OpenVMS
システム管理者マニュアル


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第 2 章
OpenVMS システム管理ユーティリティとツールの使用方法

本章では,Compaq OpenVMS オペレーティング・システムのシステム管理ユーティリティやツールについて,その概要を説明します。

本書では,ユーティリティやツールの使い方を各章で作業別に説明します。たとえば,本章では,システム管理ユーティリティ (SYSMAN) の概要について説明します。 第 9.11.2 項 では,SYSMAN でディスク・クォータを管理する方法について説明します。 第 15.7 節 では,SYSMAN でシステム・パラメータを管理する方法について説明します。

システム管理ツールを使用する際には,必要に応じて,次のマニュアルも参照してください。

本章の内容

本章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
SYSTEM アカウントへのログイン 第 2.2 節
SYSMAN によるシステム管理の集中化 第 2.3 節
OPCOM によるシステム・ユーザとの通信 第 2.4 節
VMSKITBLD.COM によるシステム・ディスクの変更 第 2.5 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
OpenVMS システム管理ツール 第 2.1 節
システム管理用の DCL コマンド 第 2.1.2 項
システム・メッセージ 第 2.1.3 項
システム管理用の DCL コマンド・プロシージャ 第 2.1.4 項
システム管理ユーティリティ 第 2.1.5 項
MGRMENU.COM コマンド・プロシージャ 第 2.1.6 項
SYSMAN ユーティリティ 第 2.3.1 項
SYSMAN 管理環境 第 2.3.3 項
SYSMAN プロファイル 第 2.3.5 項
OPCOM 第 2.4.1 項

2.1 OpenVMS システム管理ツール

システム操作や資源を監視・制御するために,次のソフトウェア・ツールが用意されています。

ツール 参照箇所
OpenVMS Management Station 第 2.1.1 項
COPY や MOUNT などの DCL (DIGITAL Command Language)
コマンド
第 2.1.2 項
システム・メッセージ 第 2.1.3 項
コマンド・プロシージャ (例: AUTOGEN.COM や STARTUP.COM) 第 2.1.4 項
AUTHORIZE や BACKUP などのシステム管理ユーティリティ 第 2.1.5 項
MGRMENU.COM コマンド・プロシージャ 第 2.1.6 項
OPCOM 第 2.4 節

2.1.1 OpenVMS Management Station

OpenVMS Management Station は,OpenVMS システムでアカウント管理タスクを実行するシステム管理者や他のユーザのための,強力な Microsoft Windows 版管理ツールです。OpenVMS Management Station ソフトウェアがあれば,ユーザは,複数のシステムにわたる OpenVMS アカウント管理プログラムを包括的に扱うことができます。 1 つのソースから複数のシステムを管理することができます。

OpenVMS Management Station ソフトウェアは,既存のすべての OpenVMS システム管理ユーティリティと共存します。 図 2-1 は OpenVMS Management Station のスクリーン例です。

図 2-1 OpenVMS Management Station スクリーン例


OpenVMS Management Station は,アカウント管理に複数のユーティリティを使用しなければならないという問題を解決します。たとえば,アカウントの作成には,通常,次のステップが必要です。

  1. UAF エントリの追加

  2. ライト識別子の付与

  3. ディレクトリの作成

  4. ディスク・クォータの作成

  5. ネットワーク代理の付与

以上のステップでは,DCL,Authorize ユーティリティ,SYSMAN ユーティリティの DISKQUOTA コンポーネントを使用する必要があります。 OpenVMS Management Station があれば,このプロセスを簡単に実行することができます。

OpenVMS Management Station は,次の 2 つのコンポーネントから構成されます。

OpenVMS Management Station のドキュメント

Microsoft Windows のヘルプ・ファイルで, OpenVMS Management Station の特長,機能,使用方法,使用例について詳しく説明されています。『OpenVMS Management Station Overview and Release Notes』には,OpenVMS Management Station の概要が記載されており,このソフトウェアの使用方法が説明されています。

Alpha または VAX コンピュータ,および PC への OpenVMS Management Station のインストールについては,次のマニュアルを参照してください。

2.1.1.1 管理資源

OpenVMS Management Station を使用すると,管理が必要なシステムを,システム管理者およびシステム管理者の環境にとって意味のある状態で構成した上で,そのシステム上のユーザ・アカウントを管理することができます。

