OpenVMS Alpha
オペレーティング・システム
パーティショニングおよび Galaxy ガイド


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12.4 GCU チャートの使用

GCU には,かなり大量の構成データが格納されます。複雑な Galaxy 構成の場合は,ファイルが非常に大きくなる可能性があります。GCU がシステムに関するすべての情報を表示した後,表示の内容は非常に複雑になります。この問題を回避するために,GCU ではGalaxy チャートを使用します。チャートはさまざまなコンポーネント,装置,相互接続の表示を制御するためのマスクの集合です。コンポーネント階層構造の中で,各チャートには,そのチャートで指定されたコンポーネントだけが表示されます。別のチャートを選択すると,別のコンポーネント・サブセットが表示されます。

デフォルト設定では,GCU は 5 つのあらかじめ構成されたチャートを使用します。

各チャートは,固有のコンポーネント関係を表示するように設計されています。一部の GCU コマンド操作は,特定のチャートの内部でのみ実行できます。たとえば,Physical Structure チャートの内部から CPU を再割り当てすることはできません。Physical Structure チャートには,Galaxy インスタンス・コンポーネントは表示されないので,CPU のドラッグ・アンド・ドロップの宛先がありません。同様に,Logical Structure チャートを表示しているときにはホット・スワップ・インクワイアリ操作を実行することはできません。デバイスのホット・スワップは物理的なタスクなので,論理チャートに表示することはできません。チャートはユーザが変更できるので,GCU ではそのメニューおよびコマンド操作を特定のチャートに制限していません。場合によっては,適切なチャートを選択するのに役立つように,GCU は情報メッセージを表示します。

12.4.1 コンポーネントの識別と表示プロパティ

各コンポーネントには固有の識別子があります。この識別子は,CPU ID などの場合は単純な連続番号であり,I/O アダプタの場合は物理バックプレーン・スロット番号であり,メモリ装置の場合は物理アドレスです。GCU は各種類のコンポーネントに形状と色も割り当てます。可能な場合は,GCU はさらに動作中のシステムから収集した補足情報を利用して,各コンポーネントを区別します。

各コンポーネントの表示プロパティは,Galaxy 構成ルールセット (SYS$MANAGER:GALAXY.GCR) の内部で割り当てられます。ウィンドウの色や表示テキストのスタイルなどの特定の表示プロパティをカスタマイズする場合を除き,このファイルは編集すべきではありません。

各コンポーネントに関して表示されるテキストもカスタマイズできます。各種類のコンポーネントには,その外観,内容,相互関係を示す文がルールセットで割り当てられます。

1 つの役立つ機能として,どのテキストを画面上で各コンポーネント・タイプに表示するかを選択する機能があります。ルールセット内で装置宣言を使用すると,表示テキスト文を構成するテキストとパラメータを指定できます。現在のズーム係数で完全なテキストを表示できない場合は,この表示テキストのサブセットが表示されます。このサブセットをニーモニックと呼びます。ニーモニックは任意のテキストやパラメータを含むように変更できます。

12.4.2 Physical Structure チャート

Physical Structure チャートには,システム内の物理ハードウェアが表示されます。チャートのルート ( 一番上 ) に表示される大きな長方形のコンポーネントは,物理システム・キャビネット自体を表します。通常,ルートの下にモジュール,スロット,アレイ,アダプタなどの物理コンポーネントがあります。表示されるコンポーネントの種類とコンポーネント階層構造の深さは,各ハードウェア・プラットフォームのコンソール・ファームウェアで提供されるサポート・レベルに応じて異なります。Alpha システムのシングル・インスタンス Galaxy を表示している場合は,コンポーネントの小さなサブセットだけが表示されます。

一般に,コンソール・ファームウェアは構成可能な装置レベル,通常は第 1 レベルの I/O アダプタまたはその少し下までのコンポーネントだけを表示します。GCU や Galaxy コンソール・ファームウェアにとってすべての装置をマッピングすることが目標なのではなく,Galaxy 構成管理にとって関心のある装置だけをマッピングすることが必要なのです。

Physical Structure チャートは,システム内のコンポーネント全体を表示するのに役立ちます。しかし,コンポーネントの論理パーティションは表示されません。

Physical Structure チャートでは次の操作が可能です。

12.4.2.1 ハードウェア・ルート

Physical Structure チャートの一番上のコンポーネントをハードウェア・ルート (HW_Root) と呼びます。すべての Galaxy システムにハードウェア・ルートが 1 つずつあります。これは,物理的に設置されているマシンであると考えると便利です。物理装置の場所がコンポーネント階層構造にない場合は,ハードウェア・ルートの子として表示されます。子コンポーネントは,マシンがパーティション分割または論理的に定義されるときに,階層構造内の他の装置に割り当てることができます。

