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Windows NT Registry は,ハードウェアとソフトウェア (オペレーティング・システムとアプリケーションの両方) に関する構成情報を格納した,システム全体で有効な 1 つの階層型データベースです。Windows NT Registry は,Windows 3.x の.iniファイルに代わるものであり,アプリケーションと構成に関する情報を 1 つの場所に格納できます。
OpenVMS と Windows NT が協調動作できるようにするために,Compaq は OpenVMS でもレジストリを提供しました。Windows NT Registry と同様に,OpenVMS Registry は OpenVMS Registry データベースと OpenVMS Registry サーバの 2 つのコンポーネントで構成されています。OpenVMS Registry データベースはシステム単位またはクラスタ単位の階層型データベースであり,構成情報が格納されます。この情報はキーと関連値という形式で,データベース構造として格納されます。OpenVMS Registry サーバは,OpenVMS Registry データベースの作成とバックアップ,キーと値の作成,表示,変更,削除など,OpenVMS Registry のすべての操作を制御します。
OpenVMS Registry にはインタフェース (COM API とシステム・サービス) が含まれていて,アプリケーションは OpenVMS Registry サーバを制御し,OpenVMS Registry データベースに読み書きできます。また,OpenVMS Registry にはサーバ管理ユーティリティも含まれているので,システム管理者は OpenVMS の DCL コマンド・ラインから OpenVMS Registry 情報を表示し,更新できます。
OpenVMS Registry は Windows NT Registry と互換性があります。RegEdt32などの NT クライアント・アプリケーションは,OpenVMS Registry に接続して,これを編集することができます。
7.1.1 参考文献
Windows NT Registry および関連項目の詳細については,次の参考文献を参照してください。
OpenVMS Registry は Windows NT Registry と同様に,複数の分岐を含む階層型データベースです。
ここでは,OpenVMS Registry データベースの要素と操作について説明します。
7.2.1 キー,サブキー,値
キーとは,OpenVMS Registry データベースの基本的な要素の 1 つです。キーには,コンピュータ,システム,ユーザ固有の情報が格納されます。キーは OpenVMS Registry データベースのヘッダ・フィールドです。キーは階層構造 (ツリー構造) に並べることができます。
OpenVMS Registry には,次の 2 つのメイン (ルート) キーがあります。
HKEY_CLASSES_ROOTというキーは, HKEY_LOCAL_MACHINEの CLASSESサブキーを指し示します。これらのルート・キーについては,第 7.3 節 で詳しく説明します。
サブキー とは,別のキーの子です。各キーには 0 個以上のサブキーを含むことができます。サブキーを使用すると,関連するキーを階層構造またはツリー構造の別のキーの下にまとめることができます。
値エントリ (または 値) とは,名前付きのデータ要素です。これはレジストリ・データベース内のレコード・フィールドです。各キーには 0 個以上の値が関連付けられます。値には値名,値タイプ,一連のフラグ,関連データ (値のタイプによって定義されるもの) があります。OpenVMS Registry では次の値タイプをサポートしています。
図 7-1 はキー,サブキー,値の関係を示しています。
図 7-1 キー,サブキー,値の関係
Key1=Value1 Key2 | +-Subkey1=Value1 | +-Subkey2=Value1,Value2 : . |
OpenVMS Registry のキーと値は,不揮発性または 揮発性として定義できます。不揮発性キーは OpenVMS Registry ファイルに保存されます。揮発性キーはテンポラリ・ファイルにキャッシュされます。
Windows NT システムでは,揮発性キーと値はシステムの再起動時に削除されます。
OpenVMS では,揮発性キーと値は,クラスタ内のすべてのノードがリブートされるときに自動的に削除されます。OpenVMS では,サーバ・フェールオーバのときに揮発性キーが削除されないようになっていますが,クラスタのリブート時には削除されます (スタンドアロン・システムでは,揮発性キーと値はシステムのリブート時に削除されます)。
7.2.1.2 キーのライトスルーとライトバック
キーを作成するときに,OpenVMS Registry がキーの変更情報をいつ書き込まなければならないかを指定できます。書き込みオプションは次のとおりです。
Cache Action属性を使用すると,キーの書き込み属性を指定できます。キーの作成時にキャッシュ・アクション属性を指定しなかった場合は,キーは親の属性を継承します。
SYS$REGISTRYインタフェースを使用する場合は,キャッシュ・アクション属性の値とは無関係に,直ちに書き込みが行われるように (ライトスルー),処理中の要求に対してREG$M_NOW機能コード修飾子を使用できます。
7.2.1.3 他のキーと値へのキーのリンク
OpenVMS Registry キーは他の OpenVMS Registry キーにリンクすることができ,同じデータに対して複数のパスを提供できます。同様に,OpenVMS Registry の値は他の OpenVMS Registry 値にリンクできます。これらのキーと値のリンク,つまりシンボリック・リンクは,ファイルのリンクによく似ています。シンボリック・リンクは名前の参照です。
たとえば,Key AをKey Bにリンクできます。Key Aとその値を検索すると,Key Bの値が返されます。
また,シンボリック・リンクを連鎖させることもできます。つまり,Key AがKey Bを指し,Key BがKey Cを指すように設定できます。この結果,Key AはKey Cも指すようになります。リンクを指定するには,$REGISTRY システム・サービスを使用するか,OpenVMS Registry サーバ管理コマンド・ライン・インタフェースを使用します。
