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JSYSHR.EXE の持つ各種日本語ルーチンは,JIS X 0213 第 3 水準をサポートします。以下のルーチンは JIS X 0213 第 3 水準サポートのために内部が拡張されています。
JIS X 0213 第 3 水準文字が追加されたシステム辞書 (JSY$TANGO.JISHO) をサンプルとして提供します。サンプル辞書を使用するためには,次のように論理名を定義してください。
$ DEFINE JSY$TANGO JSY$EXAMPLES:JSYTANGO.JISHO |
論理名はプロセス単位に設定できます。サンプル辞書の使用を終了したら,論理名を削除してください。
なお,サンプル用システム辞書を使用すると個人辞書ファイル (JSYKOJIN.JISHO) に JIS X 0213 第 3 水準文字が学習されるため,論理名を削除しても第 3 水準文字が漢字変換の候補として表示されてしまう場合があります。個人辞書への学習を避けるためには,論理名 JSY$KOJIN_MODE を 2 に定義して,個人辞書参照モードに設定してください。
システム辞書と個人辞書の詳細については『日本語ライブラリ利用者の手引き』の「かな漢字変換辞書」の節を参照してください。
1.3 JMAIL の機能拡張と問題点の修正
日本語 OpenVMS V7.3 の JMAIL は,deckanji2000 コードセット対応のための拡張と,日本語ファイル名のサポートの充実のための修正が行なわれています。
1.3.1 deckanji2000 コードセットのサポート
日本語 OpenVMS V7.3 でサポートされた deckanji2000 コードセットをサポートします。メールの本文中に JIS X 0213 第 3 水準文字を含んだメールを送受信できます。ただし,サポートするのは DECnet の MAIL11 プロトコルを利用した場合のみです。SMTP ではサポートされません。
メール中に第 3 水準文字を含める場合は,あらかじめメールを受け取る相手が第 3 水準文字を読むことができることを確認してください。 |
JMAIL のコマンドライン (JMAIL> プロンプト) での日本語かな漢字変換ができるようになりました。これにより日本語ファイル名の入力が可能になります。
この拡張により JMAIL> プロンプトでの入力は,論理名 IM$PROFILE で指定された日本語かな漢字変換キーパッドに従います。
論理名 IM$PROFILE に TARO キーパッドが指定されている場合など,JMAIL> プロンプトでの日本語かな漢字変換による問題が発生する場合には,論理名 JMAIL$COMMAND_CODESET を OLD と定義することで,漢字変換キーパッドを無効にすることができます。
1.3.3 日本語ファイル名の最大長の拡張
SEND や EXTRACT 等のコマンドに指定できるパス指定は,最大 4,095 バイト (すべて全角文字の場合は 2047 文字) までサポートします。またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
1.3.4 日本語ファイル名の署名ファイルへの使用
署名ファイルに対して日本語ファイル名を指定できます。
【例】
JMAIL> SET SIGNATURE_FILE USER$:[MYDIR]営業2課^_山田太郎.TXT |
EXTRACT や EDIT 等のコマンドの _File: プロンプトに対して半角カナを入力しようとすると,入力が無視されてしまう問題を解決しました。
JMAIL> プロンプトや _File: プロンプトなどで非常に長い日本語を入力した場合, 2 行目以降のカラム位置の計算が不正確になったり,または 2 行目に改行されずに何もエコーバックされなくなる等の問題が発生していましたが,これらの問題は全て解決されています。
1.4 日本語ファイル名の拡張
日本語 Compaq OpenVMS V7.2 でサポートした日本語ファイル名が拡張され,より使いやすくなりました。
1.4.1 NAM での最大パス長の拡張
RMS の従来のデータ構造体である NAM を使った場合,日本語 Compaq OpenVMS V7.2 および V7.2-1 では最大 42 文字までの日本語パス指定しかサポートされていませんでした。
V7.3 ではこれを拡張し,NAM の最大データ長である 255 バイト ( すべて全角文字の場合は 127 文字 ) のパス指定をサポートします。
またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
1.4.2 NAML での最大パス長の拡張
NAML を使った場合,日本語 Compaq OpenVMS V7.2 および V7.2-1 では最大 72 文字までの日本語パス指定しかサポートされていませんでした。
V7.3 ではこれを拡張し,NAML の最大データ長である 4,095 バイト (すべて全角文字の場合は 2047 文字) のパス指定をサポートします。
またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
1.4.3 $CVT_FILENAME 問題点の修正
