OpenVMS
OpenVMS Cluster システム


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1.2.1 コンピュータ

デスクトップからメインフレーム・システムに至るまで,最大 96 台のコンピュータを OpenVMS Cluster システムの メンバとして使用できます。以下のコンピュータは, OpenVMS Alpha または OpenVMS VAX オペレーティング・システムを稼動し, OpenVMS Cluster のネゴシエーションに完全に参加するアクティブ・メンバになることができます。

1.2.2 物理インターコネクト

インターコネクトとは,コンピュータを他のコンピュータやストレージ・サブシステムに接続する物理的なパスです。OpenVMS Cluster システムでは,さまざまなインターコネクト (バス) がサポートされており,メンバは以下に示す中から,最も適切で効果的な方法を使用して通信することができます。

1.2.3 OpenVMS Galaxy SMCI

第 1.2.2 項 に一覧を示した物理インターコネクトに加え, OpenVMS Galaxy インスタンス用の共用メモリ CI (SMCI) という別のタイプのインターコネクトが利用可能です。 SMCI は Galaxy インスタンス間のクラスタ通信をサポートします。

SMCI と Galaxy 構成の詳細については,『OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』を参照してください。

1.2.4 ストレージ・デバイス

共用ストレージ・デバイスとは,クラスタ内の複数のコンピュータからアクセスできるディスクまたはテープです。ノードは,MSCP および TMSCP サーバ・ソフトウェア ( 第 1.3.1 項 を参照) を使用して,リモートのディスクおよびテープにアクセスします。

OpenVMS Cluster 内のシステムは,広範囲にわたるストレージ・デバイスをサポートしています。

1.3 ソフトウェア・コンポーネント

OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムには,リソースの共用を可能にし,基礎になるハードウェア構成の変化に動的に対応する複数のソフトウェア・コンポーネントが含まれています。

1 台のコンピュータが使用できなくなっても,残りのコンピュータの OpenVMS が稼動しているため,OpenVMS Cluster システムは操作を続行できます。

1.3.1 OpenVMS Cluster ソフトウェアの機能

以下の表は,ソフトウェア・コンポーネントとその主な機能を示しています。

コンポーネント 機能 説明
接続マネージャ メンバの整合性 クラスタへのコンピュータの追加を調整し,コンピュータがクラスタに追加されるときやクラスタから削除されるときに,クラスタの整合性を維持管理する。
分散ロック・マネージャ リソースの同期化 分散ファイル・システム,ジョブ・コントローラ,デバイスの割り当て,その他のクラスタ機能の同期をとる。 OpenVMS Cluster 中の 1 つのコンピュータがシャットダウンされると,そのコンピュータが保有しているすべてのロックは解放されるため,他のコンピュータで処理を続行できる。
分散ファイル・システム リソースの共用 すべてのコンピュータは,ストレージ・デバイスの種類 (DSA,RF,SCSI,半導体サブシステム) や場所とは無関係に,マス・ストレージおよびファイル・レコードへのアクセスを共用できる。
分散ジョブ・コントローラ キューイング 汎用キューおよび実行キューをクラスタ全体で使用できるようにする。
MSCP サーバ ディスクの制御 ディスクに直接アクセスできないすべてのノードがディスクを利用できるように,固有のマス・ストレージ制御プロトコルを実装する。
TMSCP サーバ テープの制御 テープ・ドライブに直接アクセスできないすべてのノードがテープ・ドライブを利用できるように,固有のテープ・マス・ストレージ制御プロトコルを実装する。

1.4 通信

SCA (System Communications Architecture) は, OpenVMS Cluster システムのノードが協調動作するための通信メカニズムを定義しています。各ノードにあるリソース間のデータの共用を監視し,異なる Alpha/VAX コンピュータで実行されているシステム・アプリケーション (SYSAP) を相互に結合します。

SCA は以下のコンポーネントの階層で構成されています。

通信ソフトウェア 機能
システム・アプリケーション (SYSAP) プロセッサ間通信のために SCS ソフトウェアを使用するクラスタ単位のアプリケーション (たとえば,ディスク/テープ・クラス・ドライバ,接続マネージャ, MSCP サーバ) で構成される。
SCS (System Communications Services) 基本的な接続管理/通信サービスを提供する。これは, OpenVMS Cluster システム内のノードのシステム・アプリケーション (SYSAP) 間の論理パスとして実装される。
ポート・ドライバ ローカル・ポートとリモート・ポートの間の通信パスを制御する。
物理インターコネクト CI,DSSI,イーサネット (10/100 およびギガビット),ATM,FDDI, MEMORY CHANNEL インターコネクト用のポートまたはアダプタで構成される。