必要に応じて,複数の OpenVMS システムにわたって,ユーザ・アカウントを簡単に管理することができます。システムは,ネットワーク内の一部のクラスタや,建物内のある特定の階の全システム,クラスタおよびクラスタ化されていないノードが混在する構成であっても構いません。

OpenVMS Management Station を使用すると,OpenVMS ユーザ・アカウントをきわめて簡単に管理することができます。たとえば,複数システム上でアカウントを作成する場合, OpenVMS Management Station は,利用者登録ファイル (UAF) エントリの追加,ライト識別子の付与, OpenVMS ディレクトリの作成,ディスク・クォータの設定, OpenVMS Mail 特性の設定などの処理を,アカウントの各インスタンスごとに行います。

OpenVMS Management Station は,次の OpenVMS 資源を管理します。

2.1.1.2 管理操作

OpenVMS Management Station は,次のアカウント管理操作をサポートします。

2.1.2 システム管理用の DCL コマンド

ほとんどのシステム管理作業は, DCL (Digital Command Language) コマンドで行えます。たとえば, MOUNT という DCL コマンドは,ディスクとテープをシステムに認識させるコマンドです。システム管理者が使用するほとんどの DCL コマンドには,特別な特権(OPER 特権など)が必要です。

DCL コマンドの一般的な形式は次のとおりです。


コマンド名 [/ 修飾子 [,...]]   [ パラメータ [,...]] [/ 修飾子 [,...]] 

コマンドは複数行に渡って入力できます。コマンド全体を指す場合には,コマンド文字列 という用語を使用します。コマンド文字列とは,コマンド名,コマンド修飾子,パラメータ,およびパラメータ修飾子を含む,完全なコマンドの指定を意味します。

個々の DCL コマンドについては,『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』または DCL ヘルプを参照してください。 DCL コマンドの構文についての詳細は,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。

2.1.3 システム・メッセージ

DCL またはユーティリティ内でコマンドが入力されると,システムは実行結果を示すメッセージを戻します。 システム・メッセージ は,次のいずれかを示します。

システム・メッセージを解釈しなければならない場合もあります。たとえば,警告や異常終了が発生した場合,どのように回復すればいいのか判断する必要があります。このような場合には, Help Message 機能を使用します。この機能を使用すれば,システム管理者も普通のユーザも,オンラインで迅速にシステム・メッセージの意味を知ることができます。

Help Message については,『OpenVMS System Messages: Companion Guide for Help Message Users』を参照してください。システム・メッセージについての詳細は,『OpenVMS System Messages and Recovery Procedures Reference Manual』を参照してください。

2.1.4 システム管理用の DCL コマンド・プロシージャ

コマンド・プロシージャを使用すれば,手順の決まった作業を効率的に行えます。コマンド・プロシージャ はいくつかの DCL コマンドの入ったファイルのことです。場合によっては,DCL コマンドが使用するデータも入っています。コマンド・プロシージャを実行すると,システムはそのファイルを読み,中に入っているコマンドを実行します。したがって,いちいちコマンドを会話形式で入力する手間を省けます。コマンド・プロシージャを作成することによって,手順の決まったシステム管理作業を,ユーザのシステムに合わせて自動化することができます。

頻繁に使用する複数のコマンドを入れておくだけで,簡単なコマンド・プロシージャができます。次の例は,GO_WORK.COM というコマンド・プロシージャです。


$ SET DEFAULT [PERRY.WORK] 
$ DIRECTORY 
$ EXIT 

@GO_WORK と入力すると,省略時のディレクトリが [PERRY.WORK] になり,そのディレクトリにあるファイルのリストが表示されます。

複雑なコマンド・プロシージャでは,高度なプログラミング言語の代わりに DCL を使用することができます。コマンド・プロシージャの作成方法についての詳細は,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。

2.1.4.1 バッチ・モードでのコマンド・プロシージャの実行

コマンド・プロシージャをバッチ・キューに登録することによって,コマンド・プロシージャをバッチ・モード で実行することができます。資源が使用可能であれば,システムはバッチ・プロセスを作成し,コマンド・プロシージャ内のコマンドを実行します。ただし,会話型ユーザとのシステム資源の競合を避けるため,通常,バッチ・モードで動作するプロセスの実行優先順位は低くなります。

