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7.1 BACKUP について
バックアップ・ユーティリティ (BACKUP) は,ファイル,ディレクトリ,ディスクのコピーを作成することにより,データの消失や破損を防止します。たとえばディスク・ドライブなどに障害が発生しても,バックアップ・コピーを復元して作業を続けることができます。
BACKUP でファイルをセーブすると,これらのファイルは, セーブ・セット と呼ばれる特殊ファイルに書き込まれます。セーブ・セットは,BACKUP だけが解釈できる形式で書かれています。ただし,Files-11 ディスクに格納されているセーブ・セットは OpenVMS 標準ファイルなので,コピー,名前の変更,削除,およびバックアップが行えます。磁気テープ上のセーブ・セットには必ず BACKUP コマンドを使用するようにし, DCL の COPY コマンドでディスクにコピーしないようにしてください。
これら作業の実行についての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。
レイヤード製品には,独自のバックアップ・プロシージャを使用しているものがあります。詳細については,それぞれのマニュアルを参照してください。 |
BACKUP により,ディスクのフラグメンテーションも防止できます。ディスク上にファイルを作成し拡張していくと,フラグメンテーションが発生する恐れがあります。連続ブロックにファイルを格納できなくなると,ファイル・システムは,非連続ブロックにファイルを格納します。結果的に,ディスクのフラグメンテーションが進み,システムの性能が劣化します。このフラグメンテーションを避けるには,ディスクのイメージ・バックアップをとり,バックアップ・コピーを復元します。イメージ・バックアップを復元したとき,BACKUP がファイルを連続的にディスクに格納します。
通常のファイル,ディレクトリ,またはディスクだけでなく, OpenVMS システム・ディスクもバックアップするようにしてください。ユーザ各自が自分のシステム・ディスクのバックアップをとるようにしてもよいし,大規模なシステムでは,オペレータやシステム管理者の役割としてもよいでしょう。
システム・ディスクをバックアップするには,2 通りの方法があります。
スタンドアロン BACKUP およびメニュー方式のプロシージャについての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。
イメージ・コピーやイメージ・バックアップでは,ボリューム上のすべてのファイルが処理対象となるので,ファイル選択修飾子は使用できません。ただし,復元処理では,復元するファイルやディレクトリを選択できます。 |
BACKUP は,索引ファイルとストレージ・ビットマップのコピーを保持するために仮想メモリを割り当てます。より大きなビットマップの場合は,それに応じて,BACKUP ユーティリティのためにより多くの仮想メモリが必要になります。大きなビットマップがあるボリューム上で BACKUP を使用するには,ページ・ファイル・クォータを大きくする必要があります。 OpenVMS VAX システムの場合は,システム・パラメータ VIRTUALPAGECNT も大きくする必要があります。
ビットマップのために必要な仮想メモリ・サイズは,ビットマップのブロックごとに,VAX ページ (または Alpha 512-byte ページレット) です。 BACKUP ユーティリティでは,ビットマップのために必要な仮想メモリの量は,ボリューム・セット上の全索引ファイル・ビットマップのサイズの合計に等しくなります。このメモリの必要条件は,BACKUP ユーティリティの基本的なバッファ・プールに追加されるものであることに注意してください。
次に BACKUP コマンド行の形式について説明します。
7.2 BACKUP コマンド行の形式
BACKUP 処理を行うには,DCL の BACKUP コマンドを次の形式で入力します。
BACKUP 入力指定子 出力指定子 |
BACKUP は,入力指定子と出力指定子をもとに,行うべき処理タイプを判断します。また,入力指定子によって入力対象物の記憶位置を調べ,出力指定子によって出力先を指定します。
7.3 BACKUP の入力指定子と出力指定子
BACKUP は,複数の種類の入力と出力を処理できます。入力指定子と出力指定子は処理タイプによって異なりますが,OpenVMS 標準ファイル指定, BACKUP セーブ・セット指定,そして装置指定が指定子として使用できます。装置指定では,ディスク・ボリュームや磁気テープ・ボリュームが指定できます。
有効な OpenVMS ファイル指定であれば,どれでも入力または出力指定子に使用できます。ただし,ノード名をファイル指定に使用することはできません。ワイルドカード文字を使用すれば,複数のファイル指定を単一の BACKUP 処理の入力として指定できます。
