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システムのチューニングを実施した場合,その後のシステム動作を監視して,期待した結果が得られたかどうかを調べてください。 MONITOR ユーティリティおよび DCL の SHOW コマンドを利用します。 SHOW コマンドについての詳細は,『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。MONITOR コマンドの使用法については, 第 20.8.2 項 を参照してください。また,MONITOR コマンドについての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
たとえば,何度実行しても結果が同じであると考えられるいくつかのプログラムを,通常の作業負荷状況で実行します。チューニングの前後にほぼ同じ作業負荷のもとでこのプログラムを実行してその動作時間を計測すれば,比較のための基準が分かります。
しかし,この方法では作業負荷がほぼ等しい条件のもとで計測をしないと意味がありません。また,このテストだけではチューニングの成否を最終的に判断することはできません。調整した項目が計測対象のイメージだけに好結果をもたらし,他の部分には悪影響を与えている可能性もあるからです。したがって,どのような場合でもシステムの変更後しばらくは,システムの動作をよく観察してください。
17.8 性能オプションの選択
次に,オプションとして選択することができるシステム管理操作を示します。通常,これらの操作はインストール後に行われ,その結果,多くの場合には全体的な性能が向上します。実際のシステム環境に合ったオプションを選択してください。すべてのオプションがどの環境にも適しているとはいえません。
ハイウォータ・マーク機能を無効化する場合は,その前に機密保護上の問題がないかどうか考慮すること。
ハイウォータ・マークを無効にするためには,ボリュームを初期化するときに /NOHIGHWATER 修飾子を指定する。あるいは,まず,DCL の SET VOLUME コマンドを次の形式で実行する。
SET VOLUME/NOHIGHWATER_MARKING 装置指定 [:] |
以上のシステム・ファイルの論理名を再定義する場合は,サイト別コマンド・プロシージャ SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM を変更する。 SYLOGICALS.COM で論理名を定義する方法については,
第 5.2.5 項 を参照。
ページングやスワッピングの動作をシステム・ディスクからアクセス頻度の低い別のディスクに移すのも,システム・ディスクの入出力を軽減する方法の 1 つである。その場合は,移動先のディスクに大きな2次ページ・ファイルおよび 2次スワップ・ファイルを作成する。
しかし,システム障害を診断するためのクラッシュ・ダンプを保存したい場合は,システム・ディスク上のシステム固有のディレクトリ SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] にダンプ・ファイルを格納する。 SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] にダンプ・ファイルが存在しない場合,クラッシュ・ダンプを保存するためには 1次ページ・ファイルが必要になる。ページ・ファイルおよびスワップ・ファイルの移動方法については, 第 16.16 節 を参照。
Install ユーティリティ (INSTALL) は,イメージに関する情報をメモリに格納します。 INSTALL は次の目的で使用します。
目的 | 参照箇所 |
---|---|
同時に使用されるイメージが消費するメモリを節約する | 第 17.9.7 項 |
システム性能を向上させる |
第 17.9.5 項
|
++Alpha システムにおいて,共用アドレス・データのあるイメージを使用することで性能を向上させる | 第 17.9.6 項 |
拡張特権が必要な実行可能イメージを一般的に利用可能にする | 第 17.9.8.1 項 |
非特権イメージが,共用イメージの特権機能を呼び出せるようにする | 第 17.9.8.2 項 |
強要イメージが特権実行可能イメージにより起動できるように保護マークを付ける | 第 17.9.9 項 |
サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ STARTUP.COM により,システム・ブート時に INSTALL を使用していくつかのシステム・プログラムがインストールされます。それ以外のプログラムを必要に応じてインストールする場合は,INSTALL を使用します。
このようにメモリにインストールして使用するイメージ (インストール済みイメージ) は,システムの再ブートのたびにインストールしなおす必要があります。そのため,サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ SYSTARTUP_VMS.COM に必要な INSTALL コマンドを追加します。詳細は 第 5.2.7 項 を参照してください。
Install ユーティリティ (INSTALL) は, /NOTRACEBACK 修飾子でリンクされたイメージだけをインストールします。
INSTALL コマンドの機能は SYSGEN ユーティリティの INSTALL コマンドと異なる点に注意してください。
次に,インストール済みイメージの概念と Install ユーティリティの使用法を説明します。
17.9.1 イメージおよび既知イメージについて
イメージとは,実行可能プログラムを形成するために Linker ユーティリティによって結合されたプロシージャとデータの集まりです。実行可能イメージはプロセス内で,あるいはコマンド・ライン・インタプリタ (CLI) または $CREPRC システム・サービスによって,実行できます。通常,実行可能プログラムのファイル・タイプは .EXE です。
