OpenVMS Alpha
オペレーティング・システム
V7.3-1 新機能説明書


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4.21 新しいシステム・パラメータ

ここでは,OpenVMS バージョン 7.3-1 で新たに追加されたシステム・パラメータについて説明します。

4.21.1 DCL_CTLFLAGS

新しいシステム・パラメータ DCL_CTLFLAGS を使用すると,プロセスが生成されるときにシステム単位でサブプロセス名を割り当てる際に,以前のデフォルトの動作を今後も使用することができます。詳細については,第 4.19 節 を参照してください。

4.21.2 DELPRC_EXIT

プロセスの最終的なクリーンアップおよび削除の前に終了ハンドラを呼び出す $DELPRC システム・サービスのオプションを制御するには,DELPRC_EXIT を使用します。次の表はこれらのオプションについて説明しています。

オプション 説明
0 $DELPRC による終了ハンドラの機能を無効する。
4 カーネル・モードの終了ハンドラを実行する。
5(デフォルト) exec およびそれ以上の特権モード終了ハンドラを実行する。
6 supervisor およびそれ以上の特権モードの終了ハンドラを実行する。
7 user およびそれ以上の特権モードの終了ハンドラを実行する。

DELPRC_EXIT は動的パラメータです。

4.21.3 MPDEV_AFB_INTVL

MPDEV_AFB_INTVL は,自動フェールバックの間隔を秒単位で指定します。自動フェールバックの間隔とは,システムが同じデバイス上で MSCP パスからダイレクト・パスに別のフェールバックを行うまでの最小経過秒数です。

自動フェールバックを有効にするには,MPDEV_POLLER が ON でなければなりません。MPDEV_AFB_INTVL を 0 に設定すると,ポーラを無効にせずに自動フェールバックを無効にすることができます。デフォルトは 300 秒です。

4.21.4 RMS_SEQFILE_WBH

ファイルが書き込みアクセスを指定してイメージ I/O のためにオープンされている場合,RMS_SEQFILE_WBH は,非共用順編成ディスク・ファイルに対して RMS の write-behind 機能をシステムのデフォルトとして有効に設定することができます。次の表は可能な設定を示しています。

設定 説明
0(デフォルト) write-behind 機能を有効にしない。ユーザが RAB$L_ROP で RAB$V_WBH を設定することにより要求した場合にだけ,write-behind を使用するという以前の動作を保持する。
1 少なくとも 2 つのローカル・バッファの割り当ても含めて,write-behind 機能をシステムのデフォルトとして有効にする。

RMS_SEQFILE_WBH は動的パラメータです。

4.22 SCACP ユーティリティの新しい機能

OpenVMS バージョン 7.3-1 から,SCACP を使用して,すべての OpenVMS Cluster インターコネクト上の SCA 通信を管理できるようになりました。これらのインターコネクトは,OpenVMS バージョン 7.3 以降でサポートされるようになった LAN デバイスおよび LAN パスに対する SCA の使用に加えて提供されるものです。

4.22.1 クラスタ・ポートとサーキット

SCACP を使用すると,どのクラスタ・インターコネクトに関しても,ポート情報とサーキサット情報を表示できます。また,ポートやサーキットで管理優先順位フィールドを設定することもできます。このため,クラスタ構成のために使用されるサーキットとポートをクラスタで選択する処理を最適化することができます。

4.22.2 新しいコマンドと修飾子

表 4-8 は,OpenVMS バージョン 7.3-1 で新たに追加された SCACP SET コマンドと SHOW コマンドおよびその修飾子を示しています。

表 4-8 新しい SCACP SET コマンドと SHOW コマンドおよびその修飾子
コマンド 機能
SET CIRCUIT ユーザは選択した 1 つ以上のサーキットの管理優先順位値を設定できる。このコマンドでは次の修飾子を使用できる。

  • /EXCLUDE=(nodename[/PORT=portname[/RSTATION=n]][,...])

