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複合バージョンおよび複合アーキテクチャ OpenVMS Cluster システムのために,2 レベルのサポート,つまり保証サポートと移行サポートが提供されます。
保証サポートとは,Compaq が OpenVMS Cluster で 2 つのバージョンの共存を完全に認定し,これらの構成を使用しているお客様から提出されたすべての問題にコンパックが対応するサポートです。
移行サポートは,OpenVMS の以前のリリースで提供されていたローリング・アップグレード・サポートのスーパーセットであり,保証サポートの対象にならないバージョンの組み合わせに対して適用されます。移行サポートは,OpenVMS VAX または OpenVMS Alpha の新しいバージョンへの段階的な移行が行われている構成で,組み合わせて使用できることが認定されたバージョンに適用されます。これらの構成で問題が発生した場合は,コンパックが対応します。しかし,例外的な場合には,問題への対処として,保証される構成への移行をお願いすることがあります。
アーキテクチャとは無関係に,クラスタ内で同時に実行できる OpenVMS のバージョンは 2 つに制限されています。移行サポートは,お客様が現在のクラスタ環境にできるだけ影響を与えずに,保証される OpenVMS Cluster のバージョンの組み合わせに移行されるのに役立ちます。
表 4-2 は,可能なすべてのバージョンの組み合わせに対して提供されるサポートのレベルを示しています。
Alpha/VAX V7.3 | Alpha V7.2--xxx/ VAX V7.2 |
Alpha/VAX V7.1 | |
---|---|---|---|
Alpha/VAX V7.3 | 保証 | 移行 | 移行 |
Alpha V7.2--
xxx/
VAX V7.2 |
移行 | 保証 | 移行 |
Alpha/VAX V7.1 | 移行 | 移行 | 保証 |
OpenVMS バージョン 7.3 の複合バージョン・クラスタでは,OpenVMS の以前のバージョンで修正キットをインストールする必要があります。OpenVMS バージョン 7.3 では,OpenVMS の以前のバージョンを実行しているすべてのノードに必要な修正キットまたはアップグレードがインストールされていないかぎり,XFC および Volume Shadowing ミニコピーという 2 つの新機能を複合バージョン・クラスタ内のノードで実行することができません。XFC 用の修正キットは現在提供されています。 OpenVMS バージョン 7.2-xx を実行しているシステムでミニコピーをサポートするためのアップグレードは,OpenVMS バージョン 7.3 のリリースの後,間もなく提供されるようになる予定です。
必要な修正キットの一覧については,
『Compaq OpenVMS V7.3 リリース・ノート【翻訳版】』を参照してください。
4.10 OpenVMS SMP のパフォーマンスの向上 (Alpha)
OpenVMS Alpha バージョン 7.3 では,SMP の拡張性を向上できるように,ソフトウェアが変更されています。パフォーマンスを向上するこれらの変更の多くは,新しい AlphaServer GS シリーズ・システムで動作するアプリケーション用に設計されており,すべてのカスタマ・アプリケーションにメリットをもたらします。バージョン 7.3 の OpenVMS SMP で実現されたパフォーマンス向上機能は次のとおりです。
ミューテックスは OpenVMS で多くのイベントの同期化のために使用されます。ミューテックスの最も一般的な使い方は,論理名データベースと I/O ベースの同期化のために使用する方法です。OpenVMS Alpha バージョン 7.3 より以前のリリースでは,ミューテックスの操作は SCHED スピンロックを保有した状態で行われていました。SCHED スピンロックは大規模な SMP システムで頻繁に使用されるスピンロックであり,高い競合が発生し,ミューテックスを操作できるのは 1 つの CPU だけであるため,頻繁にボトルネックが発生していました。
OpenVMS Alpha バージョン 7.3 では,ミューテックスの操作方法が変更されました。ミューテックス自体が不可分なインストラクションで操作されるようになりました。したがって,複数の CPU が並列に異なるミューテックスを操作できます。ほとんどの場合,SCHED スピンロックを取得しなければならない必要性はありません。プロセスをミューテックス待ち状態にしなければならない場合や,ミューテックスを待っているプロセスを起動しなければならない場合には,現在も SCHED を取得する必要があります。
