OpenVMS Alpha
オペレーティング・システム
コネクティビティ開発者ガイド


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8.6 クラスタ内での OpenVMS Registry のフェールオーバ

クラスタ内で複数の OpenVMS Registry サーバを稼動すれば, OpenVMS Registry の可用性と信頼性を向上できます。ただし,各ノードで稼動できるのは 1 つだけです。 OpenVMS Registry サーバをいくつ稼動する場合でも, OpenVMS Registry データベースは 1 つだけ存在します。

クラスタ内で複数の OpenVMS Registry サーバを稼動する場合は, OpenVMS Registry サーバ・プロセスが 1 つだけアクティブになり, OpenVMS Registry データベースに書き込みを行います。他の OpenVMS Registry サーバ・プロセスはスタンバイ状態になります。

デフォルト設定では,クラスタ内で最初にアクティブになる OpenVMS Registry サーバ・プロセスは,そのプロセスが存在しなくなるか, OpenVMS Registry サーバ・プロセス間の優先順位が変更されるまでアクティブです。

8.6.1 OpenVMS Registry サーバ・プロセスの優先順位の変更

OpenVMS Registry サーバ・プロセスの優先順位は, OpenVMS Registry サーバ・プロセスを実行するクラスタ内の各ノードの優先順位を作成および変更することで変更できます。値が大きくなるほど,優先順位は高くなります。

例 8-1 は,優先順位の割り当てを示しています。ここでは, NODENAME1がクラスタ内でアクティブな OpenVMS Registry サーバ・プロセスになるように,優先順位が割り当てられています。

例 8-1 優先順位の設定

$ mcr reg$cp 
REG> CREATE VALUE HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\REGISTRY\PRIORITY - 
_REG> /NAME=NODENAME1/DATA=15/TYPE=DWORD 
REG> CREATE VALUE HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\REGISTRY\PRIORITY - 
_REG> /NAME=NODENAME2/DATA=10/TYPE=DWORD 
REG> CREATE VALUE HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\REGISTRY\PRIORITY - 
_REG> /NAME=NODENAME3/DATA=5/TYPE=DWORD 

例 8-1NODENAME1がシャットダウンされると, OpenVMS Registry データベースの制御は NODENAME2のサーバ・プロセスに渡されます。

例 8-2 は,システム管理者が NODENAME3の優先順位を 20 に上げる手順を示しています。

例 8-2 優先順位の変更

$ mcr reg$cp 
REG> MODIFY VALUE HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\REGISTRY\PRIORITY - 
_REG> /NAME=NODENAME3/DATA=20/TYPE=DWORD 

例 8-2 では, NODENAME1の OpenVMS Registry サーバ・プロセスはスタンバイ・モードになり, NODENAME3の OpenVMS Registry サーバ・プロセスがアクティブになります。

8.7 Windows NT システムからの OpenVMS Registry への接続

Windows NT システムから OpenVMS Registry に接続するには,次の操作を行わなければなりません。

Windows システムから OpenVMS Registry データベースにアクセスする場合は,Windows NT システムで与えられているすべての権限が与えられます。たとえば,Windows NT システムに Administrator としてログオンしている場合は, OpenVMS Registry のすべてのキーと値の読み込みと書き込みが可能です。 OpenVMS Registry キーへのアクセスは,Windows NT ユーザ・プロファイル ( usernameGroupメンバシップ) をもとに行われます。 Advanced Server for OpenVMS を介して OpenVMS Registry に接続します。キー,値,セキュリティ設定の表示と変更には, Windows Regedt32アプリケーションを使用します。

警告

OpenVMS Registry データベースのキーと値を変更する場合は,十分注意してください。 OpenVMS Registry データベースが破損すると,OpenVMS システムまたはクラスタのすべてのアプリケーションとユーザに影響します。

8.8 OpenVMS Registry クォータ

クォータは, OpenVMS Registry データベースのサイズを制限します。すべての OpenVMS Registry ファイルのルート・キー・データ・ファイルにクォータが割り当てられます。デフォルト設定では,これらのルート・キーは USERSキー ( REGISTRY$USERS.REG) と LOCAL_MACHINEキー ( REGISTRY$LOCAL_MACHINE.REG) です。

クォータはファイルに格納される情報のサイズを制限しますが,他のファイルに格納される情報のサイズはクォータに含まれません。これらのファイルがサブツリーの一部の場合でも,そのファイルのサイズは含まれません。