バッチ・モードでコマンド・プロシージャを実行するのは,次の理由からです。

バッチ用コマンド・プロシージャに自分自身を呼び出すコマンドを入れておくと,ユーザの手を煩わすことなく,繰り返し実行させることができます。たとえば,ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティでディスクのエラーを報告させるようなバッチ用コマンド・プロシージャを作成するとします。このコマンド・プロシージャに自分自身を呼び出すコマンドを入れておくと,このコマンド・プロシージャはスケジューリングされたときに自動的に実行され,エラーが発生しないかぎり実行が繰り返されます。次の例は,SYSTEM_DAILY.COM という自分自身を呼び出すコマンド・プロシージャの例です。


$ SET NOON 
$! Resubmit this procedure to run again tomorrow. 
$! 
$ SUBMIT/KEEP/NOPRINT/QUEUE=SYS$BATCH/AFTER="TOMORROW+1:00"/USER=SYSTEM - 
  SYS$MANAGER:SYSTEM-DAILY.COM; 
$! 
$! Purge the log files 
$ PURGE/KEEP=7 SYS$MANAGER:SYSTEM-DAILY.LOG 
$! 
$! Analyze public disks 
$! 
$ ANALYZE/DISK/LIST=SYS$MANAGER:WORK1.LIS; WORK1: 
$ ANALYZE/DISK/LIST=SYS$MANAGER:WORK2.LIS; WORK2: 
$! 
$! Print listings 
$! 
$ PRINT/QUEUE=SYS$PRINT SYS$MANAGER:WORK1.LIS;,SYS$MANAGER:WORK2.LIS; 
$ EXIT 

2.1.4.2 コンパックが提供するシステム管理用コマンド・プロシージャ

OpenVMS オペレーティング・システムには,システム管理用のコマンド・プロシージャがいくつか用意されています。 表 2-1 に,よく使われるコマンド・プロシージャを示します。

表 2-1 システム管理用コマンド・プロシージャ
コマンド・プロシージャ 機能
SYS$SYSTEM:STARTUP.COM システムのブート時に使用され, OpenVMS の起動に必要な作業を自動的に実行するコマンド・プロシージャ。このプロシージャは変更してはならない。
SYS$STARTUP:SYSTARTUP_VMS.COM システムのブート時に,STARTUP.COM が実行するコマンド・プロシージャ。このコマンド・プロシージャにコマンドを追加しておけば,ブート時に,システム独自の作業を実行させることができる。
SYS$SYSTEM:SHUTDOWN.COM システムを一定の順序で停止する。
SYS$UPDATE:AUTOGEN.COM システム・パラメータや,ページ・ファイル,スワップ・ファイル,ダンプ・ファイルのサイズを,システム構成や作業負荷に見合った値に自動的に設定する。
SYS$UPDATE:VMSINSTAL.COM OpenVMS システムにソフトウェアをインストールする。

2.1.5 システム管理ユーティリティ

オペレーティング・システムとともに,システム管理作業に役立つシステム管理ユーティリティ も多数用意されています。システム管理ユーティリティとは,関連するシステム管理作業をまとめて行うプログラムの総称です。たとえば,ディスクやテープをシステムに認識させる MOUNT ユーティリティや,ファイルを保存または復元する BACKUP ユーティリティなどがあります。

ほとんどのシステム管理ユーティリティでは,操作を実行するための特別な特権が必要です。通常,このようなユーティリティは,省略時の設定ですべての特権を持つ SYSTEM アカウントから実行します。 第 2.2 節 に,SYSTEM アカウントへのログイン方法が説明されています。

たいていのユーティリティは,次のコマンド形式で起動することができます。


RUN SYS$SYSTEM: ユーティリティ名 

ただし,MOUNT ユーティリティや ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティなどは,次に示す DCL コマンドの形式で起動します。


$ ANALYZE/DISK_STRUCTURE

表 2-2 に,システム管理ユーティリティとその用途を示します。本書では,これらユーティリティの使用法について説明しています。ユーティリティ・コマンドとコマンド修飾子については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。

