OpenVMS Alpha
オペレーティング・システム
V7.3-1 新機能説明書


前へ 次へ 目次 索引


4.10.4 ファイル名での大文字と小文字の区別

従来,OpenVMS ではファイル名指定の英字をすべて大文字として格納してきました。さらに,ファイル名指定を使用するファイル・システム操作では,大文字と小文字は区別されていませんでした。

Extended File Specifications が導入された結果,システム・ツールやアプリケーションでは,ODS-5 ボリュームで英字の大文字だけでなく,小文字も含むファイル指定を格納および表示できるようになりました。

しかし,ファイル名指定の操作ではまだ大文字と小文字が区別されていませんでした。

OpenVMS バージョン 7.3-1 で,ツールおよびアプリケーションは,つづりが同じで大文字と小文字の設定だけが異なるファイル名指定を区別できるようになりました。

ファイル名の大文字と小文字の区別を無視するのか,保持するのかは,プロセスで設定できます。

注意

大文字と小文字の区別は,使用するレイヤード製品やアプリケーションでこの機能がサポートされることがわかっている場合にだけ,有効に設定してください。

大文字と小文字を区別せずに照合するには,SET PROCESS/CASE_LOOKUP=BLIND コマンドを使用します。プロセスが CASE_LOOKUP=BLIND に設定されているときに,つづりが同じで大文字と小文字の設定だけが異なる複数のファイルを作成すると,DCL はこれらのファイルを元のファイルの新しいバージョンとして取り扱い,大文字と小文字の区別を元のファイルと同じ設定に変換します。

次の例では,DKA500 は ODS-5 ディスクです。


$ SET DEFAULT DKA500:[TEST] 
$ SET PROCESS /CASE=BLIND /PARSE_STYLE=EXTENDED 
$ CREATE COEfile.txt 
[Ctrl/Z]
$ CREATE COEFILE.TXT 
[Ctrl/Z]
$ CREATE CoEfile.TXT 
[Ctrl/Z]
 
$ DIRECTORY 
 
Directory DKA500:[TEST] 
 
COEfile.txt;3 
COEfile.txt;2 
COEfile.txt;1 

大文字と小文字が区別されるプロセス環境を作成するには,SET PROCESS/CASE=SENSITIVE コマンドを使用します。プロセスが CASE=SENSITIVE に設定されているときに,つづりが同じで大文字と小文字の区別だけが異なる複数のファイルを作成すると,DCL は 2 番目以降に作成されたファイルを新しいファイルとして取り扱い,大文字と小文字の区別を元のファイルと同じ設定になるように変換しません。次の例では,DKA500 は ODS-5 ディスクです。


$ SET DEFAULT DKA500:[TEST] 
$ SET PROCESS /CASE=SENSITIVE /PARSE_STYLE=EXTENDED 
$ CREATE COEfile.txt 
[Ctrl/Z]
$ CREATE COEFILE.TXT 
[Ctrl/Z]
$ CREATE CoEfIlE.txt 
[Ctrl/Z]
$ DIRECTORY 
 
Directory DKA500:[TEST] 
 
CoEfIlE.txt;1 
COEFILE.TXT;1        
COEfile.txt;1 

ODS-5 ボリュームでは,最初に入力したファイル名の大文字と小文字がそのまま保持されますが,ファイル検索では大文字と小文字は区別されません。したがって,DCL コマンド・プロシージャで .EQS. や F$LOCATE などの DCL 文字列関数を使用する場合などは,ファイルを比較するときに注意する必要があります。

大文字と小文字が区別されると想定しているアプリケーションを使用する場合や,環境で大文字と小文字の区別に依存している場合は,プロセスを /CASE=SENSITIVE に設定します。これらの設定を適切に行わないと,大文字と小文字を区別することによって問題が発生する可能性があることに注意してください。

