティ (BACKUP) によって実装された,Alpha システム上で拡張ファイル名をサポートするための新しい機能は,次のとおりです。

2.4.3 VAX システム上での ODS-5 ボリュームの物理バックアップ

OpenVMS VAX システム上では,BACKUP は,/PHYSICAL 識別子を指定して ボリュームをバックアップした場合に限って,ODS-5 ボリュームをサポートします。BACKUP /PHYSICAL コマンドを実行すると,BACKUP は,ディスクの構造化された内容を無視して,ブロック単位でディスクの物理バックアップを作成します。

Alpha システム上では,BACKUP /IMAGE または BACKUP /PHYSICAL コマンドを使用することができます。

Alpha プロセッサ上での Backup ユーティリティによる拡張ファイル名のサポートの詳細については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

2.4.4 Mount ユーティリティ (Alpha システムのみ)

Mount ユーティリティは,ODS-5 ボリュームを完全にサポートするように変更されました。


第 3 章
拡張ファイル名の特徴

Extended File Specifications は,Windows NT で利用できるものと同様の,幅広い種類の文字セット・オプションおよび 命名規約を提供します。この章では,Extended File Specifications が一般のユーザに与える影響について説明します。この章では次のトピックを扱います。

3.1 ファイル指定

ODS-5 ボリュームでは,ファイル指定のための命名スタイルとして, 従来型 (ODS-2 準拠) と 拡張型 (ODS-5 準拠) の 2 つがあります。

第 3.1.1 項 では,ODS-2 準拠の命名スタイルの構文について説明します。 第 3.1.2 項 では,ODS-5 準拠の命名スタイルの構文について説明します。

3.1.1 従来型 (ODS-2) 構文

従来型の (ODS-2) ファイル名構文は,ほとんどの OpenVMS ユーザが使い慣れている構文です。OpenVMS バージョン 7.1 以前ではこの構文が使用され,次の文字セットおよび命名規約がサポートされています。

ODS-2 文字セット

従来の (ODS-2 準拠) ファイル名には,英数字 (A〜Z,a〜z,0〜9),ドル記号 ($),アンダスコア (_),およびハイフン (-) を使用することができます。

大文字と小文字の区別

Case大文字と小文字の区別は, 従来型の構文では保存されません。ファイル名は,大文字,小文字,またはこれら 2 種類を組み合わせて入力できますが,すべての文字は大文字で格納されます。

標準の区切り文字

従来型の構文では,ファイル・タイプの前にピリオド (.) が付きます。ファイル・バージョンは,セミコロン (;) またはピリオド (.) を使用してファイル・タイプと区切られます (システムがファイル指定を表示するときには,ファイル・バージョン番号の前にセミコロンが表示されます)。ディレクトリは大括弧 ([]) または山括弧 (<>) で囲まれます。ディレクトリ・レベルはピリオド (.) で区切られます。

ファイルの長さの制限

従来型のファイル指定は 39.39 形式に従っているため,ファイル名とファイル・タイプを区切るために使用できるのは,1 つのピリオド (.) だけになります。

3.1.2 拡張型 (ODS-5) 構文

ODS-5 ボリュームが提供する拡張ファイル名構文は,より幅広い文字セット,長いファイル名,およびファイル指定をサポートしています。この構文を使用すると,次に示す文字セットや命名規約を使用する Windows NT スタイルのファイル指定を持つファイルを OpenVMS システムに格納し,アクセスすることができます。

3.1.2.1 ISO Latin-1 文字セット

ISO Latin-1 文字セットは,バージョン 7.2 以前の OpenVMS で使用されていた従来の文字セットのスーパーセットです。8 ビット ISO Latin-1 文字セットの文字は, 次の文字を除いて すべて使用することができます。

C0 制御コード (0x00 以上 0x1F 以下)
二重引用符 (")
アスタリスク (*)
バックスラッシュ (\)
コロン (:)
左山括弧 (<)
右山括弧 (>)
スラッシュ (/)
疑問符 (?)
縦線 (|)

3.1.2.2 特殊文字

一部の ISO Latin-1 文字は,特殊機能文字としてではなく,リテラル文字として解釈されるには,ファイル指定の中でエスケープ文字を前に付ける必要があります。 RMS および DCL は,拡張ファイル名に含まれているサーカンフレックス (^) をエスケープ文字として解釈します。次のリストは,エスケープ文字を使用する場合の規則を示しています。