OpenVMS プロセス・スケジューラが変更された結果,SCHED スピンロックで発生する競合が削減されました。OpenVMS バージョン 7.3 より前のバージョンでは,プロセスが可能になると,スケジューラはすべてのアイドル CPU を解放し,プロセスを実行しようとしました。NUMA システムでは,RAD 内のすべてのアイドル CPU が解放されていました。これらのアイドル CPU は SCHED スピンロックを競合するため,SCHED スピンロックでさらに競合が増加していました。 OpenVMS バージョン 7.3 では,スケジューラは 1 つの CPU だけを解放します。さらに,スケジューラは最初に ID の大きな CPU を解放します。このため,可能なかぎり,プライマリ CPU でプロセスがスケジューリングされるのを回避することができます。
変更されたスケジューラを使用するには,システム・パラメータ SCH_CTLFLAGS を 1 に設定しなければなりません。このパラメータは動的です。
多くのアプリケーションとライブラリで SYS$RESCHED システム・サービスが使用され,別のプロセスを再スケジューリングするために CPU が要求されます。 OpenVMS バージョン 7.3 より前のリリースでは,このシステム・サービスは SCHED スピンロックをロックし, CPU で別の演算可能なプロセスを再スケジューリングしようとしていました。
OpenVMS バージョン 7.3 より前のバージョンでは, SCHED スピンロックで高い競合が発生すると, SYS$RESCHED システムを使用することによって,リソースの競合がさらに増大していました。OpenVMS バージョン 7.3 では, SYS$RESCHED システム・サービスは NOSPIN ルーチンを使用して SCHED スピンロックを取得しようとします。したがって, SCHED スピンロックが現在ロックされている場合,このスレッドはスピンしません。そのため,呼び出しプロセスに戻されます。
ロック・マネージャではいくつかの変更が行われています。 OpenVMS Cluster では,ロック・マネージャは同期化のために IOLOCK8 を使用しなくなりました。現在は LCKMGR スピンロックを使用します。このため,ロック操作と I/O 操作を並列に実行できます。
再マスタリング操作はこれまでよりはるかに速く実行できるようになりました。再マスタリング・コードはメッセージごとに 1 つのロックを送信するのではなく,再マスタリング時に多くのロックからのデータを含む大きいメッセージを送信します。
ロック・マネージャは専用 CPU モードをサポートします。 LCKMGR スピンロックで非常に高い競合が発生する場合, 1 つの CPU をロック操作の実行専用に使用することで,はるかに効率のよい機能を提供できます。
スピンロック・トレース機能は V7.2-1H1 で初めて出荷された機能ですが,フォークロックをトレースできるようになりました。 IOLOCK8 スピンロックで高い競合が発生するシステムでは,多くの競合はフォーク・スレッドで発生します。従来のスピンロック・データの収集では,フォーク・ディスパッチャが IOLOCK8 をロックしたことしか示されません。
OpenVMS バージョン 7.3 では,スピンロック・トレースはフォーク・ディスパッチャ・コードにフックを設定します。このため,トレースはフォーク・ディスパッチから呼び出されているルーチンを報告することができ,IOLOCK8 競合を頻繁に発生させている特定のデバイスを示すことができます。
OpenVMS バージョン 7.3 より前のバージョンでは,メールボックス FDT ルーチンは MAILBOX スピンロックをロックしたルーチンを呼び出し,必要なアテンション AST を配布していました。ほとんどの場合,このルーチンにアテンション AST を配布する必要はありませんでした。これらの呼び出しを行う OpenVMS コードでは,すでに MAILBOX スピンロックがロックされているため,スピンロックの取得も不要なスピンロックの 2 回目の取得になっていました。
OpenVMS バージョン 7.3 では,OpenVMS は最初にルーチンを呼び出す前に,AST を配布しなければならないかどうか確認します。このため,呼び出しオーバヘッドと,すでに所有されている MAILBOX スピンロックの再ロックのオーバヘッドの両方を回避できます。
SYSMAN ユーティリティに次の新しいコマンドが追加されました。
クラス・スケジューラは,ユーザをスケジューリング・クラスに配置することで,システムのユーザが使用できる CPU 時間を制限できるようになりました。
コマンド | 説明 |
---|---|