デフォルト・クォータと各ファイルのクォータは, OpenVMS Registry の
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Registryキーに格納されます。これらのキーの詳細については, 第 7.3 節 を参照してください。

8.9 OpenVMS Registry のセキュリティ

ユーザは次の方法で OpenVMS Registry に直接にアクセス (読み込みと変更) できます。

各ユーザが必要とするシステム特権とライト識別子の詳細については, 第 7.5.1 項 を参照してください。必要なシステム特権とライト識別子を与える方法については, 第 7.5.1.1 項 を参照してください。

キーのセキュリティ属性は Windows NT システムからだけ変更できます。OpenVMS システムからキーのセキュリティ属性を変更することはできません。OpenVMS では, Windows NT セキュリティ属性の作成や管理は行われません。

8.10 OpenVMS Registry データベースのバックアップと復元

OpenVMS Registry にはサーバ管理ユーティリティが含まれており,このユーティリティを使用すると,必要なシステム特権が与えられている場合,OpenVMS DCL プロンプトから OpenVMS Registry データベース全体をファイルにバックアップしたり,ファイルから復元することができます。

OpenVMS Registry データベースのバックアップと復元の詳細については, 第 9.2 節 と, REG$CPサーバ管理ユーティリティの CREATE SNAPSHOT コマンドと EXPORT コマンドを参照してください。

8.11 OpenVMS Alpha 複合バージョン・クラスタでのOpenVMS Registry の使用

OpenVMS Registry サーバは OpenVMS Alpha 複合バージョン・クラスタ内で実行できます。つまり, OpenVMS Registry は, OpenVMS バージョン 7.2-1 以外の OpenVMS バージョンを含むクラスタ内で実行できます。ただし, OpenVMS Registry サーバは, OpenVMS バージョン 7.2-1 を稼動しているノードで実行しなければなりません。

8.12 国際化と Unicode のサポート

Windows NT と統合するために, OpenVMS Registry は Unicode に準拠しています。Unicode の詳細については,『OpenVMS バージョン 7.2 新機能説明書』を参照してください。


第 9 章
OpenVMS Registry サーバの管理

9.1 コマンド・ラインからの OpenVMS Registry サーバの管理

OpenVMS Registry にはサーバ管理ユーティリティがあり, OpenVMS DCL プロンプトから OpenVMS Registry 情報の更新と表示を行うことができます。また,必要なシステム特権があれば,このユーティリティを使用して, OpenVMS Registry データベース全体をファイルにバックアップしたり,ファイルから復元することができます。

OpenVMS Registry データベースのバックアップと復元の詳細については, 第 9.2 節 と,この章のコマンド参照の節の CREATE SNAPSHOT,EXPORT,IMPORT コマンドを参照してください。

OpenVMS Registry サーバ管理ユーティリティを起動するには,次のいずれかのコマンドを入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:REG$CP 

または


$ MCR REG$CP 

注意

OpenVMS Registry データベースにアクセスするには,クラスタまたはスタンドアロン・システムで OpenVMS Registry サーバをあらかじめ稼動しておかなければなりません。

表 9-1 は, OpenVMS Registry サーバ管理ユーティリティのコマンドを示しています。

表 9-1 OpenVMS Registry サーバ管理ユーティリティのコマンド
コマンド 識別子 動作
CREATE DATABASE SYSPRV 新しい OpenVMS Registry データベース・ファイルを作成する。
CREATE KEY REG$UPDATE 1 つ以上のキーを OpenVMS Registry データベースに作成する。
CREATE SNAPSHOT SYSPRV OpenVMS Registry データベース・ファイルの即時バックアップを作成する。
CREATE VALUE REG$UPDATE キーのデータ・コンポーネントを指定する。
DELETE KEY REG$UPDATE OpenVMS Registry データベースから 1 つ以上のキーを削除する。
DELETE VALUE REG$UPDATE 指定されたキーから 1 つ以上の値を削除する。
EXPORT REG$LOOKUP OpenVMS Registry をテキスト形式でエクスポートする。
IMPORT REG$UPDATE レジストリ・データベースのテキスト形式バージョンを OpenVMS Registry 形式にインポートする。
LIST KEY REG$LOOKUP 指定されたキーのすべてのサブキー情報を表示する。
LIST VALUE REG$LOOKUP 指定されたキーのすべての値を表示する。
MODIFY KEY REG$UPDATE 指定されたキーの情報を変更する。
MODIFY VALUE REG$UPDATE 指定された値の情報を変更する。
MODIFY TREE REG$UPDATE 指定されたキーとそのサブキーの情報を変更する。
SEARCH KEY REG$LOOKUP 指定されたキーと一致するすべてのキーのパス名を表示する。
SEARCH VALUE REG$LOOKUP 指定された値名と一致するすべてのキーのパス名を表示する。
SHOW COUNTERS REG$PERFORMANCE カウンタ情報を表示する。
SHOW FILE REG$PERFORMANCE OpenVMS Registry データベース・ファイルの統計情報を表示する。
SHOW INTERNAL REG$PERFORMANCE 内部値 (共用ライブリで使用) を表示する。
START MONITOR REG$PERFORMANCE 監視機能を有効にする。
STOP MONITOR REG$PERFORMANCE 監視機能を無効にする。
ZERO COUNTERS REG$PERFORMANCE 監視カウンタをリセットする。

