日本語Compaq TCP/IP Services for OpenVMS
リリース・ノート


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1.8.5 改行の挿入を防ぐための printcap ファイルの使用

LPD サーバで,SETUP モジュールの後で実際のプリント・ファイルの前のバイト・ストリームに改行が挿入されるのを防ぐには, TCPIP$LPRSETUP プログラムを使用して, printcapプリンタ・コンフィギュレーション・ファイルにシンボル snを含めます (『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』で説明)。

シンボル snを含めると,TCPIP$LPD.CONF ファイルの Setup-NoLFコンフィギュレーション・オプションの定義を無効にして ( 表 1-2 を参照),キューごとに LPD が改行文字を挿入しないようにします。

1.8.6 高可用性 LPD サーバのコンフィギュレーション

新しい LPD サーバ・クラスタ機能を使用すると,高可用性で負荷分散された LPD サーバを提供することができます。これのコンフィギュレーションを行うには,使用している LPD サーバ・ノードのすべての IP インタフェースについて,クラスタ別名を作成します。 LPD クライアントでは,LPD ジョブを送信する LPD サーバとしてクラスタ別名を指定します。負荷分散およびロード・ブローカについての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。

1.8.7 クラスタ単位の LPD サーバへの移行

LPRSETUP ユーティリティは,ユーザのために作成した新しい printcapエントリ内にあるクラスタ単位のコンフィギュレーション定義を使用しますが,ノード固有のディレクトリを参照する既存のエントリを自動的に変更することはありません。この項では,既存の LPD コンフィギュレーションをクラスタに移行する方法について説明します。

LPD を使用していて,現在の環境をクラスタ内で動作するように移行したい場合には,いくつかの変換手順を手動で実行する必要があります。移行したくない場合は,既存の LPD コンフィギュレーションが今までどおりシングル・ノード・モードで動作します。

システム固有の LPD コンフィギュレーションをクラスタ単位のコンフィギュレーションに移行するには,次の手順に従います。

  1. 次のコマンドを入力して,LPD をシャットダウンします。


    $ @SYS$STARTUP:TCPIP$LPD_SHUTDOWN.COM 
    

  2. LPD ルート・ディレクトリとしてサービスを行うクラスタ単位のディレクトリを作成します。たとえば,次のように入力します。


    $ CREATE/DIRECTORY dev:[directory]/OWNER=TCPIP$LPD 
    


    ディスク・デバイス (dev:) には,クラスタ単位のデバイスを指定します。 directory には,クラスタ単位のデバイス上のディレクトリ (たとえば [LPD_ROOT]) を指定します。

  3. システム・スタートアップ・コマンド・ファイルに TCPIP$LPD_ROOT 論理名の定義を追加して,新しい LPD ルート・ディレクトリを指すようにします。
    論理名は,TCPIP$STARTUP.COM を実行する前,または TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM 内のいずれかに定義する必要があります。 TCPIP$LPD_ROOT を TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM 内に定義する場合は,必ずクライアント・キューを起動する DCL コマンドの前に定義します。 TCPIP$LPD_ROOT を TCPIP$LPD_SYSTARTUP 内に定義すると, LPD の起動時に次のような情報メッセージが表示されます。


    %DCL-I-SUPERSEDE, previous value of TCPIP$LPD_ROOT has been superseded 
    


    このメッセージは,TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM が起動される前に TCPIP$LPD_ROOT が定義されたことを反映しています。したがって,TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM 内の TCPIP$LPD_ROOT の定義は, TCPIP$LPD_STARTUP.COM での定義によって置き換えられます。 TCPIP$LPD_ROOT を TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM 内に定義していて,この情報メッセージが表示されなかった場合には, TCPIP$LPD_ROOT の定義にエラーがあるかもしれません。 /SYSTEM および /EXECUTIVE_MODE 修飾子を必ず含めるようにしてください。
    TCPIP$LPD_ROOT 論理名の定義は,クラスタ単位のファイルに記述しなければなりません。 TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM から起動されるクラスタ単位のコマンド・ファイルを作成します。たとえば,クラスタ単位のシステム管理ファイルを格納するために使用されるディレクトリ (この場合 COMMON_MANAGER) 内に LPD_ROOT.COM という名前のファイルを作成して,TCPIP$LPD_ROOT を定義するコマンドを含めます。


    $ TYPE COMMON_MANAGER:LPD_ROOT.COM 
    $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE_MODE - 
    _$ /TRANSLATION_ATTRIBUTES=(CONCEALED,TERMINAL) TCPIP$LPD_ROOT DISK1:[LPD_ROOT.] 
    