CLASS_SCHEDULE ADD | 新しいスケジューリング・クラスを作成する。 |
CLASS_SCHEDULE DELETE | スケジューリング・クラスを削除する。 |
CLASS_SCHEDULE MODIFY | スケジューリング・クラスの属性を変更する。 |
CLASS_SCHEDULE RESUME | 停止されているスケジューリング・クラスを再開する。 |
CLASS_SCHEDULE SHOW | スケジューリング・クラスの属性を表示する。 |
CLASS_SCHEDULE SUSPEND | スケジューリング・クラスを一時停止する。 |
これらのコマンドは Fibre Channel テープをサポートします。 第 4.9.4.1 項 を参照してください。
コマンド | 説明 |
---|---|
IO FIND_WWID | これまで検出されていないすべてのテープおよびメディア・チェンジャを検出する。 |
IO REPLACE_WWID | 1 つのワールドワイド識別子 (WWID) を他の識別子に置換する。 |
/POWER_OFF 修飾子は,シャットダウンが完了した後,システムの電源をオフにすることを指定します。
詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (下巻) 』の SYSMAN の項を参照してください。
4.12 新しいシステム・パラメータ
ここでは,OpenVMS バージョン 7.3 で追加されたシステム・パラメータの定義をまとめます。
4.12.1 AUTO_DLIGHT_SAV
AUTO_DLIGHT_SAV は 1 または 0 に設定されます。デフォルトは 0 です。
AUTO_DLIGHT_SAV が 1 に設定されると,OpenVMS は夏時間と標準時間の切り換えを自動的に行います。
4.12.2 FAST_PATH_PORTS
FAST_PATH_PORTS は静的パラメータであり,特定のドライバに対して Fast Path を無効にします。
FAST_PATH_PORTS は 32 ビット・マスクです。マスクのビットの値が 1 の場合,Fast Path はそのビットに対応するドライバに対して無効になります。値が -1 の場合は,Fast Path は, FAST_PATH_PORTS パラメータが制御するすべてのドライバに対して無効になります。
ビット 0 は PKQDRIVER (パラレル SCSI) の Fast Path を制御し,ビット 1 は FGEDRIVER (Fibre Channel) の Fast Path を制御します。現在,FAST_PATH_PORTS のデフォルト設定は 0 です。つまり,Fast Path は PKQDRIVER と FGEDRIVER の両方に対して有効に設定されます。
さらに,次のことに注意してください。
詳細については,FAST_PATH および IO_PREFER_CPUS を参照してください。
4.12.3 GLX_SHM_REG
Galaxy システムでは,GLX_SHM_REG は Galaxy Management Database (GMDB) に構成されている共用メモリ領域構造の数です。GLX_SHM_REG を 0 に設定すると,デフォルト値に設定されている数の共用メモリ領域が構成されます。
4.12.4 LCKMGR_CPUID (Alpha)
LCKMGR_CPUID パラメータは,専用 CPU Lock Manager が実行される CPU を制御します。これは,LCKMGR_MODE システム・パラメータでこの機能を有効に設定したときに,LCKMGR_SERVER プロセスが使用する CPU です。
指定された CPU ID がプライマリ CPU の場合や,存在しない CPU の場合には,LCKMGR_SERVER プロセスはプライマリ以外の CPU で,ID が最も小さい CPU を使用します。
LCKMGR_CPUID は動的パラメータです。
詳細については,LCKMGR_MODE システム・パラメータを参照してください。
4.12.5 LCKMGR_MODE (Alpha)
LCKMGR_MODE パラメータは専用 CPU Lock Manager の使い方を制御します。LCKMGR_MODE を 0 より大きい値に設定すると,専用 CPU Lock Manager を有効にする前にアクティブにしておかなければならない CPU の数を示します。
専用 CPU Lock Manager は,1 つの専用 CPU ですべてのロック操作を実行します。この結果,ロック・マネージャに大きな MP_Synch が割り当てられている大規模な SMP システムでシステム・パフォーマンスを向上できます。
