OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.4.2.2 Backup Manager の起動

Backup Manager を起動するには,DCL のプロンプトで次のコマンドを入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:BACKUP$MANAGER

操作を開始すると,BACKUP ユーティリティからの出力が自動的に表示されます。いつでも出力を中断して (Ctrl/P),スクロールすることができます。また,Ctrl/T で状態を表示したり,Ctrl/C で現在の BACKUP 操作を停止したりすることもできます。

11.5 セーブ・セット

BACKUP コマンドを使用してファイルをテープにセーブした場合,それらファイルはセーブ・セットと呼ばれる特殊なファイルに書き込まれます。またセーブ・セットは,/SAVE_SET 修飾子を使ってディスクに作成することもできます。セーブ・セットは,それが置かれている媒体に従って分類されており, 表 11-3 は,セーブ・セットの保管に使用可能な媒体をまとめたものです。

表 11-3 セーブ・セットの種類
媒体 参照箇所
磁気テープ 第 11.5.1 項
Files--11 ディスク 第 11.5.2 項
遠隔ノードの Files--11 ディスク
(ネットワーク・セーブ・セット)
第 11.5.3 項
順編成ディスク・セーブ・セット 第 11.5.4 項

11.5.1 磁気テープ・セーブ・セット

BACKUP セーブ・セットの保管媒体として最もよく使用される媒体は,磁気テープです。ディスク媒体より価格が安く,コンパクトで,保管が容易です。データの保存や復元を行うときに複数のテープを使用することができます。つまり,バックアップ中,テープが終端に達したらテープを巻き取り,次のテープに入れ換えてから,処理を継続することができます。

BACKUP は,あらゆる磁気テープ・ファイルを BACKUP セーブ・セットと見なします。また,BACKUP コマンド行の入力側と出力側の両方にセーブ・セットを指定することはできません。したがって,磁気テープ間で BACKUP 操作は行えないことになります。

磁気テープ・セーブ・セットのディスクへのコピーには,BACKUP コマンドを使用してください。ただし,/INTERCHANGE 修飾子を使用して作成した磁気テープ・セーブ・セットは,DCL の COPY コマンドを使用できます。

磁気テープ・セーブ・セット指定の長さは,次に示すように区切り文字のピリオド (.) とファイル・タイプを含めて 17 文字までです。

WKLY27JAN2000.BCK

テープからデータを復元するとき,入力側の磁気テープのセーブ・セット名が省略された場合,BACKUP はテープの次のセーブ・セットを復元します。ただし,入力セーブ・セット修飾子に /REWIND が指定された場合は,テープを巻き戻し,先頭のセーブ・セットを読み取ります。

11.5.2 Files--11 ディスク・セーブ・セット

Files--11 ディスクにセーブ・セットを書き込む場合は,出力セーブ・セット修飾子として /SAVE_SET を指定する必要があります。この修飾子は,ファイルのコピーではなくセーブ・セットを作成するよう,出力ボリュームに指示します。また,ディスクは Files--11 ボリュームとしてマウントし,ボリューム・セットの場合はすべてのボリュームをマウントしておく必要があります。

BACKUP は,Files--11 セーブ・セットを Files--11 または順編成ディスクのどちらの形式のセーブ・セットとしても読み取ることができます。

Files--11 ディスクに保管されたセーブ・セットは標準の OpenVMS ファイルであり,コピーや名前変更,削除,バックアップを行うことができます。

11.5.3 ネットワーク・セーブ・セット

セーブ・セット指定に遠隔ノードのノード名を指定することによって,そのノードに接続されている Files--11 ディスクにセーブ・セットを作成したり,ディスクのセーブ・セット (ネットワーク・セーブ・セット) を読み取ったりすることができます。 遠隔ノードとは,ネットワークを介して,使用中のノード (ホスト・ノード) からアクセス可能なノードです。ネットワーク・セーブ・セットは,遠隔ノードの公用アクセス可能なディスク,すなわち,/SYSTEM か /GROUP,/CLUSTER 修飾子を使用して遠隔ノードからマウントしたディスクに存在する必要があります。

遠隔ノードのボリューム保護とファイル保護の設定によっては,ネットワーク・セーブ・セット指定にアクセス制御文字列を指定しなければならないことがあります。そうしたアクセス制御文字列は,次の形式でユーザ名とパスワードから構成します。


遠隔ノード名"ユーザ名   パスワード"::装置名:[ ディレクトリ ] 


次は,遠隔ノードの DOUBLE にネットワーク・セーブ・セットを作成している例です。


$ BACKUP
_FROM: [MY_DIR]
_TO: DOUBLE"username password"::DBA0:SAVEIT.BCK/SAVE_SET

代理ネットワーク・アクセスのときのように,遠隔ノードへのアクセスに権限が必要ない場合は,アクセス制御文字列を省略してください。アクセス制御文字列と代理ネットワーク・アクセスについては,『DECnet for OpenVMS Networking Manual』で詳しく説明しています。