    TCPIP$LPD_SYSTARTUP.COM ファイルの始めに新しいコマンド・ファイルを起動するコマンドを含めます。たとえば,次のようにします。


    $ @COMMON_MANAGER:LPD_ROOT.COM 
    

  4. 作成したばかりのディレクトリを指す TCPIP$LPD_ROOT 論理名を定義します。次の例を参照してください。


    $ DEFINE/SYSTEM/EXECUTIVE_MODE - 
    _$ /TRANSLATION_ATTRIBUTES=(CONCEALED,TERMINAL) TCPIP$LPD_ROOT DISK1:[LPD_ROOT.] 
    

  5. 現在の printcapファイルを新しい LPD ルート・ディレクトリにコピーします。たとえば,次のようにします。


    $ COPY SYS$SPECIFIC:[TCPIP$LPD]TCPIP$PRINTCAP.DAT TCPIP$LPD_ROOT:[000000] 
    

  6. 新しい printcapファイルを編集して, /SYS$SPECIFIC/TCPIP$LPD をすべて TCPIP$LPD_ROOT/000000 に変更します。

  7. printcapファイルに定義されている各 printcapエントリについて,サブディレクトリを作成します。
    古い LPD ホーム・ディレクトリの下にある各サブディレクトリ用のサブディレクトリを作成します。サブディレクトリをリストするには,次のコマンドを使用します。


    $ DIRECTORY SYS$SPECIFIC:[TCPIP$LPD]*.DIR 
    


    たとえば,スプール・ディレクトリ SYS$SPECIFIC:[TCPIP$LPD.LASERJET] を持つ LASERJET という名前の既存の LPD クライアント・キューがある場合には,次のコマンドを入力して,新しいクラスタ単位のサブディレクトリを作成します。


    $ CREATE/DIRECTORY DISK1:[LPD_ROOT.LASERJET] 
    

  8. 各クラスタ・ノードで LPD を有効にします。まず,システム・スタートアップ・シーケンスに定義したように TCPIP$LPD_ROOT を定義します。次に,LPD を実行したい各クラスタ・ノード上で TCPIP$CONFIG.COM コマンド・プロシージャを実行します。
    Server メニューから,LPD を有効にするオプションを選択します。

  9. LPD コンフィギュレーション論理名を使用していて,その設定を新しいコンフィギュレーションにコピーしたい場合,または新しいコンフィギュレーション・オプションの省略時の値を変更したい場合は,LPD コンフィギュレーション・ファイル (TCPIP$LPD.CONF) を変更します ( 第 1.8.4 項 で説明)。
    LPD コンフィギュレーション・ファイルはオプションであり,各コンフィギュレーション項目について省略時の設定が提供されています。論理名の設定をコンフィギュレーション・オプションにコピーする方法については, 第 1.8.7.1 項 を参照してください。

  10. LPD プリント・ユーザを許可するために通信プロキシを使用しており, TCPIP$PROXY データベースが OpenVMS Cluster のすべてのメンバによって共用されていない場合には,LPD サーバを実行している各ノードでプロキシ・エントリを追加する必要があります。
    通信プロキシが使用されているかどうかを判断するには,次の TCP/IP 管理コマンドを入力します。


    TCPIP> SHOW SERVICE LPD/FULL 
    


    アプリケーション・プロキシが有効にされている場合は, Aproxフラグがフラグ・リストに表示されます。
    プロキシ・データベースがクラスタ・ノードによって共用されているかどうかを判断するには,次のコマンドを入力します。


