OpenVMS
システム管理者マニュアル


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8.6.1.1 システム・パラメータによる省略時の特性の設定

ノード上のすべてのターミナルの省略時のターミナル特性を変更するには,システム・パラメータ TTY_DEFCHAR と TTY_DEFCHAR2 に値を指定します。これらのパラメータについての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。システム・パラメータの設定については, 第 15.5 節 を参照してください。

8.6.1.2 システム起動時の特性設定

システムをブートするたびに SET TERMINAL コマンドを実行する場合は,サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャにコマンドを登録します。システムの構成が簡単な場合は,SYSTARTUP_VMS.COM にコマンドを登録します。システムの構成が複雑で,たくさんのコマンドが必要な場合,別のコマンド・プロシージャ (TERM_SETUP.COM など) を作成し,その装置構成コマンド・プロシージャを SYSTARTUP_VMS.COM から実行します。装置構成コマンド・プロシージャの実行が終了すると,制御は SYSTARTUP_VMS.COM に戻ります。

重要

スタートアップ・コマンド・プロシージャに登録する SET TERMINAL コマンド数に上限を設けることをおすすめします。数百個といった大量の SET TERMINAL コマンドが含まれていると,システムの起動が大幅に遅くなります。ターミナルの数が多い場合は, 第 8.6.1.1 項 で説明したように, TTY_DEFCHAR と TTY_DEFCHAR2 を使って省略時の特性を変更します。

次の例に示すように,SET TERMINAL コマンドには,ターミナルの所有者名などの注釈を付けることができます。


次は,スタートアップ・プロシージャで使用可能なターミナル装置設定コマンドの例です。


$ SET TERMINAL TTC2:/SPEED=300/DEVICE_TYPE=LA36/PERMANENT  !JONES 
$ SET TERMINAL TTD1:/SPEED=9600/PERMANENT                  !WRENS 
$ SET TERMINAL TTD4:/SPEED=1200/PERMANENT                  !JRSMITH 
$ SET TERMINAL TTG4:/SPEED=1200/MODEM/PERMANENT            !DIALUP1 

8.6.2 仮想ターミナルの管理

仮想ターミナル機能を使用することにより,ユーザはプロセスを終了することなく,つまり,仮想ターミナルでプロセスをアクティブにしたまま,物理ターミナルを切り離すことができます。仮想ターミナルの用途は次のとおりです。

仮想ターミナル機能の利用

VAX システムで仮想ターミナルを設定するためには,次のコマンドを入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:SYSGEN
SYSGEN> CONNECT VTA0/NOADAPTER/DRIVER=TTDRIVER
SYSGEN> EXIT

Alpha システムで仮想ターミナルを設定するためには,次のコマンドを入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
 
SYSMAN> IO CONNECT VTA0/NOADAPTER/DRIVER=SYS$TTDRIVER
 
SYSMAN> EXIT

仮想ターミナルの装置名は VTAn: です。 SYSGEN または IOGEN コマンドの入力後,ログイン前に TT2$M_DISCONNECT 特性が設定されたターミナルはすべて仮想ターミナルと見なされます。

注意

TT2$M_DISCONNECT 特性が設定されている場合, LAT ターミナル (LTAn:) は切り離すことができますが,遠隔ターミナル (RTAn:) は切り離せません。

TT2$M_DISCONNECT 特性は,次のいずれかの方法で設定することができます。

仮想ターミナルの使用制御

仮想ターミナル・セッションは,次の方法で制御することができます。

8.6.2.1 動的な非同期 DECnet for OpenVMS 通信における仮想ターミナルの利用 (VAX のみ)

動的な非同期 DECnet 通信を行うためには,仮想ターミナルが必要です。動的な非同期回線は,静的な非同期回線や他の DECnet 回線など,通常,2 つのノード間のダイアルアップ接続中はネットワーク専用に切り替えられるものとは異なります。ターミナル回線が動的に非同期 DDCMP 回線に切り換えられるのは,次の条件が満たされる場合です。

動的な非同期 DECnet 回線を設定する手順についての詳細は, 『DECnet-Plus for OpenVMS Applications Installation and Advanced Configuration』 を参照してください。

8.6.2.2 仮想ターミナルの物理ターミナル・タイプの決定

仮想ターミナルに関連付ける物理ターミナル・タイプを決定する必要が出てくることがあります。これは,直接接続回線と LAT 回線の両方が仮想型の場合,システムのスタートアップ時に LAT ターミナルのターミナル特性が判らないことがあるためです。 直接接続回線の特性は,システムのスタートアップ時に設定することができます。しかし,LAT 回線の特性を決定するためには, SET TERMINAL/INQUIRE コマンドを入力する必要があります。 LAT ソフトウェアについては, 第 26.1 節 を参照してください。

注意

SET TERMINAL/INQUIRE コマンドを使用すると,先読みを可能にするバッファがクリアされます。

次は,システムのスタートアップ時に直接接続回線と LAT 回線の両方の物理ターミナル特性を決定するコマンド・プロシージャです。次の行をシステム単位のログイン・プロシージャ (SYLOGIN.COM) に登録しておきます。このプロシージャでは,スタートアップ・プロシージャがすべてのスイッチをセットし,LAT 回線を "unknown" と設定していると仮定しています。