専用 CPU Lock Manager の使い方の詳細については,『OpenVMS Performance Management』を参照してください。
次のいずれかを指定します。
値 | 説明 |
---|---|
0 | 専用 CPU Lock Manager がオフであることを示す (デフォルト)。 |
>0 | 専用 CPU Lock Manager をオンにする前にアクティブにしておかなければならない CPU の数を示す。 |
LCKMGR_MODE は動的パラメータです。
4.12.6 NPAGECALC
NPAGECALC は,システムが非ページング動的メモリの初期サイズを自動的に計算するかどうかを制御します。
NPAGECALC のデフォルト値は,インストールまたはアップグレードの後の初期ブートの間だけ 1 に設定されます。 NPAGECALC の値が 1 の場合,システムは NPAGEVIR および NPAGEDYN システム・パラメータの初期値を計算します。この値は,システムの物理メモリの容量をもとに計算されます。
NPAGECALC の計算では,SYSBOOT プロンプトで表示される値または設定した値から,NPAGEVIR および NPAGEDYN の値が小さくはなりません。しかし,NPAGECALC の計算では,これらの値が大きくなる可能性があります。
AUTOGEN は NPAGECALC を 0 に設定します。AUTOGEN で, NPAGEDYN および NPAGEVIR システム・パラメータが適切な値になるように調整した後,NPAGECALC は常に 0 にしておかなければなりません。
4.12.7 NPAGERAD (Alpha)
NPAGERAD は,基本 RAD 以外の Resource Affinity Domain (RAD) に対して割り当てられる非ページング・プールの合計バイト数を指定します。RAD のないプラットフォームでは,NPAGERAD は無視されます。NPAGEDYN は,すべての RAD の非ページング・プールの合計容量を指定します。
また,OpenVMS は各 RAD に対して指定された値を偶数ページに切り上げることがあります。このようにすると,基本 RAD の非ページング・プールの容量が著しく少なくなるのを防止できます。たとえば,4 つの RAD を搭載した AlphaServer GS160 を使用しているとしましょう。
NPAGEDYN = 6291456 bytes NPAGERAD = 2097152 bytes |
この場合,OpenVMS システムは合計で約 6,291,456 バイトの非ページング・プールを割り当てます。この容量の中から,基本 RAD 以外の RAD に対して 2,097,152 バイトが割り当てられます。その後,残りの 4,194,304 バイトが基本 RAD に割り当てられます。 1
4.12.8 RAD_SUPPORT (Alpha)
RAD_SUPPORT は,Resource Affinity Domain (RAD) をサポートするシステムで RAD 対応コードを実行可能にします。たとえば, AlphaServer GS160 システムは RAD をサポートします。
RAD は,共通のアクセス属性を備えたハードウェア・コンポーネントの集合 (CPU,メモリ, I/O) です。OpenVMS RAD 機能の使い方の詳細については, 『Compaq OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』 を参照してください。
4.12.9 SHADOW_MAX_UNIT
SHADOW_MAX_UNIT は,ノードに存在できるシャドウ・セットの最大数を指定します。システムで必要なシャドウ・セットの数以上の値を設定しなければなりません。ディスマウントされたシャドウ・セット,使用されていないシャドウ・セット, Write Bitmap が割り当てられていないシャドウ・セットも合計に含まれます。
このシステム・パラメータは動的ではありません。つまり,設定を変更した場合,再ブートが必要です。
OpenVMS Alpha システムでのデフォルト設定は 500 です。 OpenVMS VAX システムでのデフォルト設定は 100 です。最小値は 10 であり,最大値は 10,000 です。
このパラメータはシャドウ・セットの命名には影響しません。たとえば,デフォルト値が 100 の場合,DSA999 などのデバイス名も使用できます。
1 システムは実際には各 RAD を偶数ページに切り上げます。さらに,基本 RAD に NPAGEDYN の値と 4 MB のどちらか小さい方の値より小さい値が割り当てられることはありません。 |
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