注意

SYSPRV 特権が与えられているユーザは, 表 9-1 に示したすべてのコマンドを実行できます。ユーザに SYSPRV 特権が与えられていない場合のみ, OpenVMS Registry 識別子を指定しなければなりません。

ユーザに REG$UPDATE識別子を与えると,ユーザは 表 9-1 に示したコマンドの他に,次のコマンドも実行できるようになります。

LIST KEY
LIST VALUE
SEARCH KEY
SEARCH VALUE

9.2 OpenVMS Registry データベースのバックアップと復元

REG$CPサーバ管理ユーティリティには, OpenVMS Registry データベースのバックアップと復元を行うための 2 つのコマンドがあります。

9.2.1 OpenVMS Registry データベースのスナップショットの作成

OpenVMS Registry データベースのスナップショットを作成するには,次の操作を行います。

  1. REGISTRY_SERVERプロセスがクラスタ内で動作していることを確認します。

  2. SYSPRV 特権が与えられているアカウントから次のコマンドを入力します。


    $ MCR REG$CP
    REG> CREATE SNAPSHOT
    


    この操作で作成されるスナップショットは,次の 2 つのファイルで構成されます。これらのファイルは指定したディレクトリに格納されます。


    REGISTRY$LOCAL_MACHINE.RSS 
    REGISTRY$USERS.RSS 
    

9.2.2 OpenVMS Registry データベースのスナップショットの復元

OpenVMS Registry データベースのスナップショットを復元するには,次の操作を行います。

  1. クラスタ内のすべてのノードで REGISTRY_SERVERプロセスをシャットダウンします ( OpenVMS Registry のシャットダウンの詳細については, 第 8.4 節 を参照してください )。

  2. OpenVMS Registry スナップショット・ファイルが SYS$REGISTRYディレクトリにあることを確認します。
    OpenVMS Registry スナップショット・ファイルが SYS$REGISTRYディレクトリにない場合は, OpenVMS Registry スナップショット・ファイルを SYS$REGISTRYディレクトリにコピーします。

  3. 次のように, OpenVMS Registry スナップショット・ファイルの名前を変更します。


    $ RENAME REGISTRY$LOCAL_MACHINE.RSS REGISTRY$LOCAL_MACHINE.REG 
    $ RENAME REGISTRY$USERS.RSS REGISTRY$USERS.REG 
    

  4. REGISTRY_SERVERプロセスを再起動します ( OpenVMS Registry を手動で起動する方法については, 第 8.3.1 項 を参照してください )。

重要

前回スナップショットを作成してからこの復元処理を実行するまでの間に, OpenVMS Registry データベースに書き込まれた情報は失われます。

9.3 OpenVMS Registry サーバ管理ユーティリティの構文

この後のコマンドの説明では, OpenVMS Registry の各コマンドをアルファベット順に説明します。

注意

ここで説明するどのコマンドでも, key-name パラメータは,キーの完全なパスを指定する文字列であり,次のいずれかのエントリ・ポイントから始まります。
HKEY_LOCAL_MACHINE
HKEY_USERS
HKEY_CLASSES_ROOT

また, REG$_HKEY_LOCAL_MACHINEREG$_HKEY_USERSREG$_HKEY_CLASSES_ROOTという文字列も指定できます。

どのサーバ管理コマンドでも,リンクは追従されていません (リンクの詳細については, 第 7.2.1.3 項 を参照してください)。

キーと値の名前で大文字と小文字を区別するには,キーと値を引用符で囲みます (たとえば, "value")。


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