OpenVMS

OpenVMS

OpenVMS Cluster システム

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2002 年 10 月

本書は,OpenVMS Cluster システムの構成および管理の手順とガイドラインについて説明します。特に示した場合を除き,本書で説明する手順とガイドラインは, VAX コンピュータと Alpha コンピュータの両方に適用されます。本書ではまた,クラスタに接続されているシステム間での高可用性の提供,構築ブロックの拡張,統一されたシステム管理についても説明します。

改訂/更新情報: 本書は,OpenVMS Alpha V7.3 および OpenVMS VAX V7.3 の『OpenVMS Cluster システム』の改訂版です。
ソフトウェア・バージョン: OpenVMS Alpha V7.3-1

OpenVMS VAX V7.3



コンパックコンピュータ株式会社


© 2002 Compaq Computer K.K.

本書の著作権はコンパックコンピュータ株式会社が保有しており,本書中の解説および図,表はコンパックの文書による許可なしに,その全体または一部を,いかなる場合にも再版あるいは複製することを禁じます。

また,本書に記載されている事項は,予告なく変更されることがありますので,あらかじめご承知おきください。万一,本書の記述に誤りがあった場合でも,コンパックは一切その責任を負いかねます。

本書で解説するソフトウェア ( 対象ソフトウェア ) は,所定のライセンス契約が締結された場合に限り,その使用あるいは複製が許可されます。

コンパックは,コンパックまたはコンパックの指定する会社から納入された機器以外の機器で対象ソフトウェアを使用した場合,その性能あるいは信頼性について一切責任を負いかねます。

以下は,米国 Compaq Computer Corporation の商標です。

Compaq,Compaq ロゴ,Alpha,OpenVMS,Tru64,VAX,VMS および DIGITAL ロゴは,米国 Compaq Information Technologies Group, L.P. の商標です。

以下は,他社の商標です。

Motif,OSF/1,UNIX は,米国およびその他の国の The Open Group の商標です。

その他のすべての商標および登録商標は,それぞれの所有者が保有しています。

原典:OpenVMS Cluster Systems
© 2002 Compaq Computer Corporation

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まえがき

はじめに

本書では,OpenVMS Cluster システムのシステム管理について説明します。 OpenVMS Cluster ソフトウェアには, VAX コンピュータ用と Alpha コンピュータ用があり,ソフトウェアの購入,ライセンスの登録,インストールは, VAX と Alpha で別々に行わなければなりませんが, 2 つのアーキテクチャの違いは主に,使用するハードウェアにあります。特に,OpenVMS Cluster における VAX コンピュータと Alpha コンピュータのシステム管理は同じです。例外については,そのつど示しています。

本書の対象読者

本書は,OpenVMS Cluster システムの設定と管理を行う責任者を対象にしています。クラスタ管理の手引きとして本書を使用する場合は,『OpenVMS システム管理者マニュアル』で説明しているシステム管理の概念と手順を十分理解しておく必要があります。

本書の構成

本書は,10 の章と 7 つの付録で構成されています。

第 1 章 では, OpenVMS Cluster システムの概要を示します。

第 2 章 では,OpenVMS Cluster のメンバシップと整合性を維持管理するのに不可欠なソフトウェアの概念について説明します。

第 3 章 では,さまざまな OpenVMS Cluster 構成と相互接続 (インターコネクト) の方法について説明します。

第 4 章 では,OpenVMS Cluster システムの設定方法とシステム・ファイルの調整方法について説明します。

第 5 章 では,OpenVMS Cluster システムのノード間でリソースを共用できる環境を設定する方法について説明します。

第 6 章 では,ディスクとテープの管理の概念および手順について説明し,データを使用できなくなる状況が発生するのを予防するために,Volume Shadowing for OpenVMS を使用する方法について説明します。

第 7 章 では,キュー管理の概念と手順について説明します。

第 8 章 では,必要な準備が完了した後, OpenVMS Cluster システムを構築する方法と,クラスタを再構成および保守する方法について説明します。

第 9 章 では,大規模な OpenVMS Cluster システムの構成と構築,サテライト・ノードのブート,異なるアーキテクチャ間でのブートのガイドラインを示します。