$ DEVCLASS = 'F$GETDVI ("SYS$COMMAND","DEVCLASS")' 
$ IF DEVCLASS .ne. 66 then goto alldone   !Not a terminal 
$ DEVTYPE = 'F$GETDVI ("SYS$COMMAND","DEVTYPE")' 
$ IF DEVTYPE .ne. 0 then goto got_devtype 
$ SET TERMINAL/INQUIRE   !Try to determine the device type 
$ DEVTYPE = 'F$GETDVI ("SYS$COMMAND","DEVTYPE")' 
$ got_devtype: 
$! Can now dispatch on 'devtype' to do different things depending 
$! on the type of terminal. 
$ alldone: 

LAT ターミナルを識別するためには,F$GETDVI レキシカル関数に TT_ACCPORNAM を指定します。この関数は,ターミナル・サーバのノード名とポート名を戻します。

8.7 モデムの管理

モデム は電気的信号をあるデータ形式から別のデータ形式に変換する装置です。モデムは通常,双方向に対してこの変換を行います。具体的にはモデムは,ローカル・データを他のデータ形式に変換し結果を送信することができ,一方データを受信し,データをローカル・データの形式に変換し戻すことができます。ほとんどのモデムはデータをデジタル形式からアナログ形式に変換し,アナログデータをデジタル形式に変換し直します。

1組のモデムがあれば,デジタル・データによる交信を電話回線などのアナログ・メディアを介して送信し,遠隔地で再び交信内容をデジタル・データに戻して受信ことができます。モデムはターミナルやローカル・コンピュータを遠隔地のコンピュータ・システムに互いに接続するために使用されます。

以降の節では,次のトピックについて説明します。

8.7.1 モデムの理解

モデムはキャリア信号上のデジタル情報を変調することによって,デジタル信号をアナログ信号に変換します。逆に,モデムはアナログ信号をデジタル信号に逆変調する,すなわち展開することによって,アナログ送信機器(例えば電話回線)上のアナログ信号をデジタル信号に変換します。2つの用語,変調(MOdurator)と逆変調(DEModurator)からモデム(Modem)という名前がつきました。

図 8-1 はターミナルと遠隔コンピュータ・システム間の交信を示しています。これは通常コンピュータ・システム間の交信にも適用されます。一方のモデムは,アナログ電話接続のローカルな終端点でデジタル信号をアナログ信号に変換し,もう一方のモデムはアナログ電話接続の遠隔の終端点でアナログ信号をデジタル信号に変換します。

図 8-1 基本的なモデムの構成


モデムは通常ペアで使用されます。それぞれのモデムは送信装置としてと受信装置としての両方の動作をします。

モデムを構成する場合,次の事項に注意します。

いったんモデムの接続が確立されると,接続した回線にデータの交信を重ね合わせて載せることができます。ほとんどのモデムが提供している基本的な非同期シリアルASCII通信プロトコル上で,広範な交信プロトコルを最低1つ,場合によっては複数重ねることができます。ポイント・ツー・ポイント・プロトコル(PPP)と,非同期DECnet はモデム・リンク上で操作できるプロトコルの例です。

表 8-3 は, モデムに関連する通信プロトコルについての OpenVMS 文献です。

表 8-3 モデム関連文献
文献 説明
DECnet-Plus for OpenVMS Network Management 2ノード間での動的非同期 DECnet 接続を確立するためのモデムの使用法を説明。非同期 DECnet はモデム・データ・リンクを介して操作できるプロトコル。
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』 PPP (Alpha のみ) と SLIP プロトコルおよび TCP/IP Services を使用して,シリアル接続を確立するためのモデムの使用法を説明。
『OpenVMS Guide to System Security』 DECnet モデム・コネクションとダイアルイン・モデム・ラインの保守について説明。
『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (下巻) 』 PPP ユーティリティとそれに関連するコマンドを説明します。
本書『TCP/IP Networking on OpenVMS Systems』 遠隔システム間と交信するため,OpenVMS Alpha と OpenVMS VAX 上での PPP の使用法について説明。
第 8.6.2 項 仮想ターミナルの構成と管理の方法について説明。
『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』とオンライン・ヘルプ DCLコマンド SET HOST/DTE について,遠隔システムへモデムを接続する方法を説明。

DCLコマンド CONNECT と DISCONNECT について,仮想ターミナルを設定,切断する方法を説明。

直接接続または間接接続

モデムをコンピュータまたはターミナルに構成するには,モデムをどんなタイプのアクセス方法でユーザのコンピュータ環境に接続するのかと,どのシリアル通信ポートが一番ユーザの要求に適するかを決めることが必要です。

モデムを直接ホスト・システムに接続することも,間接的に中間ネットワーク・サーバに接続することもできます。ネットワーク・サーバの例としては DECserver等があります。この2つの接続タイプを以下に説明します。