11.5.4 順編成ディスク・セーブ・セット

順編成ディスク・セーブ・セットでは,Files--11 ディスク・ボリュームを,磁気テープ・ボリュームのように順に処理することができます。順編成ディスク・セーブ・セットを使用する第 1 の利点は,マルチボリューム・セーブ・セットを構成するボリュームを一度に 1 つずつマウントできることです。これは,大容量の固定ディスク装置と小容量の着脱式ディスク装置があるだけで,テープ・ドライブが搭載されていないシステムで特に有効です。

順編成ディスクの 1 つが一杯になると,BACKUP は次のディスクをマウントするよう求めます。データの保存や復元で複数のディスクを使用することができます。つまり,ディスクを入れ換えながら処理を継続することができるのです。

マルチボリューム順編成ディスク・セーブ・セットを読み書きするためには,LOG_IO 特権か PHY_IO 特権が必要です。

順編成ディスク・セーブ・セットを作成する場合は,まず,DCL の MOUNT/FOREIGN コマンドを使用して,セーブ・セットの最初のボリュームをマウントしてください。これにより,ディスクはフォーリン・ボリュームとしてマウントされますが,BACKUP は Files--11 構造を使ってディスクを管理します。

順編成ディスクに保存を行う場合は,出力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。また順編成ディスクからの復元の場合は,入力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。 /SAVE_SET 修飾子が省略された場合,BACKUP は次のエラー・メッセージを出します。


%BACKUP-F-IMGFILSPE, /IMAGE specification must only have device name 

順編成ディスク・セーブ・セットにディレクトリ名を指定する必要はありません。順編成ディスク・セーブ・セットは,必ずマスタ・ファイル・ディレクトリ [000000] に書き込まれます。マスタ・ファイル・ディレクトリ以外のディレクトリが指定された場合,保存操作ではその指定は無視されます。また,復元または一覧出力操作では,ファイルが見つからないというエラー・メッセージが表示されます。

省略時の設定で BACKUP は最初の順編成ディスク・ボリュームを初期化せず,継続順編成ディスク・ボリュームだけ初期化します。このため,最初の順編成ディスク・ボリュームに /INITIALIZE 修飾子を指定しない場合は,次のことに注意する必要があります。

順編成ディスク・セーブ・セットに使用するボリュームは,セーブ・セット専用にしてください。一般のファイル用に使用していたボリュームを順編成ディスク・ボリュームとして使用するためには,初期化を行う必要があります。1 つの順編成ディスクに書き込み可能なセーブ・セット数は最大で 12 個です。1 つのディスクに 12 個を超えるセーブ・セットを作成したい場合は, Files--11 ディスク・セーブ・セットを使用してください。

BACKUP は,順編成ディスク・セーブ・セットを順編成ディスクまたは Files--11 のどちらの形式のセーブ・セットとしても読み取ることができます。

11.6 BACKUP が扱うファイル形式

VAX システムにおいて, BACKUP がディスクあるいは磁気テープに保存可能なファイルとディレクトリの形式は,Files--11 構造のレベル 1 とレベル 2 ディスク形式のものです。その逆の復元も, Files--11 構造のレベル 1 と 2 ディスクの両方に対して行うことができます。

VAX システムで Alpha システム・ディスクのイメージ・バックアップを行うと,復元操作により Alpha システムが正常にブートされます。

Alpha システムにおいては,BACKUP は Files--11 構造のレベル 2 またはレベル 5のファイルとディレクトリをディスクと磁気テープのいずれにも保存できます。必要な場合,BACKUP を使用して,保存されたファイルとディレクトリを Files--11 構造のレベル 2 またはレベル5 ディスクへ復元も行えます。

注意

OpenVMS Alpha オペレーティング・システムは, Files--11 構造のレベル 1 形式に対応していません。

ISO 9660 形式の媒体上のファイルのバックアップを行うことはできませんが,ISO 9660 形式の媒体に格納されたセーブ・セットを復元することはできます。

Files--11 ディスク構造についての詳細は, 第 9.1.1.2 項 を参照してください。 ISO 9660 装置についての詳細は, 第 8.2.2 項 を参照してください。

11.7 プロセス・クォータによる効率的なバックアップの実現

バックアップを行うプロセス,すなわち,BACKUP コマンドを入力するか,バックアップ・コマンド・プロシージャをキュー登録するプロセスに対するプロセス・クォータを正しく設定することによって,バックアップ効率を最適化することができます。これは,ストリーミング・テープ装置を使用する場合,特に大切です。

作業方法

プロセス・クォータによって効率的なバックアップを実現する手順を次に示します。

  1. バックアップに使用するアカウントを決める。既存のアカウントを利用することも,バックアップ専用にアカウントを作成することもできる。アカウントの作成については, 第 7.6 節 を参照。

  2. AUTHORIZE ユーティリティを使用して,バックアップに使用するアカウントの現在のクォータの値を確認する。たとえば SYSTEM アカウントを使用してバックアップを行うのであれば,次のコマンドを入力する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> SHOW SYSTEM
    