第 10 章 では, OpenVMS Cluster システムの日常の保守について説明します。

付録 A では, OpenVMS Cluster システムのパラメータの一覧とその定義を示します。

付録 B では,クラスタ共通利用者登録ファイルの作成のガイドラインについて説明します。

付録 C では,トラブルが発生したときの対処法をまとめます。

付録 D では, LAN を制御するための 3 つのサンプル・プログラムを示し,ローカル・エリア OpenVMS Cluster ネットワーク障害分析プログラムの使い方について説明します。

付録 E では,ローカル・エリア OpenVMS Cluster サンプル・プログラムで使用されているサブルーチン・パッケージについて説明します。

付録 F では, NISCA トランスポート・プロトコルに関連するネットワークの問題への対処法について説明します。

付録 G では,作業負荷の分散とネットワーク・トポロジが OpenVMS Cluster システムのパフォーマンスにどのような影響を与えるかについて説明し, PEDRIVER による転送チャネル選択について説明します。

関連資料

本書は,1 巻で完結するリファレンス・マニュアルではありません。ユーティリティおよびコマンドの詳細については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』,『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』,および『OpenVMS DCL ディクショナリ』で説明されています。

本書で説明されているトピックについての補足情報は,下記のドキュメントを参照してください。

OpenVMS の製品およびサービスについての付加情報は,下記の弊社 Web サイトをご覧ください。

http://www.openvms.compaq.com/

または

http://openvms.compaq.co.jp/

本書で使用する表記法

本書では次の表記法を使用しています。

表記法 意味
Ctrl/ x Ctrl/ x という表記は,Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。
PF1 x PF1 x という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。
[Return] 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。

HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。

... 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。

  • 文中のオプションの引数が省略されている。

  • 前出の 1 つまたは複数の項目を繰り返すことができる。

  • パラメータや値などの情報をさらに入力できる。

.
.
.
垂直方向の反復記号は,コードの例やコマンド形式の中の項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要ではないからです。
( ) コマンドの形式の説明において,括弧は,複数のオプションを選択した場合に,選択したオプションを括弧で囲まなければならないことを示しています。
[ ] コマンドの形式の説明において,大括弧で囲まれた要素は任意のオプションです。オプションをすべて選択しても,いずれか1つを選択しても,あるいは1つも選択しなくても構いません。ただし,OpenVMS ファイル指定のディレクトリ名の構文や,割り当て文の部分文字列指定の構文の中では,大括弧に囲まれた要素は省略できません。
[|] コマンド形式の説明では,括弧内の要素を分けている垂直棒線はオプションを 1 つまたは複数選択するか,または何も選択しないことを意味します。
{ } コマンドの形式の説明において,中括弧で囲まれた要素は必須オプションです。いずれか 1 つのオプションを指定しなければなりません。
太字 太字のテキストは,新しい用語,引数,属性,要件を示しています。また、変数を示す場合にも使用されています。
italic text イタリック体のテキストは,重要な情報を示します。また,システム・メッセージ (たとえば内部エラー number),コマンド・ライン(たとえば /PRODUCER= name),コマンド・パラメータ(たとえば device-name) などの変数を示す場合にも使用されます。
UPPERCASE TEXT 英大文字のテキストは,コマンド,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。
Monospace type モノスペース・タイプの文字は,コード例および会話型の画面表示を示します。

C プログラミング言語では,テキスト中のモノスペース・タイプの文字は,キーワード,別々にコンパイルされた外部関数およびファイルの名前,構文の要約,または例に示される変数または識別子への参照などを示します。

-- コマンド形式の記述の最後,コマンド・ライン,コード・ラインにおいて,ハイフンは,要求に対する引数がその後の行に続くことを示します。
数字 特に明記しない限り,本文中の数字はすべて10 進数です。 10 進数以外 (2 進数,8 進数,16 進数) は,その旨を明記してあります。


第 1 章
OpenVMS Cluster システムの管理の概要

DEC (Digital Equipment Corporation) 社は,1983 年に開発した VAXcluster システムによって, "クラスタ"・テクノロジを開拓しました。この VAXcluster システムは,複数の標準 VAX コンピューティング・システムと VMS オペレーティング・システムを使用して構築されました。初期の VAXcluster システムでは,集中化されたシステムのパワーと管理機能に加えて,物理的に分散された多くのコンピューティング・システムを利用できるという柔軟性が提供されました。