デフォルトは SET PROCESS /CASE=BLIND /PARSE_STYLE=EXTENDED です。

4.10.4.1 RMS(Record Management System)での大文字と小文字の区別

RMS では,第 4.10.4 項 で説明したように,大文字と小文字の区別に関してプロセスのデフォルトが使用されます。OpenVMS Alpha バージョン 7.2 で長いファイル名をサポートするために,NAML ブロックが導入されました。プロセスのデフォルトの大文字と小文字の区別の設定を無効にするために,NAML ブロックに NAML$V_CASE_LOOKUP という新しいフィールドが追加されました。

NAML$V_CASE_LOOKUP の内部で,大文字と小文字の区別に関して次の値を設定できます。

フィールド名 説明
NAML$C_CASE_LOOKUP_BLIND RMS はファイルの作成,削除,検索時に大文字と小文字の区別を無視する。
NAML$C_CASE_LOOKUP_SENSITIVE RMS はファイルの作成,削除,検索時に大文字と小文字の区別を判断基準として使用する。

NAML$V_CASE_LOOKUP が 0 であるか,NAML ブロックが使用されない場合は,現在のプロセスの設定が使用されます。

4.10.4.2 ACP/QIO での大文字と小文字の区別

ディレクトリ・エントリは,大文字と小文字を区別しない順序でリストされます。新しい FIB オプション,FIB$V_CASE_SENSITIVE が設定されている場合は,大文字と小文字を区別する操作が実行されます。このビットをクリアした状態で ACP/QIO 操作を行うと,大文字と小文字は区別されません。大文字と小文字の区別に関するプロセスのデフォルトは XQP に適用されません。

4.10.4.3 プロセスの大文字と小文字の区別を制御するシステム・サービス

大文字と小文字を区別する機能をサポートするために,システム・サービスが次のように変更されました。

$SET_PROCESS_PROPERTIES システム・サービスは,サービスに関連する単純値を設定します。OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,大文字と小文字を区別するために,次の 2 つの新しいプロパティ・コードがサポートされます。

プロパティ・コード 説明
PPROP$C_CASE_LOOKUP_TEMP 使用する検索の種類(大文字と小文字を区別するかどうか)。この値は,イメージが存在する間だけ設定される。イメージがランダウンされると,この値はパーマネント・スタイルに戻される。有効な値は PPROP$K_CASE_BLIND と PPROP$K_CASE_SENSITIVE である。
PPROP$C_CASE_LOOKUP_PERM 使用する検索の種類(大文字と小文字を区別するかどうか)。この値は,スタイルが再度設定されない限り,プロセスが存在する間設定される。イメージがランダウンされると,値はパーマネント・スタイルに戻される。有効な値は PPROP$K_CASE_BLIND と PPROP$K_CASE_SENSITIVE である。

$GETJPI システム・サービスに次の 2 つの新しいアイテム・コードが追加されました。

これらのアイテム・コードは,$SET_PROCESS_PROPERTIESW システム・サービスで設定された値を返します。返される値は PPROP$K_CASE_BLIND と PPROP$K_CASE_SENSITIVE のいずれかです。

$SET_PROCESS_PROPERTIESW システム・サービスの詳細については,『OpenVMS System Services Reference Manual』を参照してください。

4.10.4.4 DCL での大文字と小文字の区別

F$GETJPI レキシカル関数に,CASE_LOOKUP_IMAGE と CASE_LOOKUP_PERM という 2 つの新しいアイテム・コードが追加されました。これらのアイテム・コードは,プロセスの大文字と小文字の区別に関する情報を返します。

ファイル名の大文字と小文字の設定を変更するには,RENAME コマンドを使用します。RENAME が正しく動作するには,プロセスをあらかじめ CASE=SENSITIVE に設定しておく必要があります。

たとえば,JANCALENDAR.TXT というファイルの大文字と小文字の区別を変更するには,次のコマンドを入力します。


$ RENAME JANCALENDAR.TXT JanCalendar.txt

この RENAME コマンドは,JANCALENDAR.TXT を JanCalendar.txt に変更します。

4.10.4.5 C RTL でのサポート

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,Compaq C 実行時ライブラリの拡張ファイル指定のサポートが大幅に強化され,ODS-5 の 254 文字の 8 ビット文字のうち,これまでは 214 文字しかサポートされなかったのに対し,250 文字がサポートされるようになりました。さらに,ファイル・タイプを付けずにファイル名を報告することができるようになりました。

