OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.11 マルチボリューム・バックアップ

BACKUP でデータを保存すると,セーブ・セットが複数のボリュームにまたがり,マルチボリュームのセーブ・セットになることがあります。そうした場合,BACKUP は最初のボリュームに書き込めるだけのデータを書き込み,続いて,そのボリュームをディスマウントします。この後, BACKUP が行う処理は,BACKUP コマンド行に複数の装置が指定されているかどうか,あるいはテープ・ローダが使用されているかどうかによって異なります。

11.11.1 マルチボリュームのテープ・ラベル処理

マルチボリューム・セーブ・セット処理の場合,/REWIND 修飾子の指定がないかぎり,BACKUP が先頭ボリュームを初期化することはありません。ただし,以降のボリュームについては,初期化を行い,次のようにしてそのボリューム・ラベルを決定します。

間違ったテープを初期化したり,間違ったテープに書き込みを行ったりすることのないよう,BACKUP はコマンド行に指定されたラベルと,実際に装置にセットされているテープのラベルを比較します。こうした BACKUP のテープ・ラベル処理とラベル不一致時の処理については, 第 11.12 節 で詳しく説明します。

11.11.2 磁気テープのバックアップ中の MOUNT メッセージ

ローダを持つ装置を使用したとき,あるいはスタッカまたはローダが空になった場合, MOUNT ユーティリティはバックアップ中に継続磁気テープ・ボリュームに VOLINV メッセージを表示します。次の例は,表示の例です。


%MOUNT-I-MOUNTED, ABCD03 mounted on _$4$MUA3: (HSC70) 
%BACKUP-I-RESUME, resuming operation on volume 4 
%MOUNT-F-VOLINV, volume is not software enabled 
%BACKUP-I-READYWRITE, mount volume 4 on _$4$MUA3: for writing 
Enter "YES" when ready: yes 
%MOUNT-I-MOUNTED, ABCD04 mounted on _$4$MUA3: (HSC70) 

一旦装置がオンライン状態に戻されるか,媒体が準備完了すると,バックアップ・セッションは期待される通りに動作を継続あるいは終了します。この問題は将来のリリースで対処予定です。

11.12 BACKUP によるテープ・ラベル処理

テープをマウントしたら, BACKUP は,書き込みを行う前にテープのボリューム・ヘッダ・レコードの情報を処理します。このとき BACKUP が行う処理は具体的には次のとおりです。

ラベルが一致し,正しいアクセス権をもっていて,かつテープが満了している場合, BACKUP は指示された処理を行います。

このとき /LABEL 修飾子で複数のラベルが指定されており, /EXACT_ORDER 修飾子を指定しなかった場合は,指定ラベルと一致するテープのボリューム・ラベルが 1 つでもあれば,処理は成功します。たとえば,テープのボリューム・ラベルが MA1686 であったとすると, /LABEL 修飾子は次のようであれば問題ありません。


/LABEL=(MA1684,MA1685,MA1686) 

ボリューム・ラベルに一致するものがない場合,BACKUP は次のエラー・メッセージを表示します。


%MOUNT-I-MOUNTED, DKA0 mounted on _SODAK$MUA0: 
%BACKUP-W-MOUNTERR, volume 1 on _SODAK$MUA0 was not mounted because 
 its label does not match the one requested 
%BACKUP-W-EXLABEER, volume label processing failed because 
 volume MB1684 is out of order, Volume label MA1684 was expected 
 specify option (QUIT, NEW tape, OVERWRITE tape, USE loaded tape) 
BACKUP> 

オプションの指定によっては,バックアップを強制終了(QUIT),現在のテープをディスマウントして,新しいテープをマウントしたり (NEW),またテープのデータを書き換えたり (OVERWRITE),ロードされているテープを使用したり (USE) することができます。

/LABEL 修飾子で複数のラベルを指定し,/EXACT_ORDER 修飾子も指定した場合は, BACKUP はロードされたテープのラベルと /LABEL 修飾子で指定した最初のラベルを比較します。ラベルが一致した場合は,BACKUP は処理を開始し,一致しなかった場合は,前記のメッセージを表示します。

使用するテープのボリューム・ラベルがコマンド行の対応するラベルと一致する場合は,操作が完了する,またはボリューム・ラベルをすべて使用するまで, BACKUP は処理を続行します。コマンド行で十分なラベルを指定しなかったために操作が完了できなかった場合,またはロードされたテープのラベルが ANSI ラベルではなかった場合は, BACKUP はドライブ内のテープに対してラベルを入力するよう要求します。

未使用テープを使用する,または既存のテープを書き換える場合は, /IGNORE=LABEL_PROCESSING 修飾子を使用してください。この修飾子は,保存のとき BACKUP が ANSI ラベル以外のテープを検出したときに出力する前記メッセージの出力を禁止します。