1.4.1 システム通信

図 1-1 は,OpenVMS Cluster のコンポーネント間の関係を示しています。

図 1-1 OpenVMS Cluster システムの通信


図 1-1 で,異なるノードにあるプロセスは相互に情報を交換します。

1.4.2 アプリケーション通信

OpenVMS Cluster システムで動作するアプリケーションでは,アプリケーション通信のために,DECnet または TCP/IP (伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル) が使用されます。DECnet および TCP/IP 通信サービスを利用することによって,プロセスはリモート・サーバを検出または起動して,メッセージを交換することができます。

本書で一般的に DECnet を参照している場合,DECnet for OpenVMS または DECnet--Plus (以前の名称は DECnet/OSI) ソフトウェアのいずれかを指します。

1.4.3 クラスタ・エイリアス

クラスタ・エイリアスという DECnet 機能は, OpenVMS Cluster システム内のノードの総称名を提供します。アプリケーション・ソフトウェアは特定のノード名ではなく,クラスタ・エイリアスを使用することによって, OpenVMS Cluster 内のノードに接続することができます。この結果,アプリケーションは OpenVMS Cluster システム内の個々のノードを追跡する必要がなくなり,設計の単純化,構成の柔軟性の向上,アプリケーションの可用性の向上につながります。

1.5 システム管理

OpenVMS Cluster システムの管理者は,生産性と効率を最大限に向上し,しかも必要なセキュリティを維持するために,複数のユーザとリソースを管理しなければなりません。

1.5.1 管理の容易さ

OpenVMS Cluster システムは簡単に管理できます。これは,複数のメンバ,ハードウェア,ソフトウェアが 1 つのシステムとして協調動作するように設計されているからです。

図 1-2 は集中化されたシステム管理を示しています。

図 1-2 1 ヵ所で行うことができる OpenVMS Cluster システムの管理


1.5.2 弊社のツールとユーティリティ

OpenVMS オペレーティング・システムでは, OpenVMS Cluster 構成内の分散リソースの管理に役立つ多くのユーティテリティやツールがサポートされています。 OpenVMS Cluster 構成の可用性および性能を活用するには,適切な管理が必要です。

弊社と弊社のパートナ企業は,さまざまなシステム・ニーズを満たすために幅広い製品群を提供しています。 表 1-1 では,クラスタ管理に使用する弊社製品について説明し, OpenVMS オペレーティング・システムに標準添付されているのか,オプション製品として提供されているのかも示しています。 表 1-2 では, OpenVMS パートナが販売している,OpenVMS Cluster 構成を管理するための非常に重要なユーティリティやツールをいくつか紹介しています。