それから十数年が経過し,この技術は OpenVMS Cluster システムに進化しました。 OpenVMS Alpha および OpenVMS VAX のオペレーティング・システムとハードウェアがサポートされ,多くの追加機能やオプションもサポートされます。弊社が 1998 年に DEC 社を取得したとき,最新のクラスタ技術も取得しました。弊社は継続して OpenVMS Cluster 機能を拡張し,展開していきます。

1.1 概要

OpenVMS Cluster システムは, OpenVMS ソフトウェア,Alpha および VAX コンピュータ,ストレージ・デバイスが緊密に統合されたシステムであり, 1 つのシステムであるかのように動作します。 OpenVMS Cluster は 1 つの仮想システムとして動作しますが,実際には多くの分散するシステムで構成されています。 Alpha コンピュータと VAX コンピュータは OpenVMS Cluster システムのメンバとして,1 つのセキュリティ/管理ドメイン下で,処理リソース,データ・ストレージ,キューを共用することができ,しかもブートやシャットダウンは個別に行うことができます。

OpenVMS Cluster システム内のコンピュータ間の距離は,使用するインターコネクトに応じて異なります。たとえば,コンピュータ室にまとめて設置することができる場合,ビルの 2 つのフロアにまたがる場合,大学のキャンパスの複数の建物にまたがる場合,あるいは数百キロ離れた 2 つの異なる場所に設置することも可能です。

2 つの異なる場所に設置されているコンピュータで構成される OpenVMS Cluster システムのことをマルチサイト OpenVMS Cluster システムと呼びます。マルチサイト OpenVMS Cluster は,ディザスタ・トレラント OpenVMS Cluster システムの基礎になります。マルチサイト・クラスタの詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS は, OpenVMS ディザスタ・トレラント・クラスタを構成および管理するための弊社の保守用システム管理/ソフトウェア・パッケージです。 Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS の詳細については,弊社のサービス担当者にお問い合わせください。

また,次を参照することもできます。

http://www.compaq.co.uk/globalservices/continuity/dis_clus.stm

1.1.1 用途

OpenVMS Cluster システムはトランザクション処理システム,ネットワーク・クライアント/サーバ・アプリケーション用のサーバ,データ共用アプリケーションなど,高可用性アプリケーションを開発するための理想的な環境です。

1.1.2 利点

OpenVMS Cluster システムのコンピュータは,相互に連携して,協調動作する分散オペレーティング・システムを形成し,以下の表に示すように多くの利点をもたらします。

利点 説明
リソースの共用 OpenVMS Cluster ソフトウェアは,すべてのクラスタ・メンバ間で,自動的にバッチ・キューとプリント・キュー,ストレージ・デバイス,その他のリソースの同期をとり,負荷のバランス調整を行う。
柔軟性 共通のリソースを利用するために,アプリケーション・プログラマはアプリケーション・コードを変更する必要がなく,ユーザも OpenVMS Cluster 環境に関する知識を必要としない。
高可用性 システム設計者は冗長なハードウェア・コンポーネントを構成することで,1 ヵ所で障害が発生してもシステム全体がダウンすることのない,可用性の高いシステムを構築できる。
ノンストップ処理 OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムは,構成が変更されても,容易に動的な調整が可能である。
拡張性 ビジネス・ニーズの拡大や変化に伴なって,企業はコンピューティング・リソースとストレージ・リソースを動的に拡張することができ,そのためにシステムをシャットダウンしたり,実行中のアプリケーションを停止する必要がない。
パフォーマンス OpenVMS Cluster システムは高いパフォーマンスを提供できる。
管理機能 複数の OpenVMS システムで同じシステム管理操作を繰り返す必要がなく,管理作業は 1 つ以上のノードに対して同時に実行できる。
セキュリティ OpenVMS Cluster のコンピュータは,クラスタ内のすべてのノードからアクセスできる 1 つのセキュリティ・データベースを共用する。
負荷の調整 各メンバの現在の負荷をもとに,クラスタ・メンバ間で作業負荷を分散できる。

1.2 ハードウェア・コンポーネント

OpenVMS Cluster システムは,以下の 3 つのグループのハードウェア・コンポーネントで構成されます。

関連項目: OpenVMS Cluster の構成のガイドラインの詳細については, OpenVMS Cluster Software Software Product Description (SPD) および『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。


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