前へ | 次へ | 目次 | 索引 |
順編成ディスク・セーブ・セットでは,Files--11 ディスク・ボリュームを,磁気テープ・ボリュームのように順に処理することができます。順編成ディスク・セーブ・セットを使用する第 1 の利点は,マルチボリューム・セーブ・セットを構成するボリュームを一度に 1 つずつマウントできることです。これは,大容量の固定ディスク装置と小容量の着脱式ディスク装置があるだけで,テープ・ドライブが搭載されていないシステムで特に有効です。
順編成ディスクの 1 つが一杯になると,BACKUP は次のディスクをマウントするよう求めます。データの保存や復元で複数のディスクを使用することができます。つまり,ディスクを入れ換えながら処理を継続することができるのです。
マルチボリューム順編成ディスク・セーブ・セットを読み書きするためには,LOG_IO 特権か PHY_IO 特権が必要です。
順編成ディスク・セーブ・セットを作成する場合は,まず,DCL の MOUNT/FOREIGN コマンドを使用して,セーブ・セットの最初のボリュームをマウントしてください。これにより,ディスクはフォーリン・ボリュームとしてマウントされますが,BACKUP は Files--11 構造を使ってディスクを管理します。
順編成ディスクに保存を行う場合は,出力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。また順編成ディスクからの復元の場合は,入力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。 /SAVE_SET 修飾子が省略された場合,BACKUP は次のエラー・メッセージを出します。
%BACKUP-F-IMGFILSPE, /IMAGE specification must only have device name |
順編成ディスク・セーブ・セットにディレクトリ名を指定する必要はありません。順編成ディスク・セーブ・セットは,必ずマスタ・ファイル・ディレクトリ [000000] に書き込まれます。マスタ・ファイル・ディレクトリ以外のディレクトリが指定された場合,保存操作ではその指定は無視されます。また,復元または一覧出力操作では,ファイルが見つからないというエラー・メッセージが表示されます。
省略時の設定で BACKUP は最初の順編成ディスク・ボリュームを初期化せず,継続順編成ディスク・ボリュームだけ初期化します。このため,最初の順編成ディスク・ボリュームに /INITIALIZE 修飾子を指定しない場合は,次のことに注意する必要があります。
順編成ディスク・セーブ・セットに使用するボリュームは,セーブ・セット専用にしてください。一般のファイル用に使用していたボリュームを順編成ディスク・ボリュームとして使用するためには,初期化を行う必要があります。1 つの順編成ディスクに書き込み可能なセーブ・セット数は最大で 12 個です。1 つのディスクに 12 個を超えるセーブ・セットを作成したい場合は, Files--11 ディスク・セーブ・セットを使用してください。
BACKUP は,順編成ディスク・セーブ・セットを順編成ディスクまたは Files--11 のどちらの形式のセーブ・セットとしても読み取ることができます。
VAX システムにおいて, BACKUP がディスクあるいは磁気テープに保存可能なファイルとディレクトリの形式は,Files--11 構造のレベル 1 とレベル 2 ディスク形式のものです。その逆の復元も, Files--11 構造のレベル 1 と 2 ディスクの両方に対して行うことができます。
VAX システムで Alpha システム・ディスクのイメージ・バックアップを行うと,復元操作により Alpha システムが正常にブートされます。
Alpha システムにおいては,BACKUP は Files--11 構造のレベル 2 またはレベル 5のファイルとディレクトリをディスクと磁気テープのいずれにも保存できます。必要な場合,BACKUP を使用して,保存されたファイルとディレクトリを Files--11 構造のレベル 2 またはレベル5 ディスクへ復元も行えます。
OpenVMS Alpha オペレーティング・システムは, Files--11 構造のレベル 1 形式に対応していません。 |
ISO 9660 形式の媒体上のファイルのバックアップを行うことはできませんが,ISO 9660 形式の媒体に格納されたセーブ・セットを復元することはできます。
Files--11 ディスク構造についての詳細は,
第 9.1.1.2 項 を参照してください。 ISO 9660 装置についての詳細は, 第 8.2.2 項 を参照してください。
11.7 プロセス・クォータによる効率的なバックアップの実現
バックアップを行うプロセス,すなわち,BACKUP コマンドを入力するか,バックアップ・コマンド・プロシージャをキュー登録するプロセスに対するプロセス・クォータを正しく設定することによって,バックアップ効率を最適化することができます。これは,ストリーミング・テープ装置を使用する場合,特に大切です。
プロセス・クォータによって効率的なバックアップを実現する手順を次に示します。
