日本語 Compaq OpenVMS
日本語入力プロセス 利用者の手引き


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第 5 章
FIP/SUB 概要

FIP/SUB は,日本語 Compaq OpenVMS V6.1から新たに追加された,サブプロセスを利用して日本語入力処理を行うユーティリティです。

5.1 日本語入力機能

FIP/SUBは日本語入力の機能を持たないプログラムに対し,手軽に日本語入力の機能を提供する,サブプロセス型のユーティリティです。FIP/SUBを使用することにより,プログラムを修正することなく日本語文字列の入力が可能となります。

通常,端末に対する入出力は, 図 5-1 のように端末ドライバを通して行われています。

図 5-1 端末での入出力機構


FIP/SUBを使用する場合は,端末ドライバとユーザ・プロセスの間にFIP/SUB プロセスと疑似端末ドライバが加わります。ユーザ・プロセスはFIP/SUBのサブプロセスとして作成され,ユーザの実行するコマンド/プログラムはすべて,このサブプロセスの中で実行されます。端末に対する入出力はFIP/SUBと疑似端末ドライバを通して行われることになります。 図 5-2 はこの関係の概略を示しています。

図 5-2 FIP/SUB起動時の端末での入出力機構


ユーザ・プロセスからは,疑似端末ドライバが実際の端末ドライバと同じように見えており,疑似端末ドライバであることを意識することなく使用可能です。

変換開始キーが押されるとFIP/SUBは変換入力を行い,入力された日本語文字列を疑似端末ドライバを通してユーザ・プロセスに送ります。ユーザ・プロセスでは,漢字端末から直接日本語文字列が送られたようにみえることになります。

変換入力を行った後は,FIP/SUBを使用していないときと同じように処理されるため,日本語をサポートしていないプログラムを使用する場合,2バイト文字を削除したり,カーソルキーによる移動を行うときに,キーを2回ずつ押す必要があります。

5.2 漢字コード変換フィルタ機能

FIP/SUBでは,DEC漢字とシフトJISとの漢字コード変換フィルタ機能を提供します。

5.2.1 シフトJISホストのサポート

DEC漢字端末から,シフトJISを使用するアプリケーションの実行,または,シフトJISを使用するパソコン通信等への接続が可能です。

図 5-3 シフトJISホストのサポート


5.2.2 シフトJIS端末のサポート

DEC漢字コードを使用しているアプリケーションを変更することなく,シフトJIS端末からDEC漢字コードを使用しているアプリケーションを使用できます。

ただし,FIP/SUBではコード変換を行うだけなので,シフトJIS端末でサポートしていない <ESC> シーケンスを出力するようなアプリケーションは,使用できません。

図 5-4 シフトJIS端末のサポート



第 6 章
FIP/SUBの起動と終了

この章では,FIP/SUBの起動と終了方法,コマンド修飾子について説明します。

FIP/SUBを起動するには次のようにDCLコマンドを入力してください。


    $ INPUT START/SUBPROCESS 

終了する場合は,サブプロセスを終了させるためのLOGOUTコマンドを入力します。


    $ LOGOUT 

6.1 形式

FIP/SUB の形式は次のようになります。


$ INPUT START/SUBPROCESS [コマンド文字列]

6.2 コマンド・パラメータ

コマンド文字列

サブプロセス中で実行するコマンド文字列を指定します。これを指定した場合は最初にこのコマンド文字列を実行し,その後,次のコマンドの入力待ちになります。または,最後に LOGOUT コマンドを実行するコマンド・ファイルを作成し,


    $ INPUT START/SUBPROCESS @ファイル名 

と入力することにより,コマンド・ファイルを実行後,自動的にFIP/SUBを終了させることができます。

コマンド文字列を指定しなかった場合には,コマンド入力待ちの状態になります。

6.3 コマンド修飾子

この節では,FIP/SUB のコマンド修飾子について説明します。 表 6-1 にコマンド修飾子の一覧を示します。

表 6-1 コマンド修飾子
コマンド修飾子 省略時の値
/CLI=CLI名  
/CODE=(option[,...])  
/CONVERSION_KEY=(変換開始キー [,...]) /CONVERSION_KEY=" ` "
/DICTIONARY=個人辞書 /DICTIONARY="SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHO"
/LINE=変換入力行  
/LOG /LOG
/PROCESS=プロセス名  
/PROFILE=プロファイル名 /PROFILE="IM$DEFAULTS:IM$PROFILE.DAT"
/PROMPT=プロンプト文字列  
/STATUS_LINE /STATUS_LINE (VT282,VT382 使用時)