  3. SYSMAN ユーティリティを使用して,システム・パラメータの WSMAX と CHANNELCNT の値を確認する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX
    %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM 
    Node DIEM:   Parameters in use: ACTIVE 
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    WSMAX                      2600      1024        60    100000 Pages       
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    CHANNELCNT                 127       127        21     2047 Channels 
     
    SYSMAN> EXIT
    $ 
    


    WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。これらの値を使用して,適切なプロセス・クォータを設定する。

  4. AUTHORIZE を使用して,ステップ 3 で求めたプロセス・クォータと 表 11-4 に示す最適値を比較する。示されている値は,効率的なバックアップを実現するための最適値である。

    表 11-4 効率的なバックアップのための最適プロセス・クォータ
    プロセス・クォータ 最適値
    WSQUOTA システム・パラメータ WSMAX に等しい値
    WSEXTENT WSQUOTA に等しい値
    PGFLQUOTA WSEXTENT に等しいか,大きい値
    FILLM システム・パラメータ CHANNELCNT より小さい値
    DIOLM 4096 か,FILLM 値の 3 倍のどちらか 大きい方
    ASTLM 4096 か, DIOLM 値より100 大きな値か, FILLM 値の 3 倍のうちの一番 大きな値
    BIOLM FILLM に等しい値
    BYTLM 次の式の結果に等しいか,大きい値:
    (256*FILLM)+(6*DIOLM)
    ENQLM FILLM より大きい値

  5. 必要ならば,AUTHORIZE の MODIFY コマンドを使用してプロセス・クォータを変更する。変更を有効にするためには,いったんログアウトする必要がある。プロセス・クォータの変更方法についての詳細は, 第 7.7.2 項 を参照すること。
    表 11-5 は,たいていのシステム構成で使用可能な,具体的なプロセス・クォータのリストである。ディスクのフラグメンテーションがひどかったり,システムの使用が激しいときにバックアップを行ったりする場合は, WSQUOTA と FILLM 値を小さくする。

    表 11-5 プロセス・クォータ例
    プロセス・クォータ 推奨値
    WSQUOTA 16384
    WSEXTENT WSQUOTA に等しいか,大きい値
    PGFLQUOTA 32768
    FILLM 128
    DIOLM 4096
    ASTLM 4096
    BIOLM 128
    BYTLM 65536
    ENQLM 256


次に,AUTHORIZE ユーティリティを起動して, SYSTEM アカウントのプロセス・クォータを設定するときに使用するコマンドを,順を追って紹介します。実際の操作で別のアカウントからバックアップを行う場合は,そのアカウントのプロセス・クォータを確認してください。

  1. 現在のクォータを確認する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> SHOW SYSTEM
    Username: SYSTEM                           Owner:  SYSTEM MANAGER 
    Account:  SYSTEM                           UIC:    [1,4] ([SYSTEM]) 
    CLI:      DCL                              Tables: DCLTABLES 
    Default:  SYS$SYSROOT:[SYSMGR] 
                                     . 
                                     . 
                                     . 
    Maxjobs:         0  Fillm:        40  Bytlm:        32768 
    Maxacctjobs:     0  Shrfillm:      0  Pbytlm:           0 
    Maxdetach:       0  BIOlm:        18  JTquota:       1024 
    Prclm:          10  DIOlm:        18  WSdef:          256 
    Prio:            4  ASTlm:        24  WSquo:          512 
    Queprio:         0  TQElm:        20  WSextent:      2048 
    CPU:        (none)  Enqlm:       200  Pgflquo:      20480 
                                     . 
                                     . 
                                     . 
    UAF> EXIT
    %UAF-I-NOMODS, no modifications made to system authorization file 
    %UAF-I-NAFNOMODS, no modifications made to network authorization file 
    %UAF-I-RDBNOMODS, no modifications made to rights database 
    $
    


    この例では,SYSTEM は次のクォータ値を持つ。

    WSQUOTA 512
    WSEXTENT 2048
    PGFLQUOTA 20480
    FILLM 40
    DIOLM 18
    ASTLM 24
    BIOLM 18
    BYTLM 32768
    ENQLM 200

  2. SYSMAN ユーティリティを使用して,システム・パラメータの WSMAX とCHANNELCNT の値を確認する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX
    %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM 
    Node DIEM:   Parameters in use: ACTIVE 
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    WSMAX                      2600      1024        60    100000 Pages       
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    CHANNELCNT                 127       127        21     2047 Channels 
     
    SYSMAN> EXIT
    $ 
    


    WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。

  3. ステップ 3 で求めたプロセス・クォータと 表 11-4 に示す値を比較し,適切な値を設定する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> MODIFY SYSTEM/WSQUOTA=2600
    UAF> MODIFY SYSTEM/WSEXTENT=2600
    UAF> MODIFY SYSTEM/DIOLM=4096
    UAF> MODIFY SYSTEM/ASTLM=4096
    UAF> MODIFY SYSTEM/BIOLM=40
    UAF> MODIFY SYSTEM/BYTLM=34816
    UAF> EXIT
    

  4. プロセス・クォータを有効にするため,いったんログアウトして,ログインしなおす。


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