$ SET DEFAULT SYS$SYSTEM $ RUN AUTHORIZE UAF> SHOW SYSTEM |
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM Node DIEM: Parameters in use: ACTIVE Parameter Name Current Default Minimum Maximum Unit Dynamic -------------- ------- ------- ------- ------- ---- ------- WSMAX 2600 1024 60 100000 Pages SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT Parameter Name Current Default Minimum Maximum Unit Dynamic -------------- ------- ------- ------- ------- ---- ------- CHANNELCNT 127 127 21 2047 Channels SYSMAN> EXIT $ |
WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。これらの値を使用して,適切なプロセス・クォータを設定する。
プロセス・クォータ | 最適値 |
---|---|
WSQUOTA | システム・パラメータ WSMAX に等しい値 |
WSEXTENT | WSQUOTA に等しい値 |
PGFLQUOTA | WSEXTENT に等しいか,大きい値 |
FILLM | システム・パラメータ CHANNELCNT より小さい値 |
DIOLM | 4096 か,FILLM 値の 3 倍のどちらか 大きい方 |
ASTLM | 4096 か, DIOLM 値より100 大きな値か, FILLM 値の 3 倍のうちの一番 大きな値 |
BIOLM | FILLM に等しい値 |
BYTLM | 次の式の結果に等しいか,大きい値:
(256*FILLM)+(6*DIOLM) |
ENQLM | FILLM より大きい値 |
プロセス・クォータ | 推奨値 |
---|---|
WSQUOTA | 16384 |
WSEXTENT | WSQUOTA に等しいか,大きい値 |
PGFLQUOTA | 32768 |
FILLM | 128 |
DIOLM | 4096 |
ASTLM | 4096 |
BIOLM | 128 |
BYTLM | 65536 |
ENQLM | 256 |
次に,AUTHORIZE ユーティリティを起動して, SYSTEM アカウントのプロセス・クォータを設定するときに使用するコマンドを,順を追って紹介します。実際の操作で別のアカウントからバックアップを行う場合は,そのアカウントのプロセス・クォータを確認してください。
$ SET DEFAULT SYS$SYSTEM $ RUN AUTHORIZE UAF> SHOW SYSTEM Username: SYSTEM Owner: SYSTEM MANAGER Account: SYSTEM UIC: [1,4] ([SYSTEM]) CLI: DCL Tables: DCLTABLES Default: SYS$SYSROOT:[SYSMGR] . . . Maxjobs: 0 Fillm: 40 Bytlm: 32768 Maxacctjobs: 0 Shrfillm: 0 Pbytlm: 0 Maxdetach: 0 BIOlm: 18 JTquota: 1024 Prclm: 10 DIOlm: 18 WSdef: 256 Prio: 4 ASTlm: 24 WSquo: 512 Queprio: 0 TQElm: 20 WSextent: 2048 CPU: (none) Enqlm: 200 Pgflquo: 20480 . . . UAF> EXIT %UAF-I-NOMODS, no modifications made to system authorization file %UAF-I-NAFNOMODS, no modifications made to network authorization file %UAF-I-RDBNOMODS, no modifications made to rights database $ |
この例では,SYSTEM は次のクォータ値を持つ。
WSQUOTA | 512 |
WSEXTENT | 2048 |
PGFLQUOTA | 20480 |
FILLM | 40 |
DIOLM | 18 |
ASTLM | 24 |
BIOLM | 18 |
BYTLM | 32768 |
ENQLM | 200 |
