OpenVMS
システム管理者マニュアル


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第 11 章
BACKUP の使用法

OpenVMS の BACKUP ユーティリティを使用して,ファイル,ディレクトリ,またはディスクのコピーを作成しておくことによって,データの消失や破損に備えることができます。ディスク・ドライブの障害などの問題が発生した場合は,作成したコピーを復元して,最小限の損失で作業を再開することができます。

本章の内容

本章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
バックアップ方法の定式化 第 11.3 節
効率的なバックアップのためのプロセス・クォータの設定 第 11.7 節
ディスクとテープの使用 第 11.8 節
BACKUP セーブ・セットの内容の表示 第 11.10 節
ユーザ・ディスクとボリューム・シャドウ・セットのバックアップ 第 11.15 節
ユーザ・ディスクとボリューム・シャドウ・セットの復元 第 11.16 節
システム・ディスクのバックアップと復元 第 11.17 節
データの整合性チェック 第 11.18 節
問題が発生したときの対処 第 11.19 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
バックアップのタイプ 第 11.2 節
BACKUP コマンド行 第 11.4.1 項
The Backup Manager 第 11.4.2 項
セーブ・セット 第 11.5 節
BACKUP のファイル形式 第 11.6 節
ボリュームの初期化 第 11.8.1 項
OPCOM とボリューム 第 11.9 節
マルチボリューム BACKUP 処理 第 11.11 節
BACKUP によるテープ・ラベル処理 第 11.12 節
スタンドアロン BACKUP (VAX のみ) 第 11.17.2 項

バックアップ媒体が Fibre Channel インターコネクトに接続されている場合の BACKUP の使用法については,『Compaq OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

11.1 BUCKUP 作業の概要

BACKUP をデータ消失の防止手段として有効に活用するためには,定期的に大切なデータのバックアップを取り,必要な場合にそのデータを復元する方法を理解しておく必要があります。

システム管理者は,自分のファイル,ディレクトリ,ディスクばかりでなく,システム・ディスクのバックアップも取ってください。スタンドアロン型のワークステーションを使用している場合,自分のシステム・ディスクのバックアップを取るのは,たいていシステム管理者一人の仕事です。使用しているシステムが大規模なクラスタ型コンピュータ・システムのメンバの場合は,たいていオペレータかシステム管理者がシステム・ディスクのバックアップを取ります。

システム・ディスクのバックアップを取る方法には,次の 2 種類があります。

BACKUP でイメージ・バックアップを行うと,ディスクのフラグメンテーションが解消します。このフラグメンテーションは,ディスクにファイルを作成したり,ディスク・ファイルを大きくしたりしていくにつれて,発生する現象です。連続するブロックにファイルを書き込むことが不可能な場合,ファイル・システムはファイルをフラグメンテーションして書き込みます。このため,最終的にディスクのフラグメンテーションはひどくなり,システム性能が低下することになります。

フラグメンテーションを解消したい場合は,ディスクのイメージ・バックアップを取り,そのバックアップ・コピーを復元してください。イメージ・バックアップの復元では,BACKUP はディスク上にファイルを連続して書き込みます。もう 1 つ,/SAVE_SET 修飾子を使わずに,ディスク間でイメージ・バックアップを取る方法もあります。これは,機能的にはシステム・ディスク全体のコピーを作成するのと同じことであり,ファイルが連続して書き込まれます。

注意

レイヤード製品の中には,専用のバックアップ・プロシージャが用意されているものがあります。詳細は,レイヤード製品のマニュアルを参照してください。

11.2 バックアップのタイプ

バックアップ操作には,次の表に示すいくつかのタイプがあります。

操作 説明
ファイル操作 ファイルやディレクトリを個別に処理する。 第 11.13 節 を参照。
選択的操作 バージョン番号,ファイル・タイプ,UIC,作成日時,満了日,変更日などの基準に従い,選択的にファイルやボリュームを処理する。