ヒント

自動レイアウト・モードに設定されている場合,どのチャートでもルート・インスタンスをクリックすると,自動レイアウト操作が実行されます。

12.4.2.2 所有権オーバーレイ

[Windows] メニューから [Ownership Overlay] を選択すると,さまざまなコンポーネントの所有者の初期関係が表示されます。これらの関係は,パワー・サイクルの後,コンポーネントを所有するインスタンスを示します。システムがブートされた後,マイグレート可能なコンポーネントは,所有者を動的に変更することができます。初期所有権を変更するには,コンソール環境変数を変更しなければなりません。

所有権オーバーレイは Physical Structure チャートと Failover Target チャートでは無効です。

12.4.3 Logical Structure チャート

Logical Structure チャートには,Galaxy コミュニティとインスタンスが表示され,Galaxy を形成するすべての関係が最もわかりやすく示されます。これらのコンポーネントの下に,現在所有しているさまざまな装置が表示されます。Logical Structure チャートと Physical Structure チャートでは,所有権に重要な違いがあります。Galaxy では,パーティション分割,または動的に再構成できるリソースには 2 つの異なる所有者があります。

所有者とは,システムの電源がオンになった後,装置の電源がどこでオンになるかを記述するものです。この値はバス・プローブ・プロシージャと Galaxy 環境変数の解釈時に,コンソール・ファームウェアによって判断されます。所有者の値はコンソールの不揮発性メモリに格納されるので,パワー・サイクルの後,復元することができます。

CURRENT_OWNER は,特定の時点における装置の所有者を示します。たとえば,CPU はインスタンス間で自由に再割り当てすることができます。その場合,CURRENT_OWNER の値は変化しますが,owner の値は LP_CPU_MASK# 環境変数によって設定された値のまま変化しません。

Logical Structure チャートには,CURRENT_OWNER の関係が表示されます。変化しない所有者の関係を表示するには,[Window] メニューから [Ownership Overlay] を選択します。

この後の項では,Logical Structure チャートのコンポーネントを説明します。

12.4.3.1 ソフトウェア・ルート

Logical Structure チャートの一番上のコンポーネントはソフトウェア・ルート (SW_Root) です。すべての Galaxy システムにソフトウェア・ルートが 1 つずつあります。物理装置に特定の所有者がない場合は,ソフトウェア・ルートの子として表示されます。子コンポーネントは,マシンが論理的に定義されるときに,階層構造内の他の装置に割り当てることができます。

ヒント

自動レイアウト・モードが設定されている場合,どのチャートでもルート・インスタンスをクリックすると,自動レイアウト操作が実行されます。

12.4.3.2 未割り当てリソース

すべての装置をパーティションに割り当てずに,Galaxy パーティションを構成することができ,1 つ以上のパーティションを定義するだけで,初期化しないことも可能です。どちらの場合も,システムのブート時に一部のハードウェアは未割り当ての状態になります。

コンソール・ファームウェアは,未割り当てリソースを次の方法で取り扱います。

システム・ブートの後,割り当てられていない装置はソフトウェア・ルート・コンポーネントに割り当てられているものとして表示され,アクセスできなくなります。

12.4.3.3 コミュニティ・リソース

共用メモリなどのリソースは,共用コミュニティ内のすべてのインスタンスからアクセスできます。したがって,共用メモリの場合,コミュニティ自体が所有者であると考えられます。

12.4.3.4 インスタンス・リソース

特定のインスタンスによって現在所有されているリソースや永久的に所有されているリソースは,インスタンス・コンポーネントの子として表示されます。

12.4.4 Memory Assignment チャート

Memory Assignment チャートは,Galaxy インスタンス間のメモリの割り当てとパーティションを示します。このチャートには,ハードウェア・コンポーネント (アレイ,コントローラなど) とソフトウェア・コンポーネント (メモリ・フラグメント) の両方が表示されます。

現在の Galaxy ファームウェアおよびオペレーティング・システム・ソフトウェアでは,メモリの動的な再構成はサポートされません。したがって,Memory Assignment チャートには,Galaxy インスタンス間でコンソールによってメモリ・アドレス空間がどのようにパーティション分割されているかが表示されます。この情報はシステム・アプリケーションをデバッグする場合や,可能な構成の変更方法を確認するときに役立ちます。

この後の項では,メモリ・フラグメントの説明をします。

12.4.4.1 コンソール・フラグメント

コンソールには 1 つ以上の小さなメモリ・フラグメントが必要です。通常,コンソールは各パーティションの下位アドレスに約 2 MB のメモリを割り当てます。これはハードウェア・プラットフォームやファームウェアのリビジョンに応じて異なります。さらに,一部のコンソールでは,メモリ・ビットマップを格納するために,各パーティションの上位アドレス空間に小さなフラグメントを割り当てます。コンソール・ファームウェアは適切なメモリ・アライメントが行われるように,追加フラグメントを作成しなければならないことがあります。

12.4.4.2 プライベート・フラグメント

各 Galaxy インスタンスは,OpenVMS をブートするために少なくとも 64 MB のプライベート・メモリ ( コンソール・フラグメントを含む ) を必要とします。このメモリはシングル・フラグメントで構成することができ,コンソール・ファームウェアは適切なメモリ・アライメントが行われるように,追加プライベート・フラグメントを作成しなければならないこともあります。