/EXACT_ORDER 修飾子,/IGNORE 修飾子,および /LABEL 修飾子についての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。

11.13 ファイルとディレクトリのバックアップ

この節では,ファイルのコピーと,ファイルとディレクトリのバックアップ,ファイルの比較,BACKUP ジャーナル・ファイルの作成と一覧出力について説明します。

注意

ファイルに対して BACKUP ユーティリティを使用する場合には,相対バージョン -0 はバージョン 0 として処理され,処理用のファイルの最も古いバージョンではなく最新のバージョンがセーブされることに注意してください。

11.13.1 ファイルのコピー

BACKUP を使用して,ファイルをコピーすることができます。 BACKUP コマンドのコピー機能はバージョン番号や作成日,変更日,保護コードなどのファイル情報を変更しない点が, DCL の COPY コマンドとは異なります。ただし,省略時の設定では,コピー先ファイルの所有者 UIC はカレント・プロセスの UIC になります。また,DCL コマンドの COPY と異なり,BACKUP は,ディレクトリ構造を変更することなくディレクトリ・ツリー全体をコピーすることもできます。

作業方法

ファイルのコピーを作成する場合は,次の形式で BACKUP コマンドを使用します。


BACKUP   入力指定    出力指定 


  1. 次のコマンドは,カレント・ディレクトリの EMPLOYEES.DAT ファイルを [BATES.TEST] ディレクトリにコピーする。


    $ BACKUP EMPLOYEES.DAT USER1:[BATES.TEST]EMPLOYEES.DAT
    

  2. 次のようにしてディレクトリ・ツリー全体のコピーを作成することもできる。


    $ BACKUP USER1:[BATES...] USER2:[BATES...]
    


    USER2: ディスクに BATES ディレクトリ構造を再作成している。

  3. 次のコマンドは,ディレクトリ・ツリー [LYKINS...] のすべてのファイルを,同じディスクのディレクトリ・ツリー [OWLCR..] にコピーしている。


    $ BACKUP [LYKINS...]*.*;* [OWLCR...]*.*;*
    

注意

/VERIFY 修飾子を指定して開始したディスク対ディスク間コピー操作では,コピーされなかったファイルを操作の完了確認をしようとすることがあります。例えば,あるディスクから別のロケーションにあるディスクへの /VERIFY 修飾子つきのコピーが正常終了せず,システムが2つのエラーを表示した場合があります。1つはファイルがコピーされなかったことを表示します。もう1つはファイルのコピー完了確認がされなかったことを示します。

11.13.2 セーブ・セットへのファイルとディレクトリのバックアップ

BACKUP を使用した処理で最もよく使われる処理の 1 つは,セーブ・セットへのファイルの保存です。セーブ・セットには種類がいくつかあります。詳細は 第 11.5 節 を参照してください。

作業方法

ファイルまたはディレクトリをバックアップする場合は,次の形式で BACKUP コマンドを使用します。


BACKUP   入力指定   出力指定 [/SAVE_SET] [/LABEL= ラベル ] 

入力指定にはバックアップしたいファイル, 出力指定には出力先の装置とセーブ・セット名を指定します。

ディスクにデータを保存する場合は,出力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用してください。この修飾子を省略すると,BACKUP のセーブ・セットが作成されず,標準のファイル形式でファイルのコピーが行われます。テープにデータを保存する場合は,/SAVE_SET 修飾子を指定する必要はありません。 BACKUP は磁気テープ・ファイルを必ずセーブ・セットとして取り扱います。使用するテープのラベルを指定したい場合は,/LABEL 修飾子を使用します。


  1. 次のコマンドは,EMPLOYEES.DAT というファイルをセーブ・セットにバックアップする。


    $ ALLOCATE MUA0: TAPE1(1)
    %DCL-I-ALLOC, MUA0: allocated
    $ INITIALIZE TAPE1 DLY101(2)
    $ BACKUP/LOG EMPLOYEES.DAT MUA0:EMPL_MAY91.BCK/LABEL=DLY101(3)
    %MOUNT-I-MOUNTED, BACKUP mounted on _MUA0: 
    BACKUP-S-COPIED, copied DUA0:[SCHULT]EMPLOYEES.DAT;32 
    $
    


    この例の番号を振ったコマンドはそれぞれ次のことを行う。

    1. テープ装置 MUA0: を割り当て,論理名として TAPE1 を設定する。

    2. 装置のテープを初期化し,ラベルとして DLY101 を設定する。

    3. MUA0 のテープのセーブ・セットに EMPLOYEES.DAT ファイルを保存する。 /LOG 修飾子が指定されているので,BACKUP は自身がコピーしたファイルのファイル指定情報を表示する。/LABEL 修飾子には, INITIALIZE コマンドで設定したボリューム・ラベルが指定されている。