    ノードへの特定のサーキットを除外できる。同じノードに対して複数のサーキットが存在する場合,/PORT 修飾子と /RSTATION 修飾子を使用して,サーキットを一意に識別することができる。

  • /PORT=portname[/RSTATION=n]

    同じノードに対して複数のサーキットが存在する場合,/PORT 修飾子と /RSTATION 修飾子を使用してサーキットを一意に識別することができる。/RSTATION 修飾子は,選択した 1 つ以上のサーキットに対して /PORT 修飾子と組み合わせて使用しなければならない。

  • /PRIORITY=n

    選択したサーキットの管理優先順位値を設定する。n は -127〜+127 の範囲の値である。

SET PORT ユーザは選択した 1 つ以上のポートの管理優先順位値を設定できる。このコマンドでは次の修飾子を使用できる。

  • /EXCLUDE=(portname[,...])

    特定のポートを操作から除外する。

  • /PRIORITY=n

    選択したポートの管理優先順位値を設定する。n は -127〜+127 の値である。

SHOW CIRCUIT(nodenames) LAN サーキット情報も含めて,このノードと他のクラスタ・ノードの間のすべてのサーキットに関する情報を表示する。このコマンドでは次の修飾子を使用できる。

  • /EXCLUDE=(nodename[/PORT=portname[/RSTATION=n]][,...])

  • /EXCLUDE

    ノードへの特定のサーキットを除外する。同じノードに対して複数のサーキットが存在する場合,/PORT 修飾子と /RSTATION 修飾子を使用してサーキットを一意に識別することができる。

  • /PORT=portname[/RSTATION=n]

    同じノードに対して複数のサーキットが存在する場合,/PORT 修飾子と /RSTATION 修飾子を使用してサーキットを一意に識別することができる。/RSTATION 修飾子は /PORT 修飾子と組み合わせて使用しなければならない。

SHOW PORT LAN ポート,PEA0 も含めて,ノード上のすべての SCA ポートに関する情報を表示する。このコマンドでは次の修飾子を使用できる。

  • /EXCLUDE=(portname[,...])

    特定のポート名を表示から除外する。ワイルドカードを使用してポート名を指定することはできない。

  • /OUTPUT=filespec

    指定されたファイルを作成し,コマンドの出力をこのファイルに送る。

表 4-9 は,OpenVMS バージョン 7.3-1 で新たに追加された SCACP コマンドの修飾子を示しています。

VC CLOSURE SIDE-EFFECT

サーキットでチェックサムを有効または無効にすると,サーキットは短時間クローズし,指定の操作モードで再びオープンします。この動作が必要なのは,サーキットの両端で同期をとる必要があるからです。

表 4-9 新しい SCACP コマンドの修飾子
コマンド 修飾子 説明
SET VC /CHECKSUMMING /NOCHECKSUMMING(デフォルト) 指定された各ノードに対する VC でチェックサム検査を有効または無効にする。このコマンドは単独で使用することができ,システム・パラメータ NISCS_PORT_SERV と組み合わせて使用することもできる(詳細については,NISCS_POST_SERV のオンライン・ヘルプを参照)。
SHOW LAN_DEVICE /EXCLUDE=(landevicename[,...]) 特定の LAN デバイスを除外する。デバイスはワイルドカードで指定できる。

4.23 Fast Path でサポートされる Ultra3 SCSI アダプタ

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,最大バス速度 160 MB/s の Ultra3 SCSI ホスト・アダプタ KZPEA がサポートされます。PKAdriver は,KZPEA をサポートするソフトウェア・コンポーネントです。KZPEA は直接接続されたストレージに対してのみサポートされます。

OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,KZPEA に対して Fast Path もサポートされます。Fast Path のサポートはマルチプロセッサ・システムで使用するように設計されています。Fast Path はプライマリ CPU から他の CPU に I/O を自動的にリダイレクトします。変更はプログラムまたは DCL コマンドで行うことができます。

注意

OpenVMS Alpha バージョン 7.2-2 およびバージョン 7.3 での KZPEA アダプタのサポートは修正キットで提供されます。

OpenVMS Alpha バージョン 7.2-2 およびバージョン 7.3 では,KZPEA に対して Fast Path はサポートされません。

Fast Path のサポートの詳細については,『OpenVMS I/O User's Reference Manual』を参照してください。

4.24 DECdtm に追加された XA 機能

DECdtm は,アプリケーションで使用されるリソース・マネージャの動作を調整する分散トランザクション・マネージャです。DECdtm サービスは OpenVMS オペレーティング・システムに組み込まれており,2 フェーズ・コミット・プロトコルを使用して分散データベースを完全にサポートします。DECdtm サービスでは,分散処理のためのテクノロジと機能が提供され,複数の Compaq リソース・マネージャ間で完全なトランザクションおよびデータベースの整合性が確保されます。