新しいサポートを有効にするには,1 つ以上の C RTL 論理名を定義しなければなりません。これらの論理名の設定は,実行時に C アプリケーションの動作に影響します。

必要な各論理名を定義するには,DEFINE name ENABLE コマンドを入力します。次の例を参照してください。


$ DEFINE DECC$EFS_CHARSET ENABLE 

この論理名を無効にするには,次のように入力します。


$ DEFINE DECC$EFS_CHARSET DISABLE 

サポートされない ODS-5 文字は次の 6 文字です。

4.11 新しい Compaq GCM(Graphical Configuration Manager)

システム管理者がパーティション分割された OpenVMS システムを管理する操作は,以前より簡単になりました。Compaq GCM(Graphical Configuration Manager)for OpenVMS は移植可能なクライアント/サーバ・アプリケーションであり,OpenVMS が稼動するパーティション分割された AlphaServer システムの構成をグラフィックで表示し,制御することができます。

GCM サーバは,1 台以上の AlphaServer システムの各 OpenVMS パーティションで動作します。

GCM クライアントは JAVA ベースのアプリケーションであり,JAVA 実行時環境(JDK V1.2.2 以上)および TCP/IP ネットワークをサポートするオペレーティング・システムであれば,どのシステムでも実行できます。OpenVMS システム管理者は GCM クライアントから 1 つ以上の GCM サーバに対してセキュア接続を確立して,次の機能を実行することができます。

詳細については,『OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』を参照してください。

4.12 Kerberos for OpenVMS

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 以降,OpenVMS オペレーティング・システムの一部として Kerberos for OpenVMS が提供されるようになりました。以前のバージョンでは,Kerberos はレイヤード製品として出荷されていました。

Kerberos は,秘密鍵暗号を使用してクライアント / サーバ・アプリケーションに強力な認証機能を提供できるように設計されたネットワーク認証プロトコルです。

詳細については,『Kerberos Version 1.0 Security Client for OpenVMS Release Notes』を参照してください。

4.13 SET DEVICE と SHOW DEVICES の新しい LANCP 修飾子

表 4-1 は SET DEVICE コマンドの新しい修飾子を示しています。

表 4-1 SET DEVICE コマンドの修飾子
修飾子 意味
/AUTONEGOTIATE
/NOAUTONEGOTIAGE
設定を判断するために自動ネゴシエーションの使用を有効または無効にする。リンク自動ネゴシエーションは,自動ネゴシエーションをサポートしないスイッチやデバイスに接続している場合にだけ無効にする必要がある。/AUTONEGOTIAGE がデフォルトである。
/CONTENDER
/NOCONTENDER
リングを結合するときに,Token Ring が Monitor Contention プロセスに参加することを指定する。/NOCONTENDER 修飾子は,デバイスが現在のリング・サーバにならないことを指定する。
/DEVICE_SPECIFIC=FUNCTION 一部のデバイス固有のパラメータを調整することができる。デバイス固有の機能を実行するコマンドについては,『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル(上巻)』を参照。
/JUMBO
/NOJUMBO
LAN デバイスでジャンボ・フレームの使用を有効にする。Gigabit Ethernet NIC だけがジャンボ・フレームをサポートする。/NOJUMBO がデフォルトである。

表 4-2 は SHOW DEVICES コマンドの新しい修飾子を示しています。

表 4-2 SHOW DEVICES コマンドの修飾子
修飾子 意味
/INTERNAL_COUNTERS 内部カウンタを表示する。デフォルトでは,値が 0 のカウンタは表示されない。0 も含めてすべてのカウンタを表示するには,追加修飾子 /ZERO を使用する。デバッグ・カウンタを表示するには,追加修飾子 /DEBUG を使用する。
/TRACE LAN ドライバ・トレース・データを表示する。

詳細については,『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル(上巻)』を参照してください。


前へ 次へ 目次 索引