  2. 次のコマンドは,[LYKINS...] というディレクトリ・ツリーのすべてのファイルとすべてのサブディレクトリを含む磁気テープ・セーブ・セット,NOV13SAVE.BCK を作成する。


    $ BACKUP [LYKINS...] TAPE:NOV13SAVE.BCK/LABEL=NOV13
    

  3. 次の例に示すように,バックアップしたいファイルをリスト形式で指定することもできる。


    $ BACKUP
    _From: DUA0:[MGR]EMPLOYEES.DAT,USER1:[RECORDS]DOOHAN.DAT,EVANS.DAT
    _To: MUA1:MONTHLY_AUG.BCK/LABEL=TAPE1
    

  4. 大量のデータをバックアップする場合は,複数の出力装置を指定することができる。


    $ BACKUP
    _From: DUA0:[000000]*.*
    _To: MTA1:BACKUP.BCK,MTA2:
    


    MTA1: のテープの空間を使い切った場合,BACKUP は,MTA2 に初期化されていないテープがセットされているか,あるいはラベル BACK02 で初期化されたテープがセットされているものとして,MTA2 のテープにセーブ・セットの残りの部分を書き込む。

  5. 次の例に示すように,ファイル 1 つだけの Files--11 セーブ・セットを作成することができる。このとき, DUA1: はすでにマウントされているものとする。


    $ BACKUP STRATCOL1.DAT DUA1:STRATDAT1.BCK/SAVE_SET
    

  6. ネットワーク・セーブ・セットを作成する場合は,次の形式で出力指定にノード名とユーザ名,パスワードを追加する。


    遠隔ノード名"ユーザ名   パスワード"::装置名:[ディレクトリ] 
    


    次はネットワーク・セーブ・セットの作成例である。


    $ BACKUP
    From: STRATCOL1.DAT
    To: NIMBL"ROGERS SANFRANCISCO"::WORK1:[ROGERS]STRATDAT1.BCK/SAVE_SET
    

  7. 次のコマンドは,DUA0: に,現在の省略時のディレクトリのすべてのファイルを含む順編成ディスク・セーブ・セット, NOV12SAVE.BCK を作成する。


    $ MOUNT/FOREIGN DUA0:
    $ BACKUP [] DUA0:NOV12SAVE.BCK/SAVE_SET
    

  8. 次の例では,[REPORTS...] というディレクトリ・ツリーをセーブ・セットにバックアップしている。


    $ BACKUP [REPORTS...] MIA11:REPORT.BCK/REWIND/IGNORE=LABEL_PROCESSING
    


    /REWIND 修飾子はテープを巻き戻して,初期化する。また,/IGNORE=LABEL_PROCESSING 修飾子が指定されているため, BACKUP はテープの既存のラベル情報をすべて無視する。 /LABEL 修飾子がないので, BACKUP はセーブ・セット名の先頭 6 文字 (REPORT) をテープ・ラベルにする。

  9. 次の例に示すように,Files--11 形式でマウントしてディスクにディレクトリをバックアップすることもできる。


    $ MOUNT DUA1: PAYROLL
    %MOUNT-I-MOUNTED, PAYROLL mounted on _DUA1:
    $ MOUNT DUA21: DISK21
    %MOUNT-I-MOUNTED, DISK21 mounted on _DUA21:
    $ BACKUP
    From: DUA1:[PAYROLL]
    To: DUA21:[PAYROLL_BACKUPS]PAY22MAY2000.SAV/SAVE_SET
    


    [PAYROLL] ディレクトリのすべての内容がディスク DUA21: に収まらなかった場合,バックアップは失敗する。

  10. バックアップするデータが出力ボリュームに入り切らない場合は,次の例に示すように,/FOREIGN 修飾子を使って出力ボリュームをマウントして,順編成ディスク・セーブ・セットを作成する。


    $ MOUNT DUA1: PAYROLL
    %MOUNT-I-MOUNTED, PAYROLL mounted on _DUA1:
    $ MOUNT/FOREIGN DJA21:
    %MOUNT-I-MOUNTED, WEEKLY mounted on _DJA21:
    $ BACKUP
    From: DUA1:[PAYROLL]
    To: DJA21:[PAYROLL_BACKUPS]PAY22MAY2000.SAV/SAVE_SET
    


    [PAYROLL] ディレクトリのすべての内容が DJA21: ディスクに入り切らなかった場合,BACKUP は装置のテープを入れ換えるよう促す。 Files--11 セーブ・セットと順編成ディスク・セーブ・セットについては, 第 11.5 節 を参照すること。

注意

OpenVMS バージョン7.2よりも以前のバージョンでは, 32 レベルのディレクトリがサポートされていました。 OpenVMS バージョン 7.2 以降では VAX と Alphaシステムディレクトリの階層の数は RMSの許容する数値までサポートされます。 OpenVMS バージョン 7.2 以降の場合,この数値は 255 レベルです。


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