次に各コマンドについて詳しく説明します。

6.3.1 /CLI=CLI名

サブプロセスで使用する,コマンド・ランゲージ・インタプリタ(CLI) を指定します。

省略時は親プロセスで使用している CLI を使用します。

6.3.2 /CODE=(option[,...])

FIP/SUBで漢字コード変換を行うことを指定します。

以下のオプションを指定できます。

SHIFT_JIS
DEC漢字コードとシフトJISコードとのコード変換を行うことを指定します。
この SHIFT_JIS を単独で指定した場合は,端末側がDEC漢字コード,サブプロセス側がシフトJISコードとなります。
例:  /CODE=SHIFT_JIS
TERMINAL と共に指定した場合は,端末側がシフトJISコード,サブプロセス側が DEC漢字コードとなります。この場合,FIP/SUBによる漢字変換入力は使用できません。
例:  /CODE=(SHIFT_JIS,TERMINAL)

TERMINAL
SHIFT_JIS と共に指定し,端末側がシフトJISコード,サブプロセス側が DEC漢字コードであることを指定します。

DELETE
指定したコードを DELETE コードに変換することを指定します。
DELETE=BS    BS コードを DELETE コードに変換します。

KANA
半角カタカナを入力した場合に全角ひらがな,またはカタカナに変換することを指定します。
KANA=HIRAGANA  半角カタカナを全角ひらがなに変換します。
KANA=KATAKANA  半角カタカナを全角カタカナに変換します。

6.3.3 /CONVERSION_KEY=(変換開始キー[,...])

変換入力を開始するキーを指定します。変換開始キーには,[Ctrl]キーと共に押して変換入力を開始するキーを,1文字で指定します。また,VT282,VT382の場合には,変換開始キーに [F6][F20] を指定することにより,ファンクション・キーを押して変換入力を開始することができます。変換開始キーは複数指定可能です。ただし,複数指定した場合は,最後のキーのみが実行開始時のメッセージ中に表示されます。

省略時の変換指定キーは" ` "キーで,[Ctrl/]` により変換入力を開始します。

VT282,VT382等の漢字端末で,変換開始キーとして指定可能なキーを 表 6-2 に示します。

表 6-2 変換開始キーとして指定可能なキー
指定可能な変換開始キー [Ctrl]キーと共に押して発生するコントロール・コード(16進)
[A][Z] 01 〜 1A
[@][2][スペース] 00
[¥][|][$][4] 1C
[]][}][%][5] 1D
[ ̄][`][^][6] 1E
[/][?][&][7] 1F
[8] 7F (DEL コード)

6.3.4 /DICTIONARY=個人辞書

FIP/SUBでの変換に使用する,個人辞書を指定します。

省略時は SYS$LOGIN:JSYKOJIN.JISHO を使用します。

6.3.5 /LINE=変換入力行

変換入力の作業領域として使用する,画面上の行位置を指定します。

/LINE および /STATUS_LINE のどちらの指定もない場合はデバイス・タイプの値により,VT200_Series,VT300_Series に設定されている場合は,それぞれVT282, VT382とみなして25行目を使用し,それ以外の場合は1行目を使用します。