注意

ファイル名に特殊文字が含まれている場合には,VAX システムからアクセスすることができません。複合アーキテクチャ環境の詳細については, 第 3.3 節 を参照してください。

3.1.2.3 ピリオド (.) の解釈

拡張ファイル名の中でピリオド (.) をリテラル文字として使用するには,ピリオドがファイル名文字であるかまたは区切り文字であるかを,RMS が判断できなければなりません。

拡張ファイル名の中で使用されているピリオド (.) が 1 つだけの場合には,そのピリオドは区切り文字として解釈されます。以前のバージョンの OpenVMS と同様に,1 つのピリオドの後に数字が続いた場合にも,この処理が実行されます。


$ CREATE Test.1 

このコマンドによって,次のファイルが作成されます。


Test.1;1 

バージョン番号の判断

1 つのファイル名の中に複数のピリオド (.) がある場合には,RMS は,最後のピリオドの後のすべての文字を調べます。これらの文字がすべて数値であるか,すべて数値でありその前にマイナス記号 (-) が付いている場合には,この数値文字列はバージョン番号であると判断されます。ただし,6 個以上の数字がある場合には,RMS はこのファイル名を無効なファイル名と判断し,受け付けません。最後のピリオドの後に数字でない文字がある場合には,この最後のピリオドはタイプ区切り文字として解釈されます。

たとえば,次のコマンドを使用したとします。 $ CREATE Test4.3.2.1

この結果,次のファイルが作成されます。 Test4^.3.2;1

このとき,.2 はファイル・タイプ,1 はファイル・バージョンです。

バージョン番号がセミコロン (;) によって明示的に区切られている場合には,5 文字以下の数値文字でなければならず,前にマイナス記号 (-) を付けることができます。

3.1.2.4 ファイル指定の長さの拡大

ODS-5 ボリュームでは,ファイル名とファイル・タイプの合計は,8 ビットで 236 文字以内,または 16 ビットで 118 文字以内です。ODS-5 用に変更されていないプログラムやユーティリティでは,ファイル指定の長さが合計で 255 バイト以内に制限されたり,省略される可能性があります。


$ CREATE This.File.Name.Has.A.Lot.Of.Periods.DAT 
$ CREATE - 
_$ ThisIsAVeryLongFileName^&ItWillKeepGoingForLotsAndLotsOfCharacters.Exceed - 
_$ ingThe39^,39presentInPreviousVersionsOfOpenVMS 
$ DIRECTORY 
 
Directory TEST$ODS5:[TESTING] 
 
ThisIsAVeryLongFileName^&ItWillKeepGoingForLotsAndLotsOfCharacters.Exceeding 
The39^,39presentInPreviousVersionsOfOpenVMS;1 
This^.File^.Name^.Has^.A^.Lot^.Of^.Periods.DAT;1 
 
Total of 2 files. 

第 3.6 節 では,完全なファイル指定が 255 バイトの上限を超える場合に,RMS がどのようにファイル指定を省略するかについて説明しています。

3.1.2.5 ワイルドカードの使用

ワイルドカードは,単一文字の場合でも複数文字の場合でも,ODS-5 ファイルでは予想どおりに動作します。単一文字のワイルドカードは,ファイル名またはファイル・タイプの中の特定の 1 文字だけを表しますが,ファイル・バージョン文字列の中で使用することはできません。複数文字のワイルドカードは,ファイル名またはファイル・タイプの中の (0 個も含む) 任意の数の文字を表します。複数文字のワイルドカードは,バージョン文字列の代わりに使用することができます。

3.1.2.5.1 ワイルドカード文字

次の文字は, OpenVMS 7.2 ボリューム上ではワイルドカード文字として扱われます。

パーセント記号 (%) は,既存のアプリケーションとの互換性を保つため,引き続き単一文字のワイルドカードとして使用されます。パーセント記号 (%) の前に サーカンフレックス (^) を付けるとリテラル文字として使用することができます。また,Windows NT ファイル名の中では,リテラル文字として使用されます。このため, RMS は,パーセント記号の他に疑問符 (?) も単一文字のワイルドカードとして認識します。疑問符は,OpenVMS 7.2 以降では,パーセント記号とまったく同様に,ワイルドカード文字として機能します。パーセント記号と疑問符は共に,検索パターンの中の 1 文字だけ とマッチします。

注意

エスケープ文字 (^. など) またはエスケープ・シーケンス (^EF や ^U0101 など) は,ワイルドカードのマッチングで使用するための単一文字と考えられています。


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