このバックアップでは,ワイルドカード文字と入力ファイル選択修飾子 (/BACKUP, /BEFORE, /BY_OWNER [/OWNER_UIC], /CREATED, /EXCLUDE, /EXPIRED, /MODIFIED, /SINCE など) を利用する。詳細は 第 11.13 節 を参照。

物理操作 ファイル構造を無視し,論理ブロック単位でボリューム全体をコピー,セーブ,復元,比較する。
イメージ操作 入力ディスクのすべてのファイルを処理する。このイメージ操作には,次の 4 つの種類がある。

  • イメージ・バックアップ (完全バックアップ) は,ディスクまたはボリューム上のすべてのファイルのコピーを セーブ・セットと呼ばれる特殊ファイルに保存する。ディスクに初めて行うバックアップは,イメージ・バックアップである必要がある。初めてのバックアップで,追加型バックアップを行うことはできない。

  • イメージ復元 は,出力ディスクを初期化して,ボリューム全体を復元する。

  • イメージ・コピー 操作は,出力ディスクを初期化して,ボリューム全体をコピーする。イメージ・バックアップの内容は,論理的には入力ディスクの内容と同一。

  • イメージ比較 操作は,ボリューム全体の内容を比較する。

イメージ・コピーやイメージ・バックアップ機能は入力ボリュームのすべてのファイルを処理するため,ファイル選択修飾子を使用することはできない。ただし,イメージ・セーブ・セットからのファイルやディレクトリの復元では,選択的な操作を行うことができる。

追加型操作 追加型操作には,次の 2 つの種類がある。

  • 追加型バックアップ は,前回,/RECORD 修飾子を使用して行われたバックアップ以降に作成または変更されたファイルのみセーブする。/RECORD 修飾子は,ファイルのバックアップを行った日時を記録する。

  • 追加型復元 操作は,追加セーブ・セットを復元する。追加型復元操作を行うには, /INCREMENTAL コマンド修飾子を指定する。詳細は 第 11.16.2 項 を参照すること。

2 種類の BACKUP 操作である,ファイル操作とイメージ操作は, ODS-5 ファイル名から ODS-2 ファイル名への変換をサポートします。詳細については, 第 9.5.5.3 項 を参照してください。

11.3 バックアップ方法の定式化

バックアップ方法の定式化は,サイトの具体的な要件や,様々なバックアップのタイプの長所や短所を念頭に置いて行ってください。また,次の要因を考慮することも忘れないでください。

たとえばスタンドアロン型のワークステーションでは,たいていの場合,夜間のイメージ・バックアップが最適なバックアップ方法です。

また別の環境では,イメージ・バックアップと追加型バックアップを組み合せた方法も考えられます。たとえば,常に会話型ユーザがログインしている環境 ( 第 11.15.1 項 参照) では,イメージ・バックアップを毎日行うのは困難です。そのため,イメージ・バックアップを毎週行って,追加型バックアップを毎晩行うという方法がよいかもしれません。

イメージ・バックアップと追加型バックアップの比較を 表 11-1 に示します。

表 11-1 イメージ・バックアップと追加型バックアップの比較
バックアップ形態 長所 短所
イメージ 追加型バックアップより短時間の復元が可能。ディスク全体のバックアップが可能。 追加型バックアップより使用する空間が多く,時間が長くかかる。システム性能やオープンしているファイルに影響するため,会話型ユーザのログインがないことが前提になる ( 第 11.15.1 項 参照)。
追加型 時間と使用空間が少なくてすむ。 ファイルの復元が難しい。定期的なイメージ・バックアップと組み合わせる必要がある。

注意

イメージ・バックアップを実行する場合は,あらかじめ次のことに留意してください。

  • ディスクで初めてのバックアップなら,通常の追加型バックアップを行う前に,BACKUP/IMAGE/RECORD コマンドでイメージ・バックアップを行います。イメージ・バックアップは,ディスク全体のコピーを保存しながら,保存した各ファイルにマークを付けます。その後に実施する通常の追加型バックアップは,既にイメージ・バックアップが行われていることを前提としているため,新しいファイルや変更されたファイルを保存します。
    最初にイメージ・バックアップが行われていない場合には,追加型バックアップで必要以上にファイルを保存して,確実に追加型の復元ができるようにします。