12.4.4.3 共用メモリ・フラグメント

OpenVMS Galaxy を作成するには,少なくとも 8 MB の共用メモリを割り当てなければなりません。つまり,OpenVMS Galaxy にとって必要最低限のメモリは,実際には 72 MB ( シングル・インスタンスのための 64 MB と,共用メモリのための 8 MB) です。

12.4.5 CPU Assignment チャート

CPU Assignment チャートには,Galaxy インスタンス間で CPU を再割り当てするのに必要な最小のコンポーネントが表示されます。このチャートは非常に大きな Galaxy 構成を取り扱うときに便利です。

12.4.5.1 プライマリ CPU

各プライマリ CPU は六角形ではなく,楕円で表示されます。これは,プライマリ CPU を再割り当てしたり,停止することができないことを示すためです。プライマリ CPU をドラッグ・アンド・ドロップしようとすると,GCU はステータス・バーにエラー・メッセージを表示し,操作を実行しません。

12.4.5.2 セカンダリ CPU

セカンダリ CPU は六角形で表示されます。セカンダリ CPU は,Logical Structure チャートまたは CPU Assignment チャートでインスタンス間で再割り当てすることができます。その場合,CPU を適切なインスタンスにドラッグ・アンド・ドロップします。現在所有しているインスタンスと同じインスタンスに CPU をドロップすると,CPU は停止され,再起動されます。

12.4.5.3 Fast Path およびアフィニティされた CPU

Fast Path を使用する装置に対応づけられた CPU を再割り当てすると,装置に対する対応づけは他の CPU に移動し,CPU の再割り当ては正常に完了します。CPU に現在,プロセス・アフィニティ割り当てがある場合,CPU を再割り当てすることはできません。

OpenVMS Fast Path 機能の詳細については,『OpenVMS I/O User's Reference Manual』を参照してください。

12.4.5.4 失われた CPU

セカンダリ CPU は,まだブートされていないインスタンス (パーティション) に再割り当てすることができます。

同様に,Galaxy 共用コミュニティのメンバとして構成されていないインスタンスに CPU を再割り当てすることができます。この場合,現在の所有者インスタンスから CPU をプッシュすることができますが,独立インスタンス ( 個別のセキュリイティ・ドメイン ) にログインし,CPU を現在の所有者に再割り当てしない限り,元に戻すことはできません。

インスタンスが Galaxy 共用コミュニティの一部であるのか,独立インスタンスであるのかとは無関係に,そのインスタンスは Galaxy 構成ファイルに格納されます。したがって,GCU はそのインスタンスを表示することができます。

12.4.6 IOP Assignment チャート

IOP Assignment チャートには,I/O モジュールと Galaxy インスタンスの現在の関係が表示されます。使用しているハードウェア・プラットフォームに応じて,Alpha システム上のシングル・インスタンス Galaxy は,このチャートにI/O モジュールを表示しないことがあります。

12.4.7 Failover Target チャート

Failover Target チャートには,シャットダウンや障害が発生したときに,各プロセッサが他のインスタンスに自動的にフェールオーバする方法が表示されます。さらに,このチャートには,各 CPU のオートスタート・フラグの状態も表示されます。

各インスタンスに対してフェールオーバ・オブジェクトの集合が表示され,フェールオーバ可能な CPU が示されます。デフォルト設定では,フェールオーバ関係は設定されず,すべてのオートスタート・フラグが設定されます。

特定の CPU の自動フェールオーバを設定するには,CPU のフェールオーバ先のインスタンスに適切なフェールオーバ・オブジェクトをドラッグ・アンド・ドロップします。インスタンスが所有するすべての CPU のフェールオーバ関係を設定するには,CPU のフェールオーバ・ターゲットとなるインスタンスの上にインスタンス・オブジェクトをドラッグ・アンド・ドロップします。

個々のフェールオーバ・ターゲットを消去するには,フェールオーバ・オブジェクトを所有者インスタンスにドラッグ・アンド・ドロップします。すべてのフェールオーバ関係を消去するには,インスタンス・オブジェクトを右クリックして,[Parameters & Commands] ダイアログ・ボックスを表示し,[Commands] ボタンをクリックし,["Clear ALL failover targets?"] をクリックし,[OK] をクリックします。

デフォルト設定では,フェールオーバ操作が発生すると,CPU がターゲット・インスタンスに到着した後,自動的に起動されます。このオートスタート機能は,各フェールオーバ・オブジェクトまたは各インスタンス・オブジェクトに対して,[Parameters & Commands] ダイアログ・ボックスのオートスタート・コマンドを使用して制御できます。Failover Target チャートには,オートスタート・フラグの状態が表示されます。オートスタートがセットされている場合は,フェールオーバ・オブジェクトが緑で表示され,オートスタートがクリアされている場合は赤で表示されます。

フェールオーバおよびオートスタート管理の現在の実装には,次の制限事項がありますので注意してください。


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