表 2-2 SYSMAN ユーティリティとツール
ユーティリティ名 用途
ACCOUNTING ユーティリティ 資源使用状況のレポート作成。
ACL エディタ ACL の作成と管理。
ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティ Files-11 構造レベル 1,2,および 5 のディスク・ボリュームの有効性検査と,エラーおよび矛盾点のレポート作成。矛盾点の解消にも使用可能。
ANALYZE/AUDIT ユーティリティ システムの機密保護監査ログ・ファイルからの機密保護に関するレポートと要約の作成。システムが作成する大量の監査情報の意味を理解するのに役立つ。
AUTHORIZE ユーティリティ 既存の利用者登録ファイルとネットワーク登録ファイルに対するレコードの変更,または新規の登録ファイルの作成。ライト・データベースの記録の変更にも使用可能。
BACKUP ユーティリティ ファイルやディスク・ボリュームのコピー,保存,復元。
BAD ユーティリティ ブロック・アドレシング可能な装置の解析と,データ格納域として信頼性が低いブロック箇所の記録。
+CLUE (Crash Logg Utility Extractor) VAX システムで,クラッシュ・ダンプについての情報を得る。

++Alpha システムでは,SDA (System Dump Analyzer) 機能に CLUE 機能が含まれている。

DECevent Event Management ユーティリティ Alpha システムで,システム・イベント・ログ・ファイル内のエントリから ASCII レポートを作成する。
ERROR LOG ユーティリティ システム・エラー・ログ・ファイルの内容のレポート作成。
EXCHANGE ユーティリティ オペレーティング・システムが認識しない,非標準の形式で書かれた大容量記憶ボリュームとのデータのやり取り。
MSGHLP ユーティリティ DCL コマンドから返されたシステム・メッセージに関する情報へのアクセス。
INSTALL ユーティリティ 性能の改善またはイメージ特権の強化。
LATCP ユーティリティ OpenVMS ホスト上での LAT ソフトウェアの設定と制御。 LAT ソフトウェアを利用することによって,複数の遠隔システムにターミナルとプリンタを接続可能にする。
+LADCP ユーティリティ VAX システム上で,OpenVMS ホスト上でのローカル・エリア・ディスク (LAD) ・ソフトウェアの設定と制御。LAD ソフトウェアは,InfoServer システムと併用。
+LMCP ユーティリティ DECdtm サービスによって使用されるトランザクション・ログの作成と管理。
MIME ユーティリティ MIME でエンコードしたメール・メッセージの OpenVMS システムでの読み込みと構築。
MONITOR ユーティリティ システム全体の性能の監視。
MOUNT ユーティリティ ディスクまたは磁気テープ・ボリュームを使用可能にする。
ネットワーク制御プログラム (NCP) DECnet ネットワークの設定と制御,監視,テスト。
ネットワーク制御言語 (NCL) DECnet-Plus ネットワークの設定と制御,監視,テスト。
Operator Communication Manager(OPCOM) ツール システム・ユーザとの通信。
SYSGEN ユーティリティ ページ・ファイルとスワップ・ファイル,ダンプ・ファイルの作成とインストール。および,システム・パラメータの管理。

+VAX システムでは,デバイス・ドライバのロードと接続にも使用される。

SYSMAN ユーティリティ システム管理の集中化。システム管理作業を複数のノードで同時に実行可能。

++Alpha システムでは,デバイス・ドライバのロードと接続にも使用される。

TCP/IP サービス管理制御インタフェース TCP/IP サービスの構成と管理。


+VAX のみ
++Alpha のみ

本書では,次のユーティリティについては説明していません。それぞれ,該当するマニュアルを参照してください。

ユーティリティ 参照箇所
BAD (Bad Block Locator) ユーティリティ 『OpenVMS Bad Block Locator Utility Manual』,
オンライン・ヘルプ
EXCHANGE (Exchange) ユーティリティ 『OpenVMS Exchange Utility Manual』,
オンライン・ヘルプ
LASTCP と LADCP ユーティリティ 『InfoServer Client for OpenVMS LASTCP and LADCP Utilities Manual』
NCP (ネットワーク制御プログラム) ユーティリティ 『DECnet for OpenVMS Network Management Utilities』,
オンライン・ヘルプ
NCL (ネットワーク制御言語ユーティリティ) 『DECnet-Plus Network Control Language Reference』
TCP/IP サービス管理制御インタフェース 『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』


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