  • BACKUP/IMAGE によるディスクの復元操作後ただちに ANALYZE/DISK 操作を実行すると,システムは次のような警告メッセージを表示する場合があります。


    %ANALDISK-W-ALLOCCLR, blocks incorrectly marked allocated 
            LBN 97 to 105, RVN 1 
    


    これは,別名ファイルのエントリが独立 (1 次) ファイルのエントリとして復元されている場合に, BACKUP/IMAGE による復元操作を実行しようとしたときに起こることがあります。 1 次ファイルでは同じファイル・ヘッダが使用されますが別のデータ記憶ブロックが割り当てられるため,1 次ファイルも復元されます。
    ただし,エラー・メッセージは表示されますが,BACKUP にエラーはなく,データも失われないことに注意してください。

次の条件のいずれかが成立する場合,バックアップ中にテープまたはディスクを交換する必要はありません。

上記の場合は,夜間,または会話型ユーザのログインが最も少ないと思われる時間に,バッチ・ジョブでバックアップを行うことができます。 第 11.15.7 項 では,バッチ・ジョブで実行可能なコマンド・プロシージャ例をいくつか紹介します。

11.4 バックアップのインタフェース

OpenVMS の BACKUP ユーティリティには,次の 2 つのインタフェースが使用できます。

11.4.1 BACKUP コマンド行

バックアップを行うためには,入力側にバックアップ対象,出力側にセーブ・セットまたはファイルの書き込み先を指定する必要があります。 BACKUP では修飾子を使用することができ,それら修飾子は,コマンド行での位置によってその働きが変わります。BACKUP の形式は次のとおりです。


BACKUP/ 修飾子   入力指定/修飾子   出力指定/修飾子 

表 11-2 は,コマンド行上での位置別に BACKUP コマンド修飾子を定義したものです。

表 11-2 BACKUP コマンド修飾子の種類
種類 位置 働き
コマンド修飾子 コマンド行上の任意の場所 入力指定と出力指定の両方に作用
入力指定修飾子 入力指定の直後 入力指定にのみ作用
出力指定修飾子 出力指定の直後 出力指定にのみ作用

BACKUP を使用するにあたっては,コマンド行の間違った位置に修飾子を指定することのないように注意してください。 BACKUP コマンド行については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』にさらに詳しい説明があります。

11.4.1.1 拡張文字セット

OpenVMS ではバージョン 7.2 から Extended File Specifications がサポートされており, BACKUP ユーティリティは拡張文字セットのファイル名を処理できます。含まれている文字は次の形式です:

拡張文字セットについて詳しくは『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。

11.4.1.2 入力ファイルの指定

ファイルに基づく BACKUP 操作では,次のように相対入力ファイル・バージョンを指定できます。


$ BACKUP FILE.DAT;-2 SAVED_FILE.DAT

この例では,入力ファイル名の最新のバージョンから数えて2バージョン古いバージョンを選択し,別のファイル名を割り当てています。

BACKUP ユーティリティは,相対ファイル・バージョンの指定記法として,最も古いバージョンを表わす -0 を使用できません。代わりに -0 は指定したファイルの最新バージョンを選択したとみなされます。

11.4.2 Backup Manager

Backup Manager は,直感的でタスク指向のセルフ・ドキュメント方式で BACKUP の機能を提供する, OpenVMS の BACKUP ユーティリティへの画面用インタフェースです。 Backup Manager が,バックアップのプロセスを通じてガイドするので,バックアップ操作が簡単になります。 Backup Manager を使用しても,BACKUP コマンド行を使用しても,実際のパフォーマンスには差がありません。

Backup Manager の動作環境は次の通りです。

Backup Manager インタフェースは,OpenVMS Screen Management ランタイム・ライブラリ (RTL) ルーチンに対応します。

11.4.2.1 Backup Manager の機能

Backup Manager は次のようなバックアップの操作を実行できます。

Backup Manager では,次の 3 種類のオンライン支援が使用できます。


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