    $ SHOW LOGICAL TCPIP$PROXY 
    


    この論理名はプロキシ・データベースの場所を指しています。それがクラスタ単位のデバイス上になく, Aproxフラグが LPD サービスに対して設定されている場合には,LPD サービスを実行している各ノードでプロキシ・エントリを追加する必要があります。
    プロキシ・エントリを表示するには,TCP/IP 管理コマンドの SHOW PROXY を入力します。その後,SET PROXY コマンドを使用して,各ノードでアプリケーション・プロキシ情報を入力します。
    すべてのクラスタ・メンバでプロキシ情報をロードするには, TCP/IP Services を再起動します。

  11. 次のコマンドを入力して,各クラスタ・ノードで LPD を起動します。


    $ @SYS$STARTUP:TCPIP$LPD_STARTUP.COM 
    

1.8.7.1 コンフィギュレーション・オプションの移行

表 1-3 に,TCPIP$LPD.CONF ファイル内のLPD 論理名および関連するオプションを示します。

表 1-3 論理名および LPD コンフィギュレーション・オプション
論理名 TCPIP$LPD.CONF オプション名
TCPIP$LPD_PERSISTENT_SERVER Persistent-Server
TCPIP$LPD_IDLE_TIMEOUT Idle-Timeout
TCPIP$LPD_LOOP_MAX Loop-Max
TCPIP$LPD_KEEPALIVE Keepalive
TCPIP$LPD_PROBETIME Probetime
TCPIP$LPD_DROPTIME Droptime
TCPIP$LPD_SETUP_NOLF Setup-NoLF
TCPIP$LPD_1ST_VFC_PREFIX_SPECIAL 1st-VFC-Prefix-Special
TCPIP$LPD_VMS_FLAGPAGES VMS-Flagpages
TCPIP$LPD_PS_EXT PS-Extensions
TCPIP$LPD_STREAM_PASSALL Stream-Passall
TCPIP$LPD_RETRY_INTERVAL Retry-Interval
TCPIP$LPD_MAXIMUM_INTERVAL Retry-Maximum
TCPIP$LPD_ qname_SETUP_NOLF なし。この特性は, printcap ファイルに新しいシンボル sn を使用して定義されます。詳細については, 第 1.8.5 項 を参照。

表 1-4 では,引き続き有効な論理名について説明します。

表 1-4 有効な LPD 論理名
論理名 説明
TCPIP$LPD_ROOT TCPIP$LPD_SPOOL を置き換えます。
TCPIP$LPD_SYMB_DEBUG TCPIP$LPD_DEBUG および LPD_DEBUG を置き換えます。
TCPIP$LPD_RECV_DEBUG TCPIP$LPD_RCV および LPD_RCV を置き換えます。

表 1-5 には,廃止された論理名を示します。

表 1-5 廃止された LPD 論理名
論理名 置き換わる論理名
TCPIP$LPD_PRINTCAP 置き換わる論理名はありません。 printcap ファイルは TCPIP$PRINTCAP.DAT という名前で LPD ルート・ディレクトリに格納されます。
TCPIP$LPD_LOGFILE 置き換わる論理名はありません。ログ・ファイルは実行キューについて指定され,次のようなフォーマットで LPD ルート・ディレクトリに格納されます。
                         TCPIP$LPD_ROOT:TCPIP$LPD_IN_ nodename_ nn.LOG
                          TCPIP$LPD_ROOT:TCPIP$LPD_OUT_ nodename_ nn.LOG
TCPIP$LPD_SPOOL TCPIP$LPD_ROOT によって置き換えられました。
TCPIP$LPD_DEBUG
LPD_DEBUG
TCPIP$LPD_SYMB_DEBUG によって置き換えられました。
TCPIP$LPD_RCV
LPD_RCV
TCPIP$LPD_RECV_DEBUG によって置き換えられました。
TCPIP$LPD_CLIENT_ENABLE 置き換わる論理名はありません。

1.9 UNIX サービス・データベース・ファイル

TCP/IP Services の本バージョンでは,編集可能なテキスト・ファイルの TCPIP$ETC:SERVICES.DAT を提供しています。このファイルを使用すると,UNIX システムで /etc/servicesファイルを使用して,インターネット・サービス名と別名をポート番号とプロトコルに関連付けるのと同様に,それらを関連付けることができます。これにより,ネットワーク・プログラマは,ポート番号をハード・コードしなくても,サービスを名前で参照できるようになります。