DECdtm V2.0 では,X/Open 分散トランザクション・モデルの XA 標準インタフェースがインプリメントされています。XA インタフェースは,OpenVMS Oracle/Rdb,OpenVMS Oracle 8i/9i,RMS Journaling,ACMS 間でトランザクション処理の相互運用性を提供します。DECdtm V2.0 は,BEA Tuxedo や弊社の RTR(Reliable Transaction Router)など,XA 準拠トランザクション・マネージャとのインタフェースをとることができます。

XA 機能を備えた DECdtm は,次の機能を提供します。

詳細情報 ドキュメント
DECdtm システム・サービス 『OpenVMS System Services Reference Manual』
DECdtm および XA トランザクションの管理 『OpenVMS システム管理者マニュアル』
XGCP ユーティリティと DECdtm/XA 『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』
DECdtm および XA によるプログラミング 『OpenVMS Programming Concepts Manual, Volume II』


第 5 章
プログラミング機能

この章では,OpenVMS オペレーティング・システムの本バージョンで追加されたアプリケーション・プログラミングおよびシステム・プログラミングに関連する新機能について説明します。

5.1 Alpha プロセッサのパフォーマンス向上機能の利用

Alpha プロセッサは世代ごとに異なる特性を備えています。Alpha プロセッサのある世代で動作するように開発されたアプリケーションは,それより新しい世代のプロセッサでも動作できます。しかし,プロセッサの世代が新しくなると,通常,より強力な機能が追加され,前の世代よりパフォーマンスも向上します。新しいプロセッサ用にアプリケーションを再構築することにより,新しいプロセッサのパフォーマンスを向上する新機能を利用することができます。

イメージ・プロバイダ(ISV や製品開発者)を対象にして,新しい Alpha プロセッサのパフォーマンス向上機能を活用する方法について説明しているホワイト・ペーパーが提供されています。このホワイト・ペーパーの HTML バージョンと PDF バージョンは次の Web サイトで提供されています。


    http://www.openvms.compaq.com/doc/    

5.2 ANALYZE Usage Summary に追加された新しい修飾子

Alpha System Analysis ツール ANALYZE Usage Summary の /SHADOW_MEMBER 修飾子は,分析するシステム・ダンプがシャドウ・セットのどのメンバに格納されているかを指定します。また,ユーザにどのようなシステム・ダンプがシャドウ・セットのメンバに書き込まれているかを表示して判断させることができます。詳細については,『OpenVMS Alpha System Analysis Tools Manual』を参照してください。

5.3 Compaq C 実行時ライブラリの拡張機能

ここでは,OpenVMS バージョン 7.3-1 で追加された Compaq C RTL の拡張機能について説明します。これらの拡張機能は,UNIX との互換性を向上し,ユーザが機能を柔軟に選択できるようにします。詳細については,『Compaq C Run-Time Library Reference Manual for OpenVMS Systems』を参照してください。

5.3.1 2 ギガバイトより大きいファイル

2 ギガバイト以上のファイル・サイズおよびオフセットを使用するアプリケーションをコンパイルするためのサポート機能が追加されました。このサポートは,64 ビット整数のファイル・オフセットを可能にすることで実現されています。次の 2 つの新しい関数が追加されました。


fseeko 
ftello 

これらの関数はfseekおよびftellと同じですが,off_tタイプの値を受け付けたり,このタイプの値を返す点が異なっています。このため,off_tの 64 ビット形式を使用することができます。

64 ビットのファイル・オフセットに対応するための変更は,次の既存の C RTL 関数でも行われています。


fstat 
ftruncate 
ftw 
lseek 
mmap 
stat 
truncate 

_LARGEFILE 機能マクロを定義することにより,新しい 64 ビット・インタフェースをコンパイル時に選択できるようになりました。


$ CC /DEFINE=_LARGEFILE 

5.3.2 コンパイル/リンク時の C RTL 機能の有効化

C RTL では,アプリケーションの動作に影響を与える広範囲にわたる機能スイッチのリストが提供されるようになりました。これらの機能スイッチを使用すると,新しい動作を有効にするか,または以前の機能の低い動作をそのまま使用するかを選択できます。これらの機能は,DECC$ 論理名を使用して実行時に有効または無効にすることができます。詳細については,第 4.10.4.5 項 および『Compaq C Run-Time Library Reference Manual for OpenVMS Systems』を参照してください。

