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18.1 SCACP について
SCA Control Program (SCACP) ユーティリティは,クラスタ通信の監視と管理を行うために設計されています。このユーティリティは,Systems Communications Architecture (SCA) に由来しています。 SCA は,OpenVMS Cluster システムにある複数のノードが協調できる通信メカニズムを定義します。
SCA は次のことを行います。
従来,LAN クラスタ・ポート情報は System Dump Analyzer (SDA) ユーティリティで,可用性マネージャ管理ツールを使用することでのみ利用可能でした。 LAN 装置の PEDRIVER の起動と停止を行う機能は, SYS$EXAMPLES:SYS$LAVC_START_BUS.EXE と SYS$LAVC_STOP_BUS.EXE から提供されていました。 LAN 装置や個別のチャネルの使用に優先順位を設定する方法は存在していませんでした。
SCACP は,クラスタ管理データの収集およびクラスタ通信の管理制御について代替方法を提供します。 OpenVMS バージョン 7.3 では, LAN パスの SCA 使用を管理する SCACP の機能が導入されました。 OpenVMS バージョン 7.3-1 からは, SCAPCP を使用して OpenVMS Cluster インターコネクトすべてを管理できます。
18.1.1 SCACP に関連する用語
SCACP に関連する用語の定義をこれ以降で説明します。
18.1.1.1 SCS のポートとサーキット
ノード間の SCA 通信メカニズムは,システム通信サービス (SCS) のポートとサーキットによって定義されます。
2 つのポート間でサーキットが形成されると,それらのノード内の SYSAP 間で SCS サービスを使用する通信を確立できます。クラスタでは,それぞれのポートが対応する他のすべての遠隔ポートとのサーキットを保持します。
サーキットは,次の標準化された SCS サービスとともに SCS 層を提供します。
仮想サーキット (VC) とは,信頼性のあるポート・ツー・ポート通信を提供するサーキット内のインターコネクト固有のトランスポート層接続です。つまり,VC は,インターコネクト固有の信頼性のあるデータ配信に関連するサーキットの詳細です。
サーキットでは次のことが保証されます。
サーキットと仮想サーキットの概念は非常によく似ており, SHOW CLUSTER がサーキットの内部処理の詳細を示さないので,通常は両者を区別する必要はありませんでした。しかしながら,SCACP はこの内部詳細を提供するので,区別が必要です。 OpenVMS バージョン 7.3 から, LAN ポート間のサーキットの基となる VC に関する情報の管理と表示に SCACP を使用できます。 SCACP はサーキットと VC について異なるタイプの情報を表示できるので, SCACP のコマンドではサーキットと VC を区別する必要があります。
LAN クラスタ通信は,データグラム・サービスを提供している LAN ハードウェア経由で通信を行う NI-SCA トランスポート・プロトコルで仮想サーキットを作成します。
18.1.1.3 LAN チャネル
チャネル とは,2 つの LAN 装置間の論理的な通信パスです。 2 つのノードの間にある各チャネルは,ローカルと遠隔の装置のペアと接続しているネットワークによって決定されます。 たとえば,それぞれ 2 つの LAN 装置を備えている 2 つのノードは,最大 4 つのチャネルを確立できます。特定の仮想サーキットが伝送するメッセージは,この 2 つのノードを接続しているいずれかのチャネルを経由して送信できます。
LAN クラスタ・ドライバである PEDRIVER は,LAN アダプタ (装置) とネットワーク接続を定義するチャネルを使った信頼性のある仮想サーキットを構築します。その後,これらの VC を使って SCS へのサーキットを提供します。
18.1.1.4 チャネルと仮想サーキット
チャネルと仮想サーキットは次の点で異なります。
OpenVMS Cluster システム内のノード間には,複数のチャネルが存在できますが,一度に 2 つのノード間に存在できるのは 1 つの LAN ベースの仮想サーキットのみです。
18.1.2 新しいクラスタ SCA サーキットとポートの機能
ここでは,SCA サーキットとポートに利用可能な新しい機能,および SCS 動的負荷クラスへの新しいサポートについて説明します。また,それとは別に,個別の PEDRIVER 仮想サーキット (VC) に対してチェックサムを有効または無効にできます。