TCPIP$CONFIG コマンド・プロシージャを使用して BIND リソルバのコンフィギュレーションを行うと,TCPIP$ETC 論理名でポイントされるディレクトリに SERVICES.DAT ファイルが書き込まれます。このテンプレート・ファイルには,そのファイルのフォーマットに関する情報が格納されています。

次の Compaq C ルーチンは,SERVICES.DAT ファイルを操作するために定義されています。

getservbyname()および getservbyport()関数は,まず,TCPIP$SERVICE 論理名で参照される従来からの (RMS がインデックス付けした) サービス・データベースを検索します。要求されたサービスがそこで見つからない場合は,呼び出し側にエラーを返す前に, TCPIP$ETC:SERVICES.DAT が検索されます。

注意

TCPIP$ETC:SERVICES.DAT ファイルは,TCP/IP 管理コマンドと互換性がありません。 SET SERVICESET SERVICE コマンドで設定されたサービス定義は, TCPIP$ETC:SERVICES.DAT ファイルには格納されません。 TCPIP$ETC:SERVICES.DAT ファイルにリストされているサービスは, SHOW SERVICE コマンドで表示されません。

1.10 Extended File Specifications のための NFS サポート

NFS サーバおよび NFS クライアントは,ODS-5 ディスク・ボリューム上で OpenVMS Extended File Specifications (EFS) をサポートしています。

NFS サーバを使用して,OpenVMS ODS-5 ボリューム上のファイルをエクスポートすることができます。従来からの ODS-2 ボリュームは引き続きサポートされます。 NFS クライアントは ODS-5 ボリュームをエミュレートすることができます。

NFS サーバおよび NFS クライアントでは, ISO Latin-1 文字セットのみをサポートすることに注意してください。

ODS-5 ボリュームがマップされてエクスポートされると, NFS サーバは自動的に EFS 機能をサポートし, NAME_CONVERSION オプションがエクスポート・レコード内で指定されている場合には,そのオプションを無視します。

ODS-2 ボリュームでは (NAME_CONVERSION オプションが指定されている場合も指定されていない場合も),すべて大文字のファイル名は,OpenVMS 以外のクライアントではすべて小文字で表示されます。 ODS-5 ボリュームでは,ファイル名は,サーバ・ホスト上にローカルに表示されるのと同様の大文字/小文字で,クライアントにより表示されます。

ODS-2 ボリュームに,NFS NAME_CONVERSION オプションを使用して作成され, ODS-2 のファイル名では無効な特殊文字や小文字を含むファイル名が含まれる場合,サーバ・ホスト上にローカルに表示されるこれらのファイル名にはエスケープ・コードが含まれています (『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』で説明)。 SET VOLUME /STRUCTURE_LEVEL=5 コマンドをこのボリューム上で実行する場合,ファイル名は,サーバ・ホスト上にローカルに表示されるときと全く同様に,クライアントによってエスケープ・コードを付けて表示されます。

1.10.1 Extended File Specifications の有効化

Extended File Specifications は ODS-5 ファイル・システムによって提供されています。 ODS-5 ボリュームをマウントするには,TCP/IP 管理コマンドの MOUNT に /STRUCTURE=5 修飾子を指定します。たとえば,次のように入力します。


$ TCPIP 
TCPIP> MOUNT DNFS0: BOOK1 BEATRICE - 
_TCPIP> /PATH="/INFERNO" /HOST="FOO.BAR.EREWHON" - 
_TCPIP> /STRUCTURE=5 /SYSTEM 

/STRUCTURE 修飾子は次の値を受け付けます。

MOUNT/STRUCTURE コマンドについての詳細は,次のコマンドを入力して,オンライン・ヘルプを表示してください。


TCPIP> HELP MOUNT/STRUCTURE 

注意

DCL コマンドの SHOW DEVICE/FULL を使用してデバイス情報を表示すると, NFS ディスクは,DFS によってアクセスされているかのように誤って表示されます。たとえば,次のように表示されます。


$ SHOW DEVICE/FULL 
...
Disk DNFS1:, device type Foreign disk type 7, is online, mounted, 
file-oriented device, shareable, accessed via DFS 
...


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