BACKUP セーブ・セット指定は,BACKUP セーブ・セットを指定するファイル指定です。BACKUP でセーブしたファイルやボリュームは,セーブ・セットに書き込まれます。セーブ・セットを他の BACKUP 処理の入力として指定できます。セーブ・セット指定については,OpenVMS ファイルの指定規則に従ってください。ディスク・ファイルの指定方法については,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。磁気テープ・ファイルの指定方法については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。セーブ・セット指定のファイル・タイプには,省略時のファイル・タイプはありませんが,通常は BCK または SAV を使用します。
セーブ・セット名には,OpenVMS ファイル名とファイル・タイプの両方が有効であれば使用できます。ただし,磁気テープ上にセーブ・セットを作成する場合は,次の制約があります。
BACKUP の入力または出力指定子に使用する装置指定については,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』に記述された規則に従ってください。
省略時の BACKUP は,Files-11 ディスクを指す入力または出力指定子をファイル指定とみなします。したがって,Files-11 ボリューム上のセーブ・セットを指定するには,指定子に /SAVE_SET 修飾子を含めなければなりません。/SAVE_SET を参照してください。磁気テープを指す入力または出力指定子は,セーブ・セットとして扱われます。
BACKUP コマンドの入力指定子と出力指定子の両方にセーブ・セットを指定することはできません。このため,磁気テープ間で BACKUP 処理を行うことはできません。 |
表 7-1 に,入力指定子と出力指定子を処理タイプ別に示します。
処理 | 形式 |
---|---|
セーブ | BACKUP ファイル指定 セーブ・セット指定 |
セーブ (イメージ) | BACKUP/IMAGE 装置指定 セーブ・セット指定 |
セーブ (物理からディスクへ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 装置指定 |
復元 | BACKUP セーブ・セット指定 ファイル指定 |
復元 (イメージ) | BACKUP/IMAGE セーブ・セット指定 装置指定 |
復元 (ディスクから物理へ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 装置指定 |
復元 (テープから物理へ) | BACKUP/PHYSICAL セーブ・セット指定 装置指定 |
コピー | BACKUP ファイル指定 ファイル指定 |
コピー (イメージ) | BACKUP/IMAGE 装置指定 装置指定 |
コピー (物理からテープへ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 セーブ・セット指定 |
比較 | BACKUP/COMPARE ファイル指定 ファイル指定
BACKUP/COMPARE セーブ・セット指定 ファイル指定 |
比較 (イメージ) | BACKUP/COMPARE/IMAGE セーブ・セット指定 装置指定
BACKUP/COMPARE/IMAGE 装置指定 装置指定 |
比較(物理) | BACKUP/COMPARE/PHYSICAL 装置指定装置指定
BACKUP/COMPARE/PHYSICAL セーブ・セット指定装置指定 |
リスト 1 | BACKUP/LIST[=ファイル指定] セーブ・セット指定
BACKUP/LIST[=ファイル指定] 装置指定 |
ジャーナルの作成 | BACKUP/JOURNAL[=ファイル指定] ファイル指定 セーブ・セット指定 |
ジャーナル・リスト | BACKUP/JOURNAL[=ファイル指定] /LIST[=ファイル指定] |
要素リストとは,コマンドや修飾子で指定する引数のリストのことです。引数すなわち要素は,コンマで区切ります。入力または出力指定子について要素リストを使用できるのは,次の場合に限定されます。
$ BACKUP _From: DUA0:[DATA]A.DAT,B.DAT,[PROGRAMS]TEST.EXE _To: MSA0:TEST.SAV/LABEL=DLY101 |
$ BACKUP _From: DUA0:[DATA]*.*,DUA0:[PROGRAMS]*.* _To: MSA0:TEST.SAV,MSA1:/LABEL=WKLY01 |