18.1.2.1 ポートとサーキットの優先順位を設定する機能
OpenVMS バージョン 7.3-1 から,SCS 接続のために使用すると選択したサーキット経由で管理制御を実施できます。この制御により,最も高い負荷クラス値のサーキットの自動選択を無効にできます。
自動サーキット選択を無効にするには,管理優先順位値を特定のサーキットまたは SCA ポートに割り当てます (サーキットの現在の優先順位値は,ローカル・ポートの管理に割り当てられた優先順位と,そのサーキットに割り当てられた管理優先順位値の合計です)。
接続は,最も高い優先順位のサーキットに割り当てられます。複数のサーキットに最も高い優先順位値がある場合,最も高い負荷クラスのサーキットが選択されます。
サーキットの現在の優先順位を変更すると,次のいずれか 1 つの影響があります。
サーキットがクローズすると,常にサーキットの管理優先順位設定は失われます。これは,サーキットがクローズするたびにサーキットに関する情報を含むデータ構造の割り当てが解除されるためです。サーキットが再度オープンされると,データ構造は省略時の値で初期化されます。つまり,サーキット管理優先順位は VC のクローズ間で通知されることはありません。 |
SCACP では,VC ごとにチェックサム機能を有効または無効にすることができます。たとえば,ディザスタ・トレラント・クラスタでは,遠隔サイトにあるノードへの VC でのチェックサム機能のみを有効にして,パケットの破壊を原因とする LAN 装置のチェックサム機能の失敗を遠隔サイトに通知されないようにすることも考えられます。
18.1.2.3 SCS 動的負荷クラスのサポート
OpenVMS バージョン 7.3-1 よりも前のバージョンでは, SCS サーキットの負荷クラスは,ポートに事前に設定された負荷クラス値によってのみ決定されていました。その結果,ギガビット・イーサネット・サーキット経由では, CI または DSSI サーキットが選択されていました。 OpenVMS バージョン 7.3-1 からは,PEDRIVER が,基となっている LAN パスまたは現在使用中のパスの性能を反映して,その SCS サーキットの負荷クラス値を動的に更新します。
サーキットの優先順位が同一である場合,サーキットの負荷クラスを変更すると,次のいずれか 1 つの影響があります。
V7.3-1 から,SCACP は 1 つのクラスタ・インターコネクトのローカル・ポートとその遠隔ポートとのサーキットに関する情報を表示する機能を提供しています。
SCACP ポートとサーキットのデータは,ポートとサーキット経由で管理制御を実施するために必要な情報を提供するために用意されています。 SCACP は,ポートとサーキットについて SHOW CLUSTER が提供する豊富なデータを置き換えるためのものではありません。 SHOW CLUSTER ユーティリティと SCACP ユーティリティは,クラスタ通信の管理を行うため,ともに使用することを目的としています。
SCACP ポートとサーキットのデータは,次の内容を示します。
また,優先順位値を個々のポートやクラスタに割り当てることでクラスタ通信を管理することもできます。詳細については,SET CIRCUIT と SET PORT のコマンド説明を参照してください。
18.1.4 LAN クラスタ・ポートの管理
LAN クラスタ・ポートを管理するには,共通のポートとサーキット・コマンドを使用できます。クラスタ内のノードに対する LAN ポート VC,チャネル,および LAN 装置には,次のコマンドも存在します。
SCACP では,チャネルと LAN 装置の優先順位を設定できます。また,SCACP は LAN 装置上の PEDRIVER の起動と停止ができます。
LAN クラスタ・ポート・ドライバである PEDRIVER には,定義された各イベントの少量の情報を収集し,それを仮想サーキットまたはチャネルに関連付けられたバッファに保存する イベント・トレース機能があります。特定の仮想サーキットやチャネルに関連しないイベントは,グローバルな PEDRIVER トレース・バッファに保存されます。
イベント・トレース・データは,デバッグ,ダンプ分析の実行,および PEDRIVER 処理の詳細な側面の確認を行うときに使われます。
TRACE コマンドは,OpenVMS Engineering 部門の指示の下, OpenVMS Engineering 部門および弊社のサービス担当の使用に限定されています。トレース用コマンドとその出力は,今後のリリースで変更する可能性があります。 |