また,アプリケーションの内部で機能スイッチを検知または設定するプログラマブル・インタフェースも提供されます。グローバル・シンボル LIB$INITIALIZE で参照される関数内でこのインタフェースを使用すると,C RTL が初期化される前に機能を有効または無効にすることができます。

多くの場合,機能スイッチを使用することで新しい動作を有効にすることができます。既存の動作はデフォルトとして保持されます。アプリケーションで別のデフォルト動作を選択しなければならない場合は,論理名を使用して実行時動作を変更できます。

アプリケーションによっては,機能スイッチの設定が必要になることがあります。この場合,機能スイッチで設定した値を論理名によって変更されないようにすることができます。

このような設定を行うために,次の 4 つの関数が用意されています。

int decc$feature_get_index(char *name);
char *decc$feature_get_name(int index);
int decc$feature_get_value(int index, int mode);
int decc$feature_set_value(int index, int mode, int value);

5.3.3 UNIX 形式のファイル名のサポートの強化

Compaq C RTL では,ODS-5 デバイスで OpenVMS 拡張ファイル指定(EFS)によってサポートされる拡張 ASCII 文字セットを含む UNIX 形式のファイルおよびディレクトリ・パス名を受け付けるようになりました。

注意

この機能は,UNIX システムから移植されたアプリケーションで使用するためのものであり,ネイティブな OpenVMS アプリケーションで使用するためのものではありません。

この機能を有効にするには,プログラムの実行の前に,DECC$FILENAME_UNIX_ONLY 論理名を ENABLE に定義します。


$ DEFINE DECC$FILENAME_UNIX_ONLY ENABLE 

この機能を有効にすると,Compaq C RTL に入力されるすべてのファイルおよびパス指定は UNIX 形式であるものと解釈され,次の例外を除き,印刷可能な ASCII 文字セット(16 進数の 20〜7E)をすべて使用できます。

*(アスタリスク)
?(疑問符)
/(スラッシュ)
"(二重引用符)

Compaq C RTL では,OpenVMS ファイル・システムにファイル指定を渡すときに,必要に応じて特殊文字を引用符で囲みます。Compaq C RTL から出力される OpenVMS ファイル指定およびパス指定は,必要に応じて UNIX 形式に変換され,OpenVMS ファイル・システムによって引用符で囲まれた特殊文字は,Compaq C RTL 呼び出しプロセスに返される前に引用符が除去されます。さらに,OpenVMS のバージョン番号フィールドは出力時にファイル名から削除されます。

たとえば,次の UNIX 形式のパス名が入力されたとしましょう。


./abc.d/data.dat.dat 

Compaq C RTL は OpenVMS ファイル・システムにこのパス名を渡す前に,次のように変換します。


[.abc^.d]data^.dat.dat 

カレット(^)文字は EFS 引用符,つまりエスケープ文字です(エスケープ文字および名前とファイル・タイプの間の区切り文字の詳細については,『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください)。このファイル名を検索すると,入力されたときと同じ形式で Compaq C RTL 呼び出しプロセスに出力されますが,文字を囲むエスケープ文字は削除されます。

通常の Compaq C RTL 解析ルールでは,UNIX 形式の入力ファイル名に含まれる OpenVMS バージョン・フィールドはファイル・システムに直接渡されます。したがって,次の例では,名前がdataで,タイプがdatのバージョン番号 3 のファイルにアクセスします。


data.dat;3 

新機能を使用すると,このファイル名は次のように,名前がdataで,タイプがdat;3のファイルとして OpenVMS ファイル・システムに渡されます。


data.dat^;3 

ファイルに割り当てられている OpenVMS バージョン番号は出力されません。

この機能のスコープは,UNIX 形式のファイル指定のディレクトリ・フィールドとファイル名フィールドの両方の使用可能な文字に適用されます。この機能を有効にしても,Compaq C RTL の UNIX-to-OpenVMS および OpenVMS-to-UNIX パス変換の他の機能には影響ありません。UNIX 形式の指定の最初の要素の論理名の展開が有効に設定されている場合は,Compaq C RTL はファイル・システムに渡す前に,論理名同値文字列に含まれるどの特殊文字にもエスケープ文字を追加しません。


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