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM Node DIEM: Parameters in use: ACTIVE Parameter Name Current Default Minimum Maximum Unit Dynamic -------------- ------- ------- ------- ------- ---- ------- WSMAX 2600 1024 60 100000 Pages SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT Parameter Name Current Default Minimum Maximum Unit Dynamic -------------- ------- ------- ------- ------- ---- ------- CHANNELCNT 127 127 21 2047 Channels SYSMAN> EXIT $ |
WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。
$ SET DEFAULT SYS$SYSTEM $ RUN AUTHORIZE UAF> MODIFY SYSTEM/WSQUOTA=2600 UAF> MODIFY SYSTEM/WSEXTENT=2600 UAF> MODIFY SYSTEM/DIOLM=4096 UAF> MODIFY SYSTEM/ASTLM=4096 UAF> MODIFY SYSTEM/BIOLM=40 UAF> MODIFY SYSTEM/BYTLM=34816 UAF> EXIT |
バックアップ操作では,たいてい,ディスク・ボリュームとテープ・ボリュームの両方を使用することになります。バックアップでボリュームを使用する前に通常行う作業は次の 4 つです。
これらの作業全般の内容は,すでに 第 9 章 で説明したとおりです。本章では,特に BACKUP との関連でこれらの作業について説明します。本章で取り上げるディスク操作はすべてディスケットにも適用されます。
11.8.1 ボリュームの初期化
ボリュームの初期化では,次のことを行います。
ボリュームを初期化すると,既存のファイルのリンクが解除され,ファイルが効率良く消去されます。残したいデータが入っているボリュームを初期化しないように注意してください。 |
次の条件を満たす場合は,BACKUP で使用するボリュームを初期化する必要があります。
ボリュームを初期化する方法は, 表 11-6 に示す 3 つです。
方法 | 参照箇所 |
---|---|
バックアップの前に DCL の INITIALIZE コマンドを使用する | 第 9.3 節 |
BACKUP コマンド行で /REWIND 修飾子を使用する (テープのみ) | 第 11.8.1.2 項 |
BACKUP コマンド行で /INITIALIZE 修飾子を使用する (ディスクのみ) | 第 11.8.1.3 項 |
INITIALIZE コマンドを使用してから,バックアップを行うという方法の代わりに,BACKUP コマンドで,一度にテープの初期化とバックアップを行うことができます。
BACKUP コマンドでテープ・ボリュームを初期化する場合は,出力指定に /REWIND と /LABEL 修飾子を追加します。 /REWIND 修飾子はボリュームを巻き戻して,初期化します。 /LABEL 修飾子には,ボリューム・ラベルを指定することができます。
磁気テープのボリューム・ラベルには,任意の ANSI "a" 文字で最大 6 文字を指定することができます。ANSI "a" 文字とは,数字と英大文字,そして次の英数字以外の文字です。
! " % ' ( ) * + , _ . / : ; < = > ? |
英数字以外の文字を使用する場合は,ボリューム・ラベルを二重引用符で囲まなければなりません。
ボリュームに含まれるデータの内容に合せて,ボリューム・ラベルを指定してください。次に,ラベルの推奨例をいくつか紹介します。
ラベル | バックアップ形態 | 満了日 |
---|---|---|
DLY101 | 毎日,グループ 1,ボリューム番号 1 | 7 日後満了 |
DLY102 | 毎日,グループ 1,ボリューム番号 2 | 7 日後満了 |
WKY101 | 毎週,グループ 1,ボリューム番号 1 | 4 週間後満了 |
WKY201 | 毎週,グループ 2,ボリューム番号 1 | 4 週間後満了 |
MTH101 | 毎月,グループ 1,ボリューム番号 1 | 12 ヶ月後満了 |
YRY101 | 毎年,グループ 1,ボリューム番号 1 | 5 年後満了 |
初期化をするにあたっては,次のことに留意してください。
%INIT-F-FILNOTEXP, file is not expired |
このメッセージが出されたボリュームを初期化するためには,ボリュームに対する VOLPRO 特権か書き込みアクセスを有しているか,あるいはボリュームの所有者である必要がある。いずれかの条件を満たす場合は,DCL の INITIALIZE /OVERRIDE=EXPIRATION コマンドを使用して,テープを初期化することができる。
またこれ以外に,/IGNORE=LABEL_PROCESSING 修飾子を指定した BACKUP コマンド行を入力し直すという方法もある。詳細は『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照すること。
$ BACKUP [ACCOUNTS.JUNE] MUA0:JUNE.BCK/REWIND/LABEL=MTH101 |
前へ | 次へ | 目次 | 索引 |