イメージ・ タイプ |
説明 |
---|---|
実行可能 | リンカで /EXECUTABLE 修飾子を指定して (あるいは /SHAREABLE 修飾子を指定しないで) リンクされたイメージ。詳細は『OpenVMS Linker Utility Manual』を参照。 |
共用可能 | Linker ユーティリティで /SHAREABLE 修飾子を指定してリンクされたイメージ。共用可能イメージは,別のファイルのリンクの入力ファイルとして,暗黙的あるいは明示的に指定できることから,リンク可能イメージと呼ばれることもある。共用可能イメージは,それにリンクする実行可能イメージにはコピーされない。したがって,リンク実行可能イメージの数に関わらず,ディスク上には共用可能イメージが 1 つだけ存在すればよい。詳細は『OpenVMS Linker Utility Manual』を参照。 |
システム | オペレーティング・システムの制御のもとで実行しないイメージ。スタンドアロン動作だけを目的とする。システム・イメージの内容と形式は,共用可能イメージおよび実行可能イメージと異なる。詳細は『OpenVMS Linker Utility Manual』を参照。 |
INSTALL によってイメージをインストールすると,そのイメージには属性が割り当てられ,システムにとって「既知」のものになります。このため,インストール済みイメージは 既知イメージとも呼ばれます。
イメージ・アクティベータは,既知イメージを優先するために,検索リストを2 つのパスで処理します。検索リストの 1 回目の検索で,イメージ・アクティベータは既知ファイルとしてイメージを探します。必要な場合,検索リストの 2 回目の検索で,イメージ・アクティベータはディスク上でイメージを探します。
17.9.2 既知ファイルのエントリについて
システムは,既知イメージを既知ファイル・エントリと呼ばれる内部データ構造に定義します。各エントリは,インストールされたイメージの名前と,インストール時に割り当てられた属性を示します (インストール済みイメージの属性についての詳細は, 第 17.9.3 項 を参照してください)。
既知ファイル・エントリは,システムが稼働している間だけ存在します。システムがシャットダウンしたり,何らかの理由で異常終了した場合には,システムの再ブート後にすべての既知イメージを再インストールする必要があります。
17.9.3 既知イメージに割り当てることができる属性
INSTALL コマンドに修飾子を指定すれば,既知イメージに属性を割り当てることができます。 表 17-1 に,既知イメージに割り当てることができる属性と使用される修飾子を示します。
属性 | 説明 | 修飾子 |
---|---|---|
ヘッダ常駐 | イメージ・ファイルのヘッダ (ネイティブ・イメージのみ) がメモリに常駐したままとなるため,ファイルに 1 回アクセスするために行われるディスク入出力が 1 回少なくなる。ヘッダが 1 ブロックだけで構成される場合,1 つのファイルあたり 512 バイトのページング動的メモリが使用される。ヘッダが複数のブロックで構成される場合, 1 つのファイルあたりのメモリ消費量はヘッダのブロック数によって異なる。ヘッダ・オープンとしてインストールされたイメージは,暗黙的に永久オープンとしてインストールされる。 | /[NO]HEADER_RESIDENT |
永久オープン | イメージ・ファイルはオープンしたままとなる。そのため,そのイメージへのアクセスには,ファイル・システムを呼び出す必要がない。 | /OPEN |
特権 | イメージにこの属性を割り当てると,そのイメージを実行するすべてのプロセスに一時的に強い特権が割り当てられ,イメージの実行中には利用者登録ファイル (UAF) で指定された特権の制限を超える処理を行うことができる。したがって,通常の特権を持つユーザでも,通常より上の特権が必要となるプログラムを実行できる。この属性 (およびそれを作成するための /PRIVILEDGED 修飾子) は,実行可能イメージだけに適用できる。 | /PRIVILEGED[=(privilege,...)] |
保護 | イメージが起動されると,そのイメージのアドレス領域は,ユーザ・モードのコードによる変更から保護される。このことは,カーネルまたはエグゼクティブ・モードで実行する共用可能コードには重要である。 | /PROTECTED |
++ 常駐 | Alpha システムの場合,イメージのコードまたは読み込み専用のデータは,メモリのシステム領域に永久に常駐される。このため,変換バッファ (TB) のミス率を減らすための特殊なページ・マップを使用することで性能が向上する。常駐属性は,この修飾子にリンクされた共用可能イメージまたは実行可能イメージに適用される。 | /SECTION_BINDING=(CODE,DATA) |
共用 | イメージの読み込み専用セクションおよび参照時にコピーを行わない読み書き用セクションは,複数のユーザから同時にアクセスできる。したがって,そのようなセクションは物理メモリに 1 つだけ存在すればよい。一方,参照時にコピーを行うセクションは,それにアクセスする各プロセスごとに必要となる。共用イメージは,暗黙に「永久オープン」として宣言される。 | /SHARED |
書き込み可能 | 共用されている参照時にコピーを行わない書き込み可能セクションが物理メモリから削除される場合 (ページング機構により,あるいはそのセクションを参照するプロセスがないために),そのセクションは同時にイメージ・ファイルに書き戻される。したがって,このセクションに行われた更新は保存され,初期値は失われる。このイメージは同時に「共用」としても宣言されなければならない。 | /WRITABLE |
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