RMS へ日本語ファイル名サポート機能を追加した際に発生した,$CVT_FILENAME システム・サービスの動作不整合の問題を解決しました。具体的には Unicode と VTF-7 のコード変換が正常に動作するように修正されています。
1.4.4 サブプロセスでの日本語ファイル名
DCL コマンド等を用いてサブプロセスを作成した場合,親プロセスの日本語ファイル名の設定を引き継ぐようになりました。
V7.2 および V7.2-1 では親プロセスの設定を引き継がなかったため,ユーザは日本語ファイル名を再度有効にする等の操作が必要でした。V7.3 からは,そのような作業は不要になります。
1.4.5 BACKUP ユーティリティ日本語機能の標準版へのマージ
BACKUP ユーティリティの主要な日本語機能を,標準版に組み込みました。 BACKUP ユーティリティの中核を成す BACKUPSHR.EXE の日本語化が不要になり, U.S. 開発部による BACKUPSHR.EXE のバグ修正などがそのまま適用できるため,信頼性の向上につながります。
なおこの変更に伴い,BACKUPSHR.EXE を呼び出すアプリケーションは,日本語ファイル名を VTF-7 形式で表現する必要があります。
1.4.6 JSYSHR でのファイル名変換ルーチン
Unicode と Super DEC Kanji コードとの間のコード変換を行うルーチン郡を JSYSHR.EXE に追加し,一般ユーザから使用できるようにしました。
これらのルーチンは iconv と異なり,日本語ファイル名専用です。日本語 Compaq OpenVMS がサポートする日本語ファイル名は,WindowsNT のファイルシステム適合するように設計されており,文字コードの変換規則が iconv と異なります。そのためユーザがファイル名に使用する目的で Unicode と Super DEC Kanji コードとの間のコード変換を行う場合は,このルーチンを使う必要があります。
int jsy$rms_user_vtf7 ( const char *src, int srclen, char *out, int outlen, int *retlen, const char *codeset, int codeset-len); int jsy$rms_vtf7_user ( const char *src, int srclen, char *out, int outlen, int *retlen, const char *codeset, int codeset-len); int jlb$rms_user_vtf7 ( struct descriptor *out, const struct descriptor *src, unsigned short *retlen, const struct descriptor *codeset); int jlb$rms_vtf7_user ( struct descriptor *out, const struct descriptor *src, unsigned short *retlen, const struct descriptor *codeset); |
詳しくは『日本語ライブラリ 利用者の手引き』を参照してください。
1.4.7 ISO Latin-1 句読文字
表 1-2 にある文字が日本語ファイル名として使用できるようになりました。これらの文字は Unicode 上では ISO Latin-1 文字として表現されるため,以前は日本語ファイル名に使用すると問題を発生していました。
文字 | SDK | Unicode |
---|---|---|
´ | A1AD | 00B4 |
¨ | A1AF | 00A8 |
± | A1DE | 00B1 |
× | A1DF | 00D7 |
÷ | A1E0 | 00F7 |
° | A1EB | 00B0 |
§ | A1F8 | 00A7 |
¶ | A2F9 | 00B6 |
これらの文字を日本語ファイル名として正しく使用するためには,VTF-7 形式を用いるか,または他の日本語文字とともに使用する必要があります。
1.5 日本語ターミナル・ドライバ
1.5.1 漢字入力時のカラム位置
DCL のコマンドライン等で漢字を入力している時,全角文字の 1 バイト目と 2 バイト目の間に改行位置が来た場合,正しく改行処理されるようになりました。
なお,DCL コマンド行等で漢字を入力する場合は,あらかじめ以下のコマンドで日本語行編集機能を有効にしておく必要があります。
$ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN KANJIGEN> SET /INPUT=KANJI /EDIT=ENABLE |
PC の日本語端末エミュレータ等から Telnet を使用してログインしている場合でも,DCL コマンド行等での日本語行編集機能を有効にできるようになりました。
1.6 日本語メッセージの自動チェック
以前のバージョンの日本語 OpenVMS では,標準版 OpenVMS の修正ファイル ( アップデートなど ) をインストールした場合などに,標準版のメッセージ・ファイルと日本語メッセージ・ファイルの整合性が取れなくなることがありました。整合性が取れない状態で日本語メッセージを使用すると,間違ったメッセージが表示されたり,メッセージが表示されずに番号が表示される等の問題が発生します。