いずれのタイプの接続の場合でも,モデムが接続されているホスト,あるいは,サーバが機能していない場合は使用できません。

図 8-2 は,モデムの間接構成と直接構成を表わしています。 Terminal 1 とTerminal 2は,DECserver とLAT プロトコルを介して Host 1 とHost 2にそれぞれ間接接続されています。 Terminal 3 は, Host 3 に直接接続されています。

図 8-2 間接モデム構成と直接モデム構成


どのシリアル通信ポートを使用するかと,ホストかターミナル・サーバのいずれに接続するか決めた後は,使用するポートのピンアウトとコネクタ,およびモデムをポートにどのように配線するかを決めます。モデムとポートについては関連マニュアルを参照してください。 第 8.7.2 項 も参照してください。

8.7.2 モデムの設定

モデムの設定は次の手順で行います。

  1. 接続とピンアウトの配線の決定
    コネクタとピンアウトにより,モデムとポートを接続するために必要な特定の配線アダプタやケーブルが決まります。モデムのコネクタとピンアウト,およびモデムを接続するポートのコネクタとピンアウトを決定するにはモデムとポートの関連マニュアルを参照してください。
    表 8-4 は, EIA-232 DB25 接続の2つの共通ピンアウトです。

    表 8-4 EIA-232 DB23 接続の共通ピンアウト
    ピンアウト 説明
    データ・ターミナル装置 (DTE) 送信情報はピン2,受信情報はピン3, 他は標準ピン割り当て。
    データ通信装置 (DCE) 送信情報はピン3,受信情報はピン2, 他は EIA-232 ピン割り当て。

    ストレートスルー,クロスオーバ配線

    ストレートスルー,クロスオーバ配線について次に説明します。


    表 8-5 は,モデムを配線するために使用される最も一般的なコネクタを説明しています。

    表 8-5 コネクタ
    コネクタ1 説明
    DB9 9-ピン・コネクタは 4ピン1列と5ピン1列からなる。 DB9 は EIA-574 を持っており, PCシステムまたは MicroVAX コンソールで使用された旧標準接続で通常使用される。
    DB25 25-ピン・コネクタ, 12ピン1列と 13ピン1列からなる。 DB25 は通常, EIA-232 ピンアウトを使用し,データ・ターミナル装置(DTE),またはデータ通信装置(DCE)に配線されます。
    MMJ 6-ピン・モジュラ・ジャック。DEC-423 信号線を使用し通常 DECconnect 配線と呼ばれる。 DECconnect 配線は装置の配線を大きく簡素化する。装置接続に適合するアダプタを用意するだけでよい。対応する BC16E ケーブルは障害なく配線できる。


    1この表のすべてのコネクタはオス/メスいずれでも使用できます。


    共通コネクタ用ピンアウトとアプリケーションを 表 8-6 に掲げます。

    表 8-6 コネクタ・アプリケーション
    コネクタとピンアウト アダプタ1
    EIA-574 PC互換ピンアウトつき DB9 9ピン・コネクタ DB9 コネクタはほとんどのPC, AlphaStation, AlphaServer システムに装備されている。 H8571-J または互換 MMJ アダプタを使用する。
    EIA-574 ピンアウト以前の DB9 9ピン・コネクタ 各種 MicroVAX システムのコンソール・コネクタは EIA-574 ピンアウト以前のピンアウトを使用する。 H8575-B または互換 MMJ アダプタを使用する。
    EIA-232 接続の DB25 25ピン・コネクタ 多くのターミナルの通信ポート 次のリストから適切なアダプタを使用する, 2 あるいは次のリストに掲載されていないアダプタについては弊社の営業担当または弊社の販売代理店に問い合わせる。

    • H8575-A

      MMJ アダプタへの DB25 メス, ストレートスルー 3

    • H8571-C

      MMJ アダプタへの DB25 オス,クロスオーバ 4

    • H8575-E

      MMJ アダプタへの DB25 オス,ストレートスルー 3

    • 互換アダプタ

    8ピン DIN (丸型) コネクタ   H8584-AB または互換 MMJ アダプタを使用。
    MMJ(変更モジュラ・ジャック) DECconnect ソケット    


    1この表は使用できる DECconnect アダプタのサブセットのみを表示。この表のアダプタは特定のアプリケーションの要件を満たすものではありません。この他の DECconnect アダプタがコンパックから提供されています。
    2掲示されたオスメスの区別は,アダプタ上のコネクタについて。
    3ストレートスルーは, EIA-232 送信データ信号が DEC-423 送信データ信号に配線されており,以下も同様に配線されていることを表わす。
    4クロスオーバは, EIA-232 送信データ信号が DEC-423 受信データ信号に配線されており,逆もまた同様に配線されており, DTR と DSR も同様に接続されている。


    ユーザ・アプリケーションが次に掲げたシリアル配線接続のいずれも使用していない場合,その装置特有のピンアウトと要件を決定する必要があります。また,そのアプリケーションに適切なケーブル接続も決定します。ハードウェア・サポート担当者,弊社のサポート要員,弊社の代理店のいずれかに問い合わせます。


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