$ BACKUP/IMAGE _From: MSA0:TEST.SAV,MSA1: _To: DUA0:[DATA...],DUA1: |
BACKUP 処理には,修飾子を指定することもできます。使用できる修飾子は,次の 5 種類です。
イメージ処理では,入力または出力指定子を使用できません。 |
それぞれの修飾子の使用方法を,充分理解するようにしてください。 BACKUP コマンド行のどこに修飾子を入力するかによって,結果が異なります。コマンド修飾子は,コマンド行のどこにでも入力できますが,入力指定子と出力指定子の修飾子は,位置によって意味が決まります。入力指定子修飾子は入力指定子の直後,出力指定子修飾子は出力指定子の直後に入力してください。
また,BACKUP 修飾子には,入力指定子修飾子としても出力指定子修飾子としても使用できる修飾子がいくつかあります。正常に動作させるため,位置によって意味が決まる修飾子は,必ず正しい位置に入力してください。たとえば /SAVE_SET 修飾子は,BACKUP セーブ処理の出力セーブ・セット修飾子としても,BACKUP 復元処理の入力セーブ・セット修飾子としても使用します。
BACKUP 修飾子の組み合わせ方法の詳細については,
付録 G を参照してください。
7.3.3 BACKUP でのワイルドカード文字の使用法
BACKUP では,ディレクトリ,ファイル名,ファイル・タイプ,およびバージョン番号を示すファイル指定で,ワイルドカード文字を使用できます。ファイル名,ファイル・タイプ,バージョン番号のいずれかを省略すると,ワイルドカード文字のアスタリスク(*)が使用されます。たとえばバージョン番号を省略すると,すべてのバージョンが処理されます。ワイルドカード文字の概要については,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
有効な DCL ワイルドカード文字であれば,Files-11 媒体である入力指定子や /SELECT,/EXCLUDE の修飾子に使用できます。ただし,ファイルの最新バージョンを示す記号 (;) やファイルの相対バージョンを示す記号 (;-n) を /EXCLUDE,/SELECT 修飾子で使用した場合,これらの記号はワイルドカード文字のアスタリスク (;*) として処理されます。
セーブ・セットがテープ上の入力指定子でないかぎり,BACKUP セーブ・セット指定にワイルドカード文字を使用することはできません。
次の表は,Files-11 媒体である出力指定子に使用できるディレクトリ・ワイルドカード文字の種類です。
ディレクトリ・ワイルドカード文字 | 結果 |
---|---|
省略 | ディレクトリ名を省略した場合,ファイルは現在の省略時のディレクトリ [] に格納される。 |
[*...] | ファイルは,セーブ元のディレクトリに復元される。 |
[ディレクトリ] | ファイルは,指定ディレクトリに復元される。 |
[ディレクトリ...] | 入力ファイルの指定に使用したワイルドカード文字により,ファイルの復元先ディレクトリが決まる。 |
OpenVMS ディレクトリ木構造は 8 レベルまでに限定されているため,ディレクトリに多数のサブディレクトリ・レベルがあるときにディレクトリ・ワイルドカード文字の使用法を誤ると, BACKUP 処理中に下位レベルのサブディレクトリを失う恐れがあります。 |
次は,入力指定子と出力指定子におけるディレクトリ・ワイルドカードの形式 [ディレクトリ...] の使用例です。
$ BACKUP [OSCAR...] [JOE.RECEIVED...] |
ディレクトリ [JOE.RECEIVED] (まだ存在しない場合) のほか,[OSCAR] のサブディレクトリに対応するサブディレクトリが作成されます。ディレクトリ [OSCAR] とそのサブディレクトリのすべてのファイルが [JOE.RECEIVED] とそのサブディレクトリにコピーされます。ただし, [OSCAR] に 8 レベルのディレクトリがある場合,第 9 レベルのサブディレクトリは,[JOE.RECEIVED] に作成されません。つまり,[OSCAR] の第 8 レベルのサブディレクトリは,コピーされません。
コピー処理で,ワイルドカード文字のアスタリスク (*) を使用して入力指定子のサブディレクトリを表現すると,入力指定子のサブディレクトリに対応するサブディレクトリが,出力指定子に指定したディレクトリに対して作成されます。次に,入力指定子の最下位レベルのサブディレクトリのすべてのファイルが,出力指定子の最下位レベルのサブディレクトリにコピーされます。次の例では, MONDAY と TUESDAY というサブディレクトリをアスタリスクで表しています。
$ BACKUP [SAM.WORK.*.WEDNESDAY] [JAMES...] |
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