バージョン 7.3 では,そのような整合性の不一致を自動的に検出する機能が追加されました。また不一致が起きた場合に,日本語メッセージ・ファイルを再構成して,不一致を解消する機能も追加されました。
1.6.1 システム起動時の自動チェック
バージョン 7.3 では,JSY$STARTUP.COM を実行するたびに,日本語メッセージ・ファイルの整合性チェックを自動的に行います。不一致を検出した場合,または不一致の可能性を検出した場合は,以下のメッセージが表示されます。
***************************<< WARNING >>*************************** Japanese version of CLIUTLMSG.EXE is incompatible with English version of it. Please rebuild it by using JSY$MSGBUILD.COM, then run JSY$STARTUP.COM and IVPs. ******************************************************************* |
通常,標準版 OpenVMS の修正ファイルをインストールした場合は,システムの再起動が必要になるため,起動の途中で JSY$STARTUP.COM が実行され,整合性チェックが行われます。
1.6.2 手作業によるチェック
システム管理者が手作業によって日本語メッセージ・ファイルの整合性を確認するためには,以下のコマンドを入力します。
$ @ JSY$SYSTEM:JSY$MSGBUILD.COM VERIFY |
パラメータの VERIFY は必ず必要です。不一致,または不一致の可能性を検出した場合は,以下のメッセージが表示されます。
***************************<< WARNING >>*************************** Japanese version of CLIUTLMSG.EXE is incompatible with English version of it. Please rebuild it by using JSY$MSGBUILD.COM, then run JSY$STARTUP.COM and IVPs. ******************************************************************* |
標準版のメッセージ・ファイルと日本語メッセージ・ファイルの整合性が取れなくなった場合は,日本語メッセージ・ファイルの再構成を行って,不一致を解消する必要があります。再構成を行うためには以下のコマンドを入力します。
$ @ JSY$SYSTEM:JSY$MSGBUILD.COM REBUILD |
以下のファイルが新しく作成されます。古いバージョンのファイルは削除されません。
SYS$COMMON:[SYSMSG.JA_JP]CLIUTLMSG.EXE |
作成された日本語メッセージ・ファイルをシステムにインストールするためには, JSY$STARTUP.COM を実行するか,または以下のコマンドを実行してください。
$ INSTALL REPLACE SYS$COMMON:[SYSMSG.JA_JP]CLIUTLMSG.EXE |
V7.3
日本語 Compaq OpenVMS V7.3 では,次のマニュアルがドキュメント・セットに追加されました。
『Compaq OpenVMS Cluster Systems』の翻訳版です。
Compaq OpenVMS Cluster システムの構成および管理の手順とガイドラインについて説明書です。また,クラスタに接続されているシステム間での高可用性の提供,構築ブロックの拡張,統一されたシステム管理についても説明しています。
『Guidelines for Compaq OpenVMS Cluster Configurations』の翻訳版です。
さまざまなニーズに応じた Compaq OpenVMS Cluster 構成を設計するための解説書です。
システム,インターコネクト,ストレージ・デバイス,およびソフトウェアの選択に必要な情報をまとめています。また,上記の構成要素を組み合わせることで, Compaq OpenVMS Cluster の可用性,スケーラビリティ,システム管理の利便性を最大限に生かせるような提案とガイドラインを記載しています。
次のマニュアルのタイトルが変更になりました。
『Compaq OpenVMS Alpha Partitioning and Galaxy Guide』の翻訳版です。以前のタイトルは『Compaq OpenVMS Alpha Galaxy ガイド』でした。
『Compaq C Run-Time Library Utilities Reference Manual』の翻訳版です。以前のタイトルは『DEC C 国際化ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』でした。
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