SCACP を使用すると,クラスタ通信の問題を診断できます。『OpenVMS Cluster システム』の付録「NISCA プロトコルのトラブルシューティング」にはクラスタ管理者とネットワーク管理者が SCACP や他のツールを使ってネットワークに関連するクラスタ通信の問題を正確に把握できるトラブルシューティング手法が説明されています。
18.1.6 関連資料
この章で説明するトピックの補足情報については,次のマニュアルを参照してください。
SCACP コマンドには,次のタイプの機能が用意されています。
SCACP コマンドを 表 18-1 に示します。
コマンド | 機能 |
---|---|
SCACP 表示コマンド修飾子 | |
SHOW CHANNEL | PEDRIVER チャネル情報を表示する。 |
SHOW CIRCUIT (ノード名) | このノードと他のクラスタ・ノードの間の LAN サーキット情報を含むすべてのサーキットに関する情報を示す。 |
SHOW LAN_DEVICE | PEDRIVER LAN 装置情報を表示する。 |
SHOW PORT | LAN ポートである PEA0 を含むノード上のすべての SCA ポートに関する情報を表示する。 |
SHOW VC | PEDRIVER 仮想サーキット情報を表示する。 |
SCACP 操作コマンド | |
SET CHANNEL | PEDRIVER チャネル管理オプションの設定をユーザに許可する。 |
SET CIRCUIT | 選択したサーキットの管理優先順位値の設定をユーザに許可する。 |
SET PORT | 選択したポートの管理優先順位値の設定をユーザに許可する。 |
SET VC | PEDRIVER 仮想チャネル・オプションの設定をユーザに許可する。 |
SCACP LAN 装置操作コマンド | |
SET LAN_DEVICE | PEDRIVER LAN 装置管理オプションを設定する。 |
START LAN_DEVICE | 指定された LAN 装置で PEDRIVER を起動する。 |
STOP LAN_DEVICE | 指定された LAN 装置で PEDRIVER を停止する。 |
SCACP トレース・コマンド | |
これらのコマンドは,弊社の使用のために予約されています。 | |
SET TRACE | PEDRIVER イベント・トレース・オプションを設定する。 |
SHOW TRACE | PEDRIVER イベント・トレース・オプションを表示する。 |
START TRACE | PEDRIVER イベント・トレースを開始する。 |
STOP TRACE | PEDRIVER イベント・トレースを停止する。 |
SCACP のその他のコマンド | |
HELP | ヘルプ・データを表示する。 |
SPAWN [コマンド] | スポーンしてコマンドを実行する。 |
@ファイル名 | コマンド・ファイルを実行する。 |
EXIT | SCACP を終了する。 |
SCA Control Program (SCACP) は,特定の特権付きクラスタ通信管理機能を実行するクラスタ管理ユーティリティです。
RUN SYS$SYSTEM:SCACP
なし。
SCACP を起動するには,DCL プロンプトで次のコマンドを入力します。
$ RUN SYS$SYSTEM:SCACP
SCACP は,次のプロンプトを表示するので,ここで DCL 構文の標準規則を使って SCACP コマンドを入力できます。
SCACP>
SCACP を終了し,DCL コマンド・レベルに戻るには, SCACP> プロンプトで EXIT を入力するか,または Ctrl/Z を押します。
注意
OpenVMS バージョン 7.3 およびそれ以降のバージョンでは, SCACP コマンドの発行に SYSPRV 特権が必要です。
また,SCACP を使用するには次の特権が必要になります。
- SCACP 実行の情報または影響を表示するコマンド (SHOW,HELP,SPAWN,EXIT など) を発行するには,最低限 DISPLAY 特権が必要です。
- クラスタ通信操作を変更するコマンド (SET,START,および STOP) を発行するには,SYSPRV 特権が必要です。
$ CREATE COUNT.COM SHOW LAN_DEVICE/COUNTERS SPAWN WAIT 00:01:00 @COUNT [Ctrl/Z] $ RUN SYS$SYSTEM:SCACP SCACP> @COUNT |
コマンド・プロシージャ COUNT.COM を作成し,実行します。実行によって,装置カウンタが 1 分に 1 回表示されます。
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