表 1-1 システム管理ツール
ツール 標準添付またはオプション 機能
アカウンティング
VMS アカウンティング 標準添付 リソースの使用状況を追跡する。
構成およびキャパシティ・プランニング
LMF (License Management Facility) 標準添付 スタンドアロン・システムおよび OpenVMS Cluster システム内の各コンピュータで,ライセンスが登録され,インストールされているソフトウェア製品をシステム管理者が判断するのに役立つ。
Graphical Configuration Manager (GCM) 標準添付 OpenVMS が稼動し,パーティションに分割された AlphaServer システムの構成を表示して制御する方法を提供するポータブルなクライアント/サーバ・アプリケーション。
Galaxy Configuration Utility (GCU) 標準添付 システム管理者が単一のワークステーション・ウィンドウから OpenVMS Galaxy システムの設定と管理を行うことができる DECwindows Motif アプリケーション。
SYSGEN (System Generation) ユーティリティ 標準添付 特定のハードウェアおよびソフトウェア構成に適合するようにシステムを調整する。システム・パラメータの変更,デバイス・ドライバのロード,ページ・ファイルとスワップ・ファイルの追加作成には,SYSGEN を使用する。
CLUSTER_CONFIG.COM 標準添付 DECnet が使用されるものと想定して,OpenVMS Cluster システムの構成または再構成を自動化する。
CLUSTER_CONFIG_LAN.COM 標準添付 DECnet を使用せずに,OpenVMS Cluster システムの構成または再構成を自動化する。
Compaq Management Agents for OpenVMS 標準添付 OpenVMS システムのデバイスを調べる管理エージェント機能をもったシステム管理用のウェブ・サーバで構成される。
Compaq Insight Manager XE Compaq NT サーバに標準添付 コスト削減,操作効率および効果の改善,システム・ダウン・タイムの縮小のために, 1 つのシステムにシステム管理を集中化させる。 OpenVMS Cluster システムのすべてのシステムを監視するために, NT サーバ上で Compaq Insight Manager XE を使用できる。異なる種類の弊社のマシンを用いた構成でも,すべてのシステムを監視するために, NT サーバ上で Compaq Insight Manager XE を使用できる。
イベントおよびフォールト・トレランス
OPCOM メッセージ・ルーティング 標準添付 イベント通知機能を提供する。
操作管理
クラスタ単位のプロセス・サービス 標準添付 SHOW USERS,SHOW SYSTEM,STOP/ID= などの OpenVMS システム管理コマンドがクラスタ単位で動作できるようにする。
Availability Manager 標準添付 OpenVMS Alpha または Windows ノードから,拡張 LAN (ローカル・エリア・ネットワーク) 上の 1 つ以上の OpenVMS ノードを監視できるようにする。 Availability Manager は,複数の OpenVMS ノードからシステム・データおよびプロセス・データを同時に収集し,データを分析し,そしてネイティブの Java GUI を使って出力を表示する。
DECamds 標準添付 複数のノードから同時にデータを収集して分析し,すべての出力を集中化された DECwindows ディスプレイに送信する。この分析によってリソースの可用性の問題が検出され,適切な対処法が示される。
SCACP (Systems Communications Architecture Control Program) 標準添付 交換 LAN のパスを監視および管理できるようにする。
DFS (Distributed File Service) オプション LAN または WAN を介してディスクをサービスできるようにする。
DNS (Distributed Name Service) オプション オブジェクトとネットワーク名を対応付けるネーム・サーバとして,特定のネットワーク・ノードを構成する。
LATCP (Local Area Transport Control Program) 標準添付 LAT ポート・ドライバを制御し,このドライバから情報を取得するための機能を提供する。
LANCP (LAN Control Program) 標準添付 システム管理者が OpenVMS システム上で LAN ソフトウェアを構成し,制御できるようにする。
NCP (Network Control Protocol) ユーティリティ オプション システム管理者が DECnet for OpenVMS (フェーズ IV) ネットワークに関する情報を構成データベースに登録したり,このデータベースの情報にアクセスできるようにする。
NCL (Network Control Language) ユーティリティ オプション システム管理者が DECnet--Plus ネットワークに関する情報を構成データベースに登録したり,このデータベースの情報にアクセスできるようにする。
OpenVMS Management Station 標準添付 システム管理者が複数の OpenVMS Cluster システムおよび OpenVMS ノード間で,アカウントとプリント・キューの設定および管理を行うことができるようにする。 OpenVMS Management Station は Microsoft Windows および Windows NT ベースの管理ツールである。
POLYCENTER Software Installation Utility (PCSI) 標準添付 ソフトウェア製品を簡単にインストールできる機能を提供する。
Queue Manager 標準添付 OpenVMS Cluster の汎用キューおよび実行キューを使用して,ノード固有のキューをクラスタ全体に提供する。
Show Cluster ユーティリティ 標準添付 OpenVMS Cluster 構成でアクティビティとパフォーマンスを監視し,アクティビティに関する情報を収集して,ターミナルまたは他の出力デバイスに送信する。
SDA (System Dump Analyzer) 標準添付 クラッシュ時に作成されたダンプに保存されているメモリの内容や,実行中のシステムのメモリの内容を調べる。SDA は会話モードまたはバッチ・モードで使用できる。
SYSMAN (System Management ユーティリティ) 標準添付 デバイスおよびプロセッサ制御コマンドが OpenVMS Cluster 全体で有効に動作するようにする。
VMSINSTAL 標準添付 ソフトウェアのインストール機能を提供する。
パフォーマンス
AUTOGEN ユーティリティ 標準添付 利用状況をもとに,システム・パラメータの設定を最適化する。
Monitor ユーティリティ 標準添付 基本的なパフォーマンス・データを提供する。
セキュリティ
Authorize ユーティリティ 標準添付 ユーザ・アカウント・プロファイルを変更する。
SET ACL コマンド 標準添付 多くのシステム・オブジェクトに対して,詳細な保護機能を設定する。
SET AUDIT コマンド 標準添付 重要なシステム・オブジェクトの追跡を容易にする。
ストレージ管理
Backup ユーティリティ 標準添付 OpenVMS Cluster システムの管理者が,ストレージ・メディアからファイルおよびディレクトリのバックアップ・コピーを作成し,必要に応じて復元できるようにする。このユーティリティによって, OpenVMS Cluster システム内のディスクに格納されているデータを 1 つのノードでバックアップすることができる。
Mount ユーティリティ 標準添付 ディスクまたはテープ・ボリュームを 1 台のコンピュータ, OpenVMS Cluster のコンピュータの一部, OpenVMS Cluster のすべてのコンピュータのいずれかで使用できるようにする。
Volume Shadowing for OpenVMS オプション 複数のディスク間でデータを複製することで, OpenVMS Cluster システムをディスク障害から保護する。


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