7.2.1.4 OpenVMS Registry キーと値の名前の作成規則
キーと値の名前には次の規則が適用されます。
Class属性を使用すると,各キーに追加情報を格納できます。たとえば,Class text stringを指定すると,指定したキーで使用できるデータ・タイプを格納できます。
7.2.3 ハイブ
ハイブとは,OpenVMS Registry に格納されている関連キー,サブキー,値の集まりです。
Windows NT システムでは,ハイブは関連するLOGファイルと共に,
%SystemRoot%\system32\configディレクトリの 1 つのファイルに格納されます。Windows NT では,ユーザはディスクの指定されたファイルにハイブを保存することができ,これらのファイルを後でロードすることができます。
OpenVMS システムでは,OpenVMS Registry データベース全体が
REGISTRY$LOCAL_MACHINE.REGとREGISTRY$USERS.REGという 2 つのハイブで構成されています。OpenVMS では,ハイブのロードとアンロードはサポートされません。
7.3 OpenVMS Registry の構造
Windows NT アプリケーションが OpenVMS Registry データベースとインタフェースをとることができるようにするために,OpenVMS Registry データベースには Windows NT Registry であらかじめ定義されているキーとサブキーの一部が含まれています。
OpenVMS Registry には次の定義済み標準キーが含まれています。
Windows NT システムでは,ブート時に収集した情報からこのキーの揮発性サブキーが作成されます。
OpenVMS システムでは,このキーにはデフォルトでサブキーや値は含まれていません。
Windows NT システムでは,これらのキーにはローカル・コンピュータのすべてのセキュリティ情報が格納されます。これらのキーの情報はシステムが所有し,必要に応じて保護されます。
OpenVMS システムでは,デフォルトでこのキーにはサブキーや値は含まれていません。
Windows NT システムでは,このキーにはローカル・システムのソフトウェアに関する情報が格納されます。格納される情報はユーザ単位の構成とは無関係な情報です。
OpenVMS システムでは,このキーには次の定義済みサブキーが含まれます。
Windows NT システムでは,このキーには装置とサービスに関する情報が格納されます。
OpenVMS システムでは,このキーには次の定義済みサブキーが含まれます。
Windows NT システムでは,このキーには Control,Enum,Hardware Profiles,Services に関する情報が格納されます。
OpenVMS システムでは,このキーは Advanced Server for OpenVMS で使用するために予約されています。
このサブキーは Windows NT システムにはありません。OpenVMS システムでは,このキーにはサブキーと値という形式で,OpenVMS Registry サーバの構成パラメータが格納されます。定義済みサブキーは次のとおりです。
OpenVMS Registry データベースを作成する時点では,このサブキーは空です。システム管理者は,OpenVMS Registry ファイルの名前を持つ値を作成することで,各 OpenVMS Registry データベース・ファイルに対してクォータを割り当てることができます。ファイルに対して値が指定されていないときは,OpenVMS Registry サーバは Default File Quota 設定のデフォルト値を使用します。
たとえば,システム管理者はREG$CPを使用して,1 MB のクォータを OpenVMS RegistryREGISTRY$LOCAL_MACHINE.REGファイルに割り当てることができます。次のコマンドを使用します。
$ MCR REG$CP REG> CREATE VALUE/NAME=REGISTRY$LOCAL_MACHINE/TYPE=DWORD/ - _REG> DATA=%D1000000 "hkey_local_machine\system\registry\File Quotas" |
$ MCR REG$CP REG> CREATE VALUE/NAME=COSMOS/TYPE=DWORD/DATA=%D100 - _REG> "hkey_local_machine\system\registry\Priori ty" |
7.4 OpenVMS Registry への読み込みと書き込み
OpenVMS Registry に対する読み込みと書き込みは,次の方法で行います。
OpenVMS Registry には,OpenVMS Registry サーバへのインタフェースを提供する 2 つの OpenVMS システム・サービスがあります。OpenVMS Registry システム・サービスを使用すると,OpenVMS Registry データベース内のキー,サブキー,値の照会,更新,作成を行うことができます。
$REGISTRY システム・サービスと $REGISTRYW システム・サービスの詳細については,第 10 章 を参照してください。
7.4.2 REG$CP サーバ管理ユーティリティ
REG$CPサーバ管理ユーティリティを使用すると,OpenVMS DCL プロンプトから OpenVMS Registry 情報を表示し,更新できます。また,このユーティリティでは,必要なシステム特権があれば,OpenVMS Registry データベース全体をファイルにバックアップしたり,ファイルから復元することができます。
REG$CPサーバ管理ユーティリティの詳細については,第 9 章 を参照してください。
7.5 OpenVMS Registry のセキュリティ
OpenVMS Registry では,OpenVMS と Windows NT の両方のセキュリティ・モデルが実装されています。
OpenVMS Registry データベースにアクセスするには,呼び出し側のプロセスは実行する操作にとって適切な OpenVMS Registry ライト識別子を持っているか (たとえば,読み込み操作の場合はREG$LOOKUP,書き込み操作の場合はREG$UPDATE,統計操作の場合はREG$PERFORMANCE),呼び出し側プロセスが SYSPRV 特権を持っていなければなりません。
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