OpenVMS Alpha
オペレーティング・システム
V7.3-1 新機能説明書


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4.14 LIBDECOMP.COM の拡張機能

Library Decompression ユーティリティ(LIBDECOMP.COM)では,いくつかの機能拡張が行われています。

LIBDECOMP.COM の使い方とそのパラメータの詳細については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

4.15 ODS-5 ボリューム構造

ODS-5 はオプションとして提供されるボリューム構造であり,長いファイル名をサポートし,ファイル名で使用できる文字の範囲も拡大されています。また,使用できる文字セットも拡張されています。現在,ISO Latin-1 Multinational 文字セットの文字はほとんどすべてファイル名で使用できますが,アスタリスク(*)と疑問符(?)は使用できません。ISO Latin-1 文字セットの一部の文字は,正しく解釈するためにエスケープ文字を必要とします。詳細については,『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。

OpenVMS の以前のバージョンでは,ODS-5 ボリュームをシステム・ディスクとして使用することはできず,ODS-5 ディスクは種類の異なるシステムが混在しない Alpha クラスタでのみ使用するように推奨されていました。OpenVMS バージョン 7.3-1 では,これらの制限は解除され,システム・ディスクとしての ODS-5 ボリュームの使用がサポートされるようになり,種類の異なるシステムが混在する Alpha クラスタでも使用できるようになりました。

ODS-5 ボリューム構造では,ハード・リンクや大文字と小文字の区別のサポートなど,多くの新しいファイル・システム機能がサポートされます。新しいファイル・システム機能の詳細については,第 4.10 節 を参照してください。ODS-5 ディスクのシステム管理の詳細については,『OpenVMS システム管理者マニュアル(上巻)』を参照してください。

4.16 OpenVMS Cluster の新機能

ここでは,このリリースで導入された OpenVMS Cluster の新機能について簡単に説明します。

4.16.1 OpenVMS Cluster のパフォーマンスの向上

OpenVMS Cluster システム内でメッセージの送信やデータの転送に使用される多くのモジュールが,Alpha アーキテクチャの実行速度に合わせて最適化されました。複数の主要なモジュールは,パフォーマンス,正確性,明確性を向上するために,ルーチンごとに完全に書き直されました。

このようにして作成されたイメージは以前よりかなり小さくなっており,メモリ・アクセスの回数もはるかに少なくなり,はるかに効率のよいコードが生成されます。

これらの変更により,次の利点が実現されています。

バックグラウンド

クラスタ通信サブシステムは複数のレイヤで構成されています。

OpenVMS で使用される主要なシステム・アプリケーションは,ディスク・クラス・ドライバ(DUDRIVER),MSCP サーバ(MSCP),クラスタ接続マネージャ(SYS$CLUSTER イメージの一部)です。

SYS$CLUSTER は多くのサブ機能を含む共用システム・アプリケーションです。次のようなサブ機能が含まれています。

これらのサブ機能には,多くのサブファンクションやサービスが含まれています。たとえば,分散ロック・マネージャには,$ENQ および $DEQ メッセージを送信するためのサービス,リソース・ツリーのマスタを変更するためのサービス,デッドロック検出のためのサービス,フェールオーバ・リカバリのためのサービスなどが含まれています。

メッセージを送信するには,次の操作を行います。

  1. システム・アプリケーションは,メッセージ転送やデータ転送を取り扱う SCS ルーチンへの共通のインタフェースを起動します。

  2. SCS レイヤは共通のインタフェースを介して,リモート・システムまたはコントローラに到達するために使用されるアダプタのポート固有のルーチンにアクセスします。

  3. ポート・レイヤは固有のデバイス・ドライバまたはアダプタ・インタフェースを呼び出します。

送られてくるメッセージの場合は,この順序の逆になります。接続マネージャの内部で,順に並べられたメッセージおよびブロック転送サービスを提供するための追加レイヤがすべてのサブ機能に提供されます。

変更されたコンポーネント

次のサブシステムは Alpha の実行速度に合わせて,完全にまたは部分的に書き直されており,その結果,クラスタ内のすべてのシステム・アプリケーションでパフォーマンスが向上しています。

SYS$CLUSTER の次のサブセクションは,パフォーマンスを最適化するように完全に書き直されています。

4.16.2 Fibre Channel ドライバの最適化

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,Fibre Channel ドライバが最適化され,I/O ロックの保持時間が I/O ごとに 3〜6 マイクロ秒だけ短縮され,その結果,I/O パフォーマンスが大幅に向上しました。この最適化および I/O 完了割り込みの一括処理により,I/O ロック時間は最大 50% も短縮され,Fibre Channel のスループットが 2 倍に向上しました。

I/O 完了割り込みの一括処理と異なり,Fibre Channel ドライバの最適化は OpenVMS Alpha の以前のバージョンに逆移植できません。

Fibre Channel 構成の詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.16.3 Fibre Channel 構成の I/O 割り込みの一括処理

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,ホスト・バス・アダプタでの I/O 完了割り込みの処理が大幅に強化されました。I/O 完了割り込みを一度に 1 つずつ送信するのではなく,ひとまとめにしてグループとして送信します。この大幅な機能拡張により,I/O 作業負荷の高い環境で I/O パフォーマンスを向上できます。初期テストでは,IOLOCK8 の保持時間が 25% も短縮されました。この機能拡張は直接,I/O スループット・パフォーマンスの 25% の向上につながります。

この機能は,OpenVMS Alpha バージョン 7.2-2 および OpenVMS Alpha バージョン 7.3 にバックポートされます。

Fibre Channel 構成の詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.16.4 MSCP でサービスされるデバイスの上限値が 512 から 1000 へ拡大

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,MSCP のサービスが大幅に強化されました。OpenVMS Cluster システム内のどのシステムでも,MSCP でサービスを受けることができるディスクの数は,以前は 512 に制限されていましたが,本リリースでは 1000 に拡大されました。この結果,OpenVMS Cluster のストレージの構成の柔軟性が向上しました。将来のリリースでは,サポートされるディスクの最大数を 1000 よりさらに拡大することが検討されています。

この増大は Alpha システムにだけ影響します。VAX ノードでサービスされるディスクの数は増加しません。VAX ノードは現在でも,メモリ・リソースの制限内で,クラスタ内に存在する数と同じ数のディスクのクライアントになることができます。

MSCP でのサービスの詳細については,『OpenVMS Cluster システム』と『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.16.5 SCSI および Fibre Channel 構成で MSCP でサービスされるパスへのマルチパス・フェールオーバ

マルチパス SCSI 構成または Fibre Channel 構成では,OpenVMS はあるパスから別のパスへ,デバイスへのフェールオーバをサポートします。1 つのデバイスに対して複数のパスを設定しておくと,次の利点があります。

OpenVMS Alpha の以前のハージョンでは,ダイレクト・パス間のフェールオーバだけがサポートされていました。

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,次の OpenVMS Cluster 構成で,ディスクへの直接接続パスおよび MSCP でサービスされるパスの間でフェールオーバがサポートされます。

デバイスへのすべてのダイレクト・パスが切断された場合,I/O は MSCP でサービスされるパスに自動的にフェールオーバします。ダイレクト・パスが復旧すると,I/O は MSCP でサービスされるパスからダイレクト・パスへ自動的に切り換えられます。

この機能を有効にするには,MPDEV_REMOTE システム・パラメータを使用します。MSCP でサービスされるパスへのフェールオーバも含めて,マルチパスのサポートの詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。


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