/STATUS_LINE と同時に指定することはできません。

6.3.6 /LOG

FIP/SUB実行開始および終了時のメッセージの表示を制御します。

/NOLOG を指定するとメッセージを表示しません。省略時は /LOG でメッセージを表示します。

6.3.7 /PROCESS=プロセス名

サブプロセスのプロセス名を指定します。

省略時は次の形式のプロセス名を自動的に割り当てます。

username_n

6.3.8 /PROFILE=プロファイル名

FIP/SUBを起動する際に参照されるプロファイル名を指定します。

省略時は IM$DEFAULTS:IM$PROFILE.DAT を使用します。

6.3.9 /PROMPT=プロンプト文字列

サブプロセスで使用する DCL のプロンプト文字列を指定します。

省略時は親プロセスのプロンプト文字列を使用します。

6.3.10 /STATUS_LINE

VT282,VT382の25行目を,変換入力の作業領域に使用することを指定します。

/LINE および /STATUS_LINE のどちらの指定もない場合は,デバイス・タイプの値によりVT200_Series,VT300_Series に設定されている場合はそれぞれVT282, VT382とみなして25行目を使用し,それ以外の場合は1行目を使用します。

/LINE と同時に指定することはできません。


第 7 章
FIP/SUBのかな漢字変換

この章では,FIP/SUB のかな漢字変換について説明します。

7.1 ユーザ・キー定義ライブラリ(IMLIB)

FIP/SUB はユーザ・キー定義ライブラリ (IMLIB) をサポートしています。 IMLIB はかな漢字変換のキー定義を自分の好みにあわせて変更するためのライブラリです。文字入力におけるかな漢字変換のキー定義を,各ユーザが好みにあわせて変更することができます。ユーザは自分の使い慣れた変換キーでかな漢字変換が行えます。

詳しくは『 ユーザ・キー定義 利用者の手引き 』を参照してください。

7.2 標準のキー定義

IMLIB であらかじめ4種類のキー定義が提供されています。ユーザはこれらのうちの1つを選択して使うこともできますし,ユーザ作成のキー定義も使用できます。

  1. JVMSキー

    日本語 Compaq OpenVMS 標準のキー定義です。JVMSキーを使うと,かな漢字変換キーとOpenVMSの行編集キーとが重ならないという特徴があります。詳しくは,『 日本語ライブラリ 利用者の手引き 』を参照してください。

  2. EVEJキー

    EVEJエディタのキー定義です。日本語EVEのEVEJキーパッド・モードで使われています。 詳しくは『 日本語 EVE ユーザーズ・ガイド 』を参照してください。

  3. LEIAキー

    LEIAエディタのキー定義です。数字キーパッドを使ってかな漢字変換を行います。詳しくは,『 日本語ライブラリ 利用者の手引き 』を参照してください。

  4. TAROキー

    ワープロ・ソフトの一太郎に似たキー定義です。
    (注:一太郎は株式会社ジャストシステムの登録商標です。)

7.3 キー定義の使い方

ここでは,数字キーパッドで変換するためにLEIAキーを指定する方法を紹介します。詳しくは『 ユーザ・キー定義 利用者の手引き 』を参照してください。

数字キーパッドを使用してかな漢字変換を行っていたユーザは, SYS$LIGIN に IM$PROFILE.DAT を用意してください。起動時に IM$PROFILE.DAT が参照され,数字キーパッドでかな漢字変換が行えます。


    $ COPY SYS$LIBRARY:IM$PROFILE_LEIA.DAT SYS$LOGIN:IM$PROFILE.DAT 

また,/PROFILE の修飾子で次のような指定も可能です。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/PROFILE=IM$PROFILE_LEIA 

7.4 半角カタカナの入力

半角カタカナがサポートされているオペレーティング・システムでは,半角カタカナの入力ができます。以下のように論理名 FIP$SUB_DEFAULT_CODE_SET に同値名 SDECKANJI を割り当ててから,FIP/SUBを起動してください。起動後,KANJIGEN/INPUT=KANJI/EDIT=ENABLE に設定してください。


    $ DEFINE FIP$SUB_DEFAULT_CODE_SET SDECKANJI 
    $ INPUT START/SUBPROCESS 
    Creating subprocess... 
    Process INASAWA_1 spawned 
    Enter LOGOUT command to exit. Type F14 to enter Kanji. 
    $ RUN JSY$SYSTEM:KANJIGEN 
    KANJIGEN > SET/EDIT=ENABLE/INPUT=KANJI 
    KANJIGEN > EXIT 
    $ 


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